第17回男女共同参画会議影響調査専門調査会

  • 日時: 平成14年10月23日(水) 13:30~16:00
  • 場所: 内閣府3階特別会議室
  1. 出席者
    • 大澤 会長
      木村 委員
      小島 委員
      高尾 委員
      橘木 委員
      林  委員
      福原 委員
  2. 議事
    • (1) 取りまとめに向けた議論
    • (2) その他
  3. 議事内容
    大澤会長
    時間もまいりましたので、ただいまから男女共同参画会議の影響調査専門調査会第17回会合を開催いたし ます。
     では、お手元に議事次第がございます。これに従って本日の審議を進めてまいります。
     本日は、米田副大臣、阿南大臣政務官がおみえになりますので、後ほど一言ごあいさつをいただくことになろうかと思い ます。
     今日は前回に引き続いて取りまとめに向けた論議を行います。議論を行うに当たって、事務局から主に公的年金や税 制、医療保険を中心に考え方の整理などを説明していただき、議論を行いたいと思います。
     報告書は12月に取りまとめますので、なるべく今回御意見をいただけますよう、よろしくお願いいたします。
     初めに、事務局からの説明をお願いいたします。
    事務局
    それでは議論いただく前に、考え方の整理をさせていただきます。まず公的年金でございますけれども、前回 からの継続で、公的年金改革のケーススタディをしてみたいと思います。実現できるかどうかは別としまして、制度の大改 革提案が幾つかありますので、中立性の観点から評価してみるということでございます。
     まず、厚生年金の適用拡大を前提として、その上で中立性の評価をしてみます。まず、第一に就業調整等につながって いるか否かどうかを検討する。次に、高齢配偶者への遺族年金がどうなるか、3番目に所得代替率、これは基本的に世 帯ごとで見た年金額、あるいは平均賃金額で見た場合の変化。この各項目について共働きと片働き、それから婚姻と単身 といった選択肢の間の中立性について検討してみることにします。
     検討するケースの例は、前回大澤会長より御指摘のあった3ケースについて、その中身を紹介した後に中立性を評価し てみます。1番目は「スウェーデン」型でございまして、所得比例のみで基礎年金なし。ただし、最低保障年金で低所得者 に配慮。それから選択制で夫婦間の年金分割を認める。それから高齢配偶者への遺族年金はなし。
     若年配偶者や子供への遺族年金はあります。それから日本の第3号被保険者制度とか、アメリカ、イギリスの配偶者年 金のようなものはなしということでございます。
     2番目は基礎年金税限定型として、基礎年金に投入する財源は税だけで、保険料は投入しない。基礎年金は税財源の みで賄われて、保険料というのはすべて所得比例部分に回ると。それから、基礎年金は基本的に定額ですけれども、所 得再分配配慮ということで、低所得者に厚くするということは考えられます。当然、第1号、2号、3号の区別はなくなりま す。それから現行制度より税の投入額を増加させるか否かについてはいろいろ議論がありますけれども、これはとりあえ ず検討の立場としてはニュートラルにしておくということで考えます。ですので、今から税の投入額が増えれば所得比例に 回る部分は少なくなるというようなことが言えるのではないかと思います。
     3番目は、第3号被保険者を廃止して第1号に統合してしまうというものでございまして、結果として第1号、第2号被保 険者だけになります。
     次に、これらの3ケースを中立性から評価すると、まず「スウェーデン」型について所得比例のみと最低保障年金部分と ほかの部分に分けて考えてみます。所得比例のみと最低保障年金ありの部分について、所得代替率は所得比例の程度 が強まりますので、代替率が均等化されてくると思います。それと、日本とかアメリカ、イギリスのように現行制度が「片稼 ぎ」が「共働き」に比べて代替率が高いと均等化されますので、「片働き」か、「共働き」かの選択により中立的になると思 います。それから「婚姻」か「単身」かについても、代替率がより均等化します。ただ、「女性単身」の所得代替率、これは 現在、日、米、英は高いですけれども、これがまた均等化してくるというようなことはあります。ただしこの改革案は、制度 の大転換でございまして、国民の合意が得られるかというのが大問題だと思います。ただ、御存じのように、スウェーデン ではかって基礎基礎年金制度があったわけですけれども、廃止されて現在に至っているということでございます。
     それから、選択制年金分割などの部分については、後ほど次項の所得分割のところで詳しく御説明したいと思います。
     次に、基礎年金税限定型の評価をしてみると、第1号、2号、3号の区別はなくなりますので、年金制度については就業 調整等の問題がなくなります。このほか税制とか、企業の配偶者手当というものはもちろんどうなるかわからないわけで ございます。それから、高齢配偶者への遺族年金の廃止にはつながりませんし、それから所得比例部分を含めた全体の 所得代替率については、「スウェーデン」型と同じように、所得比例の程度が強まる可能性があるんですけれども、どのく らいの効果があるかというのは、その定額の部分が厚くなるか薄くなるか、これによって差が出てくるとは思いまして、そ れには基礎年金部分の厚さに依存すると思います。
     それから、これも中立性とは別なんですけれども、税財源をどれだけ確保できるかということは大問題になると思います し、それから、税金ですべて賄うのはそもそも公的年金というのかどうかという問題がございます。それで、現行の基礎年 金税源は3分の1となっていますけれども、そのままにとどまれば、個々の人が受け取る基礎年金も基本的に3分の1に なると思います。ただし、所得が低いものに厚くすれば、低所得者については、減少はある程度緩和されると思います。
     それから3番目のケースでございますけれども、第3号がなくなりますので、就業調整を行うというような問題はなくなり ます。それから、女性が自営で男性の方がサラリーマンの場合にも女性は第3号被保険者になれるのですけれども、仮 に女性が年収130 万を超えないようにするという問題があるとすれば、それは解消いたします。それから高齢配偶者への 遺族年金の廃止には直ちにはつながらない。所得代替率の変化は、負担が増えるだけで、ございません。ただ、これは中 立性以外の問題として、受け取るのは基礎年金だけで、給付に変化はないので、負担が増えるだけでございますので、果 たして受け入れられるかという問題はございます。以上が大改革案3ケースの評価でございます。
     次に、所得分割について考えてみます。これは御存じのように、夫婦がそれぞれ得た所得を合算して、それぞれ二人で分 割した上で各自の年金保険料を計算するというものでありますが、まず、給付が所得比例でなければ、所得分割を行うメ リットはありませんので、厚生年金などに加入している現行の第2号被保険者、それから、その配偶者の第3号被保険者 が対象かと思います。第1号被保険者の自営業の人も、所得比例給付の要素が導入されれば検討の対象にはなるので はないかと思います。
     次の制度設計の諸要素を考えてみます。あくまでもイメージ明確化のためでございまして、こうすべきという確定したも のではございません。
     まず、強制か選択制かということでございますけれども、分割比率について夫婦間で合意に達すれば届け出を受け付け るという恒久的な選択制と考えてよいのではないかと考えておきます。これは夫婦で合意形成した役割分担などで共同で 稼いだ所得をどのように分割するか、これは夫婦間の自由意思による決定に基づくべきだと。給料をどう二人で分けるか というのは夫婦間の問題というようなこともありますし、それから、スウェーデンやドイツは既に制度導入しているんですけ れども、それも選択制にはなっておるということから、そういうふうに想定しております。ただ、暫定的な選択制、経過期間 を設けた選択制というのはもちろん考えられないわけではございません。
     それから次に、合算前の各自の所得の設定でございますけれども、現行の第2号、厚生年金の適用者は従来どおりの 標準報酬額を利用すればよいんですが、問題は第3号被保険者でございまして、これは所得をゼロとみなさざるを得ない のではないかということでございます。それは今、例えば130 万以下で所得があっても、なかなか捕捉が難しいのではな いかということがございます。ただ、ゼロじゃなくて、自主的に、例えばゼロから130 万、仮に130 万を65万に下げれば、ゼ ロから65万の間の所得であって、自主的に申告してもらうという手はあるんですけれども、ただ、こうしますと、事業主負 担がないわけですから、それを新たに求めるのかどうかと、こういう大問題が発生すると思います。
     厚生年金にもう既に入っている人であれば、もう既に事業負担がありますので、単に名義が変わるだけなんですけれど も、ゼロから130 万くらいの範囲の人は全然保険料を納めていませんので、従来の制度ですと、自分から納めると事業主 負担分というか、自分で納める分はいいんですけれども、事業主負担をどうするかという、こういう問題が生じます。ただ、 そういうふうに申告制にしますと、申告制では申告するだけ将来の年金の増加にもつながるので、申告へのインセンティ ブというのは労働者側の方にはあります。
     それから、分割割合について、2分の1に限定するのではなくて、どのような比率にしてもいいのではないかと想定しま す。というのは、貢献度というのはいろいろなケースがあるからということでございます。
     それから、過去の納付記録分まで遡って分割するという途中での変更ですけれども、これを全部認めてしまうと、離婚時 の年金分割も認めてしまうことになりまして、これまた別に議論した方がいいのではないかということで、基本的に認めな いと想定しております。
     それから、就業調整との関係なんですが、先ほど申しました専業主婦の所得をゼロと見るかどう見るかにかかっている んですけれども、ゼロと見てしまうと、ゼロから65万なり130 万なりの間でまた就業調整が起こる可能性はあります。自主 申告を認めれば、そういった問題はなくなります。仮に適用拡大が進んで、例えば仮に65万になったとすれば、その時点 で就業調整は生じる可能性はございます。
     それから、遺族年金との関係ですが、高齢配偶者への遺族年金は所得分割を選択すれば必要がなくなりますので、もう 認めないというふうに想定はしております。ただ、若年配偶者や子供の遺族年金は年をとるまで待ってから給付を受ける ということではなくて、配偶者が死亡したすぐその時点で必要になり、ニーズが異なるので、所得分割から切り離して考え るべきかと思います。それから選択制とすると、遺族年金を選んだ方がいいのか、それとも、所得分割を選んだ方がいい か、こういう裁定の問題が生じるのですけれども、個々に見れば、将来の不確実の高い事項に依存するので、現在の行 動への影響というのは弱いのではないかなという気はいたします。
     それから、所得代替率との関係ですけれども、これは世帯で見れば、世帯内で各者の名義が変わるわけなので、基本 的には変化はございません。
     また、第3号被保険者制度との関係では、第3号被保険者も保険料を納付した形になりますので、所得分割を選択した 者に関しては「第3号被保険者問題」は生じません。
     それから「掛け捨て問題」との関係でも、自分から納めたものは結局合算されて後で戻ってきますので、「掛け捨て問 題」は生じないのではないかと思います。
     次に、離婚を促進するかということでございますけれども、離婚をしたいというときにどうするかなんですが、所得分割を 選択して、その保険料を納め続けていれば、離婚になったときでも、年金をどう分割するかという問題はなくなります。けれ ども、離婚時の年金分割は離婚促進しているのかもしれませんけれども、所得分割については一緒に仲よく働いて協力し て稼ぎましょうといった効果もあるのではないかと思います。
     それから離婚に関する諸制度は離婚時の年金分割のときには必ず必要かと思いますけれども、所得分割の場合には 余り関係ないのではないかと思います。
     それから事業主負担との関係ですけれども、これはこのスタイルであれば変化はないと思います。給料と同じ、一旦労 働者に渡してしまえば、どう分けるかは任せたと同じというふうに考えられるのではないかと思います。
     今度は離婚するときの年金分割を考えてみます。これは所得分割とは全く異なると思います。これは離婚したいと思った ときに財産を分ける。どう分けるかといったたぐいの問題になりますけれども、まず所得分割の関係では、所得分割が広 まれば、そもそも離婚時の年金分割は必要ございません。ですので、仮に所得分割が導入されれば、あくまでも過渡的な 措置として離婚時の年金分割が必要になるということでございます。
     では、離婚時の年金分割をどうするかですが、結果として、離婚を促進する可能性の制度の可否については必ずしもコ ンセンサスがなくて、否定的な見方をされる方も多いのではないかと思います。ということで、社会的にやむを得ない場合 に、限定したものから検討を開始せざるを得ないのではないかという感じはいたします。そういった場合としては、配偶者に よる暴力を原因として婚姻継続困難なケース、これは恐らくコンセンサスの形成は可能だと思うんですが、一定の婚姻年 数を経過した上でなお離婚を希望する場合は反対する人も多いかもしれません。
     さて次に、7月に高山委員から遺族年金の比較的軽微な問題につきまして御指摘がありまして、その対応方策をまとめ てみます。
     中立性を主とした問題点ということで、大きな問題はもう既に中間報告で検討済みなんですけれども、若年の遺族配偶 者に対する明示的男女区別がございまして、男性と女性では支給の要件とか違う扱いになっております。これについては 選択への中立性の影響はないんですけれども、これは高山委員の表現ですと、法の下の平等に反するという問題はあり ます。
     それから、結婚・再婚への中立性なんですけれども、遺族年金は再婚すると支給されなくなるので、一旦遺族年金をも らってしまうようになってしまうと再婚を控えるという影響はあります。それから、相手が老齢年金を受給した後に、結婚あ るいは再婚して、その相手が死亡すると遺族年金は「丸取り」になる。このため「結婚・再婚への誘因としての遺族年金」 という影響も考えられます。
     それから、最後は細かいんですけれども、遺族年金の受給権は、被保険者が死亡したときに、被保険者によって生計を 維持されていて遺族に発生するんですが、具体的な要件としては、まず死亡した保険者と生計を同じくする。それから2番 目として、恒常的な収入が将来にわたって年収850 万円にならないという認定を受ける必要があるんですが、これが1回 しか行われないということでありまして、その後の新たな生計維持関係の発生とか、所得低下に対応できない場合があり まして、認定を受ける時だけ生計維持家族の数を増やしたり、あるいは所得が少なくなるように行動する、こういった影響 が考えられます。
     では、どうしたらいいかということですが、まず明示的な男女区別について、年金の受給要件なのであるから、単に男性 だから、女性だからで設定するのではなくて、具体的な経済的要件等に置き換えることが適切ではないか。男性でももら えなくて困っている人はおりますし、逆に女性でも、本来、必要ない人に支給されているケースもあるのではないかと思い ます。
     それから次に、再婚へのディス・インセンティブの方ですけれども、これは所得分割が広まれば、自らの年金に遺族年 金を置き換わりますので、再婚すると、遺族年金が支給されなくなるので、再婚を控えるといった事態の発生は少なくなる と思います。
     それから、再婚へのインセンティブの方ですけれども、これは所得分割制度が導入されれば、遺族年金がそもそも支給 されないケースが多くなりますので、遺族年金に誘因された結婚とか、再婚という事態は少なくなりますし、それから所得 分割制度が導入されていない。これは現時点でそうですけれども、あるいは導入されていても、所得分割をしていない場 合でも「貢献なくして受給なし」という原理を貫徹して、遺族年金の受給額を当該配偶者との婚姻期間等によって具体的に は計数を掛けるんだと思うんですけれども、それで調整することを検討してもいいのではないかと。それから生計維持関 係認定のタイミングについては、一回だけというのはちょっとよくないかというようなことがあります。
     それから最後に、年金保険料の帰着について述べます。7月の調査会で保険料は最終的に企業、あるいは労働者、こ のどちら側が負担するのかという議論がありました。実はこれは税の帰着の議論に非常に似ておりまして、御存じかと思 いますけれども、事典に簡単な解説がありましたので、読み上げます。労働の需要が非弾力的ならば、保険料や所得税 の負担は雇い主側、価格に対してより非弾力的であれば、労働の供給側、この場合には多くのサラリーマンがそう思って いるように、年金保険料や所得税はサラリーマン自身が負担するということになります。
     実は御存知のとおりに、労働需要関数とか、保険供給関数を推定すると、弾力性が数字で出てきますけれども、いい推 計は見当たりませんでした。
     以上でございます。
    大澤会長
    それでは副大臣がおみえですので、ごあいさつをお願いいたします。
    米田副大臣
    遅参をいたしまして恐縮でございます。このたび内閣府副大臣を拝命いたしました衆議院議員の米田でご ざいます。
     男女共同参画社会の形成、このことが私の所管事項の1つでありまして、御案内のとおり、我が国は経済社会構造、す べての分野にわたりまして変革を迫られておりますが、その中でも重要な課題であるという認識をしております。
     様々な考え、御意見がありますが、まさに国家百年の計、これを立てる思いで皆さんと一緒に汗を流し、また知恵を絞 り、職務に邁進したいと考えております。どうかよろしくお願いいたします。
    大澤会長
    ありがとうございます。公的年金のところの御説明が終わりましたので、今の考え方の整理をもとにして、そ れぞれ項目を区切って御質問や御意見をいただいてまいります。
     まず、公的年金改革のケーススタディについて、御意見や御質問がおありでしたらお願いいたします。
    福原委員
    お伺いしたいのは、これはとりまとめをしますね。そのときに問題提起型のまとめにするんですか、それとも、 この影響調査専門調査会では、このようにすべきだというような書き方になさいますか。
    大澤会長
    我々の調査研究は今後も続きますが12月いっぱいで提出するとされているのは、報告ということになってい ます。4月に出しました中間報告にいろいろと御意見をいただき、また審議を進めた結果としての報告書というのが12月の 位置づけでございます。
     それから、専門調査会の任務は制度の中立性を調査、検討するということにございまして、このような制度が望ましいと いう勧告を行うところまでは調査会の任務には含まれておりません。問題を提起する。例えば、a、b、cという制度がある ならば、中立性という観点からどの制度が最も中立性が高いかというようなことまでは言えるというふうに了解しておりま す。
     仮に「スウェーデン」型とは言っているんですけれども、例えば、年金分割というのはスウェーデンにはございましたか。
    事務局
    一応制度としてはございます。
    大澤会長
    離婚のときに従来認めていたのはドイツで、それを追っかけてイギリスが認めるようになり、それから、ドイツ も99年改革で、離婚をしなくても合意に基づいて分割をするというふうになったと思うんですけれども、スウェーデンの場 合には、そういうドイツやイギリスのような意味での所得分割があったかどうか。
    事務局
    それはあくまでも離婚時に年金分割をしていまして、それはたしかなかったと思うんですけれども、それ以前の 保険料を納めている段階からの分割、これはスウェーデンにはあったと思います。
    大澤会長
    その辺の確認も含めて御議論をいただきたいと思います。
     遺族年金をなくしてしまったというのが、スウェーデンのユニークな点でございますけれども、「スウェーデン」型といった ときに、近ごろ年金改革にかかわって世の中の議論が高まってまいりましたから、むしろイメージされるのは、保険料率を 将来にわたって据え置いた上で、給付の額を自動調整するということの方がイメージされやすいとすれば、我々のネーミ ングというのは要検討事項かなという気はいたします。今日は仮に「スウェーデン」型ということで御議論いただければと思 います。
    坂橘木委員
    大澤会長が言われたように、「スウェーデン」型がどうも一番ポピュラーなような感じがするんですが、私は 「スウェーデン」型を勉強したら、いわゆる確定拠出による保険料固定型だと意外と低所得者層が増えるという予想がで きると思うんです。その点を、例えば最低保障年金で所得者に配慮と書いてあるけれども、私の調べた範囲では最低所 得は5万円ぐらいなんです。これは食べていける額しか払えないということになるわけで、多少問題があるかなという感じ がしておりますけれども。
    大澤会長
    スウェーデンの給付を日本円に換算して五万円ということですか。
    坂橘木委員
    たしか五、六万円だったと思います。
    大澤会長
    そうなりますと、あちらの制度の関係もありますけれども、まず医療というのが公営医療でございますので、 医療費が基本的にかからないということとか、それ以外の社会サービスが比較的充実をしているということ、住居費の違 いなどもありまして。
    坂橘木委員
    この最低所得というのは、食料品を買えるぐらいの程度という感じですか。
    大澤会長
    そう思います。ただし、日本の生活保護に当たりますスウェーデンの公的扶助の水準というのは比較的高い と思います。実際生活保護を受けているという人というのは非常に少ないようでございますけれども、生活保護基準との 関係で、この最低保障年金のレベルというのは、さらに検討の余地がございます。スウェーデンの社会サービスとインフラ を前提とすれば、5万円というのが、日本で考えた場合には、ほぼ生活できる年金と言っていいのではないかと思われま す。
    坂橘木委員
    その5万円という額は、ちょっと確実ではないですけれども。
    福原委員
    ここで「スウェーデン」型と言っているのは、スウェーデンで行われているようなものを直輸入するという意味 ではなくて、ここに書かれているような、例えば所得比例のみで遺族年金なしとかというコンセプトを考えているわけです ね。ですから、今のように5万円になるかどうかということは、ここでは余り議論することはないんじゃないかと。
     私も勉強不足ではあるんですが、高山委員のお話を伺い、それから幾つかのものを読んでみると、やはりスウェーデン タイプに近い方が将来の人口構成等を考えると合理性があるというか、一番適用しやすい制度ではないかというふうに思 うんですが、今のように細かく突っ込んでいくと、またそれはそれで、日本ではここだけは直そうというところがあると思うの で、その辺を検討したらいかがでしょうか。
    坂橘木委員
    もう一つ、ここにつながっている「スウェーデン型」、「基礎年金税限定型」、第3号廃止・第1号統合型」の3 つしかなくて、現状維持型というのは、保険料を上げて給付額を下げるという案だってあり得るわけで、これは考慮の対象 にないということですか。
    大澤会長
    といいますか、現状には問題点が多いということを中間報告で既に指摘をしているので、今回はこういう評価 をしてはどうか。
    坂橘木委員
    制度は現状維持をして給付を下げて、保険料アップという案は消えたと理解していいわけですね。
    福原委員
    現状は中立性にも問題がありますということです。
    坂橘木委員
    わかりました。この3つの中から選択ということですね。
    大澤会長
    どれを選択して、これがお勧めというふうに我々は勧告するわけではなくて、中立性の観点から、最も中立 性の高いものはどれであるか、しかし、それ以外にもメリット・デメリットはありますというようなことになるんじゃないかと思 います。
     その中立性からの評価を先ほど事務局に整理してもらったわけです。
    高尾委員
    とすると、中立性という立場から評価できるということで、「第3号廃止・第1号統合型」と説明したわけですよ ね。いろいろな案があったわけですが。
    大澤会長
    女性と年金検討会は6つの案が並列でございましたけれども、ここでは6つも取り上げる必要はないのでは ないか。それから、あれは3号に限定した選択肢なものですから、むしろ、ここでは年金制度全体として、遺族年金の問題 もあるし、税から投入される分というのを全体に広く均てんするのか、それとも低所得者に集中するのかということも含め て考えていますので。
    坂橘木委員
    中立性ということだけで関心があるのであれば、「スウェーデン型」、「基礎年金税限定型」、第3号廃止・第 1号統合型」のうちどれがベターだという議論はできるわけですか。
    大澤会長
    それはできます。
    坂橘木委員
    それをここでやるべきか、やらざるべきかということになるわけですね。
    大澤会長
    それでいいんじゃないかと思います。
    福原委員
    やるべきだと思います。
    坂東局長
    ただ、年金財政全体としてどうだとか、こうだとかということはいろいろな要素があるんですけれども、そこま ではやらない。
    坂橘木委員
    そういうことは考慮外で、中立性ということだけに関しては、先ほどの3つのケースの中で、「スウェーデン 型」と「基礎年金税限定型」は比較不可能ですね。中立性だけに関して言えば、違いますか。
    事務局
    さっきの御議論なんですけれども、例の女性と年金の検討会の6つ案のうち、1つは所得分割と先ほど述べた こととほぼ同じです。ほかの部分はいろいろ細かいところは別にしまして、定額の負担を求めるという意味では、細部は別 として「第3号廃止・第1号統合型」に分けられるのではないかと思います。
    大澤会長
    逆に言うと、年金検討会の案では基礎年金税限定型はなかったですよね。全額税方式というのは。
    坂橘木委員
    後退していますね。
    大澤会長
    後退しているというか、3号にだけ絞って検討するとそうなるんです。
    坂橘木委員
    ああ、そうか。
    大澤会長
    払わせるべきか、払わせなくてもよいか。誰が払うか、定額で払うか、低率で払うか、こういう仕分けになりま すので。
     基礎年金税限定型という場合に、高齢配偶者の遺族年金の廃止ないし解消ということにつながらないとすれば、遺族年 金まで含めた場合に、現行制度のうち基礎年金だけ税方式にするということをしても、依然として世帯類型によって有利さ が異なると。片働きの方が有利になるというのは、ここでは残るというふうにとっていいわけですよね。老齢年金だけです と、現行制度というのは共働き、片働きということに対しては、一応保険料の負担と給付というのは同じなんですけれども、 遺族年金を入れた場合に、片働きの方が受け取りが多くなるのが大部分であるということが出てきます。
    坂橘木委員
    基礎年金が全額税方式に変わったら、遺族年金制度というのはもう必要ないのではないですか。夫婦で働 いていて、一方が残っても一方が高齢であればもらえるわけで、遺族年金という問題は消えるのではないですか。
    大澤会長
    そうしますと、基礎年金だけということですか。
    坂橘木委員
    少なくとも公的年金が関与するのは、基礎年金だけであるというふうに決定してしまえば、もう遺族年金の問 題は消えますよ。生きている人にだけ与えるわけで。
    大澤会長
    それはまたかなり……。
    坂橘木委員
    ドラスティックですけどね。
    坂東局長
    かなり水準が低くなってしまいますよね。
    坂橘木委員
    だから、基礎年金の額をどれだけにするかに依存しますけれども。
    林委員
    基礎年金だけで暮らすというは厳しいですね。
    坂橘木委員
    公的部分が果たす役割というのは、それで十分だという意見だってあり得るでしょう。あとは自分でやりなさ いと。全部が全部公的年金でそこそこ豊かな生活を保障するだけの義務というのは国にありますかという問いなんです。 最低限生きていくだけの年金額を支給するのが国の役割であるという思想なんです。
    福原委員
    それは中立性の問題ではなくて、年金制度全体の問題なんですね。
    坂橘木委員
    だから、ここで混乱が生じますので、私はあえて強く言いませんけどね。
    大澤会長
    基礎年金を税に限定した場合でも、所得比例部分についても所得分割するということはあり得るのです。そ の場合には、「スウェーデン」型と基礎年金税方式型の違いというのは、要するに税金でもって賄われる年金部分が、黒 い部分が平らに全部の人に行くのか、それとも全体のうちの低所得者のところに集まるのかという違いになるんです。で すから、基礎年金税方式の場合に所得比例部分について、夫婦間年金分割というのを加味するということはあり得ない案 ではないとは思いますけれども、その場合には遺族年金が出てくることによって、相変わらず、中立性から問題があるとい う整理はされるんですけれども。ですから、例えばこの場合でも所得比例部分について所得分割を取り入れて遺族年金 の廃止につなげる方式はあり得るのかということを書くことはできると思います。そうすると、割と基礎年金税限定型とス ウェーデン型は中立性の観点から比較的同等というふうになって、問題はその財源を確保できるかというところにいくと。
    坂橘木委員
    基礎年金税限定型について、現行制度より税の投入額を増加させるか否かについてはニュートラルと説明 があった。我々はどうしろというつもりはないですけれども、政府内だって、厚生労働大臣とほかの人たちとでややニュア ンスの違いはありますよね。だから、内閣自体がどうするか今困っているんじゃないですか。
    大澤会長
    厚労大臣は踏み込んで、2分の1に引き上げるために消費税率の引きあげということまでおっしゃっていま すね。財務省は「うん」とはまだ言っていないと思いますが。
    坂橘木委員
    それから、小泉首相がどう考えているかわかりません。
    大澤会長
    3号を廃止し1号に統合する場合の中立性からの評価をする時も、高齢配偶者への遺族年金の廃止には 直ちにつながらないが、同じように「なお」というような感じで厚生年金部分の夫婦間分割というのもあり得ますね。
    高尾委員
    3号を廃止し、1号に統合というのは、実際どうやって払ってもらえるものでしょうか。私も全然予想もつかな いのですが。
    大澤会長
    今、年金部会の方では検討をしております。それで労働保険と社会保険の事務というのを今後何年かかけ て一元化していくんですね。電子政府とか、e政府とかというふうに言っているんですけれども、そのことによって自主納付 であっても、もっと納付率を高くしてもらうという検討はしているんですが、コストに見合う保険料収入が得られるかという と、実は赤字になるのではという議論もされています。1回電話して督促するのに、最低500 円ぐらいコストがかかるんだ そうですね。それを電話をして、なおかつ何かを郵送して、最後は訪ねてというようなことをやりますと、すごくコストがか かってしまうわけなんです。それに見合う保険料収入が得られるかというと、それは余り期待できないというような議論は されています。
    高尾委員
    100 %納めてもらえればいいけれども、そこまでとてもいきそうもないしということですよね。
    大澤会長
    はい。
    高尾委員
    余りメリットがないことなので、現実味がない。
    大澤会長
    全くメリットがないんです。ただ、負担が増えるだけなんです。
    高尾委員
    それよりももっと前の2つのケースで考えていった方がいいのではないかなと思います。
    坂東局長
    理論としてはあり得るということですね。
    大澤会長
    それから、年金部会でも、結構この案を推奨される方はいらっしゃるものですから。
    坂橘木委員
    どういうことですか。
    大澤会長
    1号の立場からすると、3号は全部何で1号にならないのかわからないという議論は必ずあります。ですか ら、自営業の方……。
    高尾委員
    1号そのものが、歴史的に言うと不安定な部分があるわけですよね。
    大澤会長
    はい。
    高尾委員
    ですから、やはり余り取り上げる必要は……。書いてあってもいいんですが。
    坂東局長
    1号そのものも納付率がどんどん低下して困っているのに。
    高尾委員
    もともと不十分な制度であったわけですよね。
    大澤会長
    それから、フラットレートのシステムですね。所得によらず、一律一定額との負担を求めるというこの制度 は、社会保険としては余りいい制度ではないというのは共通理解になっているところだと思います。逆進的、つまり低所得 の人に負担が重いですから。それを広げるのかという反対論は必ずあるわけです。
     次に、所得分割の論点について御意見等を承りたいと思います。
    米田副大臣
    ちょっと会議がございまして、退席してよろしいですか。また時々伺います。では、皆さんよろしくお願いし ます。
    福原委員
    所得分割について具体的にいいますと、合意に達すれば届け出を受け付ける恒久的な選択制ということは、 届け出をしたら、もうそれは取りかえられないということですか。
    事務局
    それはいかようにも設計はできるかと思うんですけれども。
    福原委員
    大変な事務手続になりませんか。また、恒久的にしたいとか、また分割したいとか、分割を変えたいとかにす ると、計算期間から言っても大変なことになってしまうのではないですか。例えば、極端に言うと、3年ごとに分割の比率を 変えるとか、そういうことを届け出でられたら、その場合はこれは受け付けないわけにいかないわけですね。
    事務局
    その辺は、いかにしてそういう煩雑な事態を避けるかという設計の部分でもあると思いますけれども。
    大澤会長
    原則2分の1とか、原則は分割するというふうにして、ですから、コントラクトインではなくて適用除外にして、 工夫することができると思いますけれども。
    林委員
    私はちょっと勉強していないんですが、選択か強制かという、分割比率は既に選択制でスウェーデンやドイツ が実施しているという場合に、分割比率のようなものはどういう傾向なんですか。
    事務局
    比率はわからなかったものですから、申しわけございません。
    福原委員
    2分の1じゃないでしょうね。
    坂東局長
    1対3とか、1対2とか。
    坂橘木委員
    それは片働きと共働きということで違うんじゃないですか。所得分割は片働きだけの話ですか。
    大澤会長
    いいえ。共働きでも足して2で割るという、原則2分の1ならですね。
    坂橘木委員
    片働きの場合はゼロだけど、2分の1にするという感じですか。
    大澤会長
    はい、そうです。これはポイント制みたいになっていれば、年々ポイントを出していくということで、コントラクト・ アウト、適用除外する、分割比率を変えたいというようなことにも、もちろん手間はかかりますけれども、ずっと遡って計算 しなければいけないことにならなくて済むのではないかと思います。
     また事業主負担のところですけれども、既に事業主は第3号の分の負担をしているんです。既に9,000 億円ぐらい負担 しているんですよね。ですから、それをどう考えるかという議論を年金部会でしてはおります。既に負担しているのに、今 更専業主婦の分まで負担させる是否を議論しなくてもいいんじゃないかという気はします。
     このあたり、よろしいようでしたら、また少し先に進ませていただいて、離婚時の年金分割の考え方、これは月々分割す れば、離婚時はやらなくて済むのだけれども、もし月々分割しなければ、離婚のときに財産分与の一環として年金も含め て財産分与すべきでないかということですね。これは女性と年金検討会でもある意味で結論が出た事項の1つでして、離 婚のときは分割を認めるべきではないかという方向にはなっております。
     よろしいようでしたら、さらに進ませていただいて、高山委員からも御指摘があった遺族年金の問題点と対応方策につい てはいかがでしょうか。
     生計維持関係認定というのは、従来は我々必ずしも議論してこなかったことを今回は出していただきましたけれども。
    坂橘木委員
    これを読ませていただいた限りにおいては、所得分割というのが定着すれば、遺族年金の問題というのは、 そんなに大きな問題でなくなるというふうに理解してもいいんですよね。
    大澤会長
    老齢時になってからのという意味ではですね。あとは若年の……。
    坂橘木委員
    若年の場合は、もし夫が70代で妻が40代くらいの、そういうような話を想定しているんですか。
    林委員
    もっと若いときで。40代ぐらいとか30代とか、まだ働いている最中というか、子供を育てている最中の夫婦でしょ う。
    大澤会長
    それこそ過労死とか、あるいは病気で40代ぐらいで亡くなってしまったときの、その場合に片働き世帯であっ たとすると……。
    坂橘木委員
    それはむしろ生活保護の方の対策なんじゃないんですか。そういうふうに理解するのは一面的ですか。
    大澤会長
    現在は遺族年金が出るわけですよ。つまり残された方が妻ならば。もし残された方が夫ですと……。
    坂橘木委員
    年金というのは一応60歳か65歳を過ぎてから支給するというのが建前じゃないですか。
    大澤会長
    いいえ、遺族年金は残されたのが妻ならば、何歳でも出ますから。残されたのが夫ですと、55歳以上じゃな いとだめですけど。
    坂橘木委員
    私の認識不足だ、ごめんなさい。
    坂東局長
    ある意味では優遇されているんですよ。
    坂橘木委員
    むしろ、私は生活保護の問題だと思うな。あるいは生活保護でなくても、勤労しなさいという案だってあり得ま すよね。30歳か40歳の働き盛りだったら。
    大澤会長
    現行制度は、とにかく妻は何歳であっても遺族年金はもらえるんです。なおかつ、中高齢加算というのが あって、夫が亡くなったときに35歳以上だと、40歳からは加算がついて、さらに手厚くなるんですね。それでずっといくわけ ですよ。
    坂東局長
    遺族である妻が死ぬまで。
    大澤会長
    すごい制度なんですよ、これは。夫は55歳以上じゃないと受給権そのものが発生しない、妻の方に関しては 年齢制限一切なしという、これは明文上、男女の別扱いになっている点で、日本の現行法令の中では稀な例の1つです。 ここのところをまず男女をそろえていくようにできないか、というのが1つのポイントですよね。毎年1歳ずつでも年齢を上げ ていくというふうにして。
     もう一つは、死ぬまで払うというのはやはりおかしいんじゃないか。だから、生活を立て直して基盤をつくる間の、例えば5 年限定ぐらいにするという改正もあり得ますし、残された妻子が心配なのであれば、超過保険料を払っておいて、遺族年 金が出るようにすると。原則は出ないというふうに一般制度からは除外したオプションにするということもあり得るわけなん ですね。
    坂橘木委員
    この制度がいつ入ったか私にはわかりませんが、昔流でいう一家の大黒柱が亡くなって、残された奥さんに は何とかしてあげましょうという精神がずっと生きているんですね、今まで。
    大澤会長
    公約年金制度が始まったときには、妻に年齢制限がなく終身給付するというような遺族年金制度はなかった んです。
    坂橘木委員
    いつごろ入ったんですか。
    大澤会長
    1950年代に給付が拡充されて、65年に年齢要件が廃止されたと思いますけど。
    坂橘木委員
    1950年代というのは戦争直後ですね。
    坂東局長
    36年です。
    大澤会長
    そうですね。今の制度の基本ができたのがそのころなものですから。
    坂橘木委員
    その当時であれば、そういうことを考えたのは、ある意味でわからんでもないですけどね。それがずっと続い てきたわけですね。
    坂東局長
    そういう人がもしも再婚すると、その権利がなくなりますから。
    坂橘木委員
    再婚しない選択肢とる人がいるわけですな。
    坂東局長
    事実婚というようなことで、今ここにあるようなインセンティブだとか、ディス・インセンティブとかということも 生じているんですね。
    大澤会長
    それから、厚生年金基金という部分をどうするかというのも言い出すときりがないんです。今、代行返上とい う傾向が強まっているから、今後は制度がすっきりしていくのかなとは思いますけれども。
     では、先を急がせていただきまして、次に「税制、医療保険」について、事務局から説明をしてもらいます。
    事務局
    まず税制の方ですけれども、補足的な論点を2つ挙げてみます。
     実は大澤会長名の意見を出していただきました8月30日の政府税制調査会の議事録を後で見ますと2つ質問が出てお りまして、石会長はいずれも「大澤会長に確認します」とか、「話しておきます」とか、そういうふうに答えられています。今 のところ、そういう確認の問い合わせがあったわけじゃないんですけれども、念のために考え方を整理しておこうということ で2つ挙げてあります。
     1つが基礎控除拡大と税額控除、そういう関係と申しますか、1人1控除ということにこだわられている委員の方がいらっ しゃるようでして、それについてはどうかというものでございます。真意ははっきりしないんですが、税制調査会の基本方 針の中では、下線がございますけれども、基礎控除を拡充するという代替措置と、税額控除を設けると、こういう2つのパ ターンが挙げてあります。
     中立性の観点からどちらがいいかというと、配偶者控除とか配偶者特別控除をなくして、基礎控除に置き換えた場合も、 課税最低限がかえって増加する可能性がございます。現行制度の下で置き換えると、2控除を丸々基礎控除に置き換え ますと、「103 万円問題」が「179 万円問題」に変わってしまい、就業調整が増加する面もある可能性はあります。一方、 税額控除の方は全体の制度設計にもよるんですけれども、基礎控除の拡大と違いまして、所得に全く依存しないで決まり ますので、「103 万問題」が生起する可能性は少なくなります。
     それからもう一つ、石会長が「大澤会長に確認します」と答えたのは住民税の均等割の規定のことでございまして、先ほ どの遺族年金の男女区別ではありませんけれども、地方税法が明示的に夫と妻を書き分けていまして、例えば道府県で は、均等割の納税義務を負う夫と生計を一にする妻で、夫が住所を有する市町村内に住所を有するものに対しては、均 等割を課することができないと。市町村税も同様ですけれども、そういったように明示的に区別がしてございます。
     均等割の額が幾らぐらいかというと年ベースで市町村税で3,000 円とか、2,000 円程度、都道府県税で年1,000 円程度 でございます。それから課税されない人は、今申しました夫と同一の市町村内に住所を有する妻ですとか、生活補助を受 けている人、障害者等で合計所得金額が125 万円、そのほか所得金額が一定の人となっているのですけれども、これら が中立性の観点からどうかということを評価いたしますと、配偶者による就業調整とは違いまして、選択の中立性に影響 を及ぼしているということはないと思います。
     としますと、男女の明示的な差を設けているという規定の仕方が問題になるわけでございますけれども、規定の仕方が 問題ということであれば、夫、妻というのをみんな配偶者にしてしまうという案がありますし、それから規定自体を廃止、こ れは増税ということになりますけれども、2つぐらいとりあえずは考えられますけれども、どちらがいいかは男女共同参画 からの観点は困難で、要するに書き方だけ変えればいいということなのではないかと思います。仮に配偶者に置き換えて しまった場合は、独身であることが不利になりますけれども、直接これも関係ないのかなという感じはいたします。
     次に医療保険の関係でございますけれども、坂口厚生労働大臣が内閣の改造前に私案というものを公表されておりま す。あくまでも私案であって、厚生労働省の案というのはさらに検討して後でつくるというようなことでございますので、前回 のヒアリングのときには、あえて説明がなかったんだと思うんですけれども、9月25日の記者会見で発表されておりまし て、大まかに言えばh14年の法改正で自己負担3割、75歳以上は公費2分の1になりましたが、今回の私案では、今後の 改革の道筋として2点ありまして、保険者の再編と統合と、それから高齢者医療制度でございます。再編・統合の方は、ま ず国保の方は広域化、政管健保は都道府県単位に縮小する、健保組合は規模拡大すると、こんなことにして都道府県単 位を軸にした保険運営にすると。それから、高齢者制度については新しいものをつくって、最後は制度の一元化を20年度 ぐらいには出すという内容でございます。
     趣旨としては、今後こういうスケジュールでどうかということで私の案をまとめた。スケジュールはもう一度厚生労働省の 中で検討して、厚生労働省の案なるものを11月ごろにはまとめなければいけないのではないかというようなこともおっ しゃっています。
     先ほど申しましたように、75才以上、公費2分の1投入は段階的に投入し平成19年10月までに制度改正は完成すると いうことは規定事項です。それ以上の部分ですけれども、健康保険の統合については、私としましては、都道府県単位を 軸とした保険運営だと。次に、国民健康保険は都道府県単位を軸とした保険運営というのが望ましい。政府管掌健康保険 は、これも全国一本なのを都道府県単位。健康保険組合、これはなかなか難しいところがあって都道府県単位にはいか ないけれども、主体性にお任せする以外はないというようなことでは言っております。統括化のめどとしては平成19年から 20年、この辺のところかなというふうなことをおっしゃっています。
     それから、高齢者医療制度をどうするかということなんですけれども、一応既に決まっていることとして、平成17年度に 一応法制化する。そうすると、高齢者医療制度そのものが必要かというような議論もあるかと思いますし、それから保険 料で賄うのか、税で賄うか、こういう議論もある。一応17年度までにまとめることになっているのだけれども、そこでまとま らなくても、やはり平成19年から20年の時期に結論を出したい。詳細を申し上げるとこんなことになっているようございま す。その後どうなっているかは公表されたものはございません。
     とりあえず以上でございます。
    大澤会長
    では、今の説明をもとに、「税制、医療保険」について、御質問や御意見をお願いいたします。
     基礎控除拡大の関係というのは、要するに、今回は人的控除の簡素化といって配偶者特別控除の廃止だけが税調から 出てきたわけですけれども、「更なる見直し」というセクションがあって、その中に3つの考え方が規定されている中に、配 偶者控除も扶養控除も廃止するなら基礎控除を拡充することを考慮しなければならないというふうに書いてある部分が あって、そこのところを抜き出して説明されたわけですよね。我々は、扶養控除については言っておりませんが、配偶者控 除については廃止の方向でというふうに言っています。そうすると、それは基礎控除を拡充するのかどうか。「負担の調 整」というふうな言い方に我々は中間報告ではとどめています。負担を調整するというのは基礎控除を拡充するのか、さ もなければ、低所得者を低い税率にするのかというようなことしかあり得ないわけなんです。基礎控除の拡充というのは税 調も言っているので、検討しようじゃないかというので、検討の中身を説明していただいているわけなんですね。住民税の 均等割というのも、これはとんでもない制度で……。
    福原委員
    配偶者控除を扶養控除に一本化するというのは、考え方からすると逆行みたいな気がしますよね。
    坂橘木委員
    子供が2人いて、奥さんが1人いたら、3人分の扶養控除ということで、子供も奥さんも同等に扶養とみなす という考え方に戻るということですか。
    大澤会長
    そうですね。
    坂橘木委員
    今の場合は、奥さんだけは別個に配偶者控除を計上しましたという制度になっているわけですね。
    福原委員
    ということになると、配偶者控除というのはやはり問題であって、扶養控除の限定ということの方向になってく るんじゃないですかね。考え方としてはね。
    大澤会長
    でもまだ問い合わせがないわけだから。それから、私たちは配偶者控除を廃止と言っていますけど、扶養控 除を廃止しろと言ったことはない。だから、基礎控除を拡充するということを必ず考えなきゃいけないというわけではないで すよね。ただ、「負担の調整」とだけ言っていると、何するんだというのがわからないから、考えておこうということなんです けれども。
    坂橘木委員
    大澤会長が言われたように、配偶者控除をなくした場合、基礎控除を上げる案と、そうじゃなくて、基礎控除 はそのままにしておいて、配偶者控除をなくした分の所得税率を下げるという案だってあるわけでしょう。今の10%を5% にするとか、どっちがいいかという議論は我々はする必要はないですよね。
    大澤会長
    それは我々の中立性の観点からはどちらがいいかというのは出てきませんけど、基礎控除にすると、新た な壁が生じるというのは今回検討していただいて出てきた論点ではあります。それからすると、軽減税率にするというのが むしろいいのかなというのはありますけれども。
    坂橘木委員
    なるほど。
    大澤会長
    ただ、税調の方では、日本の所得税率は低過ぎるから、これ以上下げる余地はないというふうに、ここは はっきり結論が出ているんですよね。
    事務局
    補足しますと、石会長は、会見では税率のことを聞かれて、それは一政府税調の問題ではなくて、党税調とか がございますので、いずれにせよ、税率は政府税調ではどうかなというようなことは、記者会見では言っておられました。
    高尾委員
    税制のことはもちろんわからないんですが、特別控除と配偶者控除をなくしていったときに、基礎控除を拡充 する方向と、それから所得税率を下げる方向だけなんですか。中間報告に対する国民の意見なんかでも非常に大きかっ たのは、子供を何とかしてくれというところが一番多かったように思いますし、私自身も増税になった部分を子供の部分で 税制として手当ができないのか、あるいは、してほしいなという気持ちがすごくしているんですけれども、そういう方向性と いうのは全然出ていないんですか。
    大澤会長
    これは税調の範囲内でできることしか言っていないので、そこで児童の扶養について税額控除というふうに 言っているんですけれども、しかし、税額控除をしても、やはり税金を払っていない人には恩恵が及ばないから、税額控除 よりも、さらに望ましいのは、直接の現金給付、児童手当の拡充ですよね。しかし、それは税調は自分の守備範囲ではな いということで言っていないわけです。
    高尾委員
    言えないということ……。
    大澤会長
    言えないというよりも、言っていない。しかし、我々は子供の扶養の負担といいますか、そういうものについて 直接の支援が必要というようなことは中間報告でも言っているんですよね。その直接の支援という中には、現金給付とい うのは含まれるわけです。税金だけでいじろうとすることには……。
     話は途中でございますけれども、阿南政務官がおみえでございますので、ごあいさつをお願いいたします。どうもありが とうございます。
    阿南政務官
    どうもみなさんこんにちは。今御紹介いただきました阿南一成でございます。
     委員の皆様方におかれましては、お忙しい中を御出席をいただいておりましてありがとうございました。
     本専門調査会が女性のライフスタイルの選択に大きなかかわり持つ諸制度、慣行など男女共同参画社会の形成に影響 を及ぼす政府の施策などにつきまして、調査検討を行うという大変重要な役回りを担っていただくということを聞いておりま す。
     今後とも委員の皆様からの御議論、大いに期待をさせていただきます。よろしくお願いいたします。
    大澤会長
    ありがとうございました。
    坂橘木委員
    私も税額控除よりも児童手当の方が効果は大きいというふうに思いますけどね。
    大澤会長
    ですよね。同じ規模の財政支出というか、こっちは財政支出じゃなくて、租税軽減ですけれども。
    坂橘木委員
    受ける方は影響力とか、効果というのは児童手当の方がはるかにあると思うんですが、そういうことを中間 報告で多少言われたけど、もうちょっと強く言う権限は我々にありますか。
    大澤会長
    あると思います。
    坂東局長
    ちょっと表現がわかりにくかったですよね、中間のときは。あれを明確に児童手当というような言葉を出すこ とによって大分インパクトはあると思います。
    坂橘木委員
    税調も……。
    福原委員
    税調の守備範囲かというお話があったんですが、税調というのは財務省主税局と自治省税務局の税調です から、手当を与えるということは反対なんですよ。
    坂橘木委員
    そうすると、主計局のマターになるんですか。
    福原委員
    そうですね、そう思います。
    坂橘木委員
    あるいは厚生労働省とか。
    福原委員
    厚生労働省予算でしょうね、恐らく。
    坂東局長
    そんなことを我々はここの場で考える必要はありませんから。
    福原委員
    税調でそのことが論議されるかどうかということについては、論議されないです。だろうと思います。
    大澤会長
    これは情報なんですけれども、社会保障人口問題研究所の阿部さんという主任研究員の方が、税の控除と 児童手当で子どもの貧困や不平等にどういう影響があるかという大変興味深い実証分析を最近なさっています。現行の 制度を前提にしてシミュレーションといいますか、分析をしています。児童手当というのは額が低いために、税制での控除 の方が効果が大きいという結論になっていました。それを児童手当をもう少し拡充するとどうなのかという、それこそこっち はシミュレーションになりますが、その御研究はこれからなさるというお話でした。大変興味深い研究なので、一度おいで いただくなり、その研究結果を取り寄せて検討させていただくということもあり得るのかなと思っています。
     論理的にというか、モデル的に言えば、一定額の直接現金給付は子どもを持っていることによる貧困といいますか、支 出が多いことを軽減する効果は高いんですけれども、現行制度で分析するとどうなるかというのは、それほど単純ではな いようです。事務局には水も漏らさない仕方でいろいろと検討していただいていますけれども、基礎控除を拡大するという 方式で負担の調整を図ると、新たな壁問題が生起する可能性があるというようなことでとどめてよろしいんじゃないかと思 います。そうなると、残る手段は税率をどうするかとか、直接給付にするかというふうになってまいりますので。住民税の 均等割というのはとんでもない制度だと思いますね。同一市町村内に住んでいる妻というだけで、生活保護を受けている 人と同じ扱いになってしまうわけですから。妻に限定しないで配偶者というのも……。
    坂橘木委員
    それならまだあると思います。
    大澤会長
    我々の中立性の観点から、明文上、男女の扱いが異なるというのは問題だというふうに言えるわけです。そ このところかと思います。
     それから、医療保険制度改革については、この改革案というのが中立性の観点からどうなのかというのはなかなか見極 めるのが容易ではございません。ただし、昨日か一昨日あたりの新聞で、年金と同じような、つまり短時間雇用者につい て、今130 万円になっているのを65万円程度まで引き下げるというような報道も出ている。これはいよいよ、年金とあわせ て限度額を65 万円ぐらいのところでそろえるという話になるのかなと思いながら新聞を読んだんですけど。
    事務局
    日経だと思います。
    大澤会長
    そうですね。そういう議論も新たに出てきております。ですから、ここのところをどういうふうに検討するのか というのは……。
    福原委員
    130 万円から65万円になるのであって、50万円だって差し支えないわけです。ですね。
    大澤会長
    そうです。根拠があるわけじゃないんです。大体半分程度というだけのことでして。
    福原委員
    半分程度というのは、ちょうど65万円だというのは、あるいは月5万円として60万円とかですね。
    大澤会長
    この改革私案というのは、かなり包括的なものなので、その改革私案について中立性の観点からどう考える かといっても、細部がわからないとなかなか難しいということはございます。一元化していった場合に、つまり保険料のとり 方というのを国保の方にそろえるのか、健保の方にそろえるのかというのがございますよね。そうでないと負担と給付の公 平化というふうにはなっていかないわけですから。
     では、パートタイム労働者への健保の適用ですか、それを中立性の観点からどう見るかということも加えることにしまし て、大臣の改革私案というのはこの後どういうスケジュールで具体化してくるかちょっとわかりませんので、それよりは、割 合と起こりそうな、年金と足並みをそろえて65万程度に引き下げというのを考えてみるというのはあり得ると思います。
     さらに先を急がせていただきまして、雇用システムについての御説明をお願いいたします。
    事務局
    まず7月に高山委員から専業主婦を優遇しようとしてもできないと、こういう意見の紹介がありましたけれども、 これを図で見ると、右側の女性の上の半分くらいが専業主婦に当たるかと思うんですけれども、その後の議論というの は、専業主婦を優遇すると、フルタイムの女性の労働者が減って、結局賃金が上がるので、フルタイムの女性が増えて変 化がない、そういったような議論だったんですけれども、この図の意図は、労働市場の供給者の代替関係というのは、必 ずしもそれだけではなくてかなり幅広いところがございますと、こういうことをちょっと確認するためにつくったものでござい ますけれども、ただ、その問題を別にしても、労働市場の供給構造というのが見てとれるかと思いました。
     それから前回、大澤会長の方から紹介がありましたけれども、三菱総合研究所の方でやりました「パートタイム労働の労 働条件改善の経済的影響」に関する試算の概要は、ホームページに掲載された資料はお配りしてあるとおりでございま す。
     簡単に概要を説明しますと、この試算の目的は要するにパートタイムの賃金率の正規従業員との格差を縮小すると、正 規従業員とかパート従業員の数がどれくらい変わるかと、こういうことを計算したものでございます。
     手順といいますか、前提としては雇用者は、正規事業者というのは週35時間以上、パートタイムは週35時間未満という ことで、呼称パートという定義では計算していません。さらにパートタイムを2つに分けて、aパートというのは正規従業員と 同じ仕事をしているパートタイマー、それからbパートはそれ以外。仮定として18.9%、これが現状らしいんですけれども、 これがaパートであるというふうなことを計算で使っています。
     それからシミュレーションのケースが3つありまして、ケース0というのは現状維持ケース。ケース1は、格差は現状維持 だけれども、ワークシェアリングが進んで、正規従業員の所定内労働時間が進むというケース。ケース2というのは、ワー クシェアリングが進んで、正規従業員の所定労働時間も減るし、それから格差も縮小する。
     具体的な格差の縮小の内容ですけれども、パートタイム対正規従業員の賃金比が、現状ではaパートもbパートも同じ 59%としているんですけれども、賃金格差が縮小すると、bパートはそのままなんだけれども、aパートは77.6%、これは アンケートで納得水準というのはこれくらいらしいんですけれども、aパートだけが77.6まで上がったらどうなるか、こういう シミュレーションをやっております。
     ここは細かいモデルまで載っていないんですけれども、マクロの経済成長率などは外生的に与えまして、労働部分のモ デルだけをつくって、こういうフローチャートのモデルでシミュレーションをやったようでございます。
     結果は、2005年の結果だけ見ますと、格差現状維持・時短なしで、要するにパートタイマーの年間賃金はaもbも正社 員の59.3%のままなんですけれども、正規従業員は4,203 万人、パートタイマーがab合わせて1,092 万人、これがベー スラインですけれども、ワークシェアリングが進んで時短があった場合は正規従業員が先ほどのケースに比べて4,203 万 人から4,294 万人に増えております。それからパートタイマーもab合わせて1,092 万人から1,112 万人に増えています。 これがなぜ増えたかといいますと、要するに一人当たり労働時間が減りましたので、その分人を多く雇わないと生産できな いということでございます。
     それから最後は、時短だけではなくて、格差も縮小したケースでございまして、aパートが77.6まで上がって、bパートの 方は59.3なんだけれども、平均して、パートタイマーで62.8まで賃金が上がったという場合でございます。この場合には、 正規従業員は2番目のケースに比べると4,294 万人から4,322 万人で若干増えております。一方、パートタイマーの方は 1,112 万人が1,099 万人と減っていると。この理由としましては、要するにパートタイマーの正規従業員に比べた相対賃金 が上がれば、正社員の相対賃金が下がりますので、正社員の方の需要が増えていると、こういうことでございます。
     こういう結果が一応出ておりました。要するにパートタイマーの賃金格差を縮小しても、正社員の雇用はむしろ増えます ということでございます。詳細についてはお配りしたものにございます。
     それから、退職金の現状を紹介します。7月に退職金は、年金だけでなくて一時金も併せて考えるべきだと、こういう御 指摘がありまして、その概況を調べました。まず退職金制度でございますけれども、企業規模経営で見ますと、「一時金制 度だけもの」が42.2%、「年金制度だけ」が18%、「併用」が28.6%、「ない」というのが11.1%ございます。一時金制度につ いて見ると、中小企業ほど一時金制度に頼っているところが多いのかなという感じはいたします。去年こちらの方の専門 調査会にもお諮りしまして、アンケート調査をやりまして、それは年金についてだったんですけれども、支給要件の1つであ る勤続年数が結構長くて、十四、五年とかというところで女性はもらいにくいと、企業年金の場合はもらいにくいという結果 が出ておりました。
     そこで一時金の支給要件はどうかというのを調べてみたんですが、その前に、退職金の支払い準備形態というのはいろ いろあるんですけれども、そのうち社内準備を形態をとっているのは、68.3%くらいでございます。こういう企業に対しては 数字がございまして、退職一時金の受給に必要な最低勤続年数について「自己都合退職」の場合と「会社都合退職」の 場合の2つの表がございます。
     まず自己都合の方は、「3~4年未満」が多くありまして、58とか59%と、ここにほとんど集中しております。勤続年数を5 年以上を要するというのは4.5 %でかなり少なくなっております。会社都合退職の場合はもっと年限が短くなる傾向がござ いまして、「1~2年未満」というのが調査産業計で見ると結構多くなってきます。「5年以上」というのは3.2 %しかございま せん。ということで、勤続年数だけで見る限り、一時金に限ってみれば、年金とは違ってそれほどネックにはなっていないと いうことは言えますけれども、ただ、支給レベルが勤続年数に比例して増えているという要素はあるかと思うんですけれど も、そのデータは、なかなかぴったりくるデータはございません。
     続いて、働きに見合った処遇を巡る論点を整理してみます。趣旨は、「働きに見合った処遇」の中身を考えてみるとどう なるかということをちょっと整理したのですが、結論から申しますと、いろいろな視点があって今後整理が必要ではないかと いうことです。
     それで「働きに見合った処遇」の「働き」と「処遇」というのはそれぞれ何かということなんですけれども、通常は、「働き」 と「処遇」というのが一体として労働条件ということで労働契約で決められているわけですけれども、あえてそれを2つに区 分して、労働法の適否となるかとってまとめてみます。
     「働き」の例としては、有期雇用と無期雇用がありますし、一般時間労働と短時間労働があります。あるいは解雇・雇止 めの条件は違いますし、就業場所も、引越が必要な就業場所の変更があるかどうかとか、引越まではないけれども、就 業場所が変わる場合があるとか、所定外を超えても、要するに残業してもらうのかどうかというようなこと。それから労働 関係法制では、所定労働時間と時間外労働を区別しているので、こう書いておりますけれども、実質的には同じだと思い ます。そのほか変形労働時間とか、フレックスタイム制、裁量労働制、これをどう見るかという論点もあるかと思います。一 方、休憩時間、安全衛生、母性保護、労働災害補償、これは誰でも共通ということで検討の対象外としてはいいんじゃない かと思います。
     それから次に「処遇」の例ですが、実務上名称ではございませんで、実態に合わせて分けているんですけれども、名称 だけを見ますと、まず賃金は、いろいろあるんですけれども、議論になりそうなのは、例えば定額給の年齢給ですとか、あ るいは職能給、あるいは出来高給の能力給とか、次の真ん中辺の諸手当の中の生活手当でございます。この中の家族 手当とか、住宅手当、地域手当、通勤手当、この辺が議論の対象になるのではないかと思います。
     そのほか、年俸制というような観点もありますし、それから福利厚生、企業施設・業務費もございますし、それから昇格・ 降格については、女性は遅いというような議論もありますし、年次有給休暇はパートはもらえないというような議論もありま す。それから、教育訓練は女性には手薄いですとか、昇進も女性は遅い、こんな議論があります。
     こういった概念をもとにして、「働き」の内容は果たして合理性があるのかどうかというようなことを例として述べてみま す。あくまでも例でほかにもたくさんあると思います。
     まず、有期雇用に関して、現状では、短期時間労働者がほぼ有期雇用者に等しいというようなとらえ方をされていると思 うんですけれども、これは季節的な業務の変動に対応するということであれば、一定の合理性があると考えていいのかも しれませんし、あるいは合理性がないのかもしれません。それから賃金との関係なんですけれども、有期雇用契約、これ は経済学の考え方では、長期間にわたって拘束されないので、賃金等は低くなる。こういう考え方になるのかと思います し、一方の議論としては、有期雇用契約は雇用が保障されている期間が短いので高くすべきだと、こういう主張もあるわけ でありまして、これをどう整理したらいいのかという問題もございます。結局、有期雇用契約が繰り返されて、期間の定め ない雇用契約と実質的に同じになっていることが問題なのかもしれません。
     それから、短時間労働については、子育て等を夫婦の一方が担わざるを得ないようなことから生じている問題かもしれ ませんし、短時間労働という形態の存在自体はフレキシビリティ確保の上では労使双方にとって合理性があるかもしれま せん。それで、賃金が一般に低いのは、需要に比して短時間労働者の供給が多いからなのかもしれませんし、あるいは 短時間労働者を一括りにしているから供給量が多いように見えるだけで、先ほどaパート、bパートを一緒くたにしてその 賃金を想定していましたけれども、実は分けた上で、短時間労働者の能力評価をもっと段階的に差を設けるというようなこ となのかもしれません。それから、所定外労働時間を余り求められないのは、短時間雇用という性格からして当然なのか もしれません。
     それから解雇等の条件ですけれども、期間に定めない雇用というのは、現在の法制
     度では解雇しにくいので有期雇用に変えられている。これが問題なのかもしれません。
     それから居住場所に変更が必要な、引越が必要な就業場所の変更の有無。これが合理的かどうかということですけれ ども、あんまり合理的な理由というのは差が見つかりにくかったし、それから、実際に引越があるような転勤を頻繁に行う 労働者というのは大企業のごく一部、特定の企業に限られるような感じもいたします。一方で、こういった条件が明確にさ れていなくて、ただ単に正社員は転勤があるというようなことだけで区別しているのかもしれません。処遇への合理的な反 映が当然行われないことになっているのかもしれません。
     それから所定外労働の方ですけれども、突発的・緊急的な業務の発生に備えて、所定外労働を行うことを命じることが できるとか求めるのは、これはこれで一定の合理性があるのかもしれません。社会全体で見てもよく言われることなんで すけれども、日本の場合には、まず労働時間を調整して、それから人員の調整に入ると、これが結果として失業者を減ら していると、こういうような評価も社会的に見ればされているわけでございます。こういうことで仮に所定外労働の一定の 役割からすると、そういった場合に対処するためのサポート体制を考えるというようなこともあるのかもしれません。
     そしてこういう調整メカニズムがうまくきかくなくなったので、有期雇用契約とか短時間労働者へのシフトが進んでいるの かもしれませんし、一方で、単に条件を明確にしないで、正社員には残業があると漠然と言われているだけで区別が行わ れているだけなのかもしれません。それから所定外労働が、これが緊急的というよりも恒常化している場合、労使双方に ついて合理的ではないのではないかと思います。というのは、経営者にとっては時間外労働賃金は高いですから、残業は 少ない方がいいわけで、それは別に人を雇って通常の時間帯で働いてくればいいということになると思います。もし、これ が一般的であるということであれば、働き方自体を見直す必要があるであろうと。
     それからあと、よく言われるのは勤務時間終了後の会合等に参加しないと、なかなか仕事ができないので、実質的に残 業をやっているのと同じでということはよく言われるんですけれども、これは必ずしも合理的とは言えないのではないか。
     それから、次に「処遇」の例を述べます。一般に「働き」を客観的に評価するシステムはないのではないかということもあ ると思います。それから、その前提として「働き」の内容がどうで、それをどういうふうに合理的に区分しているのか、これを 明示されていないような気もします。それから長期雇用慣行、これが日本の場合では前提となるわけですけれども、特に 昇進がそうなんですけれども、評価が長時間かけて行われるので、有期雇用契約者というのは正当な評価はなかなか行 われにくいのではないか、こういう考え方もあると思います。
     それから賃金については、これは後で詳細に検討しますけれども、特定のライフスタイルを前提とした賃金制度はよくな いのではないかというようなことはあると思います。
     それから年次有給休暇、パートタイマーは年次有給休暇をもらえないということなんですけれども、仮に、有期雇用契約 は今1年超えられませんので、そもそも年次有給休暇という形で休暇を設定するのは合理的ではないのではないかという ようなことがあると思いますし、それから教育訓練についても、有期雇用契約で期間が1年以内ということであれば、教育 訓練の内容を限定せざるを得なくなってしまうのではないかと思います。
     それから昇進についても、有期雇用契約が1年以内ということであれば、昇進は1年ではなかなか難しいのではないかと いう感じがいたします。
     以上、思いつくようなことを述べましたが、まとめとしましては、こういった「働きに見合った処遇」の「働き」と「処遇」を、働 き方とか生き方を含めて根本に立ち返って合理的かどうかというようなことを一度考え直してみる必要があるのではない かと思います。その際に、委員の方から御指摘いただいているような女性労働者が二極分化してしまうのではないかとい う懸念もありますし、あるいはライフスタイルのあり方そのもの、これも含めて検討しなければいけないというのは繰り返し 申し上げているとおりでございます。
     それから次に家族手当とかフリンジベネフィット、ある程度これは方向性のある議論をいただいていると思います。具体 的に申しますと、今までは賃金、フリンジベネフィット、退職給付だとかをお仕着せで企業は決めていましたけれども、従業 員の選択を拡大する形に切り替える。その際税制や、社会保険料の算定方法が企業、被用者それぞれにとって中立的に なることの検討が必要だということであります。方向はこういうことで御議論いただいていると思います。
     では、実態はどうかということで、まず企業側から見た労働費用がどうなっているかですが、内訳は「現金給与」が 81.6%、「それ以外」が18.4%ぐらいでございます。現金給与以外で何があるかといいますと、一番多いのが法定福利費 で50%、次が退職金、次が法定外福利費、こんなところになっているようでございます。
     それから、福利施設とか制度を企業規模別に見ると、大企業ほど充実しており、具体的な内容を見ると、「カフェテリアプ ラン」というのは0.7 %で非常に少ないです。多いのが「労災付加給付施策」だとか、「自己啓発援助施策」、「社宅施策」、 「文化・体育・余暇施設」、「健康維持・増進対策」、このあたりが多いようでございます。
     それから、諸手当でございますけれども、実際に支給されている賃金のうち、諸手当は、14.6%くらいあります。何が出て いるかということなんですが、一番多いのが「家族・扶養手当」で77.3%、「通勤手当」で86.6%、「役付手当」が85.2%で す。次くらいに当たるのが「住宅手当」、「精皆勤、出勤手当」、「技能・技術手当」、こんなところかと思います。
     では、税制の現状がどうかということでございますけれども、議論のポイントとしては、企業の側としては、法人税制上、 損金とみなせるかどうか。それから、労働者の側は所得税、住民税制上課税か非課税か、要するに収入に計上すればい いのかということが問題になりまして、これが中立的でなければいけないということになるかと思うんですが、こうした判断 なんですけれども、基本的に名称ではありませんで、実態に応じて行われまして、法人税の場合、例を見ますと、損金に 算入できない例というのをそこに幾つか並べてございますけれども、慶弔金とか、葬祭料とか、永年勤続者の記念品とか というのは入っていません。ただ実際上、損金とみなせるか、非課税かどうかとかというような判断は、個別の実態に即し て判断せざるを得ない面が大きい。
     カフェテリアプランの一例についての課税関係を紹介します。育児休暇補助とかボランティア休職、保育園料補助、これ は所得税法上課税、借り上げ住宅の利用は非課税、スポーツクラブ等の補助は課税、住宅利子の補給と人間ドック補助 は非課税、家族の健康診断補助は課税。なお、法人税法上は所得税法上非課税とされるものは福利厚生費、給与とされ るものは従業員に対する給与というようなことになっているようでございます。
     一方、社会保険料はどうかというと、これはほとんど含まれているようでございます。金銭によるものと、現物によるもの があるものがあるんですけれども、金銭によるものについては家族手当、住宅手当、通勤手当も全部入りますし、それか ら現物によるものでは社宅とか寮なんかも入ります。入らないものは大入り袋とか、見舞金とか解雇予告手当、退職金も あるんですけれども、これは性格上退職の時点でまとめて払うということですから、それはしょうがないかと思うんですけ れども、ほとんど入っているというのが現状のようでございます。
     資料の説明は以上でございます。
    大澤会長
    ありがとうございます。雇用システムについて、これも総括的に検討の素材を提供していただきました。雇用 システム全体についてはテーマも大きいので、来年以降も引き続き検討するというふうに我々合意しておりますけれども、 年内の取りまとめで言及できるところはどういうところなのか、すべきところは何なのか、具体的な御意見や御質問をいた だきたいと思います。どうぞ。
     やっぱりポイントは「働きに見合った処遇」でしょうね。
    坂橘木委員
    三菱総研のシミュレーションの仕事を今日初めて拝見して、非常にいい研究だなと思ったんですが。
    大澤会長
    ホームページをダウンロードしたのはこちらにございます。
    坂橘木委員
    ざっと見た感じ、これはパートタイマーの賃金を上げて、フルタイマーの残業が減るという相殺をやっている わけですな。フルタイマーはこれに対して何も意見を言っていないわけでしょう。意見を言っていないということは、「ああ、 そうか」と、なら、パートタイマーに譲るよということを暗黙の了解をしているわけですね。でしょう。
    事務局
    了解といいますか、そういう結果を三菱総研でだったとうことです。
    坂橘木委員
    そこは実際にインプリメントするときに、フルタイマーは、そこまでイエスと言ってくれるかというようなことが 私は気になりますけどね。この不景気の折り、所得が減っているのに、俺の所得をもっと減らすのかという抵抗はありそう に思いますけれども、実際のインプリメントの話ですよ。私はこれでいいと思いますけどね、この案、非常にいいと思うけ ど。
    大澤会長
    時短はしないで格差だけ縮小するというケースをやっていないわけですよね。時短をして格差は縮小しな い、両方するという、それから全部現状維持というのと、この3つのケースですから。時短はしないで格差縮小だけすると いうのは取り上げていない。
    坂橘木委員
    フルタイマーのオーバータイムの時短をやるわけでしょうか。それともフルタイマーの処遇は全然変えないん ですか。
    事務局
    フルタイマーの処遇もワークシェアリングということで、いずれのケースも短くしているケースしかやっていませ んですね。単独で賃金格差を縮小したケースというのはいろいろ取り寄せてみたんですけれども、載っていませんでした。
    大澤会長
    それから、どうやって格差を是正するのか。正社員を下げるのか、パートを上げるのかという疑問が出てくる んですけれども、公表資料の方を見てみますと、パートの賃上げすると書いてありますから。
    坂橘木委員
    フルタイマーの超過勤務カットで対処するんじゃないですか。上はこれだけ下げて、下はこれだけ上げるとい うことなんじゃないですか。下だけ上げたら、これは企業にとっては労働費用が増えて絶対賛成しないでしょう。
    大澤会長
    労働費用については、こちらのホームページのダウンロード版の方。10ページぐらいにのっています。
    坂橘木委員
    フルタイマーの犠牲は多少はあるけれども、基本的には企業にとっては労働費用の増加につながるんだけ れども、それだけ労働者は所得が増えたことによって消費が増えるから、それで補いましょうという。
    大澤会長
    生産増で吸収する。
    坂橘木委員
    生産増で結局うまくいきますよという考え方ですね。今ざっと見た感じにおいては。それは私は納得しますけ どね。連合はフルタイマーの賃金カットは賛成しないでしょう。
    福原委員
    カットとは言えない。
    坂橘木委員
    カットは言わない。
    林委員
    均等待遇というか、いわゆる時間比例的な考え方までいった場合には、それは今の正社員の年齢加給的な賃 金のところというのは、このままでいいとは言えない。
    坂橘木委員
    そっちの方で対処ですか、なるほど。
    林委員
    そういうのは出てきていますけれども、その手法をどこからどうやっていくかといえば難しいですね。議論が全 然落ちついていないです。
    福原委員
    もう一つは二極分化というふうにもとれるけれども、反対に正社員、準社員、パートタイマーというふうにグ レーゾーンが増えるという可能性もあるんですよね。実態的には。先ほど事務局がフリンジベネフィットの中立性を説明し ていたが、カフェテリアプランのメニューのあるように、税制とか、社会保険料とか、あるいは退職手当の算定そのほか含 めて、これをそろえるというのは容易なことじゃないんですよね。少なくともこの部会でやれるべきことではないのですよ ね。だから、現状をどのように整理するかということなんですね。
     それからもう一つ、昇進が遅れるだとか、教育の機会が足りないとか、こういうのはもう機会均等に遡って参画以前の問 題として、もう判例なんかで次々と出てきているわけですからね。これはむしろ今の傾向をもっと促進するというか、後押し するようなことを書いておけば、問題点として挙げることはないのではないかという気がするんですね。
    林委員
    これから議論を本格的にするということで、今回この部分についてそんなにたくさんは書けないと思うんです が、処遇の合理性・非合理性の中で「働き」の評価システムの問題は、やっぱり今回の報告の中でも出しておいた方が私 はいいと思っているんですけれども、「働き」を客観的に評価するシステムがないということと、その前提になっている「働 き」の内容が合理的な区分理由とともに明記されていないという、ここのところはとても重要なことのように私は思うんです ね。ここの中身を細かく検討するのは今後になるとしても、この事実は私はそのとおりだと、とても強く思います。
    大澤会長
    働きに見合った処遇というのは、成果主義とか、業績主義と言われるものとは、同じように聞こえるとしても、 違うものなんですよね。
    坂橘木委員
    むしろ職能給的な考え方ですか。
    大澤会長
    そうですね。だから、どの程度の教育訓練、経験が必要で、どれだけインプットしているのかということですよ ね。成果主義というのは、アウトプット、アウトカムが出たかということだから、100 の能力のある人が100 を出したというと きに、50の能力のある人が51を出したというのは、51対100 という処遇になるんだけど、日本の企業というのは、今までは 50の能力の人が頑張って53ぐらいやったというところを評価しようというのはあったと思うんですね。これをただの成果主 義、業績主義にしてしまうと、能力ある人は大して頑張らないで100 出したときに、やっぱり50対100 だというふうにすると いうことであるとすれば、それはこの働きに見合った処遇というのとは違う。むしろ頑張ったというところ、すごく入れ込んで いるというところも見ようというのが「働き」という言葉には含まれている気がするんですけれども、林委員、その辺、いか がですかね。
    林委員
    そこのところはかなり言いにくいところもありますけれども、働きに見合ったというのが、今50の人が53ぐらい頑 張れば評価していくというのが日本の考え方だったというふうに先生がおっしゃったんですけれども。
    大澤会長
    そのときに性差別はあるんですけれども。
    林委員
    そこに性差別がある問題と、そこの50のところを53ぐらい頑張ったというのは、何によってそれをやっていたか というと、これは経験年数というようなもので出していたのではないかと思うんですね。50歳になって30年間働いたからと いって余り能力は発揮していないけれども、ここまで頑張っているということによって賃金が上がっているという、そんな形 で見られていると思うけれども、そこはやはり見直していくことになるのではないかと私は思っています。かなり時間をかけ ていくことになるんだろうなと。
    大澤会長
    コンペーラブルワークスとか、ペイエクイティーというときには、教育、訓練、経験、それからすごく気配りが必 要だとかという仕事への入れ込みというので見ますよね。同一価値労働というときに。生み出したものというよりも、イン プットというところをかなり重視するわけですよね。ですから、我々が働きに見合ったというときも、アウトプットよりはイン プットというところに重心があるのではないかという気はするんですが、その辺、まだ議論は十分しておりません。
    林委員
    必ずしもアウトプットとして見られない種類の仕事も結構多いという。
    大澤会長
    あります。チームワークでやっている場合には、誰のインプットがそのアウトプットなのかというのはなかなか 難しいですからね。
     先ほど有期雇用契約は、長期間に渡って拘束される契約ではないので、賃金等は低くなると考えてよいのかという話が あったが、長期間にわたって拘束される契約というのは今あり得ないことになっているので、期間の定めのない契約という のは長期間拘束するという意味ではないですよね。やめるのはいつでもやめていいんです。企業が首にするときには、解 雇4要件というのを満たさなきゃいけないけれども。
     また、口頭での御説明では、パートの人も結構残業しているという御説明があったと思いますけれども、従来のパートタ イム労働者総合実態調査でも、かなりパートでも残業していると出てきている。この間いただいた最新の結果で、どういう トレンドだったか見ていないんですが。
     それから、フリンジベネフィットのところも非常に詳細に検討の材料を説明していただきました。カフェテリアプラン、これは 我々は中間報告では基本給に振り替えるみたいなことを書いたんだけれども、そうじゃなくて、メニューを企業は提示して、 そこから選べるというのが適切であろうとなっていったときに、ただ、どれを選んだかによって税金のかかり方が違うとなる と、またそれもというので非課税・課税というのをたくさん出していただきました。社宅に入るということがいかに有利なこと なのかということがよくわかりますね。
     独身寮は女性用の独身寮もあれば別ですが、普通社宅と言ったときには、入れる、入れないで世帯主でないととか、主 たる生計維持者でないとという条件があったりすると、そこにはジェンダーバイアスといいますか、そういうものがあるとい う、それがまさに非課税になっている部分であるというのはございますね。
    坂橘木委員
    ほとんど男性が社宅に入るというわけですか。
    林委員
    世帯主要件が大体ついているんですよね。
    坂橘木委員
    そういう意味で非中立なのか。というか、女性の世帯主というのがあんまり世の中に存在していないというこ とが原因になるわけですな。
    林委員
    だから、世帯主というのは、その要件がなければ、私が民間の社宅のある会社にもし勤めているとしたら、夫の 会社になければ、入ろうと思えば入れるけれども、今、世帯主という要件があれば、私は適用にならないというものが出て きているんですね。
    坂橘木委員
    そうすると、世帯主という要件を外すぐらいの措置はあってもいいというのが出てきますね。選ばせるわけで すな。夫か妻かどちらかが社宅に入る資格があれば、夫か妻かどちらでも選択するような余地を入れろというわけです な。妻が社宅のある企業に勤めていて、夫が社宅のない企業に勤めていたら、そのケースは今の場合では使えないわけ ね。そういうことですな。
    大澤会長
    世帯主要件があればですね。
    坂橘木委員
    世帯主要件というのは、企業では結構強いんですか。
    林委員
    大抵あるように思います。聞いているのではね。
    坂橘木委員
    これはジェンダーバイアスということが言えるな。
    福原委員
    それは社会保険の個人別ということも同じようなことが起こるわけですよ。個人単位という考え方はね。借り 上げ住宅ところで、今気がついて変と言えば変だなと思ったんだけれども、法人が一定の算式で計算される通常の賃貸 額以上を徴収している場合に限るというんだけれども、確かにこれは安く貸していたら贈与になりますね。だけど、法人が もうかっていたら、これは法人の個別所得に入るんですかね。
    大澤会長
    通常の賃貸額というのが世の中の貸家の家賃から言うと非常識に安いんですよ。大体の場合は。
    福原委員
    そうですか。
    大澤会長
    中間報告の13ページにものっていますが雇用システムアンケート結果というのによると、社宅制度の採用 率は85.2%、世帯主であることを要件としているのが27.7%、本人の年齢、扶養者がいることなどで、これはばらついてお りますけれども、世帯主であることと扶養者がいることというようなあたりで、女性は社宅に入居しにくいというふうになって いると思います。
     まだ子育て支援の問題がありますが、どうぞ。
    林委員
    有期契約労働者の有期雇用は短時間労働者が非常に多いということはそうなんですが、季節的な業務の変 動等に対応する等のためとすれば、一定の合理性があると考えて良いのかというと、これは季節的な業務の変動に対応 するためだという例というのは、極めて少ないという実態を言った方がいいかなと思うんですね。そうすると、後ろに書いて ある短時間労働者は概ね有期雇用者であるということに合理性がないのかといえば、合理性はないというふうに言いたい という気持ちがあるんですけど。
    大澤会長
    パートタイム労働者総合実態調査結果によれば、ますます業務の繁閑に対応するためという理由よりも、 人件費を削減するためというふうにシフトしてきていますから。
    林委員
    通年的にある業務に対して、あえて有期をはめていっていることが、これは多くが女性であるということがどこ かに影響しているのではないのかなと私は思うんですね。補助的であっていい、たとえ、その人の仕事がなくなったとして も、調整されたとしても、すぐさま生活には困らないだろう、みたいなものがどこかに存在していないかなという気がするの だけれども、推測なんですよね。これは何か明らかにする方法があるならば、パート労働者の処遇の改善が進まない大 きな理由は、その辺にあるような気がしているので。
    坂東局長
    みんなそう思っているんですけれども、どう証明していいのか。
    林委員
    確かなものがないんですね。
    坂橘木委員
    平たく言えば、夫の給料があるからいいじゃないかということでしょう。
    大澤会長
    永瀬委員の博士論文の結論というのは、パートはパートであるという理由だけで、労働時間の長短に関係な く低賃金にされている部分がある、ということになると思いますので、ご意見が出たはずです。
    坂橘木委員
    しかも、パートは大半が女性であるという事実が付け加わるわけですね。
    大澤会長
    そうです。大半といいますか、労働時間で切ると68%ぐらい女性なんですけれども、パートという呼称です ね、呼び方で言うと、93、4%女性というふうになるんです。賃金が低いのは労働時間じゃなくて、呼称のところでついてい るというふうな分析結果になるので。
     本当にここは議論が尽きないんですけれども、来年以降もしっかり検討するということで、次に子育て支援については、 かなり中間報告に対して御意見があったので、ここで現状や考え方を説明していただき、若干の議論をしたいと思います。 お願いします。
    事務局
    まず、まだ細部チェックを要するところがございますが、出産休業や育児休業、保育に関して諸外国と比較しま すと、日本だけが目立って悪いというようなことはないと思います。大きな違いがあるのが児童手当でございまして、これも アメリカが特異で、私どもが調べた限りでは児童手当制度はないんですが、フランス、イギリス、スウェーデン、ドイツ、こ れも何歳までかというと、フランスが16歳、イギリス16歳、スウェーデン16歳、ドイツが18歳なのに日本は就学前までと。 それからフランス、イギリス、スウェーデン、ドイツは所得制限がないんですけれども、日本は所得制限があります。額を 見ますと、フランスが見る限りは一番多いと思います。次はスウェーデン、ドイツ、その次ぐらいにイギリスがきて、日本が 多分一番少ないと思います。それから、フランスの場合にはその他にありますけれども、おまけにプライオリティカードで、 子供が3人以上いる家族全員については鉄道運賃が割引になるということもやっているようでございます。これは一例で ございます。
    福原委員
    鉄道料金割引というのは、フランスは国鉄だからだという話、私鉄は適用されないとかという話はあります ね。
    事務局
    恐らくそうだと思います。
    坂東局長
    このプライオリティカードは、鉄道料金だけじゃなしに、ほかにも例として挙げられるのはあるんですか。
    事務局
    ほかにもいろいろとあるのかもしれませんけれども、とりあえず比較ができ上がったのはこの程度でございまし た。
     次に、中立性と少子化対策とか育児支援策、これは一度考え方を整理していく必要があるといいますか、何しろ初めて のものでございまして、考え方の整理自体がなかなかうまくいかなかったんですが、それを整理してみました。報告書に盛 り込むというわけでまとめたわけではございません。
     まず、少子化対策の概念を明確にしなければいけませんが、「子供も持つ・持たない」は、中立性の観点からあくまで国 民の選択に委ねるべきで、現行の制度が「子供を持つ・持たない」で中立的であるとして、さらにその上で子供を持つこと を有利にするというのは、中立性の観点から問題があることになるんですが、ただその場合でも、中立性より上位の選択 目的というのは当然あり得ると思います。例えば、国力を強めるとか、年金の支え手が増えるとかいろいろあると思いま す。国民がそのような政策をとることを合意した場合は、恐らく少子化対策なのではないかと思います。
     問題は、現行の制度・慣行が「子供を持つ・持たない」の選択に対して中立的でない場合であって、こうすると中立性の 分野からも検討できるかと思うんですが、そうい
     場合は少子化対策とか支援策というよりも、むしろ中身が重なっても「中立化策」という用語を使った方がいいのではない かと思います。
     具体的にどうするかは、中立的かどうかということの評価が鍵になると思うんですが、まず、やり方として意識調査に よって選択行動に影響を与えているか、これをまず見て、次に、特定の制度・慣行が2つの選択肢について税収、年金額 とか、そういった特定の結果についてどんな結果をもたらすか、こういったやり方があると思います。
     具体的に税制なんですけれども、税制が「子供を持つ・持たない」の選択の影響を与えているという結果は恐らくないと 思います。103 万円を超えて働くか否かというのも明確にこれは影響が出ているわけですけれども、「子供を持つ・持たな い」に影響を税制が与えているという証拠は多分ないんだと思います。そうしますと、次の段階で、納税額を比較するわけ ですけれども、単に納税額だけを比較すると、扶養控除とかありますので、子供がいた方が納税額が少ないので、子供を 持つ方を優遇しているということになるんですけれども、必ずしもこうふうにはなりませんで、個人的には受けている便益と か、コストも加味しなければいけないということになるのかと思うんですけれども、必ずしも容易ではないと思います。
     それからこの際、社会的便益とか、コストを考慮すべきという議論もあると思います。社会的便益というのは、例えば財 政の支え手が増えるとか、あるいはコストというのは、財政の支え手が減るとか、こういったことまで考慮し出すと、中立性 の問題というよりも、かなり上位の政策目的を考えているのと同じになると思います。ということで、税制が「子供を持つ・持 たない」に中立的か否かというのは結構評価は難しいと思います。
     それから社会保障制度も、これは年金に限って見ると、これも税制と同じように、年金制度が「子供を持つ・持たない」に 与えている影響というと、恐らくないと思います。厚生年金の加入限度額の130 万円が働く・働かないに与える、これは明 確に影響を与えているんですけれども、子供を産む・産まないには影響は恐らく与えていないんじゃないかと思います。と いうことで、年金受給額とかは納める保険料を比較すると、基本的には子供を持つかどうかに影響しませんので、そういっ た意味では中立的とは言えるのでしょうけれども、税制と同じように個人的な便益とか、コストも加味しなければいけないと いう同じような問題がございます。
     特に保険料免除ですが、子育てしているもの全体に保険料を免除するということは、公的年金制度が子供を持つのに不 利になっているという観点からは言及できるかと思うんですけれども、そうでないと難しいと思います。
     税制、社会保障は結構こういうふうに難しいんですけれども、雇用システムについては、働いて子供を持つという選択肢 をaとすると、これは明らかに選択するのが困難でございますから、そういう意味ではみんな働いて子供を持たないという 選択肢これをbとし、子供を持つけれども働かないという選択肢をcとすると、みんなbかcの方に流れているということで、 今それらを選択せざるを得なくなっているわけですけれども、これを中立化させるためにaという選択肢を選びやすくする というのは、「中立化政策」といえるのではないかと思います。これは言ってみれば、仕事と子育ての両立策ですけれど も、ということで、社会保険料の免除も育児期間中は免除というのは中立性の観点から言えるんじゃないかと思います。
     それから、高尾委員などの御指摘があるんですけれども、何かよくわからないんだけれども、外国に比べて日本の社会 全体が子供を持つことにやさしくないということを、恐らくそうだろうと思うんですけれども、結構これは具体的な証拠が必要 なような気がします。
     ということで、まとめますと、中立性の評価とか、今後検討すべき要素は多いんですけれども、少なくとも「仕事と子育て の両立策」は、「中立化策」ととらえるんじゃないかということでございます。
     児童手当ですとか、児童向けの先ほど出ました税額の控除とか、これをどうとらえるかなんですけれども、少子化という 理由を持ち出して、中立性の観点から報告書を書くのは難しくて、むしろ現行制度を改革することに伴う中立性の維持とい うような、こういう書き方になるのかなと。少子化対策が必要だから中立性の観点から必要ということではなくて、現行制 度から改革を提唱しているわけですけれども、それをやった際の変更後の措置と比較してなるべく中立性を維持する、こ ういうロジックになるような気がいたします。
     以上でございます。
    福原委員
    税制の問題ではなくて、補助金の手当なんですよね。それはこの調査会の問題では必ずしもないと。
    事務局
    少子化対策だからというのは言いにくいんですけれども、現行の制度、例えば配偶者控除をなくしてしまった状 態で、それでいいかというと、例えば、補助金や、あるいは児童手当などで支給するという形は必要だというようなことは言 えると思います。
    福原委員
    その程度。
    事務局
    と思います。
    福原委員
    言っていただいた方がいいかもしれませんね。
    林委員
    雇用システムにかかわって「子供を持つ・持たない」の選択に中立的であるか否かについて非中立性をもたら している場合があるかという問いに対して、私は労働時間の問題が一番大きいような気がするんですよね。それはデータ を出さずとも書いてもいいんじゃないかという気がするんですけれども、影響を及ぼしていることとして。
    坂橘木委員
    もうデータが出ていますよ。30代の男性の超過勤務というのはものすごいですよね。
    林委員
    それは一番子育てにかかわる必要のある年代が長時間労働で出ていますね。
    坂橘木委員
    長時間労働というのは事実だから書いてもいいんじゃないですかね。
    林委員
    あの働き方を女性もしなければいけないとすれば、とても子供が育てられない、産めないということというのは かなり大きいような気がするんですよね。
    大澤会長
    あとは通勤時間というのもあるかもしれません。
    坂橘木委員
    それもある。
    大澤会長
    通勤時間というのは、要するに保育所から子供をピックアップする時間というのとかかわってくるので。
    福原委員
    日本経団連が今スタートしたばかりですけれども、保育所の増設に対して何ができるかということの検討を 始めましたね。
    坂東局長
    企業内保育所等についてですか。
    福原委員
    駅前あるいは駅内。
    坂東局長
    それは全部企業の方が運営をなさるという。
    福原委員
    ええ、そうです。そういう考え方で検討を始めたわけです。
    坂橘木委員
    ひとつ気になるのは働かずに子供を持つということは専業主婦ということですよね。ところが、統計は働いて いる女性の方が専業主婦よりも出生率が高いんじゃないですか。やや高いんですよ。
    福原委員
    ややね。だから、それは有意差があるかどうかはわからない。
    坂橘木委員
    わからないが、少なくとも、働かずに子供を持つという選択が世の中で蔓延しているというふうには言えない と思います。
    坂東局長
    働かないで子供も持たない人が増えているんですよね。
    大澤会長
    そうですね。結構それが増えている。皆さんお気づきだと思うんですけれども、昨日の朝日新聞の朝刊に、 育児の社会化という大きな記事があって、神野委員も有識者としてコメントしています。ここに掲げられている児童支援策 の水準は我々のワーキングチームの一員である埋橋さんの著書の中からとられていますけれども、この場合には、扶養 控除とかそういうものも入っておりますし、それからサービスを金額に換算した上で、子供のない世帯の可処分所得と比 べて子どもがいる場合の負担というのがどの程度支援策で軽減されているかというものの数量化をして、それで国をラン キングするというような研究があるんです。ただ、これは住宅費用と教育費用を控除する前なんですね。もしそれを控除し てしまいますと、日本は児童支援パッケージがマイナスになる。明らかに子どもを持つということが罰されている、処罰され ている社会だというふうに言えるわけなんです。そういう意味では「子どもを持つ・持たない」の選択に対して中立でない大 きな制度というのは、教育費用を軽減していない学校教育制度、主として高等教育ですけれどもね。住宅費用の軽減とい うのがうまくできないようになっている住宅政策、これは持家政策というのと関係があるんですけれども、そっちの方が問 題だというような話になるんですが、ただ、我々は単なる中立性を見るというのはではなくて、男女共同参画社会の形成 に及ぼす影響というところでの中立性を見るわけですから、「子どもを持つ・持たない」の選択に対して制度が単に中立で ないということだけでは、「子どもを持つ・持たない」ということが男女共同参画社会の形成にどういう形でかかわっている のかということも重要なんですよね。
    高尾委員
    すみません、今のこと、ちょっとわからなかったんです。「子供を持つ・持たない」ということが男女共同参画 にどういう、その2つの関係を明らかにするということについて、もう少し説明していただけますか。
    大澤会長
    子どもを持ちたい人が、持ちたいときに持ちたい人数だけ持てる社会というのは、男女共同参画社会という よりも、もっと以前の人権が満たされているとか、そういうふうなことなんじゃないかと思うんです。子どもを持つということに 対してすごくパニッシュがある社会なんだけれども、それは男女共同参画社会としてどうなのかというのは、ちょっと幾つ かクッションを置かないと、その辺の見極めが難しいのかなという気はするんですね。
    林委員
    やっぱり働いて子供を持つところにかかわって話をもっていかないと。労働に参画をしていくということを女性が 選ぼうとするときに、子供を持つという選択をした場合に、どのような中立でないものがあるかというように、そういう意味の ことをおっしゃっているですね。
    大澤会長
    そうですね、はい。
    高尾委員
    女性だけでなくて、男性もですよね、同じように。今のように……。
    大澤会長
    児童支援パッケージがどうなっているのかというのを世帯として見ていますからね。
    林委員
    労働時間というのを私が出したのは、労働時間が6時間であるならば別に男であるとか、女であるとか言わなく ても子供を育てることができるけれども、今8時間とか、あるいは9時間、10時間という前提があると、どうしてもそれを短く して、迎えに行って育てるのは女というふうになってしまうから、そこで制約されてしまうという、こういう影響が出ているん だと思うんです。
    高尾委員
    だから、男性の労働時間ももっと短いものであれば。
    林委員
    そうしたら、男性と同じように女性が働いて、職場で同等の能力発揮をしても、そのことが子育てとか、子供を産 むということに影響を与えないのではないかというふうに思うんですけど。
    坂橘木委員
    もう一つは、子育てのウエートに女性が過重に負担を強いられているということは、ここの調査会で言えるこ となんですか。男ももっと子育てに参加しろという主張は、お二人の言いたいことはそんなふうに私は理解しましたが、言い 過ぎですか。
    林委員
    例えば、育児休業男女適用があるけれども、日本の場合はスウェーデンのように30%も男性がとっていない。 とっていない理由は何かといったらいろいろあるけれども、1つには、女性の方が賃金が安いとかということも……。
    大澤会長
    賃金格差が大きい。
    林委員
    格差が大きいということも影響している。
    坂橘木委員
    男が休んだ方が所得の減少率が高くなるからね。それは是正しなければならないというのは出てきます。で も、男が育児休業をとる率が0.何%という最大の理由は、男は育児をやりたくないという、できれば女にやってほしいという ことを言うからなんじゃないですか。でも、そのことをここで言っていいかどうかは私にはわかりませんが。言った方がい い?
    高尾委員
    若い方はそうでもないみたいですよ。30代、20代となると、僕も子育てをしたいんだと、ところが実態としてで きないと。
    坂橘木委員
    会社が忙し過ぎてできない。
    林委員
    データでは、「したい」という割合は結構多かったですね。
    高尾委員
    はい。かなり切実にあるんじゃないかと思うし、その気持ちはうそではないだろうと。そういうふうな制度が整 えばというところはあると思いますよ。
    大澤会長
    もう時間が来ておりまして、短いディスカッションでしたけれども、まだまだ課題が多いというのがこの少子化 対策とか育児支援等への言及の仕方だと思います。
     それで、あとは資料紹介でございます。前回、各都道府県の合計特殊出生率のデータというのを紹介していただいたん ですけれども、このたび新しいデータをつくっていただきました。簡単に説明していただけますか。
    事務局
    これは労働力率を全年齢じゃなくて、育児期の30~39歳過ぎに絞ったものでして、前回のものに比べてかなり 直線化しています。沖縄、東京がアウトライヤーで、奈良が一番左端というのは変わらないのですが,この前一番右に あった長野は真ん中辺に落ちてくるということで、要するに高齢女性の労働力が高いということだと思います。これが1つ でございます。
     ついでにもう一つですけれども、お手元にお配りしてある「21世紀出生期縦断調査の概況」ですが、子供が生まれて何 割ぐらいが仕事を続けるのか、これがなかなかいいデータがないと申し上げたんですが、4ページのグラフを見ていただく とわかるのですが、出産1年前と現在、きょうだい数1人という本人のみという初子のケースです。出産一年前に有職だっ た者の現在の状況で、現在も「有職」なのは32.2%で、ほかは「無職」ですから7割近くがやめているということになりま す。ほかにもいろいろおもしろいデータがあるんですけれども、そこが一番ポイントかと思います。
     以上でございます。
    大澤会長
    ありがとうございました。今の説明について御質問や御意見をいただく時間はないんですけれども、全年齢 労働力率に比べて少し傾きが小さくなってしまったですけれども、依然として、これは正の相関というふうに言えそうです ね。
     ありがとうございました。それでは今後も引き続き議論を進めていきたいと思います。
     最後に事務局からの連絡をお願いいたします。
    事務局
    次回ですけれども、12月9日。そのほか予備日とかということはまた会長と御相談させていただきたいと思いま す。
    大澤会長
    11月の1か月間は私は在外研修という計画を立てていたので、11月に会議を設定していなかったんですけ れども、今日の議論の状況を踏まえて、11月のしかるべき時期にもう一度調査会をやらせていただくことがあり得るのか なと思います。事務局ともよく御相談をして、日程を12月9日まであけてしまっていいのかどうかも含めて検討した上で御 連絡をさせていただきたいと思います。
     あとは議事録案の取り扱い等ですね。16回の議事録案の修正をお願いします。
    事務局
    1つ、統計の入手の方ですが、やっと官報の方に載りましたので、使用の申請者にもうすぐお渡しできると思い ます。
    大澤会長
    それでは第17回会合を終わります。どうも今日はありがとうございました。

(以上)