第8回男女共同参画会議影響調査専門調査会

  • 日時: 平成14年2月22日(水) 13:00~15:30
  • 場所: 内閣府第3特別会議室
  1. 出席者
    • 大澤 会長
      大沢 委員
      木村 委員
      小島 委員
      神野 委員
      高尾 委員
      永瀬 委員
      林  委員
  2. 議事
    • (1) 税制・社会保障制度・雇用システムに関するヒアリング
         (報告者)(社)日本経済研究センター理事長 八代 尚宏
    • (2) 中間報告に向けた議論
    • (3) 自己評価マニュアルについて
  3. 議事概要
    大澤会長
    それでは、定刻が来ていますので、只今から男女共同参画会議影響調査専門調査会の第8回会合を開催 いたします。
     お手元の議事次第に従いまして本日の審議を進めてまいりますが、議事に入る前に、師岡委員の後任として本日付で 日本労働組合総連合会副事務局長の林誠子さんが影響調査専門調査会に属する議員に指名されました。林委員から 一言ごあいさつをお願いいたします。
    林委員
    こんにちは。御紹介いただきました連合の林誠子と申します。皆様方には11月の末の雇用システムについて のヒアリングというところで初めてお目にかかりまして、このようなことになろうとは考えておりませんでした。事情もよくわ からないままに大変恥ずかしいお話になってしまいました。そのことが今もずっと心に残っております。
     雇用システムについてもっと基本的なことをお話ししなければならなかったという恥ずかしさもございますが、精一杯労 働組合の立場で今後については皆さんと御一緒に勉強させていただき、意見の反映ができればと思っております。
     なお、本日は中労委の方の最後の仕事がございまして、八代先生のお話の途中で退席させていただきますことを、大変 申し訳ございませんが、お許しいただきたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。
    大澤会長
    ありがとうございました。よろしくお願いいたします。
     それでは、議事に入らせていただきます。本日はまず日本経済研究センターの八代尚広理事長から、税制・社会保障 制度・雇用システムに関してお話を伺うことになっております。その後、自己評価マニュアル案について議論を行い、最後 に中間報告についての議論を行う予定となっております。
     それでは、まず八代理事長からお話を伺いたいと思います。本日はどうもお忙しいところをありがとうございます。よろしく お願いいたします。30分ほど御報告をちょうだいできればと思います。
    八代理事長
    ただいま御紹介いただきました日経センターの八代でございます。よろしくお願いします。
     家族のライフスタイルに及ぼす雇用・税制・社会保障システムの影響ということでお話させていただきます。
     まず、何らかの報告書を出されるわけなので、その時には何故これが問題なのかということを書いていただく必要がある と思います。これは基本問題調査会の方での夫婦別姓についても、そもそも問題自体がないという意見が主たる反対論 でありますから、まずなぜこれが問題なのかを明確にすることが大事なわけです。それは一言で言うと経済社会環境の 変化ということだと思います。今の雇用慣行・税制・社会保障、いずれも過去の社会経済環境の下ではそれなりに合理的 であったものが、その後のさまざまな変化の中で次第に矛盾が大きくなってきた。それを是正するという、いわば構造改革 の一つとして考えなければいけないのではないか。
     具体的には、一番大きな変化というのは経済成長の持続的な低下ということです。今の世帯主のみが働いて家族を養う という一つの典型的な家族像というのは、高い経済成長の下で、企業というものがある意味で永続性があるという暗黙の 前提に基づいていた。企業が存続する限り雇用保障を守るということが、労働者とその家族の生活安定に貢献するという 考え方が大きかったと思われます。それは逆に言うと、経済成長が傾向的に低下する中で企業の平均寿命というのが短 くなり、あるいは産業構造の転換が早まると、企業による雇用保障自体の意味も変化します。特に片働き世帯というのは ある意味でリスクの大きな働き方でもある。仮に世帯主がリストラに遭えば直ちに家族は路頭に迷ってしまうわけでありま す。そういう意味では共働き世帯の働き方の方が、より安全な面というのもあるのではないか。もちろん世帯が片働きを 選ぶか、共働きを選ぶかは全く自由ですが、少なくとも、政府はそうした家族の選択肢の間の中立性を維持するということ が一番大事と思われます。
     ただ、現在の仕組みは御承知のように従来型の専業主婦世帯、これがかつては大部分であったわけですけれども、そ ういう人たちを政策的にも保護するようにできている。その結果、世帯の自由な選択肢を狭めているということが問題で あって、これは今後国際化、高齢化が進むとともに一層大きな問題点になってくることを言う必要があろうかと思います。
     右のグラフは企業の中で勤める年齢構成が急速に高まっておりまして、かつてのように一部のひと握りの中高年層、高 年齢者が、大部分の若年者との組合せであった時代から大きく変わって、高齢者の比率がどんどん高まってきている。そ ういう中で、今の年功賃金とか終身雇用の仕組みを維持することが難しくなっているということを言っています。
     それから、2番目の雇用慣行の方ですが、私は家族のライフスタイルの問題というのは雇用慣行の評価と密接な関係 にあると思います。これは日本の企業が、これまでは企業内訓練というものを重視しており、これは高い経済成長の下で は合理的な仕組みであったかと思われます。それで、企業内訓練を徹底的に行うためには当然雇用は保障しなければい けないし、または従業員が企業が与えた訓練を持ち逃げすることを防ぐために年功賃金という制度も必要になった。
     年功賃金というのはしばしば生活給と言われ、労働者の年齢が高まれば生活費がかさむから、それに応じて賃金を上 げるというような説明もあります。しかし、もう一つの要素というのは労働者を企業の中に閉じ込める効果ということで、一 般には賃金というのは若い時は個人の生産性よりも低く、40歳位を過ぎると逆に生産性よりも高いというような形で、生涯 を通じた後払い賃金という形になっているのではないかということであります。
     ただ、この関係を立証するのは非常に難しいわけで、生産性というのを客観的には測れません。したがって、右の方の 図では、これは間接的な証拠でありますけれども、年齢別に見た転職によって年収が増えるか減るかを見ているわけな のですが、若い層では比較的転職によって賃金が上がる。しかし、中高年層では逆に下がるという形で、企業の中と外と でいわば賃金の評価というものが違ってきている。そこから逆算しますと、左の図のような関係があるのではないかという ことであります。
     いずれにしても、こういう長期雇用保障、年功賃金という条件は男性が働き、女性が家事、子育てに専念するという家族 の中の垂直的分業関係と整合的な仕組みでありまして、そうした中で女性が働き出すことによっていろいろな矛盾が起 こってきているというのが現状ではないかと思われます。一言で言うと、雇用保障の代償として日本の労働者はさまざま な犠牲を払っているわけで、それが例えば人事移動にともない、職種の不安定性であるとか、働く場所の選択権の放棄で ある。あるいは、不況の時に解雇を避けるため、まず労働時間の調整をするために平時から長い労働時間を受け入れて いるというような形で、雇用保障はあるけれども、その代わりの代償もまた大きいのではないか。
     また、正規と非正規社員との間に、身分格差と言うべき賃金格差があるのではないか。これは逆に言うと、正規社員の 雇用保障を守るためには非正規社員は景気循環の中でのバッファーとして位置付けられるという形、あるいは年功賃金 というのは正社員だけに適用されるわけで、それがない非正規社員というのは年齢に伴って賃金格差が大きくなるという のが当然の結果になるわけで、それによって日本の男女間賃金格差が先進国の中では最も大きい。そういうようなことも この年功賃金と密接な関係にあるのではないかと思われております。
     ですから、今ワークシェアリングの議論が非常に盛んに行われていますけれども、そういう年功賃金をベースにしたワー クシェアリングというのはかなり難しいのではないかと思っております。通説とは逆に、私は日本的雇用慣行というのは効 率的だけれども不平等な仕組みである。それで、一般には逆で非効率的だけれども、平等な仕組みだと言われておりま すが、これはあくまでも正規社員の内だけでの評価で、パートタイムと正規社員の間、あるいは正規社員でも勤続年数が 短くなってしまう女性と男性社員との間では、今の日本的雇用システムというのはかなりの不平等性を内包しているので はないかと考えております。
     結局、今、起こっている雇用の流動化、あるいは働き方の多様化というのが必ずしも人々の生活の不安定さを高めると いう面だけではなくて、むしろ女性から見るとそれだけ中途採用機会が広がるという面もあるのではないか。それによって 出産あるいは子育てのために一度労働市場を退出したような労働者の場合に、正社員としての再復帰の機会がそれだ け広がるという面もあるわけです。そういう意味で、働き方の多様化へのニーズが高まっているなかで、長期雇用保障と いうのが文句なしによいシステムかどうかということが、今、とわれているのではないか。それは、男性と女性の間ではか なり意味が違っているわけで、世帯主の場合には雇用保障というのは問題なくいいことでありますけれども、世帯主以外 の労働者の場合にはむしろ中途採用機会の拡大という別の面も重視する必要があるのではないかということでありま す。
     それで、共働き世帯というものをどう位置付けるかということがこの場合に大きな問題だと思われます。これまでの日本 の雇用慣行ではいわゆる専業主婦世帯を標準に考えていて、いわば共働き世帯というのは例外的に考えていたわけで すけれども、これからの低成長、国際化、高齢化社会の下ではそれを逆転させて、共働き世帯がむしろ標準的な働き方 である。それで、世帯主が多くの所得を稼ぐ場合には、いわば一つの社会的なステータスシンボルとして専業主婦を持つ というような考え方に変えていく必要があるのではないかと思われます。
     これはグローバルスタンダードでもそうでありまして、先進国では多くの世帯は共働き世帯でありますし、日本もかつて は自営業中心の社会であればそうであったわけであります。途上国においてもそうでありますから、むしろ専業主婦世帯 というものの方が例外であって、それは過去の日本の非常に高い経済成長という夢のような環境の下で初めて一般のサ ラリーマンが、他の国ではステータスシンボルである専業主婦を持てたというような考え方もできるのではないかと思って おります。どちらにしてもそれは家族の自由な選択であって、専業主婦世帯を保護する政策というものが決して普遍的な 意味があるものではないということを強調したいということでございます。
     それから、最後に共働き世帯の増加と所得格差というところでは、上の図は夫がサラリーマンの世帯だけを見ますと、妻 も働いている世帯の方が傾向的に上回っていて、今やむしろ専業主婦世帯の方がどちらかと言えば少数派である。た だ、この関係は今後ますます乖離していくと考えられます。
     それから、下の図というのは、よく専業主婦世帯と共働き世帯を比べてどちらが豊かかという議論があるわけです。これ は私も自分でやってみましたが、決してそう簡単に答えが出るものではない。少なくとも平均値ではなく、分布で見る必要 があります。また、そこで大事なのは「専業主婦世帯」をどう定義するかということです。これは例えば第三号被保険者の いる世帯を専業主婦世帯と定義すると混乱するわけで、全く働いていない主婦の世帯と、被扶養者の地位を維持できる ぎりぎりのところまで働いているような世帯、それからフルタイムの世帯というように3つに分ける必要があります。それで 働いていながら第三号被保険者である人達を就業構造基本調査の97年での「共働き・パートタイム」に当てはめますと、 実は夫の所得の高い層では、この共働き・パートタイムが一番豊かな層であって、その次が専業主婦世帯、最後がフルタ イム世帯という順になります。
     ただ、これは所得の低いところではむしろ逆転するというような形で、一概には言えないということがあります。どちらにし ても、配偶者が働くか働かないかということは家計の所得水準では、必ずしもどちらが貧しいというものではないため、政 策的にも中立性を維持するべきではないかという結論になろうかと思われます。
     それで、時間もないので税制の方にまいりますけれども、もう1枚めくっていただきまして配偶者控除の問題がありま す。この配偶者控除の趣旨が、しばしば女性の家事労働の経済的価値に対する評価というようなことがマスコミ等では言 われています。しかし、政府の公式見解であります税制調査会が2000年に出した税制白書というものを見ますと、この配 偶者控除の趣旨というのは明確に、「納税者の担税力の減殺を調整するためのもの」と書いてあります。
     納税者の担税力が減殺するというのをもっと簡単に言いますと、専業主婦という存在は子どもと同じように何の働きもな いと言っているに等しいわけです。したがって専業主婦を持っている世帯主はそれだけ実質的な税金の負担力が低いた め、税金をまけてあげるという考え方であって、これは専業主婦に対してむしろ失礼な表現であるわけです。私はむしろ専 業主婦というのは、家事労働を通じて夫の生産性の向上に貢献しているという大きな経済的価値を生んでいるわけで、そ の部分だけ世帯の担税力が上がっていると考えても良いのではないか。それに対して、例えば、共働き世帯では、それだ け家事労働がおろそかになります。したがって、専業主婦の経済的貢献ということを正当に評価すれば、それは減税では なくてむしろ増税の対象であって、そういう市場では評価されない「帰属所得」に対して課税するという考え方が出てきて もおかしくないのではないかと思われます。
     ただ、帰属所得への課税は、非現実的でありますから、逆に「共働き控除」という考え方が出てもおかしくはないのでは ないか。共働きの場合は、専業主婦世帯と比べて、仮に同じ所得水準であっても、例えばクリーニング代とか保育料と か、いろいろな形で余分の経費がかかるわけですから、奥さんがきちんと家事労働で夫をサポートしている家庭よりもそ れだけ実質的な生活水準は低いというふうに考えてもいいぐらいです。そういう意味でも、現行の配偶者控除の考え方と いうのは、主婦を子供と同一の扶養の対象としているわけで、問題のある制度ではないかと思われます。
     それからもう一つは、配偶者控除の就業意欲に対するマイナスの効果です。従来は配偶者控除が配偶者が一定の所 得以上稼ぐと途端になくなってしまうことによる世帯所得の逆転現象を防ぐために「消失控除」という仕組みが設けられた わけであります。これ自体は一つの進歩でありますが、その時に何故、配偶者特別控除を新たにつくったのかという疑問 があるわけです。つまり、配偶者特別控除の部分だけをこういうふうに消失控除にすればいいので、なぜそれに別途35万 円も足して配偶者特別控除を設けたかという説明は全くないわけであります。
     それから、現在の消失控除でも完全に就業へのマイナスの効果というのはなくならないわけです。この仕組みですと家 庭の主婦が、配偶者がパートで5万円余計にもらいますと夫の控除が5万円減るわけであります。したがって、夫の限界 税率と同じ税率が実質的に配偶者の所得にかかるということになるわけで、そのマイナスの効果は夫の所得が高ければ 高いほど大きい。50%の場合は地方税も入れておりますので、かなり高い所得の水準の夫に適用されるわけですが、 もっと所得が低くても同じように女性が働くとそれによって世帯としての所得に対して実質的にかなり高い税率がかかると 考えていいのではないかと思われます。
     そういう意味で、マイナスの効果は依然として残っている。それから今、日本の所得税の課税最低限はかなり高いと言 われておりますが、仮に配偶者控除をなくせば夫婦のみでアメリカとかイギリスとそれほど違わない水準にまで落ちるわ けであります。
     それから、もう一つは配偶者控除自体の問題よりも、これが企業の配偶者手当と連動している可能性がありまして、そう いう意味でも配偶者控除がなくなれば企業の配偶者手当がなくなる一つのきっかけになるのではないか。当然ながら、そ の場合でも、例えば子どもの扶養手当とか、あるいは一般賃金の上昇と相殺するような形で労働者が損をするような形 になってはいけないわけでありますが、とにかく労働者の生産性とは別に一定の所得以下の奥さんを持っていることを理 由にした手当というのは、少なくとも企業の考え方からしても社会的公平性からも正当化はできないのではないかというこ とであります。
     それから、特に水平的な公平性ということで今、問題になっておりますのは、被扶養者の資格限度いっぱいまで働く、い わばみなし扶養者の問題でありまして、先ほどのグラフでもかなり所得水準の高い世帯でもこういうことをしているわけで す。これは一つは今の被扶養者の社会保険の定義が非常に甘いということもあるわけなのですが、これを何とかしなけれ ばいけないのではないかということであります。
     その次のパートタイム労働者の収入分布というのは、これもよく言われておりますが、大体100 万円ぐらいの壁を意識し て働いている。これは必ずしも今の税制とは整合的ではないのでかなり知識が古いという面もあろうかと思いますけれど も、とにかくこの100 万円の壁が一つのネックになっているということは事実だと思われます。この辺についてのもっと詳細 な分析は、例えば大竹文雄さんとか、いろいろな経済学者がやっておりますので省略いたします。
     それから、その次の9ページの図8というのは内閣府でやった研究会の資料でありまして、諸外国でもこういう被扶養配 偶者というような制度はありますけれども、日本のように優遇しているところは少ないのではないかという資料でございま す。
     それから、10ページの図11というのが社会保険の問題でありまして、今は被扶養配偶者というふうに認定される所得水 準というのが、働く人の労働時間と所得の2つの基準で決められているわけであります。それで、これが高過ぎるのでは ないかということなのですが、例えば130 万円という水準をもっと下げる、あるいはその4分の3の労働時間という基準を 例えば2分の1に下げるという形で、この第三号被保険者制度をそのままにしておいても、その対象範囲を狭めるというこ とは十分可能ではないかと思われます。
     それから今、問題になっているのはパート労働者とか派遣労働者への社会保険の適用問題です。これが大きな問題に なっているのは、労働者の就業抑制行動と同時に雇う方の常用代替の動きがあるわけであります。よく派遣労働者の問 題で常用代替を防ぐという趣旨がありますけれども、私は派遣よりこちらの方がよほど大きな問題だと思われるのは、明 らかに被扶養配偶者を雇う方が企業にとって社会保険料の事業主負担がなくなるわけですから、この点で非常に大きな バイアスがかかってしまう。それがある意味でフルタイムの仕事というか、そういうものの雇用機会自体が減ってしまうと いうことと同時に、働く能力と意欲を持っている配偶者の方が不本意ながらこういう被扶養配偶者の地位を維持するため に労働時間を短くしなければいけない。あるいは、労働時間が十分短くできないときは自ら賃下げを求める場合すらあると いう非常に無駄なことが起こっているわけで、こういうバイアスというのはできるだけなくさなければいけないのではないか ということです。
     それから、第三号被保険者の問題というのはあちこちで議論されておりますけれども、よく言われている議論というのが 例えば厚生労働省のペーパーなどを見ますと、確かにいろいろ不公平はあるんだけれども、例えば第三号被保険者を強 制的に適用すると保険料が取れない。したがって、その人たちが無年金者になるというような議論がある。今でも国民年 金の空洞化問題がどんどん深刻になっているわけで、それと一緒に考えなければいけないので、取れるところから取ると いう発想は税金でも社会保険料でも非常に問題であろうかと思います。それは、やはり空洞化問題に対して抜本的な対 策をとるという中で対応する必要があるのではないかということであります。
     それからまた、一部には女性の労働市場の格差がある。女性の賃金が男性よりずっと低いし、あるいは働く期間が短い というバイアスがある。したがって、機械的に社会保険の考え方を適用したら女性の年金格差というのが非常に大きくなる ということが言われるわけなのですが、これは年金に対してどこまで求めるかという問題でもあります。年金というのは一 つの社会保険としていわば老後の生活を保障する。特に厚生年金というのは、働いているときの賃金の一定比率の年金 をもらうという考え方ですから、働いているときの賃金が低ければ年金も低くなるという仕組み自体は避けられないわけで あります。
     ですから、それでもし、後で生活できないということであれば、それは福祉の世界の問題であって、年金をそういうふうに 労働市場の不均衡までカバーする万能の制度であるべきというふうに幅広くとらえてしまうと極めて複雑なことになって、 また別のバイアスが起こってくるのではないか。やはり私は男女の賃金格差の問題は先ほど言った雇用制度の問題から きているわけで、それ自体を改革せずに年金で対応しようという考え方には基本的な無理があるのではないかということ であります。
     それからもう一つは、今の第三号被保険者の問題で実はより大きな議論を持っているのは年金の給付水準をどうする かという考え方になってくるわけであります。本調査会はあくまでもライフスタイルに及ぼす社会保険の影響ということで議 論をしておられると思いますが、実は逆にこういう制度が年金改革あるいは雇用改革を妨げているという逆の面にも注目 する必要があろうかと思います。今の年金の給付水準というのは非常に大きな後世代負担を強いているという形で、明ら かに高過ぎるわけですが、これをどういうふうに削減していくかという考え方がまたこのライフスタイルのものと密接に関 わっております。
     それは結局、今の厚生年金の給付水準というのは夫の年金だけで老夫婦が生活する費用の大部分を賄うという考え方 になっているわけであります。これは基本的に専業主婦世帯をモデルに考えているわけですけれども、今後どんどん進 展する高齢化社会で専業主婦モデルをずっと維持しようとしていることが実は年金制度の危機の一つの大きな要因に なっていると思っております。そういう意味ではむしろ一人一賃金、一人一年金というような形で、賃金でも年金でも個人 単位で考える。それで、2人の賃金、2人の年金を合わせて生活できるような水準を考えるとすれば、少なくとも世帯主の 年金の水準というのは今よりもかなり下げられるわけです。これは、年金制度において、専業主婦世帯ではなく共働き世 帯を標準ケースと考えるというのが、私は年金改革の一つの大きな柱ではないかと思っております。
     それから、結局、今の第三号被保険者の問題というのは離婚した時の女性の年金権をどうするかという問題から起こっ ているわけでありますけれども、これは基本的に私は夫の負担で賄うべきではないか。すなわち、夫の厚生年金を最初 から2つに分ける、生前分割です。それでもし離婚しなければ今と何も変わらないわけなのですが、仮に離婚した場合に はそれぞれが夫との婚姻期間に応じて夫の年金を案分する。例えば、20年間連れ添った人と、再婚して10年間連れ添っ た人の場合には、2対1の割合で夫の年金を案分する。そうしなければ逆に59歳で離婚したケースなどを考えますと、後 の奥さんが全部夫の年金をもらってしまうというのは非常に不公平な仕組みではないか。
     また、同時に遺族年金の適用自体も年金を受け取っている時に扶養されているという人をベースに考えているわけです から、例えば一定の収入のある女性で被扶養基準を満たしていない時に夫が死んでしまったら、後で貧しくなっても遺族 年金は永久にもらえないとか、そういういろいろな矛盾があるわけです。
     そういう面からしても、やはり私は個人単位を原則として、専業主婦の方の場合は夫の年金を分割する。そういうような 形でいろいろなアプローチがありますけれども、個人単位の年金制度あるいは医療保険でも同じだと思いますが、そうい う仕組みにすることによって世帯として2人の年金とか賃金を合わせて生活するという形にすることが大事ではないかと 思います。
     それに対する反論として、そんなことをすると個人主義の行き過ぎになって家族の結び付きの崩壊を助長するという批 判があります。これは夫婦別姓でもしつこく言われている点でありますが、それに対して家族とは何かということを考えな ければいけない。そういう個人単位の年金制度にしたら離婚が増えるという考え方は、結局夫の賃金、夫の年金で嫌がる 奥さんを経済力で縛り付けているということにすぎないという論理にならないか。結婚というのはお互いの精神的な結び付 きで維持するものであって、経済的なインセンティブで守るものではないのではない。そういう意味では、個人単位の年 金制度の下で円満な夫婦というのが理想なのではないかということであり、年金制度が個人単位であるかどうかと夫婦の 結び付きというのは基本的に関係はないのではないかということであります。
     あとは、少子化傾向の問題についてもそうでありますけれども、これは女性が働くから子どもが減るという批判がありま す。しかし、どちらにしても女性は今後の日本の高齢化社会の中では働らいてもらわなければ社会が維持できない。そう いう意味で、女性が働くことを前提に、少子化を防ぐ対策を考えなければいけないという面でも、年金制度とは直接関係な いと思われます。
     どちらにしても、こういう報告書を作るときに大事なのは一問一答方式で作るということです。今もちょっと紹介しましたよ うにいろいろ個人単位の制度に対する批判があるわけで、その批判を正面から受け止めて、それに対してはこうですよと いうことをしないと議論がすれ違ってしまうわけであります。ですから、そういうすれ違いを防ぐためにも相手側の土俵に 入った上でそれに対して反論するということが大事ではないかと思います。
     それからもう一つ忘れておりましたが、第三号被保険者につきまして、主婦は所得がないから、負担能力がないから保 険料を払えないという論理があるんですが、それに対しては主婦は所得がないかもしれないけれども、夫は所得がある。 いわば、専業主婦の方の保険料というのは婚姻費用の一部として、つまり夫婦が生活するために必要な費用の一部とし て夫に負担義務があるという考え方をとればいいというのが法律学者の方の言い分でもあるわけです。それから、現に今 の制度でも負担能力のない学生とか、あるいは同じ妻でも自営業の妻にはきちんと課されているわけですから、そういう 意味でなぜ学生とか自営業の奥さんと比べてサラリーマンの奥さんだけが特に負担能力がないから免除されるという理 屈が通るのかというのは納得できないわけであります。そういう意味では、専業主婦の人の老後の保障の責任というのは 第一に夫にあるわけであって、独身者とかほかの共働きの世帯にはないということをきちんと明確にする必要があるので はないかと思われます。
     そういう意味で繰り返しになりますが、専業主婦の家事労働をきちんと評価すればするだけ負担能力ということも同時に 考えなければいけないので、経済的価値を評価するから税を控除してほしい、あるいは社会保険料を免除してほしいとい う考え方には私は基本的な矛盾があるのではないかということでございます。
     ちょっと長くなりましたが、とりあえずそういうことで終わらせていただきまして、御批判をいただければと思います。
    大澤会長
    ありがとうございました。ただいまのお話について御質問や御意見がおありでしたらお願いします。
     林委員、途中で退席の御予定ですので、先にお帰りになる方からどうぞ。あるいは、大沢委員も途中退席とおっしゃって いましたのでどうぞ。
    林委員
    私は、自分の中でいつも闘っている問題について整理をしていただいて大変ありがたく思っております。こうい う考え方で、また内部でも少し問題点が多過ぎるという個人単位という考え方に対して浸透させていきたいなという気持ち で今、聞かせていただきました。
    大澤会長
    では、どなたでも結構ですのでどうぞ。
    大沢委員
    私も賛成で、非常に理路整然とした説明を聞かせていただいたんですが、実際にこういう個人単位化の制 度に移ります時に気になるところは、やりやすいところから変革してしまうと、結局どこが変化しないで残るのかというと、 やはり日本的雇用慣行とか、年功的賃金というのは一番崩しにくいところじゃないかと思うんです。そうしますと、正社員と 非正社員の賃金格差というのも残っていき、それから流動化すると言いながらまだまだ女性には就業機会がない状況が あと10年ぐらい続くんじゃないかと思うんです。それで、こういう状況の中で年金改革は否応なしに進んでいくということに なりますと、それに対応できる能力がある女性はいいんですが、それだけではなくて非常に生活が苦しい人もいるわけで すね。
     問題は不平等の問題ではなくて、実際には既得権を持った部分が変わらなくて、女性の負担だけが増えていくのではな いかというところがちょっと不安を感じるところなんですが、先生はいかがお考えですか。
    八代理事長
    おっしゃることはよくわかります。それから、私は必ずしも年功賃金とか長期雇用保障を政策的にやめさ せるというふうには考えていないわけです。それは労使が決めることにすぎないわけで、政府はあくまでもそれに対して中 立性を維持すればいいのではないか。そこに尽きるわけですが、それでも私は世の中の動きとして徐々に変わっていくか と思いますけれども、確かにそれには時間がかかるというのはそのとおりだと思います。
     ただ、だからといって労働市場の不均衡の分まで年金が受け止めるべきかということがちょっと大沢さんとのニュアンス の違いであって、私はそれはむしろ福祉の仕事と思います。年金とか医療というのはいわば普遍主義の考え方に立って いるものであって、それに対して福祉というのは選別主義、つまり貧しい人あるいは困っている人に集中してベネフィットを 与えるという考え方であって、今おっしゃったように就業期間が短くて、あるいは離婚し単身者で老後の生活費が十分に 年金ではもらえないという人を年金制度で救おうとすると、これは逆にそういう必要のない人までカバーしなきゃいけない。 例えば、基礎年金の水準を思い切って上げるとかという考え方があるわけです。
     ですから、むしろそれに対しては今の生活保護制度の改革というか、もっとミーンズテストの問題を改善する、あるいは 今のような厳格な仕組みではなくて、例えば一定の老後の生活水準を保障する。それに年金が足りなければ足らない分 だけを福祉の分から補てんするという補足年金的な考え方があります。そういうようなことの方が年金だけですべてを賄 えるような水準まで上げるということは、中流以上の人にとっては極めて過大な年金を意味するわけで、貧しい女性への 対策は私は福祉の手段としてやるべきではないかと考えているわけです。
    大沢委員
    おっしゃることはよくわかります。もう少し言うと、成長率が下がってきて、福祉政策とか今までの政策の中で 政策を変えることによってすべての人がよくなるような政策というのはもう取れなくなってきているわけですね。
     何を言いたいかというと、今まで政府と個人と、政府の役割というのが非常に異なってきたということを八代さんがおっ しゃっているのではないかと思ったんです。つまり、今までのような官庁主導の政策の中でモデルを提供して政策をとって いくのではなくて、むしろ個人が多様に選べるように政府は規制改革をして、もう少し選択肢を増やすような政策に変えて いくということをおっしゃっているわけですよね。
     だから、そういう意味で政策そのものをもう少し変えないと、例えば私が言いたいのは税制とか社会保障だけの議論に なってしまうと女性にとっては非常にコストが大きいという話になっていくわけで、もう少し全体的に今、日本の社会が変 わっていく中で政府の役割そのものが変わってきていて、先生がおっしゃるように自己責任の部分が非常に増えてきたん だということですね。共働きということのリスクも非常に大きくなったということも含めて、私たち自身が認識して痛みをどこ まで分け合うかという議論にしていかないと、説得力がいま一つ足りないのではないかと思うんですが。うまく言えないの ですが……。
    八代理事長
    既得権の調整ということですか。
    大沢委員
    そうかもしれません。
    林委員
    先生が先ほど長期雇用保障や年功賃金の問題は労使の間で解決をしていくべきで、法的な政府の立場でや るべきことではなくしていくということだろうとおっしゃった点については私もそうだと思うんですが、その場合、政府としてと いうのか、行政的にやるべきことの中に正規と非正規の身分格差の不平等の問題、この問題については労使の問題で はなく法的な制限・規制というものをきちんとしていくということで実現していかなければならないのではないかと思うんで すが、いかがでしょうか。
    八代理事長
    私もそう思いますが、ただ、どちらの方向で平等化していくかということでいろいろな考え方が分かれると 思います。例えば、年功賃金を前提としている限り、やはりパートと正社員との間の賃金格差というのは縮まらない。た だ、それを年功賃金をやめさせるとか、あるいはパートに年功賃金を適用させるということは労働基準法ではできない。現 在、争点になっていることは例えば解雇のルールで、今のパートの解雇は余りにも簡単過ぎる。正社員は逆に言えば厳 戒過ぎるというような解雇のルールを見直すような形が一つかなと思っておりますが、賃金自体を政府がああしろこうしろ というのは、最低賃金を別にすれば非常に難しいことじゃないかと思います。
    林委員
    若干そこには異論もあり得る気がしてきましたけれども。
    八代理事長
    もちろん異議はあると思いますけれども、林委員のおっしゃるのは逆に言いますとパートに対して雇用保 障とか、あるいは年功賃金を法令で強制するというようなことですか。
    林委員
    そういうことではなくて、パートというのを非正規の方に位置付けるような形でずっと当たり前としてきたところ を、やはり正規の中にフルタイマーもあればパートタイマーもあるという形にしていくことで、その平等性というのを確保して いけるのではないかと思っているわけです。
    八代理事長
    ただ、そこは今のパートタイムの定義の問題です。今、林委員がおっしゃったパートタイムはむしろ欧米型 の短時間労働者という定義ですよね。ところが、日本の場合は短時間か長時間かの違いよりも、言わば1年を超す雇用 保障があるかないかに実は非常に大きなポイントであるわけで、今でも常用のパートというのは存在しているわけで、そ の人たちにとっては特に問題はない。問題は正規労働者の雇用保障が余りにも厳格な故に、企業が過度にパートタイ マーに対する需要を増やしているのではないかというような観点もあるわけで、この点は今日の調査会の議論とは外れ ると思いますけれども、それがまた逆に言うと男女間の賃金格差にも反映している面があるのではないかということです。
    木村委員
    先生は遺族年金のことについてはどう思われますか。
    八代理事長
    遺族年金については、先ほど申し上げましたように夫の厚生年金を分割していく。それで、夫が死んだら 自分の年金だけで生活するというふうに単純に考えております。そうすると、今の4分の3ではなくて2分の1になってしま うわけでありますが。
    木村委員
    と言うことは、基礎年金プラス厚生年金部分の分割ということですか。それは、例えば移行期間はどれぐら いを考えていらっしゃいますか。
    八代理事長
    移行期間というのは、やはり今の人はそのままにしておいて、徐々に新規に遺族年金をもらう人から変え ていくというより仕方ないと思います。
    木村委員
    例えばスウェーデンだったら40年かけて遺族年金をなくしたり、そういうことですね。
     あと一つは、健康保険の被扶養者の取扱いはどうお考えですか。大ざっぱでもよろしいんですけれども。
    八代理事長
    これは今日は時間がなかったので触れませんでしたが、私の資料の一番後ろにあるところに書いたもの のコピーがありますのでそれを見ていただきたいと思います。
     これは、東京財団で出しているもので、その2枚目を見ていただきますと表1というのがございますが、専業主婦世帯の 生涯給付額というのが書いてございます。これを見ていただきますと、医療給付についても実は第三号被保険者と全く同 じ考え方があって、夫の医療保険料というのは奥さんが働いていてもいなくても、あるいは単身であっても全く同じ額です ね。全く同じというのは、所得に比例して全く同じ額である。その意味では、言わば専業主婦の方の医療給付に対応する 保険料というのは被保険者全体で負担しているということになっているわけであります。
     それで、これは結局専業主婦の方は、医療給付を夫の追加的な保険料なしでもらっているということと同じで、それだけ 見ても基礎年金の大体5分の1ぐらいの額のネットの受給があるのではないかということです。これは高齢者の医療費を どう見るかで随分違うわけでありますが、そういう意味で私は医療給付についても第三号被保険者と全く同じ問題があっ て、これもちょうど国民年金の保険料を払ってもらうと同様に、国民健康保険の保険料を夫に負担してもらうというのが一 つの解決策ではないかということです。
    木村委員
    あとは、例えば先ほど先生も少しおっしゃいましたけれども、厚生年金の対象者として年収65万円以上は被 用者健康保険に加入するとかというような案もありますけれども、そういう案についてはどういうお考えですか。
    八代理事長
    今の130 万円の基準を半分に下げるわけですね。それは一つの現実的な形だと思われます。65万がい いかどうかは別ですが、もっと下げるということは大事だと思います。
     それは何故かということをさっき説明を忘れたのでもう一言言いますと、今の制度のままでパートタイムあるいは派遣労 働者の人に社会保険を強制適用すると一つの矛盾が起こってくるのは、今の社会保険というのは基本的にフルタイムの 労働者を想定していますので、低賃金のパートタイムの労働者に対して一般の被保険者と同じ保険料率で負担を求めた 場合には、厚生年金の保険料が国民年金の保険料より低くなってしまう場合があるわけです。そうすると、パートタイム の人の保険料は国民年金よりも低くて、給付の方は厚生年金で報酬比例部分もありますので、保険料は低く給付は多い という不均衡が起こってしまう。
     そういう意味では、パートタイムの低賃金労働者の人に、フルタイムと同じ社会保険料を適用するということには実は基 本的な矛盾が起こってしまうわけでして、これをどうするかというのが一番大きなネックだろうと思われます。そういう意味 でも、今の報酬比例年金という考え方を本当はより根本的に考え直さないと、この問題は避けられないということにもなる わけでございます。
     これは医療保険でも言われておりますが、年金も一本化する。年金は基礎年金で、医療保険も地域保険で一本化して いく。神野先生もそういうお考え方を前にされていたと思いますが、そのときは今の報酬比例部分というのは一種の民営 化というか、民間の保険に強制加入させるというような形になるという考え方で、この問題というのは解決がつくのではな いかと思います。やはりこれは制度の分立から生じている問題です。
     だから、ある意味では地域保険というのはそれなりに一つの整合的な仕組みで、今のサラリーマンの年金とか医療保険 というのは昔の官庁とか大企業の恵まれた労働者を想定してできたものが今、普遍化したわけですね。ですから、国民皆 保険を維持するためには長期的には年金も医療も地域保険に一本化する。そういう形で、間接的にこの女性の問題も解 決するのではないかというふうに考えておりますが、それはそれこそ超大改革になるわけで、いきなりそんなことは無理で ありますから徐々にやっていかなければいけない。
     大沢先生がさっき言われたみたいに、これだけやってもしようがないのではないかということですが、できるところから少 しずつやっていかないとなかなか全体も進まないわけです。特に税金というのはまさに政策の考え方そのものであります から、配偶者控除の問題を解決すればそれが企業の配偶者手当あるいは社会保険の問題にも波及するという形で、私 はこの所得税の配偶者控除がある意味では最も改革しやすいところではないかと思っているわけで、しかもそのインパク トは大きいということです。
    大澤会長
    資料の12ページに失業給付制度の改善という資料が付いておりますが、ここの御説明はいただいていない ようなのですが。
    八代理事長
    時間がなかったので省略しましたが、先ほども言いました今の年金でも医療でも社会保険制度というもの が常用労働者を想定しているということからきていて、雇用保険もその例外ではないということです。それで、雇用保険に はなかなかパートの人は入れない。年収90万円の制約は撤廃されたのですけれども、まだ1年以上の雇用契約とか、そ ういう制約が残っている。
     それからもう一つは、今の失業給付制度が依然として年金と同じ考え方になっている。つまり、長い間、保険料を払った 人には、長い間、失業給付を出すという考え方になっている。これが実質的には男性と女性との格差を広げるもう一つの 要因になっているのではないかという問題意識です。
     それで、私は失業保険というのは年金よりも医療保険に近い考え方であるべきで、仮に事故に対する給付ということで あれば、それ以前に何年働いていたかということは無関係に考えなければいけないのではないか。失業したら一定の給付 を出すということであって、失業前の就業期間が長ければそれだけ長い間、失業給付を受けるという論拠は見当たらない わけであります。 これについての議論を見ますと、長い間保険料を払ったのだから失業したときぐらい給付をたくさんも らって当然だという意見があるのですが、これはまさしく報酬比例年金の考え方であるわけで、それはおかしいのではな いか。むしろ失業しやすい人というのは就業期間の短い人に多いわけですから、そういう人たちの中には女性がかなり 入っていると思いますけれども、そこを手厚くするためには、今言ったような医療保険の考え方に変えていくべきじゃない かということであります。
     そんなことをしたら雇用保険会計が悪化するという反対論がありますが、これはナンセンスであって、失業給付というの はそのためにあるわけでありますから、悪化するならば保険料などで調整しなければいけないので、非常にこれも既得権 の塊になっている。つまり、めったに失業しないような大企業の労使委員がこういう失業給付の医療保険のような形への 改革に反対しているわけで、それが非常に大きな問題だろうと思います。
    大澤会長
    永瀬委員は後からお見えですけれども、何かございますか。あるいは小島委員も途中退席の御予定です が、いかがですか。
    小島委員
    1つは、企業にとってみますと雇用を考える場合、ここは国内の日本人だけの雇用を考えていますけれど も、企業はどんどんグローバルな経営になって、実際にグローバルな企業活動があふれて、国内だけの発想でいろいろ な制度、慣行が出ますと、場合によってはその結果が思わぬ方向にいくかもしれないという問題がありますね。要するに、 そういうグローバル化をしたモデルの中で国のそういう制度をどうやって仕組むか。そのとき、何が一番重要なのかという 点ですね。
     もう一つは、平等だとか権利だとか公平だとかいろいろな視点でいろいろな制度を考えた場合、それから負担の問題、配 分の問題、基本的にはそれは分配政策にウェートがあるんですが、先ほどの冒頭の問題提起として先生がおっしゃられ た持続的に成長率が低下する経済に対応してというのですが、より積極的に対応するには持続的経済成長率の低下を 食い止めて、更にはインセンティブ効果というものを重視しながら、経済の活性化とか成長率とか活力とかというものに寄 与するような仕組みを入れて、その結果いろいろな負担のタックスベースが拡大するという効果も合わせて考えた場合、 今日のテーマで何がポイントで、どこをこれから特に重視していいのか。
     そのグローバルな競争の中でのダイナミズムでいくと分配も重要ですが、分配するベースになる所得と価値の創造、こ ちらにインセンティブをかけなくちゃいけない時代でしょうから、その2つの側面から考えるとどういう視点で物事を考えた らいいか。特にどこが重要なのか、もしヒントがありましたらお願いします。
    八代理事長
    それは非常に大事な点だと思います。インセンティブ税制という考え方は今、重要なのですが、それと今 日のテーマとの関わりというのは、やはり私は女性が働かないことに対する補助をするという配偶者控除のような仕組み はまさに逆インセンティブであると思います。これからの高齢化・少子化社会では働く能力と意欲を持っている人にむしろ 就業を促進させることが大事で、今のように働くと損をする仕組みというのは非常に社会的なロスが大きいと思います。で すから、まず個人単位の制度にするということは、配偶者が働いても働かなくても、それによって世帯主の所得は同じだと いうことで、就業行動に対して中立化になるわけです。それは今のシステムから比べれば、よりインセンティブにプラスに なるような税制改革だということは言えるのではないかと思います。
     それから、同時に課税ベースの拡大にもつながるわけで、少なくとも子どもを除けば全員が所得がある限り、何らかの 税金を負担する。それから、配偶者の場合は夫が帰属所得で負担するというような考え方を貫くということはまさに課税 ベースの拡大で、その分だけほかの条件が一定であれば税率を下げることができるわけです。
     それから、外国人の場合は短期間就業の女性と非常に似ている面があるわけで、今は年金条約の相互的な締結が先 だというふうに厚生労働省は言っています。それも大事ですが、やはり私は短期間日本で働いて海外に帰る人に対しても 年金を強制適用している以上、帰国時には一時金の形で払うべきではないだろうか。今もそういう仕組みはあるのです が、非常に限定的になっている。それから、一時金には事業主負担分が反映されないという不平等性がある。それを妨げ ているひとつの要因が、社会保険は所得再分配のための仕組みという考え方にあるといわれますが、私は所得再分配と いうのは福祉の役割であって、社会保険というのは民間保険の強制である、つまり一定限度の年金とか医療保険を国民 が等しく受けるように政府が強制する仕組みである。仮に、社会保険は、強制加入の民間保険であるという考え方を貫け ば、外国人の方が一定期間日本で働いて海外に戻るときには、その間に積み立てた年金を一時金として払い戻してもらう というのも当たり前のことになるわけであります。
     ですから、逆に言うとそういう考え方がないから、例えば日本で働く外国人のコストがかかり過ぎるため直接投資が進ま ないというような面にも一部影響していることがあるのではないか、そこはできる限りイコールフッティングでやっていく。そ れでは民間保険と同じではないかという議論に対しては、給付と負担の均衡というのはもともと社会保険の考え方にもあ るわけでありまして、それを言わば強制するものにすぎない。そのときには、できるだけ個人単位で給付と負担とのイコー ルができるようにする。それで生活できない人に対しては福祉で対応する。
     それはむしろ生活保護を始めとする福祉の改革で、足らない年金の分は補足するという弾力的な仕組みがないと、年 金だけですべてを解決しようというと、一種の「年金帝国主義」になってしまうのではないかというおそれを持っているわけ であります。
    大澤会長
    年金であれ、医療保険であれ、一元化、一本化すべきだというのは私も同意見ですけれども、その場合最 初に出てくる反論が、自営業者の所得が捕捉できないではないか。そうなると、雇用者にばかり負担がいくではないかと いう意見があるのですが、それについてはどうお考えでしょうか。
    八代理事長
    だからこそ自営業の年金が定額負担・定額給付になっているわけですね。ですから、今の地域保険の形 にサラリーマンも統合していく。要するに、自営業をサラリーマンの保険に統合することはできませんから、逆の方で統合 するより仕方がないわけですね。そのときの妨げになっているのが事業主負担をどうするかという話と、配偶者問題をど うするかというのが最大のポイントになっているわけです。ですから、まず第3号の問題を解決するというのは一元化へ の一つの障害を撤廃することですし、私は事業主負担の問題はその分だけ賃上げすればいいんじゃないかと簡単に考え ています。労働組合の人はそんなに簡単にできるかといって反対されるわけですが、経済学では御承知のように昔から 社会保険の事業主負担というのは賃金の一部であると考えているわけで、それを企業が直接払うか、一たん労働者に 払って労働者がその部分も保険料を負担するかは別に同じことであるという考え方から、その2つをクリアすれば私は被 用者保険を自営業が入っている地域保険に統合することは十分可能だと思います。年金でも医療でも介護でもですね。
    大澤会長
    残念ながら時間がきてしまいまして、議論は尽きないですけれども、ここで打ち切らざるを得ません。それで は、八代理事長からのお話は以上とさせていただきます。どうもお忙しい中ありがとうございました。
    八代理事長
    こちらこそありがとうございました。
     (八代理事長退室)
    大澤会長
    では、議事を進行したいと思うのですけれども、自己評価マニュアル案についてと、それから中間報告に向 けた議論でございますが、本日のメインイベントは中間報告の方でございますので議題を入れ替えまして、たたき台の方 の報告をお願いいたします。これは中間報告のアウトラインたたき台というのが資料でございます。
    事務局
    では、短く御説明させていただきます。「中間報告のアウトラインたたき台」という21ページの資料をお出しいた だければと思います。
     まずこの資料の性格ですけれども、今日の議論のためのたたき台ということでいろいろな考え方を入れ込んだものでご ざいます。これまでの調査会での議論を集約したというものでは全くございませんし、これに示されている考え方に御意見 をいただければと思います。それから、事務局の見解ということでもありませんし、政府内で調整が完了した文書ということ でも全くございません。そういうことで、資料は現時点では委員限りということで非公開でお願いしたいと思います。
     今後は今回の御議論などを踏まえまして素案を作っていきたいと考えておりまして、このアウトラインのリバイスというよ うなことは特に考えておりません。それで、資料を説明させていただきますが、事前に資料をお配りしてありますので手短 にいたしますけれども、その後、事実関係に照らし合わせてこの方がより正確ですとかといったことは直しております。そ れから、こういう重要な視点もあるということも新たに入れた部分がございまして、具体的には個人単位化の考え方で後 で説明いたします。
     最初の方は事実関係について淡々と書いたものでございまして省略させていただきまして、10ページからが意見に関わ る部分でございます。10ページの真ん中辺から「ライフスタイルの選択等に中立的な税制・社会保障制度・雇用システム の基本的な考え方」、これをまとめているわけでございます。この基本的な考え方をベースに、個別分野に対する具体的 な考え方が示されております。
     まず「制度・慣行、中立性、個人単位化の関係」でございますけれども、基本法にもそういう選択に対して及ぼす影響を できる限り中立なものとするとあります。それから、基本計画にもありますけれども、社会制度・慣行について個人単位の 考え方に改めるなど、必要に応じて見直しを行うということが書いてありまして、この検討が当調査会の一つのマンデート に当たるかと思います。その際ですけれども、あらゆる活動の選択に対して完全に中立な制度・慣行ということは困難で ございまして、どういうふうな活動の選択に対して中立的にするかということを明らかにする必要があろうとしております。
     それで、その際ということで3つ目のポツにありますけれども、基本計画にありますように世帯単位から個人単位の考え 方に改めていくという考え方があるとしております。最初にお配りした資料ではこの考え方しか紹介しておりませんけれど も、次ページをお開きいただきますとまた別の考え方もあるわけでございまして、その新しいポツのところにありますけれ ども、どの程度個人単位化を進めるかということは社会保障制度体系の基本の選択に関わる問題であると、こういう考え 方をお配りしたものに比べて付け加えてございます。こういった点がどうなるかということも今日御議論いただければと思 います。
     次に税制・社会保障制度でございますけれども、就業の選択に中立的にということで基本的な考え方を挙げておりま す。それで、配慮事項といたしましては事前にお渡ししたものに加えて3つ目のポツにありますように、女性自身の貢献を できるだけ評価することが必要。それから、中立性を確保するために個人単位化を進めるとしても現に存在する男女格 差に配慮して他の手法と組み合わせを考えるべきであるというふうにしております。
     次が雇用システムでございますけれども、これは良好で自由な選択が可能な労働形態を提供するようにというようなこ とが書いてございます。
     それから、12ページに移りまして「将来的なセーフティーネットの整備の考え方」は特にお配りしたものと変えてございま せん。
     次に「税制・社会保障制度等改革の具体的方向」でございます。まず「税制」でございますが、12ページの一番下のとこ ろにありますけれども、縮小、廃止により個人単位に近づけるべきであるけれどもというふうになっていまして、次のペー ジの方にかけて、制度の見直しにより増税分が打ち消されるよう他の部分で減税が行われ、トータルで中立的なものに より近くなることは大多数の国民に受け入れられるための条件であろうと、この部分は変わっておりませんけれども、こう いう考え方でよいのかどうかということも御議論いただければと思います。
     それから13ページの「社会保障制度」でまず年金でございますけれども、最初のポツの6行目ぐらいからありますが、 通常の労働時間の4分の3以上で就業し基礎年金に加えて厚生年金も受給するか、あるいは4分の3未満の労働時間 で年収130 万円を超えずに就業して基礎年金のみ受給するか、こういう選択の問題がこの会議の一つのテーマになって くるわけでございますけれども、次のポツにありますように、一つの考え方としては制度の適用に配偶関係による区別を 設けないということで、具体的にはまず基礎年金については第三号被保険者制度を見直して本人に何らかの形で負担を 求めることを目指す。一方でもう一つの選択肢としての厚生年金の方については、適用を拡大すると共にその選択肢とし ての魅力を増すようにするということがあります。
     「基礎年金」はどうかといいますと、13ページの下の方にまとめてございますけれども、厚生労働省の女性と年金の検 討会の報告書の案がありますので、そういった整理を土台に議論を深めていくということで当調査会も議論を深めたいと いうようなことで一応書いております。
     それから次のポツに税方式について触れておりまして、次のページにかけていろいろ記述してございますけれども、委員 の皆さんはこの点についてはいろいろな御意見がおありかと思います。確かに中立性の問題は解消するのでございます けれども、基礎年金の給付と負担ですとか財源全般、こういったものが関わってくる問題かと思います。
     次に「厚生年金」でございますが、まず「適用拡大」の方でございますけれども、短時間労働者に厚生年金の適用を拡 大する方向で検討すべきだと。具体的な水準についてはどうかというようなことでいろいろな考え方を述べてはおります。 それから、一番最後の「なお」のポツのところにありますけれども、調査会で指摘を受けておりましたが、数か月単位の有 期雇用契約を繰り返して加入できないという面については運用の面で対応できるんじゃないかというふうな書き方をしてお ります。
     それから、「選択肢としての魅力の増加」については、ありますように長期的には同等な条件で就業できればそういった 魅力が問題になることはないんですけれども、そのような条件が実現されていない現時点でも、適用されれば、後で御紹 介いたしますが、自らの老齢年金で得られるものはまず大きい。
     それから、次の15ページに移りまして、遺族年金を選択せざるを得ないということがあっていわゆるかけ捨ての問題でご ざいますけれども、これが魅力を減じている一つの理由じゃないかということでございまして、自ら負担した保険料ができ る限り給付に反映されることが必要じゃないかとしております。
     それから「離別と公的年金」ということで、離婚と遺族年金のことを一つに扱っておりますけれども、3番目のポツにあり ますように、中立性を確保するために個人単位化を目指すとすると、現実の状況のままでは離婚と厚生年金、遺族年金 をめぐる問題がむしろ悪化するということでありまして、次のポツにありますように当面は就業機会の増大や賃金格差縮 小に向けて環境整備を図る一方で、厚生年金適用の魅力を高めるためにも給付については自ら働いて納付した保険料 ができる限り反映されるようにすべきというふうにしております。
     次が「出産・育児と公的年金」でございます。その最初のポツにありますけれども、修正賦課方式においては出産・育児 を行っている人は無償で将来の保険料負担・納税の重要な候補者を育てているということから、そういった人に対しては 年金保険料を財源として出産・育児に対する給付等の支援を行うべきだという考え方もありますし、一方ライフスタイルの 選択への中立性という観点から見ますと次のポツにございますけれども、年金が果たして出産・育児というライフスタイル の選択に影響を与えているのかどうかという考え方もあるわけでございます。
     それから、もちろん次世代の育成というのは年金にとっても非常に重要なことでありまして、何らかの支援が必要である というような考え方もありますけれども、一方で選択の中立性という問題も生ずる。いずれにせよ、「ただし」ということで括 弧の中にありますけれども、男女共同参画の観点から非常に重要な大きな課題となっているということでございます。
     それから<2>に移りまして「健康保険、介護保険」ですが、これは厚生年金と同様の問題がありますので整合的な見直し が行われるべきだと。
     それから「雇用保険」でございますけれども、世帯単位の考え方が入り込まなくて、これは個人単位でございますので、 比較的中立性の観点からは問題が少ないのではないかというふうなことで書いてはおります。
     17ページの「家族手当等」でございますけれども、3番目のポツにありますように個人単位化と相入れるものではござ いませんので、今後は縮小を廃止して基本給に振り替えるべきではないかというふうにしております。
     最後に「雇用システムの将来的方向」でございます。男女の賃金格差の大きさがその最大の問題となってきたんです が、社会保障制度において生じているのもこの問題が背景にあるわけでございます。この賃金格差の背景としましては、 男性雇用者に対する長期雇用慣行とこれに基づく年金賃金という日本的雇用慣行があります。ところが、これが今、変化 を余儀なくされつつあるわけでございまして、そのことが17ページから18ページにかけて書いてございます。そうした中で ワークシェアリングをめぐる議論が活発になっているということで、以下長々と書いておりますけれども、要するに日本的 雇用慣行が変化し始めているということと、それからワークシェアリングをめぐる動きが活発になっているということで紹介 しておりまして、男女共同参画の観点から問題とされてきました日本の雇用システム、これが今、大きな変わり目にありま すということを書いておりまして、一番最後の20ページ以下にその結論的なことが書いてあります。
     20ページの下から2番目のポツでございますけれども、政府としては当面税制・社会保障制度改革を進めて中立性を 確保する。それから、労働市場の改革を進めて良好で多様な労働形態の実現を目指す。企業の側にとっても多様な形態 の労働資源の効果的活用は今後の死命を決しかねない。
     そういうことで最後に、いずれにせよ単に勤続時間が長いことから高賃金を得ている正社員と、それから正社員と同じ仕 事をしながら低賃金に甘んじている基幹的パートタイマーという一つの典型的パターンを念頭に置きつつ、雇用形態の全 体の見直しが必要であるというふうにまとめております。
     時間がございませんので、図表の紹介などは省略させていただきまして、とりあえず以上でございます。
    大澤会長
    どうもありがとうございました。途中お話もありましたけれども、女性のライフスタイルの選択等への中立性と いう観点からまとめてあるわけです。
     それで、今後の議論の進め方ですけれども、今御説明がありましたように、資料という形ではなく委員限りの参考資料と いうことで全くのたたき台でございます。それで、今日はこのたたき台に基づいて御議論をいろいろといただき、次回の会 合で改めて案をお示しして中間報告書として決定をしていただく。その上で、男女共同参画会議に報告をしたいと考えてお ります。
     それで、今までの予定ですと実質的な議論ができるのは今回だけということになってしまいますが、それだけでは足りな いと。私自身、足りないという気がしておりますので、皆様の御都合を伺って集まれる日に再度お集まりいただくということ も考えています。
     それでは、このたたき台について御質問や御意見を自由にお出しいただきたいと思います。では、先をお急ぎの方からど うぞ。
    木村委員
    まず中間報告について幾つか質問があります。個別には今度で済むので、大枠のことをまず教えていただ きたいと思います。
     この中間報告は最終報告につなげる報告書ですね。
    事務局
    3月に中間報告を出して、最終報告は9月というのが今まで御説明してきたスケジュールでございます。
    木村委員
    この中間報告では何を明らかにすることを目標にしていますか。
    事務局
    女性のライフスタイルの選択に対して税制・社会保障制度、雇用システムに影響を与えていないか。それが中 立性に影響を与えているとすればそれをどういうふうに見直すべきかということが御議論いただくポイントかと思います。
    木村委員
    それで、まずその後の構成なんですけれども、構成は目次が付いていないのでよくわからないんですが、ど ういう構成でいかれますか。
    事務局
    構成も含めて今回御議論いただければと思いますけれども、これが示していますのは、まず最初にライフサイ クルの段階別にファクトを並べる。制度と、それから統計・現状を並べる。それから次に基本的考え方が出てきて、それに 基づいて個別の税制・社会保障制度、雇用システム、これについてどういう方向にあるべきかということを示すというスタ イルで一応お示しさせていただいております。
    木村委員
    私は前書きが今、書かれているポツポツだけですから少しわかりにくいところがあるので、既に考えておられ るのに私が意見を言ってしまったらすみません。
    事務局
    どうぞ。
    木村委員
    よろしいですか。八代先生もおっしゃったように、なぜこれが問題になっているのかという点で、単に男女共 同参画社会だけでなくて、重複する部分もあるかもしれないけれども、経済システムとかで、さっきおっしゃったように税制 のタックスベースを広げてインセンティブを考えなくちゃならないんだというふうな税とか、それから社会保障の構造改革と の関連、労働力確保との関係と、もっと大きな軸からこの問題が問われているんだというのを私は強調する方がいいと思 います。というのは、男女共同参画社会と打ち出してもそれが何なんだというのをよくボールの打ち返しのようにされるこ とがあります。
     それから、2番目のところで、一番初めにデータに基づいてと言っていますけれども、どのデータなんですか。私はこの 中間報告を見ていてもどのデータか……。
    事務局
    図表はなしでとりあえず抜き書きできるデータだけを書いています。その点は不十分な点はあるかと思いま す。
    木村委員
    本当によくやってくださったので、私は意見を言うのは本当に心苦しいんですけれども、あとは2ページです ね。もうそろそろ帰りますので1つ2つ申していきますと、2ページの<2>の一番最後のポツの「税制や社会保障制度等を意 識した賃金調整、労働時間調整等は特に問題になっていない」とか、こういう文章の書き方というのは、ここに問題がない かどうか、税とか社会保障が労働に中立的であるかどうかということも問題視しているときに、こういった文章の書き方で すね。
    事務局
    就業の段階で、最初に入職した段階で103万円の調整とかがあるかどうか。舌足らずの点は否めないかと思 いますが、趣旨としてはこの就業の段階で103万円とか、入職後の段階で103万とか130万問題は起きていないという趣 旨でございます。そういう舌足らずの点は改めます。
    木村委員
    書くときはかなり問題になってくるところだと思います。
    大澤会長
    このステージではとか、この段階ではと書けばいいわけですね。
    木村委員
    一番大きな基本的な問題意識の中に関わってくることですね。
     それから大きなことは、やはり一問一答形式とまさに八代先生がおっしゃったけれども、今まで出ているような大きな問 題に対して我々はどう考えているのかというのが一つあると思うんです。例えば、ちょっと今、時間がないのでどこだった か思い出せないんですけれども、早急で単純な個人化は回避すべきというふうな表現があったんですが、我々は個人単 位化ということも見据えて議論を進めるとしたら、そういう表現では私はだめだと思うんです。個人単位化するにはさまざ まな調整期間とか、そういったことが必要であるというふうにむしろ積極的な感じで個人単位化することによって、例えば 所得の低い人はどうなるんだということには補足年金も考えられるし、ほかの国がしていることもあるんですから、見据え たことに対してむしろ積極的に書き込んでいって、こんな問題はこうやってクリアしていこうという姿勢の方が、私はこの調 査会の趣旨に沿うんじゃないかなと、今は時間がないのでまた列挙してきます。
    大澤会長
    今おっしゃったところは11ページの1行目ですね。
    木村委員
    どこにスタンスを置くかというところをはっきり書いて、問題があったらそれをどうやって解決していくという方 が私は望ましいと思います。
     まだほかに大きなこともあるんですけれども、また今度でも……。
    坂東局長
    大きいことだけちょっと言ってください。
    木村委員
    大きなことは、やはりこちらの方を守りたいというふうな今までの厚生省の報告書によく見られたようなことと 同じようなスタンスがあるんですね。例えば12ページで、縮小廃止により個人単位に近付けるべきであるが、導入されて から既に長い年月を経ており、そのメリットを享受している国民は多数に上るとかいうけれども、本当に長い年月でどの程 度多数なのかというのはきちんとした論拠を示せないですね。第三号被保険者だって1985年の改革によってもたらされ たんだから、本当に長いかどうか。だから、守ろうとするときに非常にあやふやに積極的になるんだけれども、私はそれは 軸足がきちんとこちらの方向に世の中を変えていくんだというのがはっきりないからかなというような印象を受けました。
     でも、本当によく書いてくださったと思います。
    大澤会長
    軸は当然個人単位化というところにあるわけですし、中立化というところにありますが、ありがちな反論という のを予想してかなり防衛的にそこのところを書いているためにトーンが弱くなっている。
    木村委員
    だから、防衛の仕方も今までのような防衛をしてもだめですよ。こういうものがあるんだったらこの手段があ るとやればいいんじゃないですか。
    大澤会長
    どうもありがとうございました。
    坂東局長
    いずれにしても、これはまだたたき台で各省の了承を得ておりませんので。○木村委員 でも、了承を得る 必要がありますか。了承を得るんだったら新しいものなんて生まれないんじゃないですか。これは個人的な意見ですが。
    高尾委員
    全体を読ませていただいて、弱いなというふうなイメージをすごく私も受けたんです。これを読むと日本的な 雇用システムが変わらないと変わらないという、そこに期待がすごくかかっていて、それは確かに大事なんですけれども、 男女共同参画というこの調査会の言えることがもっともっとあるし、はっきり言っていった方がいいんじゃないかなと、これ はイメージの話です。
     あとは、具体的には4ページぐらいに再就業の話が書いてあって、女性は大体パートで入るということなんですけれど も、その理由というのが大体時間がフレキシブルだとか、いろいろ家庭生活や他の活動と両立しやすいという積極的な理 由が多いというふうにここでは評価しているんですが、これは全然違うんじゃないかなと私は思っていて、やはり非常に消 極的な理由でこれを選んでいると思うんですね。つまり、夫である配偶者が家庭生活に全然コミットできないような正規雇 用の体質であるので、しようがないから自分はそこをやるという初めから先入観というか、そういうことがあるからしようが なくフレキシブルに働けそうなものを選んでいるのであって、もしそれがなければ相手の配偶者の側が自分と五分五分で 家庭生活、家事労働及び育児労働に関わってくれるという前提があるとすれば、みんなパートタイムで働きたいとは思わ ないと思うんです。これは積極的にそう選んでいるかというと、私はそうではないんじゃないかと思います。
    大澤会長
    残念ながら統計はこういうふうになっているんですね。
    高尾委員
    統計はそう出るけれども、そうじゃないと思うんです。
    事務局
    消極的という言葉の意味は、正社員かパートタイムかという選択があって、正社員がだめだったからパートタイ ム、というのを消極的というふうな書き方をしているわけで、そこら辺は舌足らずな点があるのかもしれません。
    坂東局長
    パートタイムで働くことに積極的な理由を見つけていくということですね。○高尾委員 もし配偶者の側が自 分と五分五分で家事労働、育児労働に参加してくれるのであれば当然フルタイムを願うわけです。ところが、今の状態で はないからしようがないんだけれども。
    大沢委員
    同じようなことで、統計的な実証が幾つか出ていた部分がありますね。例えば、積極的に家にいる女性が多 いとか、出ていた部分もあるんだけれども、幾つか数字で気になったところがあります。それとか、例えば結婚では辞めな くなったというような記述があるんですが、実際に今パネルデータをちょっと見ているんですが、アメリカと比べても結婚で 辞める割合というのは格段に多いんですよね。アメリカではほとんど辞めていないようなフルタイム就業が続いているの に、結婚で辞めて、それから出産でも辞めて、2割しか働いていないという現状がここには出ていないですね。
     それとか、育児休業もみんな取るようになったというような数字になっているけれども、実際は辞めない人の2割のう ち、その5割が例えば育児休業を取っているということはかなり育児休業を取っている人が少ないし、それから最近の データで、では女性が再雇用をされるために何か能力支援をしているのか。そういう能力支援を受講したことがあるのか というと、機会がないからだれも受けていないんですよね。そういう状況が全然書かれていなくて、それでさっき小島委員 がおっしゃったグローバル化の波の中で持続的な経済発展をするために女性の能力を活用したいからこういう制度に変 えていく必要があるというところがなくて、何しろ個人単位化というのが経済合理性にこれからなっていくんだ、能力を活用 するのは労使に任せて、制度だけは変えて個人化しましょうというふうに思えてしまうんですね。
     もう少し男女共同参画というのは男性も女性もイコールに活用されて、能力が活用される社会になるから制度もそれに 伴って変えましょうという議論をしていかないと、一般に本当に理解してもらえるのか、非常に不満が残るんじゃないかと 思うんです。だから、やはりここでは前書き、なぜこの問題意識を今こういう問題を作っていくのかという持続的な経済成 長のために女性をもっと活用することが必要なんだという、そこのロジックをちゃんと書くことが重要だと思います。
     高尾さんのおっしゃることもそういうことですよね。実際に女性が家庭に入ったというのは、入らなければならない事情が あるし、その事情が全然変わっていないということが最近になってやっとデータで出るようになってきたという状況なんで すね。だから、そこら辺も是非入れていただきたいと思います。
    大澤会長
    そういう最新のデータを後でファックスなり何なりで事務局にお伝えいただければと思います。
    事務局
    探したんですけれども、なかなか見つからなくて。
    大澤会長
    これだけのスパンの制度にわたって現状を既存の統計等で確かめるというのは至難の技ですので、そこに こそ委員の専門的な知識が頂戴できればと思います。
    大沢委員
    では、提供させていただきますので、よろしくお願いします。
    高尾委員
    今の続きですけれども、10ページの上の方で3個目のポツの103万円や130万円の壁を意識して労働時間 を調整して得られる節税額や社会保険料節約額に比べれば、就業期間等の違いによるネットの受給額の差は実はかな り大きいという、これはこちらの資料にも出ているんですけれども、こういうことをきちんともっと話をしていっていただきた い。こういうふうな表を見た場合にも、結局こういう状況を知らないので103万とか130万とかというちまちましたことを言っ ているのであって、もっと女性も能力と意欲に応じてきちんと働いていけば、それだけきちんと収入も得ることができるし、 それによってパートナーとの間の本当の意味での対等な関係も築くことができるようになるので、この一文というのは私 はこういうことはもっともっとアピールされていくべきではないかなと。そうしつつ、女性の就労をますます促していく必要が あるんじゃないかなと思っています。
    大澤会長
    それも前書きのところに、今までお2方から御指摘があったのはマクロな日本経済の全体、それから今後に とって非常に大きな意味があるということと同時にもう一つ、個人にとっても有益なことである。だから、中立にすると何が いいかというのをそういうふうな形で書くということですね。
    小島委員
    マクロ的な話で言いますと、なるべくこれは女性のアファーマティブアクションを考えている報告書にならな いようにしなくちゃいけないわけですね。どういう社会いう一つの大きなしっかりしたビジョンを出して、ではその具体的な 方策としてこうあるというふうに読まれるようなことでないと、女性がいろいろな注文をしているという女性中心の審議会で アファーマティブアクションを並べたということであったら非常に報告書というか、我々の結論が非常に非生産的な結論に なりますので、何か最初の門構えを工夫して、こういう中でこの問題をとらえているということをより鮮明にできないかと 思っているんです。
     例えば、この報告書の趣旨は男女共同参画なんですが、男女に限らなくて前からも言っていましたがジェンダーフリー であり、エイジフリーであり、高齢化もまだ進んでいるわけです。特に女性の場合は高齢度というか、男性よりも元気で10 年くらいよけいに生きているわけですね。そういう長い人生になり、少子化であり、マクロ的な持続的な成長率が下がって いる。そういう中で能力、意欲、技能、そういうものがある人たちは男性であれ、女性であれ、年齢差に関わりなくそれを十 分発揮しやすいような多様な選択がある社会が必要なんでしょうし、大きな門構えというのはそういう中でパート対何とか と、男性対何とかというのもそうですが、年齢ごとの制限もありますし、あるいは年金一つとっても所得制限をどうするかと いうこともあったり、いろいろな問題も関わってくるかもしれませんし、門構えを非常にわかりやすくはっきりと大きく何か書 いた上で各論を位置付けられないか。
     余り知恵はないんですけれども、結論的にはくどいようですが、アファーマティブアクション的なニュアンスを与えないこ とですね。
    坂東局長
    アファーマティブアクション的な意味合いを与えないという、そもそもこの専門調査会が最初議論を始めたと きは税制・社会保障中心に今のシステムはどうなのかということの議論をお願いしたいと思っていたんですけれども、結 果的には先ほどの八代先生のお話にもあったように雇用システム、賃金格差、そういったものがやはり社会保障制度辺 りでも一番大きい諸悪の根源だろうというふうに考えて、雇用システムの方について今のままではまずいのではないかと いうことになると、アファーマティブアクションというイメージになってしまうという御心配ですか。
    小島委員
    こういうシステムは非常に大きく、これまでの会合でもちょっと言いましたけれども、構造的に変わりつつあ る。年俸制というのはそうですし、それから賃金先払いであとは最初は賃金は低いけれども、先ほどグラフが八代さんの ものでありましたが、40歳ぐらいのところで生産性の伸びと賃金の伸びは逆転するわけですね。そちらの方が早くから賃 金の高いベースがほしいというようなもので若い世代にも年俸制を要求する声があるし、それですとみんなその技能に よってまた次の職場に移りやすいわけですね。将来の後払いの賃金を犠牲にする必要はないですから、そういうものが いろいろ各所でもすごい勢いで今、変わっているわけです。
     そういう変化もとらえて、今あるこれまで言われている日本的というものが固定的であって、それがこんなに大きな問題 を生んでいる。それを直そうという姿勢ですと、ターゲットがもう動いていますから、そうすると一つの大きなどんな仕組み に変わるにせよ、やはり時代的な状況は世界的には競争が大変厳しい。それで、成長率がどんどん下がっている。それ から、少子化であり高齢化である。そういう条件の中でとらえる。今のどちらかと言うと固定した雇用慣行とか、そういうも のに余りとらわれ過ぎると、あと5年もしたら大変陳腐なことを議論していたんだなということになるかもしれないし、難しい ことですね。
    坂東局長
    データは5年前ぐらいで、まだ20世紀末ぐらいのデータしかなくて今、現に起こりつつある変化というのはな かなかデータではしっかりつかみ切れないんですね。ですから、例えば今どんどん就業形態が多様化するということが言 われていますけれども、99年くらいのデータでも少なくとも30代、40代の男性は圧倒的にフルタイムの正社員で、就業の 多様化というのは若年層と50代後半以降にしか起こっていないとか、その変化がどうしてもデータに出てくるのにタイムラ グがあって、5年後になったら古くなってしまうようなものが基礎になってしまうというのはちょっとつらいですね。
    小島委員
    我々の世界で話題になっているのは松下なんですね。幸之助さん以来、絶対雇用調整はしないという一つ の社是があったんですが、その創業者の社是を捨ててあそこのサバイバルのために雇用調整に入ったわけです。あれは 非常に歴史的にシンボリックなもので、あれからずっと経営者の意識というのは変わってきたし、組合の問題の取り組み 方も変わってきたんでしょうね。だから、要するに分岐点というか、分水嶺が今、日本の社会のいろいろなシステムを超え たんだと思うんですね。
    坂東局長
    2、3年前のデータで物を言ったら全然通用しなくなったと。
    小島委員
    それで、同じ発想でやっているところが年に何万という規模でつぶれていますから、それを目の当たりにし て、最後のよりどころのあそこだけはといったシンボリックなところが消えたというのは松下の終身雇用制なんですね。そ れでどんどん早期退職を勧奨して、そのためには割増退職金を出すから昨日、今日の辺りの報道にあるように巨額の特 別損失を計上しているわけですね。あれは抜本的にこれまでの伝統的な雇用環境についての一つの信念を時代に合わ せて組み替えたということなんです。これから加速化します。それができない企業はパートとか何とかではなくて、幾ら低 賃金のパートを使ってもやっていけない企業になってしまいますから。
    坂東局長
    先ほどちょっと林先生はおっしゃっていましたけれども、正社員とパートの格差は今、正社員の方を切り下げ て数を少なくする方に完全に経営者の方は……。
    小島委員
    それから、もう既に自主定年制は60歳じゃなくて一時50歳ということだったけれども、もう40代の前半ぐらい まで落ちているんです。40歳になると賃金は全く伸びないか落ちる、あるいは配置転換で別の会社に行ってしまうとか、 今は60歳定年などという話はないんです。一つの組織を考えると、別のところで働く余地はあるけれども、グループの中 で別のところに行けば完全に賃金は4割落ちたり、そこで常用雇用であっても賃金が4割とか落ちているんですよね。同 じ仕事をしていてもそうです。だから、いろいろな模索が具体的な格好でどんどん出てきたのがここ1年か1年半ぐらいの ところだと思っています。
    大沢委員
    そういうデータとか何かはあるんでしょうか。
    坂東局長
    全国的な正確な公的統計というところは……。
    小島委員
    シンボリックな企業のケーススタディというものを2、3付け加えると何かヒントになると思いますが、データと してはマクロのデータにはまだならないですね。
    坂東局長
    逆にこちらの方のワーキンググループでやったアンケート調査などですと、家族手当だとか、住宅手当だと か、そういうものに将来とも変える気持ちはないというのが返答としては結構多いんです。そんなはずはないので、仮説と しては恐らく人事担当者が相手だから、人事担当者の人たちは余り長期的な先のことは見えないで今の制度がそのまま 続くだろうと思っているかもしれないけれども、経営方針は変わっているので、そこのところで非常に格差があると思いま す。
    小島委員
    我が社では家族手当はもうやめようということで組合も納得しているんです。それは家族が何人になるかは 選択の問題だと。家族が1人増えると家庭が維持できないという貧乏の時代は終わったんだから、あとは選択の問題であ る。むしろ能力に応じて働きに応じてくれという話に変わってしまったんですね。それはどこにでも生まれつつあります。ま だ今の古い経営者はそう急には廃止できないと言っているんでしょうが、どんどん今その比率というか、ウェートは落ちて います。所得は上がっても家族手当の比率はどんどん下がっていますから、実際には消滅過程に入っているんです。
    大澤会長
    今、企業の雇用システムが非常に急速に変わっているということは、毎日ニュースに接していれば肌で感じ られることですけれども、そのすべてが必ずしも合理的な方向に、それから最適なポートフォリオという形でいっていると は限らなくて、その最適でない非合理な部分というのがひょっとするとこういうジェンダーの中立性と関連しているところが ある。例えば、有配偶の女性を130万以下で雇えば社会保険料の事業主負担分は払わなくてもいいというようなことで、 競争条件が平準化されていないがために、その最適ポートフォリオでないところで雇用ポートフォリオが落ち着いてしまっ ているかもしれないというような問題はあるわけで、そのことは明らかに当専門調査会の課題だというふうに思うんです。
     それから、我々のアンケート調査の結果でいいますと、製造業の回答率が高かったためにその動きというのが十分出て いない結果には確かになっております。ただ、今日資料をお配りしていないんですが、追加分析をしてみましたら、女性の 管理職の比較的多い企業ほど家族手当のようなものは廃止する、あるいは賃金等に振り替えるという有意な差があると いうことが追加分析に出てまいりました。これはやはり合理的な方向にいこうとしている企業は女性を登用している企業で あるというようなことが、かなり引き伸ばしての話だけれども言えそうかなという気もしていまして、それも当調査会のやは り守備範囲のことかなと思っております。
     もちろん雇用システムは慣習や慣行として中立でないということはあっても、それを政府の政策としてこうしなさい、ある いはそれを義務づけるというようなことは非常に難しいわけですから、政府の政策がバリアを作っていたり支えているな ら、その施策を見直す。それから、合理的なものを選択していけるように環境を整えるというんでしょうか、そういうところに は政府の責任はあるでしょう。それがこの専門調査会が証拠の付いた調査結果を出して会議に対して意思決定をお願い するというような運びになるのかなと思っております。
     これはあくまでも中間報告ですので、まだ会議としてどういう意見に持っていくかというようなところにはしばらくの時間が ございます。今回は問題点のありそうなところを洗い出す。しかし、その場合にも方向性としてははっきりと中立性や個人 単位化を出す、その場合にそれはなぜ追及すべきなのか、基本法に書いてあるというだけでは納得しない人が世の中は 多いわけですから、日本経済全体にとってもプラスになるし、個人個人の女性も、それからその配偶者である男性にとっ ても、生涯を通じて大変メリットのある方向にいけるんだというようなことは方向性として出して、なおかつ企業の競争条件 を平準化し、合理的な経営選択ができるような環境を整えることにもつながるというようなことが、皆さんの共通認識に なって盛り込んでいければいいのかなという感じがいたしますが、いかがでしょうか。
    永瀬委員
    その辺でこれを読んで思ったのが、子どもを育てることを男女あるいは社会がどう担うかという視点がない ように思うんですね。個人単位にする、あるいは中立的にするといったときに、今まで家庭の中で無償で子どもというのは 育ってきたわけで、それをやめるのであれば代替的に、ではどうするかという視点がないことには非常に中性的な、か えって変な社会になり得ることがあると私は考えるんですね。
     それで、この中で公的年金における子どもの問題はいろいろな議論がある。それはまさにそうだろうと思うんですけれど も、社会保障といったときに児童手当ですとか、あるいはそういう形で子どもを育てる。それも、今まで主に女性が育てて きたわけですけれども、それを男女で、あるいは社会で育てるという視点をもう少し入れた方がいいのではないかというの が私が読んだ印象です。
    坂東局長
    ただ、そうなるとライフスタイルに中立という考え方で社会保障を見直そうということではなくて、むしろ例えば 子どもを生んで育てることを応援するような方向に、チャイルド・サポーティブ社会保障の方向へやろうと。中立じゃなくて 子ども指向に移そうという御提言ですか。
    永瀬委員
    子ども指向に移すというよりは、あらゆる社会において、やはりお金を稼ぐというだけではなくて、子どもが 育っていったり、あるいは時間のゆとりを楽しんだり、余暇活動をしたり、いろいろなことがあると思うんですけれども、それ を金銭的に働ける社会に自由に女性がしていこうということをするとしたら、では今までされてきたそういうことは一体どう いうふうに担われていくのかということを再考する必要がある。それが非常に不利なことにしていくような変化であってはい けないんじゃないかという気がするんですね。それをしたくない人はする必要はないわけで。
    小島委員
    例えば保育所の待機児童ゼロ計画とかあるでしょう。あれはひとつ社会的なもので個人の自由選択の幅を 広げる。もしなければ選択が非常に限られてしまうわけです。だから、個人の自由選択を更に応援するバリアをなくすた めに社会的政策として、例えば待機児童ゼロ政策というのが出てくるわけですね。
    永瀬委員
    あるいは男性がもっと育休を取りやすくするとか、そういうことであってもいいわけです。
    坂東局長
    仕事と子育ての両立という点で、そこははっきりと方向性があるわけですね。その両立できるようなことが可 能になるようないろいろな制度、雇用の場も含めて、保育システムも含めて、あるいは地域こぞって子育てをというものま で含めて、パッケージとしてあれは出したわけですが、この影響調査の方は中立ということをうたっているんです。だから、 その中立というところにこだわるのか、それとも永瀬さんがおっしゃったようにサステーナブルで子どもが持ちやすいよう な、男性も女性も子育てができて同時にシングルでいるということも選択できてということが言えるのか。それとも、独身を 選んで子どもを持たないということに対しては少しディスインセンティブを与え、子どもを持つことにインセンティブを与える ということですか。
    永瀬委員
    よくわからないですけれども。
    坂東局長
    どちらにこだわるかです。どちらもあり得るんですけれども、ただ、たまたま中立ということを言っているの で。
    永瀬委員
    例えば、子どもを持った場合に非常にお金がかかるわけですね。それはものすごくかかるわけです。そのか かるのを今までは配偶者控除とか、第3号とか、そういう形でどうにかしてあげましょうという考え方だったわけです。で も、そうじゃない考え方で考えましょうということなんだと思うんです。では、それは全く廃止してしまってよろしい。その上で お金が取れる人はどんどん取りましょう。育てられる人は育てましょうということだけでは若干バランスがとれていないの ではないかということです。
    坂東局長
    それは、子どもを育てやすいパッケージというのは別途あり得るんじゃないかと思うんです。
    永瀬委員
    新しい社会に新しいパッケージがないとおかしいですよね。
    坂東局長
    でも、そのパッケージの方は例えば児童手当ですとか、あるいはより手厚い育児休業ですとか、いろいろ もっとあると思うんです。母子家庭に対する手当だとか、いろいろな部分があって、それとこの中立的なという部分とを一 緒にすると、それこそ先ほど小島委員がおっしゃったような形での、要するにアファーマティブアクションなのかということ になりませんか。
    大澤会長
    永瀬委員のおっしゃったことは、子どもを生み育てることを支援するような要素をこの中に入れるか入れな いかという観点からおっしゃったのではなく、中立性や個人単位化というのを指向していったときにも、制度設計というのは 一義的に決まるわけではなく、なお複数の制度設計があり得る中で、それが男女共同参画を推進する上でのポジティブ なほかの目標ですね。子育て支援だとか、高齢女性の所得保障ですとか、そういったポジティブな目標と抵触しないよう な形での中立化や個人単位化の制度設計を選ぶべきだと。そういうことがきちんと入っていてほしいというふうに理解して よろしいでしょうか。
    坂東局長
    抵触しないかどうか程度でよろしいんですか。
    大澤会長
    できればプッシュした方がいいわけですよね。
    永瀬委員
    今ある仕組みの下での女性考慮とか、妻考慮とか、そういうのを全部切ったら本当に中立的でいい世界がく るかというと違うと思うんです。むしろ子どもを育てている人は非常に厳しいとか、所得が低い人はもう結婚できないとか、 子どもは持てないとか、そういうことだってあり得るわけですね。そうじゃない社会では、日本のような形で世帯単位で奥さ んと子どもを守るというような考え方をとってこなかった社会では、社会単位で児童や高齢者を見るという制度はやはり とってきていると思うんです。それが全くなくて、本当の競争社会でやっていっている国もあるでしょうけれども、私自身は その組替えが必要なんだと。
     例えば、以前男女雇用機会均等法が通ったときには男女均等ということを考えましたけれども、実はやはり家庭生活と いうものもあった。あったけれども、そこは無視して均等というものを考えた結果として、実は余り均等は進まなかった点も あるわけですね。だから、そこへの視点というのは代替案が必要じゃないかと私は考えるということです。
    大澤会長
    非常に乱暴にタイプを立てれば、個人単位化とか中立化といったときに一つのタイプはアメリカ型とでも言う んでしょうか、完全に業績に応じた報酬で公的な保育サービスなどはなく、医療保険などもマーケットで買ってくるというの もあるし、逆に北欧型というんでしょうか、かなり社会的に保育サービスも手厚いし、それから年金や医療サービスという のも公的に保障されている部分が厚いという方にいくやり方もある。どちらなのかと言ったときに、それは男女共同参画を 推進する上でのほかの政策目標が幾つかありますが、どちらがそれを満たしやすいかというような中で考えていくという ことになるのだと思うんです。
     しかし、全部をこの中に入れることはできませんので、この我々の中間報告、それから最終報告というのは、やはり中立 化や個人単位化ということを大きな太い筋にした上で、なおその中であり得る制度設計の複数の選択肢については、基本 問題専門調査会や女性に対する暴力の専門調査会などで出てくるストレートに追及すべき路線との間で、どれが一番整 合性が高いかというような形でならば無理なく入れられるかなと思います。現段階では何しろ数量分析が済んでいない中 では何とも言えない部分があります。私は個人的には永瀬さんのおっしゃっている方向に賛同しますが、最低限は抵触し ないようなということですね。
    坂東局長
    ただ、それこそ保険の機能辺りをどこまで期待するかですよね。本当に中流の暮らしを高齢期にも公的年 金で保障するのか、あるいは医療の方か。先ほど私は八代先生のおっしゃったことに対して是非永瀬さんの御意見を聞 きたかったんですけれども、恐らく所得再分配機能というものを余り過大に今の年金制度等々に負わせてはまずいので はないかというのが基本的な考え方でしたね。
    永瀬委員
    私は遅れて来て八代先生のお話は最後の方しか聞けなかったのですが、最後に八代先生が地域保険でい いとおっしゃったのは、あれは住民税でやろうという話なんですか。何をおっしゃったんですか。
    坂東局長
    それこそ個人単位化で、国民年金みたいな感じで。
    大澤会長
    国保や基礎年金の方にむしろ被用者保険を統合していくという。
    坂東局長
    それで、報酬比例だとか事業者負担の部分をやめると。
    永瀬委員
    でも、定額で取るというのは今、一部はうまくいっていないわけですよね。ですから、それはうまくいっていな いのでどういうことをおっしゃっているのかなと。私は公的年金をある程度考え直す必要があるというのは全く賛成です し、それはどうしようもなくそうしなくちゃいけない方向にあるだろうと思いますが、でもそこにはやはり一定の再分配はある んじゃないか。ただ、それはどういう方法でやるのかなというのはお話を全部伺っていなかったのでよくわからないんです が。
    坂東局長
    今、ちょっと過剰な機能を公的年金制度に負わせ過ぎているのではないかという危機意識がおありなんだと 思うんです。
    永瀬委員
    うまく移行できれば、それはよろしいんじゃないかと思います。ほかのところでも言っているところですけれど も、児童に対しては2兆円ぐらいしか社会保障給付を出されていないんです。それで高齢者には50兆円出ているわけで す。
    大澤会長
    1人当たりで言うとどんなものでしょうか。65歳以上人口と15歳未満人口で割れば……。
    坂東局長
    やや65歳人口が上回ったところで、そんなに大きな差はないですね。ちょっと高齢者の方が多いけれども、 やはり年金と医療で。
    永瀬委員
    だから、ちょっと高齢者に寄り過ぎていると思いますけれども。
    大澤会長
    それはあると思います。
    高尾委員
    そういうことであれば、やはりこの調査会の中間答申に今、永瀬先生がおっしゃったような子どもの視点とい うのはもう少し入れていけないものでしょうか。つまり、性に対して中立化であり、個人化していく中で非常に動かさなけれ ばいけない制度があるわけですね。動かしたところで今度何をするかといったら、子どもに対する保障給付というんです か、そういうことをしていくということを入れていかないといけないんじゃないかと思いますが。
    坂東局長
    別の考え方もあるわけです。要するに働き手、世帯主だけが世帯を支える、家族を支える収入を期待され るから、先ほど八代さんが言ったように、例えば職種も選択できないし、就業地も選択できないし、長時間労働も受け入れ なければならないというふうな働き方を選択せざるを得ない。より個人単位化したことによって自分の働き方を選択して、 男性も家庭との両立が図りやすくなるというふうな方向での意味付けはできると思います。個人単位化が子どもにとって 厳しいというのは余りにも短絡的なんじゃないですか。
    永瀬委員
    私は、もちろんそのための新しい制度が必要だということです。
    坂東局長
    だから、世帯単位で父親が全部稼げということだからこそ、そういう働き方をせざるを得ないわけで。
    大澤会長
    子どもを持つ持たないという選択に対する制度の中立性ということから言うと、前々からここでも御報告して いる児童支援パッケージというのが、どのくらい厚くてどういうメニューになっているかということに関わるわけです。日本 はoecd諸国でも最も児童支援パッケージは薄い国で、なおかつ住宅費と教育費負担を入れるとマイナスになってしま いますから、そういう意味では明らかに子どもを持つということがパニッシュされている社会なんですね。
     ただし、ここに関わっているのは今申しましたように住宅費と教育費なんです。そういうことを入れてくれば、中立性という 観点から子どもを持つことはパニッシュされていると十分にいえる社会だから、せめてそこのところをマイナスではなくてゼ ロまで持っていけというようなことは書けるでしょう。住宅費となりますと持ち家政策をずっととってきた。そして、公共的な 住宅供給が非常に乏しくて、なおかつ質がよくて安価な民間賃貸住宅の供給も非常に限られてきたということと関連して います。
     ところが、恵まれた人たちには社宅があって、だから住宅政策を改めろというのが大きな声に今までなり得なかった。教 育費に関して言えばこれはもう奨学金制度が薄いということでほとんど説明できる問題ですね。その辺のことは御意見が いただければ入れる工夫というのはできるのではないかという気はいたします。
     今4人になってしまいましたから、まだもう少し時間があるとはいえ今日十分議論したというふうに考えるのか、考えない のか、それによってはもう一回専門調査会を予定外に開くということも考えなくてはならなくて、どうやらそちらの方なん じゃないかという気もします。
    坂東局長
    そうですね。この専門調査会は非常に皆さんお忙しくて、出席者を確保するのが非常に難しいので。
    大澤会長
    今は定足数が成り立っていないですよね。そこでまたもう一回というのは決められるんですか。私が招集す ればいいということなんですか。
    坂東局長
    はい、招集すればいいので議決は必要ないです。
    大澤会長
    わかりました。では、何とかもう一回。ただ、それも定足数を成り立たせるためには大変困難な日程調整が 要ると思いますが。
    坂東局長
    次の会議に出られない方は後で文章で御意見を言ってくださるか、そうでなかったらもう批判はしないと。
    大沢委員
    まだちゃんとした意見じゃないので恐縮なんですが、やはり企業社会が変化しているということが高尾委員 とか永瀬委員から少し指摘された点なのかなとも思うんです。全然話から外れてしまって恐縮ですが、今までの住宅手当 とか、さっきの話でも企業が丸抱えで家族を養っていくというか、一生面倒を見るというような形の福祉社会ができてきまし たね。それで今、企業社会が崩れてきて、どんどんいろいろな機能というのがやはり企業ではなくて子育ては個人という ふうに変わってきて、雇用保障の責任も個人というような形で、何か企業を頼れないような社会になってきたということで すね。
    坂東局長
    にもかかわらず制度は頼れるままだというところのギャップなんでしょうね。○大沢委員 だけど、議論をし ているときには例えば年金制度とか、そういうものでも企業社会の延長線上に考えられているんじゃないかと思うんです。 つまり、長期雇用で一生雇用されていくというような形でモデルが考えられていて、その中で中立性を確保するような社 会保障制度を作ろうという議論が出ているのですごく混乱するんだと思うんです。 それで、さっきの八代さんの意見は、 私はずっと100%賛成してきて本も何度も読み返した愛読者なんですけれども、どこに引っ掛かるんだろうかということを さっきから考えていて、その企業社会が変わっていくというところは余り議論されずに今まで通りにやはり中高年に手厚い 年金制度は残しながら、こちらでは中立の年金、社会保障制度をこれから作っていくという中で、どこが犠牲になるのかと いうと家族が犠牲になるのかなというあいまいな意見で恐縮なんですが。
     だから、もうちょっと議論をしなくちゃいけないのは、別にここで議論するというわけではなくて、ここ2、3年の間で構わな いと思うんですけれども、企業社会が変わっていくんだというところが、小島委員の話を聞くとそうかと思いながらも、デー タでは出ていないし、実際に政府がどういうふうに税金を使っているかというのを見ると、さっき永瀬委員が指摘されたよう に、保育とか児童手当とか母子家庭への支援というのが厳しくなっている割には年金財政というのはどんどん増えてい て、今度は雇用を延長して65歳まで雇用を延長しようと、そういう方にはすんなりとかなり早い段階で65歳雇用延長とか、 そういうところにいく割には、児童手当とか保育所への支援とか、そういうところは知らないうちにどんどん要件が厳しく なって減らされていく。それはやはり今までの社会保障制度そのものが企業社会の延長線上にあって、そこは変わってい ないんだけれども、私たちが今、議論をしているのは個人を前提とした社会保障の仕組みだというところかなと。
    坂東局長
    だから、企業社会はどんどん変わっているんだから今の制度、古いアンシャンレジュームに即した社会保 障制度は大きな改革を必要としているというのははっきりした皆さんのコンセンサスじゃないですか。
    大沢委員
    だから、それと実際の今の動きとが矛盾しているということですね。企業の対応とか、そういうものが果たし て本当に個人化の方向に向かっているのかというと、まだまだ現行の制度を維持しようとして非正社員を増やしているよ うな状況にあるんですよね。だから、将来的にはもしかしたら企業社会というのは崩壊するのかもしれない。今もう分水嶺 を超えたというふうに小島委員はおっしゃったので、そこら辺はわからないのですが。
    坂東局長
    非正社員を増やすというよりも、はっきりしているのは正社員を減らすという方向ですね。
    大澤会長
    下手をすると、八代さんの言葉だと不平等性を残したまま非効率というどつぼにはまりつつあるのかもしれ ないですね。
    大沢委員
    そうなんです。効率というのはもしかしたら思い込みかもしれない。そうすると、そういうふうになる可能性も あるというところまで言ってしまってもいいのではないかと思うんですけれども、個人的な意見です。
    大澤会長
    どうも今日はいろいろと御自由に御議論をいただきましてありがとうございました。先ほど申し上げた通りで すので、御都合を伺った上で日時をもう一回調査会として設定をしたいと思います。そのときには、今度はたたき台という 形ではなくて素案という形でお示しして御議論をいただきたいと思いますので、よろしくお願いします。
     それから、いろいろとこちらの事務局や私の目の届かなかったデータ等を教えていただければ大変ありがたいと思いま す。
     今回の調査会では直前に資料が大量にメール等で送られましたけれども、この背後には事務局の大変な御苦労があり まして、事務局の御苦労には敬意を表したいと思いますが、次回素案をお示しするというときにはもう少し時間の余裕を 持って、何しろ大部なものになりますので、お示しした上で議論が深められればと思っております。
     それで、自己評価マニュアルの方が議事が逆になっておりましたので、こちらの説明をお願いします。
    事務局
    資料が渡っているかと思いますけれども、「男女共同参画の視点を取り入れていくための自己評価マニュアル (案)」というものでございます。
     今回、言ってみれば中間的な作業経過報告ということでございまして、マニュアルはこんなイメージになるのかなという ことをお示ししております。細かい文章はともかく、こんなイメージでよろしいのかなというようなことで見ていただければと 思います。委員の皆様の御意見を入れたというものでは全くございませんし、各省庁とセットしたというものではありませ んので、委員限りの資料ということでお願いいたします。
     具体的な内容なんですが、諸外国にもこういうマニュアルはございまして、そういったものを参考にしながらつくってみた んですけれども、どうしても抽象的な内容になってしまうというような点はございます。そういうことでございまして、2ペー ジの四角で囲んだ部分にありますけれども、極力外国の例を載せてわかりやすくするようにできないかというようなことは しております。この例と、それから本文がうまく有機的に連携していないとかというような問題はまだまだ残っているところ はございます。4ページにも例がございます。
     あとは文章がずっと続きまして、11ページ、12ページと調査項目というものがあるわけですけれども、この調査項目をも う少しわかりやすくというような御意見もあるのではないかと思います。いずれにしましても、こういうイメージでとにかく作 業は進んでいるということで御報告させていただきまして、もしそのイメージと全く違うというようなことであれば何か御指 摘いただくということで、作業の計画としましては3月ごろにはまとめるということで当初言っておりましたけれども、中間報 告の作業との関係もいろいろありまして、その辺はどうしたらいいかはまた御相談させていただければと思いますが、とり あえず以上でございます。
    大澤会長
    何か御質問や御意見がございましたら手短にお願いいたします。
    坂東局長
    このたたき台には文章のほかにいろいろな附属の参考の資料等を付けております。それについては説明す る時間がなかったのがとても残念なんですが、こちらの方についても是非目を通していただいて御意見をいただければと 思います。皆さんお読みいただいたでしょうか。
    高尾委員
    この資料2つについての説明はもうないわけですね。特にこの国際比較の方は話をちょっと聞きたいなと 思ったんですが。
    坂東局長
    時間があれば説明しますか。
    事務局
    では、「ワーキングチーム研究経過報告」というものでございますけれども、これは日本女子大学の埋橋先生 にやっていただいたものでございます。
     これはやり方としましては、まず1ページの1のところにおける片働き世帯と共働き世帯、これをまず比較してシミュレー ションを行う。それから次の方法2になりますけれども、片働きと単身世帯を比較してシミュレーションを行うというふうにし ております。このシミュレーションをここに挙げておりますオーストラリア、ドイツ、日本、スウェーデン、イギリス、アメリカの 6か国についてやりまして税率を計算するわけですけれども、その際の平均所得としてそこにケース1から4までございま すけれども、そういった形で4ケースに分けて計算しているわけでございます。
     まず片働き世帯と共働き世帯の結果をまとめていますのが2ページの上でございまして、イギリスとオーストラリアでは 片働き世帯の方が税負担が高い。2番目にあるようにドイツ、日本、スウェーデンではほぼ同じとはしていますけれども、 日本はその所得の大きさによって異なるというところがございます。それから、次の方法2というのは片働き世帯と単身世 帯の比較でして、これが2ページから3ページにかけてでございますけれども、オーストラリア、スウェーデンではこれは また税負担は全く同じ。それから、ドイツ、日本、イギリス、アメリカ、これは単身世帯よりも片働き世帯の方が税負担率が 低いということで、これを取りまとめますと日本というのは、これは税負担の大きさを言っておりますので単身よりは片働き を優遇して、共働きについては高所得者層の共働きを優遇して低所得者層では片働きを優遇するというような結果になっ ているわけでございます。
     結論部分だけかいつまんで言えばそういうことになるのですが、各国の制度に従ってこういう年収であれば税負担はど れぐらいで社会保障はこれぐらいの負担だということを全部計算しまして税率を出して、それで負担する税率が幾らだとい うのを計算してこういう比較をやっているということでございます。
    高尾委員
    面白く見せていただいたんですけれども、結局各国いろいろあるという結果ですね。それで、オーストラリア とイギリスだけは就労インセンティブが働くような形になっているかなという考察がありましたし、スウェーデンは非常に厳 密な中立をとっているというようなことが読み取れたんですけれども、各国の年齢別の就労率を見ると、スウェーデンは 一番高いですが、そのほかの国は大体同じようなものですね。そうすると、いろいろな国際的な制度がある中で女性の就 労率はどういう制度をとっても一定の就労率になってかなり上がってきている。そうすると、日本も制度的に見るとそんな にほかの国と特別にどうこうではないのに、非常にm字型のカーブがいつまでも残ってしまうというのはどういうことなん でしょうか。制度というのは余り関係ないのかなとか、そんなふうに率直なイメージを受けてしまったんですけれども、言っ ていることが通じましたか。なぜ日本はいつまでもこうならないのかなと。
    大沢委員
    制度の方では合理的なのに、それが選択されていない理由は何かということですね。
    高尾委員
    私のイメージから言えば、各国の先進国が非常にこういうカーブになっているのは何らかの制度的な裏付 けがかなりあってそうなんだろう。オーストラリアとイギリスは確かにそうなのかもしれないけれども、それ以外のことで言 えばそんなに日本も変わらないのに、何で日本はいつまでもm字のままなのかなという、その辺の考察はどうでしょうかと いうところがお伺いしたいなと思ったんですけれども。
    大澤会長
    要するに、それは制度のアウトカムというふうに言うんですけれども、アウトカムレベルでの説明になりま す。今回の検討は、とにかく世帯の類型によってどういう税や社会保険料の負担率になっているのかというところを確か めるだけでも、80時間を超えるぐらい作業していただいておりまして、ではそれが女性の就業率や年齢別の労働力率、そ れからパートタイム比率あるいはフルタイムとパートタイムとの間の賃金格差等々といったアウトカムレベルのところにど れぐらい効いてきているのかというのは、おっしゃるように今後の課題ですね。
     マニュアルにつきましてはいかがでしょうか。これは一般の方に読んでいただくということを念頭に置いているものではな く、各省の施策の企画立案に当たる担当者の方にマニュアルとして使っていただこうというつもりでつくっておりますので。
    永瀬委員
    例が入っていてとてもわかりやすくていいんじゃないでしょうか。
    大澤会長
    実際に座右に置いて使ってもらうバージョンはもっと使いやすいものを、ポンチ絵とか色刷りも入ったような ものをつくった方がいいんじゃないかとは考えているんですが、そういうお金はありますか。
    坂東局長
    これは一種の研修教材ですよね。
    大澤会長
    マニュアルと言うには、もう少し手ずれがするぐらい使われるというふうなものにはちょっとまだなっていない のかなという気がして。
    坂東局長
    まず中身をもう少し本当にマニュアルとして利用できるような形にする方が先で、印刷費をひねり出すかど うかはその次の問題だと思うんですが。
    大澤会長
    これについても追って御意見、御質問をいただければと思います。
     では、そろそろ時間がきておりますので、事務局からの連絡事項をお願いします。
    事務局
    次回でございますけれども、とりあえずお時間を御予約させていただいておりますのは3月18日14時から16時 ということで、その1回は押さえさせていただいておりますので、そのほかの日程につきまして今後各委員の方に教えてい ただきまして、なるべく御出席率が多くなる時間に設定してまた御連絡申し上げたいと思いますが、ひとつよろしくお願いい たします。
     議事録につきましては、お手元に配っております第6回議事録は御了解していただいたということで、公開させていただ きます。それから第7回についてはチェックしていただいた上で次回の会議以降で公開するということで、1週間ほどでも し御意見があればいただければと思います。
    大澤会長
    よろしいでしょうか。それでは、長時間にわたってありがとうございました。これで影響調査専門調査会の第 8回会合を終わります。

(以上)