第18回男女共同参画会議影響調査専門調査会

  • 日時: 平成14年12月9日(月) 14:00~16:00
  • 場所: 内閣府3階特別会議室
  1. 出席者
    • 大澤 会長
      大沢 委員
      木村 委員
      小島 委員
      高尾 委員
      高山 委員
      林  委員
  2. 議事
    • (1) 取りまとめに向けた議論
    • (2) その他
  3. 議事内容
    大澤会長
    ただいまから男女共同参画会議影響調査専門調査会の第18回会合を開催いたします。
     お手元の議事次第に従って本日の審議を進めていきたいと存じます。本日は、細かな表現を除いて、報告書全体をほぼ まとめてしまう必要がございます。
     事務局からの説明をいただきますけれども、その前に一言お礼を申し上げたいと思います。大変お忙しいところ、日程が こんでいる中で、報告書案にコメントをいただきましてどうもありがとうございました。非常に貴重な意見をたくさんいただき ました。その中には、これまで余り検討してこなかった事項について、今回新たに盛り込んではどうかという意欲的な御意 見もいただいているのですけれども、この段階に至って、今まで余り検討してこなかった事項を盛り込むとなると、また改 めて議論の機会を設ける必要が出てまいります。しかし、年内にはとりまとめると言ってまいりましたし、もう年末なので、 予備日は取っていただいてはございますが、再度お集まりいただくことは難しいと思っております。
     そういうわけですので、今後の検討課題にさせていただくものになるものもあると考えております。その点、よろしく御理 解をお願いしたいと思います。
     では、事務局からの説明をお願いします。
    事務局
    最初に、永瀬委員から出席できないということで、意見をいただいていますので紹介させていただきます。「専 業主婦モデルによって生じている歪みについては、この報告書ですでにさまざまに論じられているが、歪みを指摘しただ けでは不十分ではないかと考える。専業主婦心モデルは家族ケア活動をどう社会的に支援するかについての一つのモデ ル(世帯主に対する支援と主婦の世帯主を通じた保護モデル)である。これに対して多様な個人、多様な家族の税制・社 会保障を考えるとすれば、対として、その社会ではどうケア活動(児童育成等)が社会的に支援されるのかという視点が 必要になる。これは社会的に児童が育成されなくてはいけない、というのではなく、家族ケアでの育成も、保育園での育成 も選びうるということだろうと思うが、それにしても、女性が働く選択をすることで子供を持てないということがない税制・社 会保障という枠組みづくりが重要になると思われる。委員会のミッションが既存制度の調査があるとしても、児童手当、保 育、育児期の無業者にどう社会権が賦与されているかなどを社会保障・税制の中で扱うべきである。ゆえに子供を持つこ ととその社会的な支援について、影響調査の中で取り上げる節を設けることを提案する。選択の中立性という視点にたっ ても、子供を持つことが女性の無業化に、さらに幼い子供を者の離婚が貧困につながる社会は選択の中立性という点でも 問題がある(養育費の負担、離婚時の財産分割など)。女性の生涯可処分所得があるが、子供がいる世帯といない世帯 とでも比較するのも一案である。女性が自由に働く選択をできる社会を想定するだけでは、子供育成の問題はスッポリ抜 けてしまう。しかし両者は非常に関係が深い。
     「4」子どもを産み育てることにやさしい社会へ」から4行目について修正意見
     「女性の就業拡大が直接に少子化をもたらすとは限らない。仕事をすることで女性が子供が持てないような代替的が強 い社会であるのか、それとも仕事を持つことで子供が持ちやすくなる社会状況があるかに依存する。」後者はフォーマル またはインフォーマルな保育や育児休業の仕組みがある社会である。といった程度ではないか。
     コメントの趣旨としては、女性の雇用就業化、高賃金化が少子化をもたらすのは個人レベルで見ると多くの実証結果があ ると思うのでこの文脈でないとするのはおかしい。たとえば高学歴女性ほど結婚確率が下がる。また結婚後も正社員を続 けている女性ほど子供数が下がり、無子比率も上がっている結果が多く出ていることを挙げられる。
     私が委員会の中で発言した内容は、それにもかかわらず、社会集団として見ると、女性が仕事を続けやすい環境条件が ある地域ほど、子供が産まれているということです。その地域の中では、やはり女性が高賃金なほど子供数は少ないかも しれない。しかし一方で、スウェーデンなどでは無業者の女性もまた子供数が少ないと聞くが。要するに、子供と仕事が代 替的かどうかということと思う。
     また、子供をうみそだてることを社会全体が「支える」ことが必要である。
     「6)引退」退職一時金の記述に加えてただし退職金が一定勤続年数までは増加する慣行が一般的である。
     公的年金の個人単位化の定義のうち、子供をケアすることが低年金につながらないという定義も考えられ、これを入れ ることを提案する。なぜなら、従来は女性が離職し、育児に従事、その結果、第3号被保険者制度等の特別な制度がない と、無業でかつ保険料を納付できない女性はきわめて低年金となった。子供を持ったり持たなかったりすることによって、 老後の年金の格差が起こらないということも一つ個人単位化の定義と考えられるのではないか。格差をなくすには、(たと えばスウェーデンのように)子育て期を就業と見なす見なしをいれた上でほとんどの人が育児休業をとるような使いやす い制度とする、児童育成を社会で支えるだけの社会資本投資をし、児童手当を出すことなどがたとえば考えられる。
     「第3号被保険者制度の見直し」について、第1号か第3号かという選択は無視できない。第1号か第3号かという選択 肢はもっとも不公平で非中立的な制度。厚生年金の下限を下げることで、この問題はかなり解消できると書くのであれば 良いが、問題がないとするのは事実に反するのでおかしい。
     「離婚時の年金分割との関係」について、一定の婚姻年数を経過し子供への影響が少なくなった時点でというが、私は 離婚分割は、婚姻年数にかかわらず実施されるべきではないかと思う。しかしあえて限定をつけるとすれば、子育て負担 がなくなった時期ではなく、子育て負担が多い時期だろうと思う。婚姻後一定年数が経過し育児負担が軽くなった者につい ては、自身で年金権を積み立てるという道をもっと考えるべきである。逆に育児負担がある結果低年金となる期間につい ては、社会的に年金権を賦与する方策を考えるとともに、配偶者から確実に年金権が分割されるよう方法を考えるのが 当然ではないか。
     介護保険制度について、介護保険給付は家族ケア資源と無関係に本人の健康状態に応じて支給される。その結果、給 付が十分でなければ、このことは、就業家族(これまでは主に女性であったが)の無業化を促進する。」
     その他の意見については適宜、該当部分で紹介いたします。以上が永瀬委員からのコメントです。
     次に、委員や各省からのコメントを御紹介させていただきます。表現などを除きそのとおりにした方がいいというものが大 多数でございますので、説明は必ずしもいただいたコメントに沿っていない方向での修正に近いものとか、あるいは、この 場で判断いただいた方がいいような事項を中心に御紹介いたします。
     まず「共働き」とありますが、共稼ぎ、共働き、どちらがいいかということ、これは高尾委員からです。
     また、「扶養責任」という表現は「経済責任」がいいのではないかということも高尾委員からいただいております。
     この2点について、この場で御判断をいただければと思います。
    大澤会長
    そうこだわっていませんが、厳密に言うと、共稼ぎと共働きという言葉を使い分ける場合もありますか。
    木村委員
    私は政府関係の記事を書いたときに、「共稼ぎ」はやめて「共働き」ということばを使ってほしいと言われたこ とがあります。
    大澤会長
    実は今回、高尾委員の前回の言葉もありまして、専業主婦世帯あるいは専業主婦という言葉をなるべく使わ ないようにし、その代わりとして「片稼ぎ」という言葉を導入しています。この場合、片働きではなくて片稼ぎという言葉にし たのは、無償労働ということも考えたら、専業主婦で無業の方も働いていないわけではないので、「片稼ぎ」の方が実態に 即しているのではないかということで、その言葉を使ったのですが、その関係で、共稼ぎなのか共働きなのかということが また新たに浮上したという関係です。
    木村委員
    以前被差別的ということでやめてほしいということがあったと思っています。私は必ずしも納得しなかったの ですが。
    高山委員
    今の大澤会長の御説明によると、専業主婦世帯は共働きという形でくくっても一向におかしくない説明ですよ ね。奥さんは家で何もしないわけではなくて家事をやっていて、家事は無償労働だと考えれば、働いているという形になる わけですよね。ですから、どうして「共稼ぎ」という言葉がいけないのかの理由がはっきりすれば、議論は明確になると思 います。
    大澤会長
    このことで各省からは特に御意見はありますか。
    事務局
    ありません。
    木村委員
    なければいいんじゃないですか。
    大澤会長
    では、「共稼ぎ」で行くというのが我々の結論ですね。
    事務局
    「扶養責任」は、「扶養」がよくないということでございますが。
    大澤会長
    例えば第3号被保険者の場合には、被扶養とか配偶者という言葉が使われているので、「扶養」がよくない とは直ちに言えないとは思うのですが、「経済責任」と言えば‥。
    坂東局長
    例えば、実体はないにしても、自分では扶養していると思っているわけでしょう。だから「扶養」という言葉で そういう思い込みがあるということが浮かび上がるから、かえって「扶養」を使った方がいいのではないかと思いますけど。
    大澤会長
    ほかに御意見はいかがでしょうか。
     例えば「経済責任」とすると、無償労働は経済的な活動であるということもあるので、ちょっと違うかなと思います。
    林委員
    扶養する、されるということが議論になっていると思いますので、「扶養責任」の方が問題を明確にするような 気がします。
    大澤会長
    特に中高年男性御本人の意識としては、妻子を養わなければという意識があって雇用流動化に対応しにくい となるのであれば、ここはとりあえず「扶養責任」のままにします。
    事務局
    あと、コメントをいろいろいただいておりますが、ほぼそのまま直していいようなことだと思います。
     高尾委員から、国際競争力の維持も「中立性確保の意義」に入れてはどうかという御意見をいただいていますが、これ は賃金引き下げにもつながりかねないものでございまして、現時点で国民的コンセンサスが余りないと思いますので、「中 立性確保の意義」とはちょっと言えないのではないかと思いますが、今後の検討課題ではないかと思います。
     次に、中立性の確保の部分について高尾委員から、今回育時支援のことを書き込んだので、ことにより、表現をすっきり させてはどうかということについてはそのとおりかと思います。
     次に、大沢委員から、「いうまでもなく、個人のライフスタイルの選択に対する中立性を確保するためには、企業において も性や雇用形態による差別がないことが前提となっている。企業の採用(雇用)戦略に影響を及ぼさない制度の確立が必 要なのである」というコメントをいただいており、これを一部入れるということも、文章のおさまりが悪くて、また、企業の採用 戦略の点については議論いただいておりませんので今後の議論の課題かと思われますので、今回は見送ってはいかが かなと思います。
     それから、高尾委員から、「男女が従来の社会慣行にとらわれず、共に家庭、地域、社会と職場に参画できる可能性を 広げる」も入れてはどうかというコメントがありますが、家庭、地域社会、職場に参画できる可能性というものを入れてはど うかということですが、これは前の部分の、多様化するニーズに対応できるということに含まれているかと思いますので、 家庭、地域社会、職場への参画を含めて、「多様化する各世帯のニーズへの対応が可能となる」という表現にすればいい のかなと思います。
     次に片稼ぎ世帯と共稼ぎ世帯の所得差については、もっと淡々とデータを挙げるだけの表現にする必要があるのではな いかと思います。
     次の「しかしながら」で始まる辺りの次に、永瀬委員から「少子化の進行についてはすでに述べたとおり、従来の制度・慣 行が若年層に対して結婚と出産の意欲を阻害している結果という側面がある」というコメントをいただいております。これに は何らかの分析結果を再度示してこの場で御議論いただいてということになりますので、これも今後の議論の課題ではな いかと思います。
     同じく「子育てコスト」について「マイナス成長経済の影響とともに女性の高学歴化による間接費用が増大している」とい うコメントをいただいておりますが、これも同様に、今後の課題ではないかと思います。
     次に、「配偶者控除・配偶者特別控除が適用されるケースは多くないと見られる」という表現について、東京では結婚前 に非正規社員に移っているケースが比較的高く、配偶者控除適用ケースは無視できるほどではないのではないかという コメントをいただいています。そこで、表現として、「全体としては、適用されるケースが多くないと見られる」といった表現に してはいかがかと思います。詳細な分析は今後の研究課題ではないかと思います。
     次に大沢委員から「女性のフルタイムとパートのあいだの賃金格差が拡大しているのは、企業が正社員を減らし非正社 員をふやしているからである」というコメントをいただいているのですが、実は、賃金格差についてはその前の部分でかな り書いております。御指摘の点は、女性と男性全体の格差のことではないかと思いますが、それもすでに触れております ので、だぶってしまうので、追加する必要はないかと思います。
     次に、その下に、「長期雇用慣行により中途採用が少ないこと、子育てのために職を離れていたことから相対的な技能 の低下が著しいことなども影響していると考えられる」というコメントは、以前、この調査会のある委員に別の機会に伺った ときにこういう話をされていたことから入れたものですが、これもまた分析して議論いただく必要があると思われることと、 文章のおさまりがどうにも悪いものですから、今回は追加して修文しない方がいいのではないかと思います。
     次に「なお、個人住民税の均等割については、規定に明示的な男女差が存在する」という記述について「ライフスタイル の選択の中立性とは関係がないのではないか。」というコメントもいただいております。年額 3,000円程度ですから確かに 選択には影響しないのですが、それ以前の男女共同参画の問題として、これだけ税制のことを書けば、触れざるを得ない のかなという気がいたしますので、これは残した方がいいのではないかなと思います。
     次に、 103万円を超えると配偶者控除が適用されなくなるという記述について、これはかえって誤解を生んでしまう。要す るに、 103万円を超えると配偶者控除が適用されなくなるから就業調整することを促進してしまう心配もあるので、削除し た方がいいのではないかということです。実際は、配偶者特別控除導入後はなだらかになっており、そういう制度の内容も あわせて書くべきなのですが、それはもう既にほかのところで書いてございますので、あえてだぶって書く必要はないので はないかということで、これは落としてもいいのではないかと思います。
     次に大沢委員から、「 130万円に山ができていないのは、パートの時給が低いのでその前に4分の3の条件を満たしてし まうから」というコメントをいただいてますけれども、これを書くには一定の分析が必要かと思いますが、探したのですけれ ども、既存の調査にはこういうものがなかなか、なかったので書いておりません。参考までにという御意見ですので、今回 は見送らせていただいて今後の課題にしてはどうかと思います。
     その次のところで、税制が就業調整を招いているかということでございます。原文は、「制度が、誤解や認識不足の下 で、雇用システムの様々な問題と相まって、就業調整を生じさせていると捉えることができよう」と整理してございます。 「制度に対する誤解や認識不足のもとで就業調整を生じさせていると捉えることができよう」といういただいたコメントでは 全く意味が変わってしまうので、これは今、皆様に御判断をお願いしたいと思います。
    大澤会長
    今までの事務局の御説明の前の部分についてはよろしいでしょうか。
    林委員
    配偶者特別控除は手取り逆転現象を解決していると言えますけれども、配偶者控除まで含めてそうはならな いので、原文のままでいいのではないかと思います。
    大澤会長
    直してしまいますと、制度改正の展望につながらなくなりますので、何らかの形で制度に問題があるという ニュアンスを大事にするために、原文どおりということで行かせていただければと思います。
    事務局
    木村委員からのコメントで、年金受給開始年齢の引き上げと遺族厚生年金依存期間の増加ということで一応 入れてみたのですけれども、非常にわかりにくいといいますか、書いている本人の私がよく理解していなかったのかもしれ ないのですが。書き出すと、これはかなり書かないとわからないのではないかという感じがいたしますけれども、この点は いかがでしょうか。
    木村委員
    受給期間が短くなると‥‥。
    事務局
    詰めだすと、どの点がどう長くなって、どの点がこうなってとか、いろいろ考える必要があるのです。
    木村委員
    受給期間が短くなると、当然、受給期間に占める遺族年金の期間が長くなりますよね。
    事務局
    その前に、もらっている年金が厚生年金なのか基礎年金なのか、それとも夫の年金なのかとか、いろいろケー スがあるとかケースをわけて書き出すと物すごく長くなってしまうようです。
    木村委員
    雇用者の年金をもらう場合の話ですよね。
    事務局
    はい。
    事務局
    私もひとまず木村委員の意見を事務局で整理をしたのですが、これでもまだおかしいという御指摘を受けてい るわけでございます。
    大澤会長
    「女性が自らの老齢厚生年金を選択しないことを前提とするなら女性は自らの老齢厚生年金受給開始年齢 に到達した後も老齢厚生年金に切りかえることなく継続して遺族年金を受給するはずであり、老齢厚生年金の開始年齢 の引き上げに伴って遺族厚生年金に依存する期間の比率が一層高くなるという事態も生じないのではないか」というコメ ントは、こうなる場合にはああなって、こう書かないとわからないというコメントですよね。
    事務局
    そうです。そうならないケースもあるのではないかとか、そういうところまでカバーしだすとものすごく長くなりま すので。
    大澤会長
    そこをカバーしだすと、それだけで1ページぐらいは占めてしまいそうなところなので、少し骨太の形で行こう とすれば、これらはさらに今後の検討課題にするなりそうですね。
    木村委員
    外すなら外すで、こだわりませんので。
    坂東局長
    注意書きの形ではどうですか。
    大澤会長
    注意書きはほとんど登場しないので、それは避けて、少し簡素化した方向でやらせていただくとすれば、削除 の扱いでよろしいでしょうか。
     それでは、次に続いて事務局に説明をお願いします。
    事務局
    遺族年金に誘引された結婚は、現実問題としてはなかなか考えにくく、根拠が存在するのであればともかく違 和感があるのではないかというコメントをもらっています。確かに、こういう方に聞くと、遺族年金もあるから結婚したとは絶 対におっしゃらずに、愛しているから結婚するとおっしゃると思います。ということで、完全な根拠はないと思います。ただ、 よく聞くことではありますし、厚生年金の場合だと、遺族年金が月に20万円ぐらいになることがありますので、誘引の1つに はなると思います。とはいうものの完全な根拠があるわけではございませんので、表現をもう少しトーンダウンすることが 必要ではないかと思います。
    大澤会長
    何%ぐらいがそうなのかと言われて困りますからね。
    坂東局長
    再婚を妨げる1つの大きな理由にはなっているんですよね。
    事務局
    妨げる方ははっきりとおっしゃいます。
    大澤会長
    これは、年齢差のある結婚を妨げる方ははっきりしているけど、誘引になる方はなかなかね。
    事務局
    なかなか、そうとはおっしゃいません。
    大澤会長
    それでは、ここはトーンダウンの方向で処理したいと思います。
    事務局
    次に、「年金に遭遇する」という表現の仕方がおかしいということを指摘されています。
     その次のところで、経済的状況が厳しいことに十分留意していく必要があるということで、高尾委員からコメントをいただ いております。これは下の段落と絡みますが、「一般的に離婚を促進するような制度は望ましくないという考え方もある が、老後の所得保障をどのように確実にしていくかという点に留意する必要がある」ということで、高尾委員は、これをセッ トで下の部分も削除したらどうかといただいております。
     それから上の方でございますけれども、それに合わせてこう加えたらいいかということですが、一案として、下の段落は 削除する。「留意する必要がある」とか、政策のことはこの前半部分では書かないという整理で、ここからは落として、上の 方は、単に厳しいことを強調するのであれば、「経済的状況は非常に厳しい」とか、強調することは考えられると思います。
    大澤会長
    今の説明でいかがでしょうか。
    高尾委員
    はい。
    事務局
    次に、「ii政策等の方向」の表題の「ライフスタイルの選択」は、報告書の中身を見る限り、就業に関する選択 が中心だから、それを明示してはどうかという主旨かと思われるコメントがあります。一案として、「就業を中心としたライフ スタイルの選択に中立」とか、そういった表現にすることは十分考えられると思います。
     それから次に、「具体的に中立性を確保することに寄与するのが男女共同参画影響調査である」というようなことで、そ の進め方の一例ということを書いてございますけれども、やはりこれは、もうちょっと具体例を挙げてわかりやすく書かなけ ればいけないのではないか。これを読んでもよくわからないというコメントが来ております。会長、いかがでございましょう か。
    大澤会長
    いろいろな御要望、注文があるわけで、一体どういう手順で影響調査をやるのかわからないという御質問が あると同時に、このような形で出しますと、もっと具体例を挙げてくれなければわからないといけないと、今回の報告書は、 影響調査とはこのようなものであるということは、全体を読んで、それが1つのケースとして御理解をいただければいいの ですが、そこからやや抽象化して抽出してきて、手順を立てるというようなことは、少なくともこの場所で述べるのはおさま りが悪いのかなという気もしております。主として私がここのところに関心があると思いますので、会長預かりにさせていた だければと思います。よろしいでしょうか。おさまりが悪いことは悪いんですよね。政策等の方向のところにこう出てくると。 では、預からせていただきます。
    事務局
    次に、これはいろいろな方から、実質的な就業機会の選択肢が良好なのか、多様なのかといろいろな案をいた だいています。議論の出発点は、「良好」はよくないという意見を林委員から御指摘をいただきましたし、国民からの意見 で、良好かどうかを政府などが判断するのは不適切だというもっともな御意見がございました。それで、支障がないよう に、「適切」という表現に変えているのです。1つの案として、ii政策等の方向の2)の表題も、「就業の選択等に中立的な 税制・社会保障制度へ」としてはどうか。次に、国民の就業に関する選択等ということでこういうコメント案でもいいかと思 います。
     それに伴い、3)の表題もいろいろ出ていますが、これも「就業の選択等に中立的な雇用システム」とし、それから、本文の 方で、税制・社会保障制度は国民の就業に関する選択等とすればよいのではないかと思います。
     それから、大沢委員から、「適切」な就業機会とはどういうものかという御質問をいただいているのですけれども、経緯は そういったことでございまして、今後、雇用システムを詰めていく際の課題であるとは思います。
    大沢委員
    別にこだわっているわけではなかったのですが、今までの男女共同参画でもそこの部分が非常にあいまい で、「良好」とか「適切」とか、「適切な賃金体系」とか、そこがやはり日本社会の大きな課題で、もう少し納得できる表現が 必要かなと思ったので、あえて言っただけです。
    事務局
    そうであれば、「就業の選択」とかにすれば問題ないかと思います。
     次に、中間報告の文章から賃金格差が存続したままでは、税制や社会保障制度がどのように改善してもその影響を受 けるということを付け足したのですが、ほかのところでも書いているし、繰り返して書く必要はないのではないかという指摘 があり、これも記述の必要がないのではないかと思います。
     それから、4)の表題について、原案は「子どもを産み育てることにやさしい社会」ですが、その前に「中立性確保に加え」 という文章を加えるということですが、少なくとも、仕事と子育ての両立支援策はこの専門調査会の検討対象ではございま せんが、概念的には中立策の1つにも入っているということもありまして、この修文ではどうかなという感じがいたします。
     この表現についてのコメントとして、高尾委員からは序説でもう書いているからここであえて書かなくてもいいのではない かという御趣旨だと思いますが、逆に、これを書いているときは、序説は余り長くするわけにはいきませんので、この部分 の記述を長くして、序説は要約のようなスタイルになったのでございます。他からはいろいろ追加してはどうかというコメン トがありますので、むしろこちらを長くして書いた方がいいのではないかと思います。
     それから、下の方で「女性の就業拡大が少子化をもたらしている証左は見られない」と言い切っておりますし、序説もそう でございます。これはコメントの中にもありますが、個別ケースで見れば、女性が働いて子どもが減っているということは 個々のケースでもあるし、いろいろな類型で見ればあり得るので、言い切ることは危険なので、例えば「証左は全体として はない」とした方がいいのではないかという御意見でございました。
     次に、これは高尾委員から「子育てというすぐれて社会的な労働を重視してこなかった」というコメントがありました。子育 ての基本はやはり個人であって、社会的な労働ということもあるのかもしれないけれども、やはり個人が最初に来るだろう という指摘を受ける可能性もありますので、例えば「子育てというすぐれて社会的な面もある労働を重視してこなかった」と いう表現にすることも1つの案ではございます。
     次に「妻は無償で専業家事や育児を担う」と高尾委員からの意見どおり修正した方がいいのではないかと思います。
     それから、子どもを育てながらフルタイムで働くことは困難な選択肢となって、子育てが終わった後にようやく再就職する というのが実態であって、その際にはパート職の場合が大多数であるということをもう少し詳しくたらどうかという意見があ り、どう表現を繰り込むかという表現の問題ではないかと思います。
     さらに、永瀬委員から、「社会全体が『やさしくなる』」が、何回も出てくるが「やさしくなる」では弱すぎるとし、男女共同参 画社会では社会が次世代育成を支えていく必要があるため、「支える」にしてはどうかという御意見をいただいておりま す。
     それから、仕事と子育ての両立支援策を閣議決定され、その実施状況の監視が行われたという部分について、高尾委 員から、厚生労働省の「少子化対策プラスワン」も取り上げてはどうかという意見もいただいております。
     それから、子どもを産み育てることにやさしい社会への転換という言葉も入れられると思いますが、「育児労働を正しく評 価し、様々な配慮が行われていくことが必要であろう」というのは、これだけに限定していいのかということでございます。例 えば、育児労働を正しく評価していなくても、単に子どもが好きだからという人もいるかもしれませんし、いろいろな人がある でしょうから、書き出すときりがないのではないかという気がいたします。
     以上、ここのところはコメントが多かったので、まとめて御議論をいただければと思います。
    大澤会長
    御議論をお願いいたします。
     「中立性確保に加え」を加えるかどうかということですけれども、そうしますと、両立支援策は中立化策ではないという意 味になってしまうので、それはちょっと違うかなと思います。
    坂東局長
    ライフスタイルの選択は、就業だけではなくて、結婚ということもあるわけでし、同居とか別居とかいろいろな ライフスタイルがあるから、就業を中心としたということではあるけど、広げておいた方がいいような気もします。
    大澤会長
    ここは「中立性確保とともに」と原案をベースにした法がでいいのではないかと思いますが。
    林委員
    「子育てというすぐれて社会的な労働」は入れてもいいのかなという感じでお話しされたと思いますが、私は、 「社会的な労働」という言葉はこういう場面では使わない方がいいと思います。これは私だけかもしれませんが、「社会的 な労働」と言うと、具体的に経済的な価値を生む労働という考え方で持ってきていますので、子育てというのは、社会的な 責任という意味はあると思うけれども、社会的労働と個人をも含めて言うことはふさわしくないという気がします。社会的労 働の側面ももちろんありますけれども、これはよくないのではないかと思います。
     それから、「フルタイム正職員で働くことは非常に困難な選択肢となっている」ことを詳細に説明するという方向はそれで いいと思いますが、ここのところに、正社員の所定労働時間が長すぎる問題と、残業規制が法的に 360がかなり高すぎる ということが、フルタイムで働くことが非常に困難になっているということの中身になってくるんですね。そういう労働法制 は、選択をするのに女性にとっては中立的に作用していないと見ることもできるのではないかということなので、労働時間 問題をそこに1行でもいいから入れていただけないかということが、1つの新たな意見です。
     それから、一番最後の「育児労働を正しく評価し」というところについては、これはない方がいいと思います。なぜかという 理由はすぐに出てこないのですが、ここに「育児労働」とつけてしまうと、私は保育士として働いている人たちの労働をイ メージしてしまいます。それとここに書かれている意味はまた別の意図であろうと思うので、今後検討するということでいい と思います。
    大沢委員
    残業規制が緩すぎるということですか。
    林委員
    そうです。男女ともに360という上限規制があって、それを附帯決議で 150とは言っているものの、それは今回 の議論の対象にもなっていないということがあります。これが法的な根拠を持っているルールですので、このことが、フル タイムで働くことを相当ためらわせて、どのように条件が悪くてもパートを選ばざるを得ないという影響を持っていると思い ます。
    大澤会長
    労働時間の短縮なりワークシェアリングについては、後ろの方でまた記述がありますよね。
    事務局
    はい。ここは制度的にこうするべきだという文章ではそもそもありません。修文案は、日本的雇用慣行のもので は大変だという問題の指摘をしていきますので、正社員で働こうとしても日本的慣行もありますが、長時間労働でなかな か働けないという趣旨のことは、ここで入れられると思います。要するに、労働時間が長すぎて、それで正社員になれない という趣旨を含めてここに書いておくということですね。
    林委員
    今の日本の制度がどのように中立性を確保するのに影響を与えているかという観点で、そのことだけ1行でも 入れておくことで、次の雇用システムの議論をもっと具体化することができるように思います。
    事務局
    制度・慣行ということでございますね。
    林委員
    そうです。
    大澤会長
    高尾委員は「社会的な労働」、「育児労働」というところですけれども、趣旨はどういうことでしょうか。
    高尾委員
    今までの「社会的な労働」という言葉が持ついろいろな意味とかそういうことについて深く認識はしていませ んけれども、今回、こういう項が設けられたということの意味として、私自身は、子育ては非常に社会的な労働だと感じてい たものですから。それで後ろの方にも続いてきたわけです。経済的な価値を生み出して、稼得がある部分だけを社会的な 労働と呼んではきたと思いますが、余りにもそういうことに偏ってきたがためにという部分もこの国にはあったのではない か。どう考えても、子育てを私は「労働」と言ってしまうのですが、全く私的なものだとは思いにくいんです。
    大澤会長
    御趣旨は、親が自分の子どもを育てるということであっても、それはそのまま社会に対する貢献になってい るということですよね。
    高尾委員
    はい。
    大澤会長
    それを「労働」と呼ぶかどうかについては、いろいろな人の好き嫌いがあって、これは労働ではなくて純粋な 喜びであるとおっしゃりたい方もいて、でも、そのことが同時に社会に対する貢献になっていることを認めない人は、多分い ないと思いますけどね。「労働」だと言われてしまうと、かえって嫌だと、喜びでなければならないという人もいらっしゃるの ではないかと思います。
     つい最近も、保育や教育で社会化するとだめになるということも新聞の投書でありました。余りそういう御意見にばかり配 慮する必要はもちろんないわけですが。
    高尾委員
    子育てをもっとちゃんと評価していただきたいというようなことですね。
    坂東局長
    「活動」とか「貢献」とかいう言葉。
    林委員
    趣旨としてはそういうことだと思うので、趣旨については反対しないんですが、「社会的な労働」という言い方 が、一般的にはなってこなかったと思うんです。
    高尾委員
    今まではそうですよね。私が想像するところによりますと。
    林委員
    「家事労働」があるとすれば、「育児労働」もあるのかなとか思ったりもしますけど。
    高尾委員
    「家事労働」はいいわけですか。
    林委員
    「家事労働」というのもよくないから、「家事作業」と呼び直そうと議論した時期もありましたね。だいぶ前になり ますけど。結局、「社会的」を付けた場合の言い方に私自身が慣れていないというか、学問的には厳密にはどういう使わ れ方をしてきたのか、むしろ会長に教えていただきたいのですけれども。
    大澤会長
    「社会化」と言われるときには、それは、商品化する、あるいは、公的な差になる、それから、共同で処理す るという意味、その3種類が「社会化」と言われてきたことだと思います。この場合には、全くそういう意味での社会化はさ れていなくても、純粋に親が自分の子どもを育てているということでも、それはそのまま社会全体に対する貢献の部分が あるという御趣旨だと思いますので、そこのところが誤解されないような書きぶりを工夫させていただくということでいかが でしょうか。
    高尾委員
    そうですね。
    大澤会長
    「社会的な」と言っても、ちょっと上滑りになってしまうかもしれないので。
    高尾委員
    お任せしますので、よさそうな言葉でまとめていただければありがたいと思います。
    大沢委員
    多分それでいいんですけど、今のお話を伺っていて思ったのは、特定の制度や慣行が仕事中心の制度に なっているから、その結果として、家族とか私生活のプライオリティが低くなっていることが、むしろ、ここの会の議論したい 点ではないでしょうか。ここでは、子育てや家事を全部含めての私生活、そういうプライベートな領域と仕事の領域が、日 本の制度の中では、仕事時間が上にあって、残り時間の余暇の中に育児とか家事労働が入っていたものを、そうではなく て、同等な選択肢の1つとして入れてほしいと。その中の重要な活動として子育てがあって、子育ては非常に私的なものだ けど、同時に、次の世代にとっては社会的な価値としても非常に重要なものであると。ここのところで言いたかったのは、 むしろ、制度・慣行そのものに、子育てを重視しないようなものが含まれていることを、この影響調査では問題にしている のかなと思いました。でも、これは今すぐに議論すべき点ではないかもしれません。
    林委員
    今まで、子育てを重視するかしないかという問題としてあったのではないと思います。子育ては大事なこととし て位置付けられていたと思います。それをどこでやることが大事なのかという点についての考え方が違っていたというだけ であって、子育てはとても大事だということは、今もなお強調され続けていると思います。今、巻き返しの中で起こってきて いることは、子育てを家族で、そして女性が中心になってもっとやらなければいけないでしょうということがもう一度出てきて いることであって、子育てそのものは、働いている人も、働いていなかった人も、とても大事だとずっと思い続けていると私 は思います。
    高尾委員
    今、大沢委員が特に前半でおっしゃった意見ですけれども、日本の社会が公的生活の部分に力点を置いて きた。その中に、家庭も職場もどっちもすごくきつかった。そういうことで成り立ってきて、公的部分が物すごく強くて、プライ ベートな部分が評価されてこなかった。非常に低いものだと見られてきたということが問題であろうし、その結果として、少 子化ということが今出てきていると私は思っています。
     ですから、私が子育てをもっと評価してくれと言うときには、前のようにまた女性に押しつけろというわけではなくて、子育 てをもっと評価していくことで、逆に日本の社会自身がバランスのとれた社会になっていくのではないか。公的な部分と私 的な部分のバランスがとれたものになっていくのではないか。子育てを評価することで、逆に、私たちが願っている、あら ゆる分野で男女が共同して参画していく社会、それが是正されていくのではないかという感じがすごくするんです。
    坂東局長
    そうだといいのですが、子育てを強調することによって、社会へ出て女性たちが活動することに反対するよ うな言い方をされる方もいるんですよね。
    高尾委員
    確かにそうだけれども、実際の流れの中では、私たちが進めているような改革をやっていかないと、この社 会はとてももっていかないし、反対する方々がおっしゃるようなことには絶対に進んでいかないのではないかという気持ち もします。
     つまり、少子化を抑えていくのに何をすればいいかということを考えて、具体的にいろいろなことを数えていきますよね。 数えていった政策のいろいろなものが、この改革を進めるのに役に立つような気がします。保育所問題にしても、男性の 育休という面にしても、女性のパート労働者をなるべく正規の短時間労働者にしていこうとか、そういうこと一つひとつが、 実際問題はこの改革を進めていくのではないかという気がします。
    大沢委員
    ですから、それをそういう方向で議論することはできるかなと思うのは、子育てもそうだし、家族とともに過ご す時間とか、多分そのことをずっとおっしゃっているのだと思いますが、それを強調して、労働と私生活のバランスという形 で議論することもできるのかなと思いますが。
    大澤会長
    御議論いただきましたけれども、「社会的な労働」という言葉使いそのものにはやや誤解を生むという表面的 な部分もあるので、そこは御趣旨が反映するような文章を考えさせていただくということで、御了解を願います。
     それでは、続いてお願いします。
    事務局
    「2、税制・社会保障制度等改革の具体的方向」のうち「税制」からの説明でございます。まず、帰属所得とは 何かという説明を適切に修文してはどうかというコメントがありますので、あとは表現をうまく工夫させてもらえればと思い ます。
     次に、基礎控除や税額控除について、簡素な税制という原則を無視さえすれば、かなり自由な制度設計が可能です。た だ、制度を直しても問題の解決にはならない場合があるので、むしろその趣旨を強調していけばいいのではないかというこ とです。修正した案は「配慮の仕方として基礎控除等を拡大すべきなど様々な意見があって、具体的な制度設計として は、所得控除の他、税額控除といった方法も考えられ、いずれにしても、その制度設計にあたっては結果として新たな就 業調整の問題が生じることがないようにする必要がある」とこの方が適切ではないかということでございます。
     基礎控除を上げるとかよく言われる方がいらっしゃるのですけれども、場合によっては、かえって問題が解決しない場合 もございますので、さきほどのような修文案でよいのではないかということでございます。
    木村委員
    私もその方がいいと思います。
    事務局
    自らの収入への課税について、原案は「広く・薄く」といった税制全般の中で議論されるべきであろうとしている のですが、今後これをどのように検討するかとか、どういう切り口で攻めるかとか、余り決まってはいないので、単に男女 共同参画だけではなくて、若年労働者とかいろいろ絡むという指摘にとどめておいた方が、より適切だろうということでござ います。
     それから、個人住民税の均等割の規定の男女差でございますけれども、原案では、その規定の仕方あるいは制度のあ り方について検討が必要であるとしていましたが、この「規定の仕方」を削除という意見でございます。ちなみに、これはい ろいろな対応の仕方があるのです。幾つか例を挙げますと、「規定の仕方」をするというコメントがあり、コメントどおり削除 してしまうと、増税と受け取られかねないかもしれない表現になります。それから、原案どおりですと、減税か増税には ニュートラルに受け取られると思います。男女共同参画の観点からはこれで十分でございます。もう1つは、「ライフスタイ ル選択の中立性とは関係がないのではないか」というコメントもありますので、この表現部分は丸ごと落としてしまうという 案も考えられます。
     ここについては、今御判断いただければと思います。
    大澤会長
    いかがでしょうか。
     明文上も男女別扱いがあるというのは、影響調査以前の問題ですけれども、そういうものが依然として残されているとい うことは指摘しておいた方がいいのではないかというのが私の感触です。でも、それではどうしても嫌だという意見があれ ば、全文削除になりますが。コメントどおりに修正すると増税になるととられかねないですね。
    事務局
    そう取られかねないと思います。
    大澤会長
    それは余りうれしくないですね。
    坂東局長
    厳密な中立ではないにしても、やはりこうした非合理的なことについては指摘しておいた方がよろしいのでは ないかと思います。それこそ遺族年金のときの明示的な格差と同じで。
    大澤会長
    それでは、原案のままという方向で一応了解いただいたものとして処理いたします。
    事務局
    どうしても調整がつかなければ、場合によっては、前の方でもこの問題に触れておりますので、なくすということ もあるということでよろしゅうございますか。
    大澤会長
    削除される可能性もありますが、一応原案どおりということで行きますが、さらに調整いたします。
    事務局
    次からは年金のところでございます。これは議論いただいた方がいいかなというものを紹介して、年金部分のコ メントは、時間があれば残ったところで紹介する形にさせていただきたいと思います。
     次に、他からの中間報告で、「数カ月単位の有期雇用が繰り返され」云々とそのまま書いていたのですが、これは修正し てはどうかという意見があります。これは中間報告と記述を変えていませんので、その後、特段の事情の変更か何かが あったのか確認して、もしあるなら改めますけれども、そうでなければこのままでいいのではないかと思います。
     次にエの「所得分割」の部分でございます。ここで、「以下にあげた例は、あくまでも議論の材料を提供するための一例 に過ぎず、導入するか否かについて慎重な検討が」などと、いろいろな制度設計を考えるということを付言しておくというこ とで、消極的な感じがするので、高尾委員から、これは削ったらどうかという御指摘を受けました。先ほど税制のところで 申し上げましたが、実際に制度設計等が始まりますといろいろなパターンがありまして、まずこういうことを書いておかない と、こういう議論が非常にしにくいということがありまして、これは御理解いただければと思います。
     次に、「一号的な働き方」ということで、自宅でのピアノ教師、英語教師、受験生の家庭教師、民間療法のセラピストなど の実態は多様であるといったことにも触れてはどうかということでございました。まさにここではそういうことに触れておりま す。ただ、ここで書いておりますのは、そういった人を含めてしまうと、例えば0~ 130万円、あるいは、今後の議論によっ ては0~65万円かもしれませんけれども、その方の分の事業主負担を一体だれがやるのかという大問題がございます。 原文で御趣旨は多分生きていると思います。
     その大問題をどうするかということで、あえて言えば、厚生年金の適用を拡大しますと、 130万円が、例えば65万円とか 60万円とか、そうなりますので、こういう1号的な働き方をしている人も減ることにはなります。
     所得分割の導入は「離婚を促進するか」という表題で原案をつくっておりましたけれども、中身を見ると、離婚時の分割と の関係なので、そうした方がいいのではないかというコメントをいただいております。
     次に、所得分割は離婚時の年金分割に比べて、夫婦が密接に協力して老後に備え有償・無償労働を担い合うようにな る効果もあるのではないかと考えられることの根拠を示されたいというコメントでございますが、全くそのとおりで確かに根 拠はありません。表現を変えて、例えば所得分割は離婚を前提としたものではなくて、むしろ、婚姻を継続することを念頭 に置いたものであるとかといった表現に変えなければいけないと思います。
     それから、所得分割のデメリットとして障害厚生年金が減ってしまうケースがあるので、追加して記述するべき点と思わ れます。
     また、離婚時の年金分割については、配偶者による暴力等が原因で婚姻の継続が困難となっている場合や、一定の婚 姻年数を経過し子どもへの影響が少なくなった上でなお離婚する場合などからまず検討を開始すべきだろうという原案で すが、この例示のところにコメントをいただいておりまして、まずそれらの基準を明確に示すことは難しいのではないかとい うコメント。永瀬委員からは、子どもの育児負担がなくなったものについては自身で年金権を積み立てるという道をもっと 考えるべき。逆に育児に従事していた時期について社会的に年金権を賦与するかあるいは配偶者から確実に年金権が 分割される方法を考えるべきであるというコメントをいただいておりますので、少なくともこの例示は落とした方がいいと思 います。
     次に、スウェーデン型のところで、永瀬委員から、「育児期の原則就業を可能とする制度が社会的に整えられている」と いうことを追加すべきではないか。要するに、3号的な制度がなくて済むのはこのためなのだという御指摘をいただいたの ですが、これは年金制度の内容とは言えないと思います。ですが、「スウェーデン型」と書いてしまうと、スウェーデンの制 度そのものを書いていると誤解されることもありますので、具体的には、「以下のような内容を想定する」の後に、なお書き でスウェーデンの年金制度そのものを書いているわけではないし、スウェーデンのそのほかの環境についても書いている のではないことを断らないと、誤解されると思います。
     年金については以上でございます。
    大澤会長
    各方面からいろいろと詳細なコメントをいただいておりまして、特に厚生労働省からは、労働関係について も、年金についても、物すごくきちんと見ていただいて、大変ありがたいことだと思っております。
     何か御意見がございますか。
    木村委員
    「結婚」のところで、生涯未婚率は一番新しいデータが出ているから、それに変える方がいいと思います。男性がもう13%になっています。
    事務局
    わかりました。
    木村委員
    あと、オ・全体的評価の中で「既にみたアンケートによれば」配偶者控除や配偶者特別控除を「意識している 事実はある」という部分ですが、事実が大きいので、「事実が」ではないですか。これは、事実はあるが、どうしたものだろ うかというニュアンスが大きいですので。
     あとは、「<1>公的年金 ア・公的年金と中立性、個人単位化」の中で「所得代替率の均等化」とありますが、私はこれがよ くわからなかったのですけれども、確定給付型の制度のもとでということでしょうか。所得代替率というのは、全員の賃金 が同じという意味でしょうか。
     所得代替率が均等化すると、個人単位化と捉える考え方があるということがよくわからないんですが、確定給付型を考 えているんですか。
    事務局
    確定給付で所得比例部分だけになってしまえば、とりあえずは中身はいいだろうと。
    木村委員
    確定給付型で所得比例部分という意味ですか。
    事務局
    確定給付かどうかにかかわらず、基礎年金みたいなものをなくして、所得比例部分だけにしてしまえば、それぞ れの世帯累計について所得代替率が均等化するということです。
    大澤会長
    そこのところがよくわからなくて。
     現行制度について、所得代替率を挙げた資料が、途中では出ていたのですが、この図表編には入っていませんでした か。
    事務局
    入っておりません。
    木村委員
    これはあくまでも今の厚生年金を枠組みにして考えていて、それを所得比例部分のみとすると。
    事務局
    そうですね。ほかのところでやった試算では、日本とかイギリスとかは、所得代替率は世帯累計で結構ばらつ きがあります。
    大澤会長
    アメリカもそうです。スウェーデンとドイツは全く同じです。
    事務局
    そうですね。
    木村委員
    賃金に対しての年金という形で、払った保険料に対するものじゃなくて。
    事務局
    そうです。
    木村委員
    でも、ドイツは遺族年金もあるんですか。これは老齢年金に限って見ていますので、所得代替率が43%か 38%で全部の累計が同じなんですよね。スウェーデンとドイツは、男単身、女単身、片稼ぎ、共働き、すべて所得代替率 は同じですね。
     それで、「再婚しないことへの制度的誘引」のところで、「結婚・再婚への制度的誘引」の方は消されるんでしたか。
    事務局
    「結婚・再婚への制度的誘引」は、余り根拠がないと言われればそのとおりですので、前の方では表現を弱 め、後ろの方も、上の再婚しない誘引とは明らかに違いますので、書くにしてももう少しトーンダウンしなければいけないか なと思います。
    木村委員
    私は正直に言うと、この「結婚・再婚への制度的誘引」ということが、よく読んだけどわかりにくかったというこ とと、あと1つは、この上下をひっくるめて、遺族年金が、結婚や再婚に対して中立的ではない影響を及ぼすということでい いのではないですか。まとめることはできないでしょうか。
     でも、これは絶対にだめとかいうポイントではないから、皆さんがいい方でいいですけど。
    大澤会長
    ここは、簡素化をしつつ表現を見直すということにしましょう。
    事務局
    はい。
    坂東局長
    ただ、具体的に書いた方が、こんな非合理な話もあるのかと納得できることもある。60才の公務員が若い女性と結婚して突然亡くなると、若年遺族年金が延々と支払われるというケースは少ないでしょうけれども、これは非合理な のではというものがあればわかりやすいと思われる。
    木村委員
    では、結婚期間に応じて遺族年金の支給額を決めるべきだという主張まで入るわけですね。
    事務局
    そうです。
    木村委員
    そうしたら、(再婚しないことへの制度的誘引)のうち、「仮に」からの3行ぐらいが長くてわかりにくいんでしょ うね。
    事務局
    はい。特に、「遺族年金に誘引された結婚・再婚」と言われる根拠は何かと言われると、正確なものはありませ んので、この辺が特に問題かと思います。
    林委員
    厚生年金の適用拡大に関して「数カ月単位の有期契約が繰り返され、結局厚生年金に加入できないケースが ある」という原案に対して、繰り返したら適用されることになっているから、どんな場合を想定して書いているのか不明確だ というコメントがありますね。だけど、これは、繰り返される場合で適用されるケースは極めて少ないですよね。だからやは り、有期契約があるがゆえに社会保障制度から外されている部分は決定的に有期契約の問題ですから、一部できないこ ともないというものを正論として入れることはよくないと思いますので、原文のままでお願いしたいと思います。
    事務局
    わかりました。
    大澤会長
    建前や規則はどうであれ、実態としてはこうなっているということがこの「結局」という言葉に込められている ので、原案どおりでいいのではないかと思います。
    事務局
    中間報告で出していますので、変えるには、国民向けのそれなりの説明も必要になると思います。
    坂東局長
    本日の国会では、20時間未満の、大学の非常勤講師の方たちが結局は適用にならないのではないかと か、川橋幸子議員がいろいろ質問していらっしゃいました。
    大沢委員
    2カ月以内の期間を定めて雇用される人でければ、厚生年金の加入は義務付けられていなかったと思いま す。だから、派遣労働者で、2カ月未満の契約を繰り返して厚生年金に入らない労働者が増えたと聞いたことがあります。 ですから、実態としてはやはり抜け道があるということで、法律があったとしても抜け道もあるのだろうと思います。
    大澤会長
    これは「数カ月単位」と言っていますから‥‥。
    大沢委員
    別に、これを直せという意味ではなくて、法律があるからいいよという問題ではないと思いましたので。
    大澤会長
    ありがとうございました。
     よろしければ、先に進んでいただいて、年金のところについては、また後から思いついたことに戻ってくるというやり方で、 先に進みたいと思います。
    事務局
    次は、健康保険制度に対する指摘でございます。健康保険については、「一人一保険証」の問題を除けば、実 質的な議論はこの場では余りしていただかなかったと思います。健康保険について書くのであれば、個人単位化をどう捉 えるかという議論をしてから書く必要があると思いますけれども、コメントも、そういった議論すべき点をいろいろ挙げてきて おります。これはまず1つめに、世帯単位をいかに個人単位化するかという問題です。これについては、所得がない子ども や高齢者をどう整理するか。それから、子ども部分も含む被扶養者分の負担を求めることは、少子化対策に逆行するの ではないかということ。それから国民保険と被用者保険の統合は、所得形態の違いなどから非常に困難なのでまだ政府 の課題として掲げる状態にないというようなことがありまして、こういった点を含めて、もう一度議論してから書くべきではな いかと私も思います。
     現在の案ですけれども、一人一保険証のことは、この場でも厚生労働省から来ていただいてヒアリングしたりしてやりま したが、個人単位化、被扶養者認定の基準見直し、制度の統合の実質的な中身は中間報告とほとんど変わっておりませ ん。ということで、例えば、中間報告の文章に一人一保険証のことを追加して書く方がいいのではないかと思います。
     一人一保険証も、個人単位化という用語は年金のようにいろいろ議論をしてから使った方がいいのではないかということ で、ここでは使わない方がよいかもしれません。
     以上が健康保険でございます。
     それから介護保険でございますが、永瀬委員からは「介護保険給付は家族ケア資源と無関係に本人の健康状態に応じ て支給される。給付が十分でなければ、このことは、就業家族の無業化を促進する」というコメントをいただいています。こ れをとり入れて書くとすると、介護保険の制度がどうなっていて、どういう影響が出ているかという分析をやらなければいけ ないということでございまして、これも次の課題かなという感じがいたします。
     ついでに、「企業の家族手当等」で、企業の家族手当は雇用システムだから、雇用システムの項に移した方がいいという 意見ですが、一言「雇用システムの問題であるが」という限定句を付けておけば、移さなくてもいいと思います。
     高山委員に説明いただいた調査会で御議論していただきましたように、企業の家族手当等は、できるだけ企業側がメ ニューを提供して、労働者側はその中から選択するスタイルをとるべきだということを今回とり入れています。それから、そ の際に、税制や社会保険料が影響しないようにするのですが、完全に中立にはできませんので「できる限り」を入れた方 が適切ではという意見はとり入れております。
     それから、企業側や労働者側にとっての具体例を余り限定的に提示せず、あくまでも税制や社会保障の算定方法がで きる限り中立的になるように配慮していく、という記述の方が適切なのではないか、ということでございます。
    大澤会長
    いかがでしょうか。
    林委員
    「一人一保険証」について、一保険証にすると、例えば親とは離れて学校へ行っているとか、そういうときに一 人一保険証が必要だとか、どこかで読んだ気がします。
    事務局
    報告書のア一人一保険証の辺りに書いてあります。
    林委員
    今の例で言うならば、それは昔からできるんだと思っているんです。
    事務局
    制度上はできます。
    林委員
    私自身は、15~16歳からずっと、私自身の保険証を親はちゃんと分離して、いつどこに住んでも行けるように していましたのでね。これはできるなと思うんですけど、そういうこと以外にも、例外だけではなくて基本的に全部それぞれ が持つということですよね。
    木村委員
    医療保険は何が一番問題でしょうか。中立性の観点から問題はあるわけですよね、年金と一緒に見直しす るということですね。
    事務局
    そうです。それは間違いないです。
    木村委員
    コメントはどういうものがありましたか。
    事務局
    私としては、年金では個人単位化とかをきちんと整理してやりましたので、医療保険についても書くのであれ ば、もう一度整理し直してから書いた方がいいと思います。
    大澤会長
    ヒアリングは1度しましたが、突っ込んだ議論はほとんどしていない。年金については、従来、個人単位化と いうことがかなり議論されてきましたけれども、「個人単位化」という言葉が何を意味するかは論者によってかなりの違い があり、遺族年金があること自体が個人単位に反するというものから、所得分割をすればいいなど、今回整理していただ いたのですけれども、健康保険については、さらに、子どもや高齢者の問題もあって、個人単位化はもう少し議論しないと 書くのは無理ではないかというご指摘があり、それは大変ごもっともなので、ここでは一般的な問題の指摘にとどめ、今後 の課題にしていくというまとめ方かなと思います。
    木村委員
    個人の健康保険は、子どもでも高齢者でも、個人の負担は世帯に責任を取らせるわけですよね。ここで書 かないという理由は、余り議論をしなかったということが最大の理由ですか。
    大澤会長
    そうです。
    木村委員
    では、どのくらいの表現になりますか。
    事務局
    表現のベースになるのは、中間報告では「サラリーマン世帯の健康保険制度の被扶養者認定等についても、 厚生年金と同様の問題があることから整合的な見直しが行われるべきである」と。これは要するに、年金の適用が拡大さ れるのであれば、こっちも整合的に考えなければいけない。当調査会でも必要に応じて検討したいと。こういう趣旨のこと を中間報告では書いていたのですけれども、今回書いてあることも、「一人一保険証」の部分を除けば、実質的にはこれと 同じです。
    木村委員
    ということは、 130万円を引き下げというのも年金に連動するということですか。
    事務局
    はい。それは少なくとも今の段階で指摘しなければいけないと思います。ただ、個人単位化を医療保険について どう進めるかは、もう少し議論してみてからの方がいいと思います。年金とはまた違った問題があると思います。
    坂東局長
    病気の場合は、なりたくてなっているわけではないという、共済の気持ちが非常に強く働くからではないかと 思いますが。
    大澤会長
    よろしいようでしたら、「3・雇用システムの将来的方向」のところをお願いします。
    事務局
    大沢委員から「ワークシェアリングの成功のためには、企業においてどのような雇用形態の労働者を採用して も、制度が中立的であることが重要」というコメントがありますが、これも今後の課題、又は、個人的な意見としてもいいと いうことではありました。
     次に、高尾委員から、スウェーデンは複数で働いているので失業率が高くなっても、それほど深刻な状況にならないとい うコメントをいただいております。
     永瀬委員からは、「女性」の後に、「『また男女ともケア活動をになう者』もその選択肢をとれるよう環境を整える必要が ある」ということで、ケア活動のこともいただいております。
     ここのところは、「日本的雇用慣行の変化」のところで書いているのですけれども、ここにいいきなり「ケア」と書くとおかし いかな、おさまりが悪いということもございますし、今後の課題かなと思います。
     その他、itを活用したテレワークの導入も就業形態の多様化として入れてはどうかということはもっともなものでございま す。
     それから、当初「当専門調査会の今後の検討課題」ということを書いておりましたが、余り煮詰まっていないこともどんど ん入っておりますので、今回は削除しなければいけないのではないかと思います。
     そういった方向で御了解をいただきまして、残った部分の表現を工夫させていただければと思います。
     それから、この専門調査会の報告自体で、今後どうするかというようなことを、決定したような形をとることはおかしいの で、希望としてこんなことをやりたいという程度ならいいでしょうが、もうやることは決定しているということは、手続き的には おかしなところがございます。
     「おわりに」というところでは、今後もいろいろやりたいということが書いてあります。ここも、それに伴って若干直さなけれ ばいけなくなると思います。
     以上でございます。
    大澤会長
    当調査会の今後の検討課題を項目として記述しないとすれば、その前後ももう少し修文しないといけないと いうことです。
    林委員
    余り理解できないで言っているのかもしれませんが、その理由として、これは参画会議に報告するものである からという理由がありましたね。
    事務局
    公表するものであるからということでございます。
    林委員
    でも、参画会議に報告し、公表するものだけれども、ここまで細かくはしないとしても、影響調査会が、雇用シス テムについて、これらの点については、ライフスタイルの選択に対する中立の観点から、影響を及ぼすものとして今後検 討する必要があるということは、やはり書いておいた方がいいという気がします。
    事務局
    要約みたいな形で、「働き方」とか「生き方」とか、そんなことも含めていろいろ考えなければいけないと。
    林委員
    せめて<1>「働きの内容」とか<2>「処遇」の内容とか、若干中身を入れた程度のことは残していいのではないかと いう気がします。
    大澤会長
    会議に報告するということもあるのですけれども、もう少し自分たちで詰めてからの方がいいのかと。
     今後は、雇用システムについてもより本格的な検討をする予定にしておりますから、ここに頭出ししなければ今後できな いということでもないと思いますので。今までの議論でもう既に何度も、雇用システムについてはこれから本格的に検討し ていくということは確認されております。「働きに見合った処遇」とは言っても、働きの内容・処遇についても様々に検討す べき課題があるという程度のことしか書けなくて、中身がないので、今後、検討課題になることが今までの議論で確認され ていればよろしいとお考えになっていただければ、そこはなるべくすっきり削る方向でいかがかという提案でございます。
    木村委員
    高尾委員なり大澤会長が御専門の立場から御覧になって、絶対にここを残しておきたいというものがなけれ ばいいかと思いますが。
     私はむしろ、その項目の上の「そのための環境整備が必要である。」で切らずに「と考えられる。」という文末はおかしい と思いました。
    事務局
    それも直すことは当然考えられると思います。報告の最後が「考えられる」ではおかしいというのはごもっとも だと思います。
    林委員
    ということは、5)は「今後の検討課題」という項目は完全になくすということですね。
    事務局
    少し残る部分として、つながりとかいろいろあると思いますが。
    林委員
    わかりました。
     そして、そのことは、この調査会で継続してやれる内容であるという理解をしていいんですね。
    事務局
    はい。「おわりに」がありますけれども、ここは異論がないようですので、やること自体は異論がありませんの で。
    大沢委員
    この辺は、雇用システムについても見直すということですか。
     それとも、ここは税制や社会保障制度が中心ということですか。
    大澤会長
    いいえ。今後、雇用システムについて、就業に関する選択への中立性の観点から検討を進めていくというこ とは、何回もこの場で確認していますし。
    大沢委員
    どうしても、同じコインの表と裏の関係にあるにもかかわらず、税制、社会保障制度が今回は中心になって 記述されていて、コインの逆を見ると、非常に問題が多い雇用システムがなかなか変化しない状況があって、多分、林委 員はもっとよく御存じだと思いますが、そういう中で個人単位化ということが、税制や社会保証制度では負担はイコール で、能力発揮の機会はイコールかというと、全く違う。もっと安い賃金で働かされるような状況になっている状況を前にし て、「個人単位化」というのは、これが正しいと言いにくい。
     こういう方向が正しいということを前提としてですけれども、私は、これが悪いというわけではないけれども、現実問題とし て、雇用制度に起きているいろいろな変化が、就業選択や自分のライフスタイルに対して中立な方向に動いていないという ことは、やはり非常に危惧されます。
     ついでに言ってしまうと、最近、ヨーロッパなどで、パートや派遣労働が増えていることに対して、それを非常に深刻に考 えて、労働者保護ということを考えていますね。家族ということを前提に考えているわけだけれども、日本ではそういう家族 の視点とか、そういう視点は出てこない。どんどん労働者の保護が外されている中で、どういう保障、安心する暮らしを自 分たちが求めていくのかというところも抜け落ちているという面では、この細かい記述を削除することには問題がないと思 いますけど、全体としての感想を言うと、やはり雇用システムの不平等性ということは国民的議論としてあるべきだと思い ます。そこに選択肢があれば、子育てをすることもできるし、男性もプライベートでも平等の役割を果たしていくことが可能 になっていくと思うんですけど、それが逆の方向に行っていませんか。ここにあるように、男性の労働時間がどんどん長く なって、女性の賃金がどんどん安くなっているような傾向が、平均的に見るとします。そういう中で、個人化ということを考 えるというのは、個人化だけが問題ではないと感じました。以上です。高尾委員、そう思いませんか。
    高尾委員
    そうですね、そういう声もよくわかるんだけど、実際に本当に働きたいし、働こうと思っても、ここどうしてくれ るの?というような状況がある。給与はどんどん下がっていっているとかね。
     大沢委員は今、欧州では労働争議をすごくやっていますよね。あれは、家族の視点でかなり言われているということをい まおっしゃったのですか。
    大沢委員
    パート就労を促進するということが、女性に配慮した政策ではなくて、男女が平等に開示や育児、いろいろな 活動を負担にする、負担を平等にするために、パート就労をどんどん増やしましょうと。そういう視点をeuなどはかなり入 れていますよね。そういう意味で、それに対して厚生労働省が考えていきるパート労働は、同じ仕事をしても、正社員の働 き方と非正社員の働き方とは違う。最初からそこで賃金に差があっても仕方がないと言っているようなものだし、しかも、ど うして賃金に差があるかというと、拘束的な働き方をしているというのは、その前提にあるのは、家族を犠牲にした働き方 が正社員だということを規制の事実として認めているということです。そこをまず変えていかなければ。
     そうじゃなくて、仕事をしてもらう賃金というのは、正当な労働に対する対価であると私は考えて、それでコメントの最後 で、同一労働、同一賃金の原則が日本ではなかなか適用できない環境にあるということがどこかに書いてあったと思いま す。じゃ、それに変わる原則は何なのかなと、ちょっと思っただけです。だから、ワークシェアリングの議論でも、子どもを育 てるということだけではなくて、家事労働とかも含めて、平等に分担するために就業形態を変えていき、そして、平等に負 担していく。いろいろなことを負担するだけではなくて、そのことに対する対価も、男性と女性が2人でもらうと、生活者に とってもっと生きやすい社会になるためにこういう改革があるんだという視点が、もう一歩ないように思います。
     そうすると、育児の問題とかそういう問題が、もっとここの会議の報告書の中で入ってきやすいのではないかと思いまし た。
    木村委員
    問題意識としては、みんなあるんじゃないですか。高尾委員がさっきおっしゃったこともすごくよくわかる。
    高尾委員
    どう入れていくかですね。
    大沢委員
    だから、それをどう議論していくかということだと思うんです。
    木村委員
    この専門調査会のミッションとしては、中立性のことを見てくださいということで、それとどう兼ね合わせていく かですね。
    大沢委員
    そうです。その兼ね合わせで、これに対する批判というよりも、方向性として、やはりその視点があって、こう いう報告書が出て、働き方の見直しが出ると、もう少し生活者にとってやさしい社会、生活しやすい社会がつくられるから、 ぜひその視点を入れていただきたい。
     どうしても、ちょっと批判的に聞こえてしまったかもしれないけれども、そういう点での雇用制度の見直しが、この次のここ の報告書の中に出てくると、個人単位化の方向性が生きてくるのではないかと思いました。
    林委員
    今、大沢委員が言われたようなことが、ぜひ、次の段階での議論で深められたらいいと思います。やはりまだ、 同一労働・同一賃金だけではなく、同一対価労働・同一賃金という問題を、今、職務評価という考え方が十分ではない日 本の中で、どうやってそこを折り合いをつけながら見いだしていくかということが大きな課題になっていると思います。その ことでもっと、それぞれ男性も女性も、従来の生き方に縛られない選択がかなり可能になってくるのではないか。そういう 意味で、課題としてあるという認識をここで持てば、次は発展するかなと期待しています。
    大沢委員
    ええ、そう思いました。
    高尾委員
    全く賛成です。今後、雇用システムの部分の話のところも、そういう視点でどんどん話をしていけると、私もつ いていけると。
    坂東局長
    確かに、社会保障制度とか税制ですと、国が直接責任を持って設計できるのですけれども、雇用の場合は、 企業によって対応が違いますので。既に、日本的経営なんて古いと言って、本当にアメリカ型でやっているところもあれ ば、ヨーロッパ型の規制が必要だという意見もありますし、そこらについては、社会保障や税以上に難しいのではないかと 思います。
    林委員
    本日は「国際競争力」という言葉を次送りにしたけど、それは国際競争力だけではなくて、国際労働基準の問 題も含めて、もっとグローバル化を視野に入れた、一方的な市場の原理だけのグローバル化ではない観点での議論も今 後必要になってくると思います。
    大澤会長
    今後についての展望がだいぶ示されました。図表編の方で何かご意見がありますか。現在、既に気づかれ ている問題点があれば承りますが。
    木村委員
    共稼ぎと片稼ぎ世帯のことで、片稼ぎ世帯の妻が年収を抑制しているという表は削除するとかおっしゃって いませんでしたか。
    事務局
    削除ではありません。図表で言うと、図表3-3でございます。子育てをやっていらっしゃるような年代で、片稼 ぎと共働き世帯を、これは世帯主夫婦と未婚の子どものみの勤労者世帯ということで、祖父母が入っていないタイプの家 庭について調べてみますと、例えば40~44歳を見ますと、夫の収入は、共働き世帯と片稼ぎ世帯で7~8万円ぐらい違 う。35~39歳で6万円ぐらい。30~34歳で3~4万円ぐらい。これが事実としてあります。これは別に書いてはいけないと いうことではございません。それから、8万円×12は96万円でございます。 103万円未満でございます。これも事実です から、書いてはいけないということはありません。ただ、原文の書き方が、かなり無理をして書いているといいますか、淡々 たる事実の記述になっていないので、その記述の仕方は変えなければいけないだろうということでございます。
    木村委員
    この表に無理があるとかいう話ではないんですね。
    事務局
    この表には全く問題ございません。
     具体的に申しますと、「しかし、パートタイムで働く場合に限れば、年収を 100万円以下(月収で約8万円以下)に保ちな がら働いて、ようやく片稼ぎ世帯の夫と妻の合計の差の10%から20%を埋めている」というところは、確かに、書き過ぎだ という気がいたします。もう少し淡々とデータに基づく事実の記述にしなければいけないという御指摘でございます。
    木村委員
    このデータは生かすんですね。
    事務局
    はい。それは削除とかいうことは何もございません。
    大澤会長
    図表26-4が男女別になっていなくて、全部込み込みになっているのですが、夫婦世帯、女性単身、男性単 身と分けたデータが取れるはずなので、そこは分けた方がいいと思います。
     というのは、本報告文中で高齢無職単身世帯との所得分布、これは平均ですが、分布と比べると、女性で無職単身でも それなりの収入があるというイメージをわりと与えるのですが、分布を見ると、月収8万円程度のところに集まっている。そ ういうイメージの問題があります。他に全体を通じてございませんか。
    大沢委員
    新しい事業を付け加えるというわけではなくて、こういう所得分布は高齢者のみですか。国民生活基礎調査 の中には、普通の、例えば女性の年収の分布などがありますか。むしろ、世帯別に分けた所得分布はありますか。例えば 単身とか夫婦とか。
    木村委員
    さっき、あるとおっしゃっていましたから。
    大沢委員
    そうですか。じゃ、後で見せてください。
    大澤会長
    ほかによろしいでしょうか。預かりになっている部分もありますし、表現として工夫させていただく部分もありま すが、中身については御了解いただけたということで閉めてまいりたいと思います。表現を含めて、預かりにさせていただ いた部分については、よろしく御了解をお願いいたします。
     それでは、私が事務局と確認しながら、さらに各省と調整を進め、その結果によっては、こちらは原案どおりと考えていて も、全文削除となる部分も出てくるということは、途中で確認したとおりでございます。また必要があれば、事務局から各委 員に個別に連絡をとらせていただく場合もあるかもしれませんので、よろしくお願いしたいと思います。
     最終的な表現の調整結果を皆様にお送りいたしますので、その段階では、表現そのものが煮詰まってきておりますの で、コメントを頂戴する場合でも、容易にコンセンサスが得やすいものに限ってコメントをいただきたいと思っております。
     改めて専門調査会を開くということはしないで、適切な時点で公表したいと思っておりますが、それでよろしいでしょうか。
     (一同了解)
    大澤会長
    どうもありがとうございました。
     事務局からの連絡事項をお願いいたします。
    事務局
    議事要旨をお配りしているかと思いますけれども、修正をいただいて、なるべく早くいただければと思います。
    大澤会長
    それでは、これで影響調査専門調査会の第18回会合を終わります。

(以上)