第6回男女共同参画会議影響調査専門調査会

  • 日時: 平成13年11月29日(木) 16:00~18:00
  • 場所: 官邸大食堂
  1. 出席者
    • 大澤 会長
      大沢 委員
      岡沢 委員
      木村 委員
      小島 委員
      高尾 委員
      橘木 委員
      永瀬 委員
      福原 委員
  2. 議事
    • (1) 開会
    • (2)雇用システムに関する日本労働組合総連合会ヒアリング
    • (3) ワーキングチーム研究経過報告
    • (4) 閉会
  3. 議事内容
    大澤会長
    ただいまから男女共同参画会議の影響調査専門調査会の第6回会合を開催します。
     お手元の議事次第に従って本日の審議を進めさせていただきます。今日は、女性のライフスタイルの選択に影響が大きい雇 用システムに関して、日本労働組合総連合会からのヒアリングをお願いしています。その後、ワーキングチームの研究経過報 告を行うことにしております。
     まず、日本労働組合総連合会副事務局長でいらっしゃる林誠子さんから、配偶者手当などの家族手当や福利厚生制度など について説明をお願いいたします。
     では、林さん、お願いいたします。30分ほどでお願いできますでしょうか。
    林副事務局長(日本労働組合総連合会)
    御紹介いただきました連合の副事務局長をしております林と申します。どうぞよろ しくお願いいたします。
     私もまだ役員になって間もないということもありまして、大変不十分なお話ししかできないかと思うと大変恐縮でございます が、女性の就業と雇用システムの関係について考えているところ、そして連合が調査しましたことについて、若干意見を述べさ せていただきたいというふうに思います。
     まず、雇用システムが女性のライフスタイルにどのような影響を及ぼすかということで、手当問題というふうなことでの課題をい ただいておりますけれども、私は雇用システムということで言うならば、何よりも有期契約・無期契約という雇用形態そのものの 中に大きな問題点があるのではないかというふうに考えています。
     雇用形態の多様化ということが各方面で言われていますけれども、雇用形態は元来2つしかないと思っています。1つは有期 契約、もう一つは無期契約、この2つしかないにもかかわらず、有期契約の内容が多様化している。そのことをもって雇用形態 の多様化というふうに置きかえられてしまっている現状があるというふうに思っております。ここに大きな問題があるのではない かという気がするわけです。お示しをしておりますグラフ、女性労働白書による調査によりましても、今、分けました中の無期契 約労働者が減少し、有期契約労働者が増加していっているという実態が明らかになっています。
     まず、1-13図のところを見てまいりますと、女性の正社員の減少が大きくなっています。それは、男性も多少は減少している わけですけれども、より女性の方の正社員の減少率が高いというのが13図の方にあらわれております。そして14図の方で見て みますと、正規の雇用者というのは下がり傾向、減少傾向、先ほどと同じようですけれども、一方で非正規雇用者数という、こち らの方の数は平成12年を見ますと、どんどん右肩上がりに上がっていっているということで、女性の雇用労働者が4割にもなっ たというけれども、質の問題として、非正規と呼ばれる有期契約労働者の方が増加しているというところに雇用システムの中で の一番大きな問題点があるというふうに思います。
     無期契約労働者の中では、基本的に年功賃金というのが崩れたといえども、基本はそこにありますし、世帯賃金というのが厳 然として残っているという現状があります。したがって、有期の方には、そういう年功制もなければ、世帯単位ということもあるわ けでもなく、多くの女性がそちらの方に寄せられてきているところに大きな問題があるのではないかと思います。
     賃金の実態を見てみますと、2枚目のところに1-5表を示させていただいておりますけれども、これはパートの人たちを含め ない賃金の男女の格差ですけれども、それであっても64.6%、パートの人たちを含めますと、さらにこの格差は大きくなっていく わけです。
     その次のところの3ページ目を見ますと、1-29図ですけれども、同じ女性の中でも、パート労働者と一般の労働者との賃金 格差は極めて大きく67.3%という数字になっており、パート労働者というものが日本に存在した当初のころに比べますと、格差 はより拡大をしていって、より安い労働者として位置づけられてきていることがこれでわかるかと思います。そこを女性たちがす べて担っている状況です。
     一番最後のページを見ますと、男性と女性のパートタイム労働者の賃金比較をしたものを載せていますけれども、それを見ま すと、女子の中の一般労働者が12年で1,329 円、パートタイム労働者が889 円で、女性の中でも一般とパートタイムの格差が 67%程度、男性の一般が2,005 円でパートタイム労働者は1,026 円というふうに見ますと、男性の中でもパートタイマーは低い ところにありますが、これを男性の一般労働者と女性のパートタイマーとを比べますと、889 円と2,005 円という大きな格差があ るわけです。そういうものも先ほどの表に含めていきますと、大変大きな格差の中で女性は仕事をしているということになるわけ です。こういう形のものがどんどんふえていって、有期に女性がたくさん押し込められていくといいましょうか、多様化であると か、そういうニーズがあるからだといって、そちらの方がふえていっているわけですけれども、果たしてそうなのだろうかというこ とももう少し述べさせていただきたいと思います。
     有期契約労働者の中では、契約社員、パート社員、派遣社員といった様々な形のものがどんどんふえ、それらが先ほどの非 正規と言われる名前で語られたり、短時間労働者という形で語られたりということになっておりますが、基本的に無期契約労働 の形をもっと多くしていくということには賛成であるということです。つまりパートタイマーというのは、必ずしも有期でなくても、無 期契約の中にパートタイムという働き方もあり、フルタイマーの働き方もありというふうな形のものをふやしていくということの方 が今大事な多様化の中身ではないだろうかと思っています。無期契約の中で、女性は年功型あるいは世帯賃金型から既に外 されて長いこときていたわけです。短い期間働いたら結婚するという形できていまして、それが均等法によって同じにしなくては いけない。均等な待遇をというふうになってきた中で、だんだん女性だけ安い賃金にするとか、別の賃金体系を持ち込むことが できなくなった。そうすると正社員で雇えば、年功型、世帯単位の賃金ベースに合わせなくてはいけない。グローバル化の中で 競争に耐えることができないということもあり、この不況の中で段々と同じ雇い方をしないで、先ほどのデータにあったような形 で、有期契約の労働者の女性がどんどんそこにふえていっている傾向にあるのではないかというふうに思っています。その方 が非常に大きな問題で、その働き方をすることでは、社会保険にも入れないという人たちが大変多いですし、あるいは健康保険 にも入れないという人たちがとても多くなってしまっています。
     その原因がどこにあるのかということで、130 万円だとか、103 万円だとかという税制上の問題、それから加入資格要件の限 度の問題、お尋ねのありました雇用システム上の問題で2つ目の問題に入りますけれども、様々な手当の問題があるではない かというので、連合が調査をした結果について、少しお話をしてみたいというふうに思います。
     皆さんのところにお示しをしております資料は、2000年の7月に調査をした、2年に1回しております連合の調査に基づいてお ります。一番最初は5ページの扶養手当という制度を持っているところと持っていないところの調査ですけれども、扶養手当はほ とんどのところが制度として持っております。97.1%ということで非常に高い割合で持っております。「1万人以上」のところでは 93.3%、「1,000 人未満」のところでは98.0%になっておりまして、大手のところの方が扶養手当制度が少ないんです。ここには あらわれていませんけれども、小さい企業においては、賃金のベースを変えないで、手当でもって賃上げを確保していくという手 法をとった結果が、このようになっている。そして大手の方は、そういう手当のようなものについてはもっと別な形で、成果主義だ とかいうふうなものが導入されるようになる中で減少する傾向があるのが、この数字の大小にあらわれているのではないかとい うふうに私は考えています。支給対象者につきましては、規定が「ある」というのが45.6%となっておりまして、その対象は、次 のページを見ますと、支給対象は配偶者や子どもなど続柄によって支給しているところが圧倒的に多くなって、ほぼ6割となって います。
     一番お尋ねがございました支給対象の制限条件についてですが、配偶者への支給制限条件として、103 万円という「所得税 法上の控除対象者」を支給要件としているというのが最も多く62.1%となっております。「規定で別に定めた」というのが28.0% となっています。この62.1%というところで、103 万円という制限を設けている。そのことによって、女性の就労意欲といいましょ うか、こういうものがもらえなくなるから、その範囲で働こうという女性の選択に影響を与えるということは言えるのではないかと いうふうに思います。
     それから、その次のページのところの「扶養している父母についての制限」につきましては、「組合員本人の父母」あるいは 「控除対象の配偶者の父母」、どちらもあわせて支給しているというところが結構多い。約70%という数字になっています。
     それから、3番の扶養手当のモデル額についてですけれども、この金額は1万円から2万5,000 円未満の間というのが一番多 い回答となっております。このことは正社員の側の女性から見るならば、結婚をすることによって、これだけの賃金差が生まれる という言い方もできるかと思います。30歳ぐらいのときに賃金の格差が開き始めますけれども、その一つが、結婚によって、男性はこの1万円から2万5,000 円が結果として手当として上積みされ、結婚した女性はそれはつかないということになるわけで す。妻の方は103 万円未満であれば、1万円から2万5,000 円を夫がもらってくるという仕組み。最高の2万5,000 円であるとし ても、年間にすれば非常にわずかな金額にしかならないわけですけれども、それでもこういうものが女性の就業意欲に影響を与 えるということは間違いないだろうというふうに思います。
     今度は住宅手当の方がどうなっているかということです。13ページというふうになっています。住宅手当の方は制度が「あり」 というのが圧倒的に多く7割近くの数字が上がっております。部門別ということは余り関係ないので、次のページを見てみたいと 思いますけれども、住宅手当制度の内容というところですが、これはいろいろな見方ができるかと思いますけれども、住宅手当 の支給対象が世帯主と非世帯主とでまず区分されているというがわかるかと思います。世帯主の場合は、支給対象としている 比率が8割程度と非常に高いのに対して、非世帯主の場合は5割以下で低くなっております。また、扶養者のいる場合といな い場合とでも比率の差が見られるという現状になっています。住宅というのは大変取得しにくい、あるいは高いというところで、こ ういうものが支給されるかされないかということ。扶養者がいれば支給されるということになりますと、先ほどの扶養手当だけで はなく、これとの金額をあわせると相当な金額になっていくということではないかと思います。
     どのぐらいの額が支給されているかということですが、その次の次をめくっていただきますと、住宅手当のモデル額というところ がございます。(1) の扶養者のある世帯主というところですが、そこでは、大阪・東京地域では5万円以上から3万円未満に集 中をしているということになります。先ほどのような金額とこの金額をあわせますと、5万円ぐらいを家族手当だとか、扶養手当だ とか、住宅手当だとかという名前でもって支給をされる。その要件の中に103 万円であるとか、扶養の対象となる妻がいるかい ないかというふうなことになりますと、結構な額に見えます。これをもらわないで働くか、これだけもらうために、この範囲で働くこ とをとどめておくかというふうなことでは、非常に大きな影響になっているのかなというふうに思います。
     一番最後のところになりますが、両方の額をあわせまして、連合の方が調査をした結果では、家族手当、扶養手当というもの が賃金全体に占める割合として 2.1%になっており、住宅手当が1.4 %、これらをあわせますと3.5 %が支給されている。賃金 全体の3.5 %に当たるということになります。3.5 %に当たるということになりますと、いい金額ということ、働かないでこれぐらい ということになりますと、103 万円以上働いてこういうものがみんななくなるようなことはしないでおこうという選択が生まれも不 思議ではないという気がするわけです。その意味では、お尋ねがありましたように、この手当の問題というのは、女性が働くか 働かないかということを選択する上で一つの要素になっているのではないかと思われます。このようなものは仕事に無関係な者 に対する賃金であるという意味では、私たちとしては均等待遇、あるいは同一価値労働、同一賃金という立場から言うならば、 そういうものはなくしていく方向が適当であるというふうに考えておりますし、また、それからがとりわけ支給要件として、世帯主 というものに限定されるということについては、連合としても見直していくということを改めて方針化したところです。
     最後になりますが、いわゆる正社員の中の問題としまして、年功型の賃金というのが崩れて、そうではなく成果主義、あるい は能力主義になったということで、男性も女性も関係のない能力発揮ができる時代になったというふうには言われますが、家族 的責任という問題を、まだまだ女性の方が多く背負っている中では、この成果や能力というのを、背負わない男性と同じ土俵で 競争するのは余りにも重過ぎるという中で、結果として、こういう成果主義、能力主義というようなもの、家族的責任を負ったま までの競争というものは、結婚しようとすれば、これだけの仕事ができない、あるいは続けようと思えば、子どもを持たない、ある いは、もうあきらめて適当に働き、成果や能力と言われるなら一番下でもいいわという形で、働き方やライフスタイルに正社員の 中の成果主義、能力主義という問題が、両立支援が不十分なままの中では、必ずしも思ったような選択にならないという結果を 生んでいるのではないかと思います。
     扶養手当とかの問題だけではなくて、最初に申し上げましたように、雇用システムがどう女性のライフスタイルに影響を及ぼす かといえば、正社員の中のそういう支給要件という以上に、雇用形態を有期と無期に分けて、有期契約を多様化させていくとい うシステムの方がより大きな問題としてあるのではないかというふうに思っています。そういう人たちがどんどんふえるということ は、男女共同参画社会基本法に中にある、ともに責任を担うという中の私は重要な要素と思っていますが、納税するという責任 が、社会保障の負担者となるという公的な責任の部分が労働の有り様によって担いきれないというところにずっと女性が位置づ けられて、対等な社会の構成員となり得ないことにつながっているのではないかと思います。税制や年金などの社会保障制度 改革もこれから進めれるわけですが、労働の有り様の問題と一体となって改革をしていかなければ、その制度もなかなか変え にくいというふうなことを思っております。
     それから、福利厚生の面で申し上げますと、長いこと働く、定年まで働く終身雇用的な働き方をする男性が得をするというもの が福利厚生としてこれまで培われてきているということで、例えば、通勤途上の事故などにつきましても、モデルとしてどのよう な補償をするかということに、妻が1人、子どもが2人という形をモデルにして計算するということがあったり、労働組合自身の調 査の中にも、そういうふうなモデルが出てくるということがありますし、企業の年金というものも長く働いていないと意味がない。 5年や10年働いてやめたのでは、そこの利益にはつながらないというようなものが多くなっております。退職金制度もそうだと思 います。定年まで働くということを前提にした制度ですので、若いときは働きよりも低い賃金で何とか働いてくれたら最後に後払 いとしてたくさんあげますよと。そういう中では女性たちは、そこに届かない前にやめざるを得なかったということで、ほとんど恩 恵を受けないまま安い賃金で働いてきたということもあります。そういうふうなものが企業の中の福利厚生には含まれておりま した。直接そのことが女性のライフスタイルに影響を及ぼすかどうかは別だと思いますけれども、そういう実情もございます。
     それから最後に、シングルマザーで働いている女性の実例を挙げたいと思いますけれども、22歳の既に働いている男の子と 18歳、17歳の女の子を持った40代後半の女性です。この人がシングルで、子どもを持っていたこともあって正社員として仕事を することができなかった。そのために一般事務として口頭契約で入りましたが、月給制だということなので、きっと正社員とほと んど同じようなものだという気持ちで就職した。ところが、現実には日給月給です。現在、800 円の時給で1日8時間働いて十 二、三万しかならない。そして1日休むと引かれて10万円を切るという日々もある。有休休暇も法律上あっても、とると言えばや めてもらいますというふうな不安定な形でしかない。子どもが熱を出しても休めないぐらい厳しい働き方をして、やっと10万なり、 十二、三万までの賃金を得るという働き方をしています。そして正社員と同じ事務労働をしていながら、ボーナスの支給もないと いうことで、希望を持った生き方、日々が送れないという実情もあります。そんな形のところに女性たちはたくさん押し込められる というのが、雇用システム上の雇用形態の多様化という名前よってもたられているのではないかというふうに思っています。
     したがって、私はこの影響調査専門委員会の調査結果が、そういう手当問題にこだわる一番起きな有期・無期という雇用形 態の問題が、有期契約労働をふやすことによって大きな影響を与えて、将来の展望を持てない、社会全体としてもそういう労働 者をふやすことが、ともに担うという安定的な、持続的な社会をつくることにもつながらないという問題を最も強く指摘していただ き、労働政策のところから変えていけるような提言をしていただければありがたいというふうに思っております。
     以上です。ありがとうございました。
    大澤会長
    どうもありがとうございました。ただいまの御説明、それから重要な御提言があったと思いますけれども、御質問 や御意見をお願いいたします。
    高尾委員
    質問なんですけれども、有期雇用ですか、正規雇用というようなことじゃないかと思うんですが、それが非常に重 要だというふうに、正規雇用の形態を、正規雇用という枠の中でいろいろな労働形態をとっていく必要があるという、その辺の理 由をもう少し説明していただけませんか。その途中でおっしゃったんですが、納税の義務や責任を果たす、あるいは、そういう権 利もあると思うんです。それから、社会保障負担もきちっと担っていくというようなことが無期契約じゃなくて、要は非正規労働者 も、できるようになってくれば、私などは一概に1つの会社でずっと最後まで雇用されている必要はないのではないかというよう な気もするんですが。
    林副事務局長
    無期契約というのが、いわゆる正社員の契約の方法なんです。有期契約というのは、パートの人が3か月契 約で更新をしていくとか、6か月契約で2回、3回と更新していくようなものを有期契約というふうに私たちは呼んでおります。も ちろん有期であっても、そのことが社会保障の対象になるということが何の障害もないような形になればいいんですけれども、実 態から言うならば、3か月の有期契約というのは、3か月働きたいということによって、例えば妊娠をして出産をしたいということ でも、そのことが2回、3回と繰り返されていても、有期契約であるがゆえに、あなたはそういう休暇をとる対象になりませんとい うことになったりするわけです。そして、社会保障に入れるというけれども、2か月や3か月の人を社会保険の対象にするには、 手続をしている間にもう終わっちゃうということがあります。そんなのだったら、入らないでいいですと本人も言い、あるいは会社 の方もそうするということになってくるんです。では、6か月以上だったら入れますよというのが、例えば制度としてできたとします ね。そうすると、6か月以上だったらそうしましょう。資格がある、あるいは入らなくてはいけないですということになったとしたら、 使用者の方は3か月を2回にするのに決まっているんです。そういう意味で、有期契約というのは働く側にとっては非常に不便 です。無期契約にしたからといって、60歳の定年まで働かなければならないということでもないし、働かせなければならないとい うことでもないと思うんです。そういうところの多様性というのをもう少し多くしていく方が、社会保障の面からいっても、納税という 面からいってももっと安定するというふうに思うんです。
     例えば、育児休業の制度があります。それでも育児休業というのは満1歳までとれるということですけれども、1年の有期契約 をしていて、その途中で育児休業をとるというのは、産休のその前にあるということですね。実質上、制度として入れてほしいと 私たちは思いますけれども、雇う側からいったら、そのことがわかっているなら来ないでほしいと思うのが普通なんです。そうす ると、結果としてそういう雇い方があるがために、子どもを産むということも働き方によって制約されるということになってくるわけ です。その意味では、無期契約労働者であるということが前提となるならば、ちゃんとそのことは行使できるわけなんです。税の 問題も、社会保障の掛金というふうな問題も、手続上も何の問題もなく当たり前のようにすると思うんです。有期契約というの は、元来、本当にこの期間、これだけの仕事が特別に生じたということに限るというのが本来の姿であったわけです。それが日 本ではどんどん広がっていって、ニーズが高いんだということで、主婦たちはそれを求めているということで使われ始めたんだと いうふうに思います。
    高尾委員
    本来は有期雇用というのが、非常に特別な形として日本には存在していたはdずだけれども、今、それが非常に 拡大されて、特に女性側に運用されているとお考えだということですね。
    林副事務局長
    それは先ほどのデータからもはっきりしています。
    高尾委員
    あくまでも本人が定年まで働くか働かないかは別にして、とにかく無期の、正規の雇用を確保していくということが 非常に大事だということですね。
    林副事務局長
    短い時間働きたかったら、週の労働時間を20時間とか25時間という働き方をすればいいわけです。それが非 正規であるという位置づけにしてしまうところから様々な問題が生じてくる。非正規であり、有期契約であるということにしてしま うから。
    大沢委員
    1点目は、先ほどの有期・無期のお話ですが、非正規は有期雇用だというところは、もう少しグレーゾーンがあっ て、パートタイマーでも、多分それはポイントを明確にするためにおっしゃらなかったんだと思いますが、パートの中にも有期と無 期があって、実際には無期契約のパート労働者もふえているわけで、正社員と同じにもかかわらず、私が見たのは、パート労働 実態調査の91年と96年の間で見ると、結構無期契約もふえている。つまり無期契約というのは、雇用の定めがないというふう に答えているパートタイマーもふえているんですね。ですから、無期・有期だけでも分けられないところがあるのだけれども、非 正規・正規というふうに分けると、非常に大きな労働条件の格差があるということを一番おっしゃりたかったのではないかという ふうに思うんです。
     もう一つ確認したいんですが、社会保険の加入の問題は、パート労働者と派遣労働者で加入要件は違ったと思うんですが、 多分、派遣の場合は2か月以上雇用される場合には、社会保険に入る義務がありましたかしら。パートの場合は、正社員の4 分の3という労働時間がある。その御主張のポイントは、そのように労働時間を2か月ですとか、4分の3という要件で区切るこ とによって、経営者は、その要件以下に抑えて、非正規をより使いたがるような傾向になっているから、その点は改めた方がい いという御主張と伺ってもよろしいでしょうか。
    林副事務局長
    ほとんどそのような感じです。
    大沢委員
    そこら辺をもう少し、女性のライフサイクルに影響を及ぼすという点から言うと、そういった雇用契約にかかわり、か つ社会保険の要件、条件にいろいろな形で制限があることが非正規に影響を及ぼしているということについてちゃんと調査をし て、何らかの対応をすべきだというふうに連合では考えていらっしゃるのでしょうか。
    林副事務局長
    連合ではということは難しいが、運動方針から言えば、そのように言ってもいいかと思います。ただ、おっ しゃったように、パートタイマーは全部有期契約労働者であるかといえば、そうでないというのは事実です。ただ、最近2か月と か3か月の契約を更新して、いつでも雇いどめができるという状態を保っていくという雇い方をしたがっている傾向はあります。そ ういうことになりやすいのが税制とか社会保障制度の問題だというふうに思います。
    大沢委員
    それはどちらかというと供給側の問題ではなくて、使用者側がそういったインセンティブを持つというふうに言っても いいでしょうか。
    林副事務局長
    私はそう思います。例えば、m字型雇用で一たん仕事をやめるという人たちが多いのは、やはりこの時期は 子育てに力を注ぎたいとかというような選択は、男女ともに私はあってもいいと思うんです。しかし、それを日本の場合には、無 期契約労働者であった30歳ぐらいの女性が、子どもを産むためにやめて一たん家庭に入って改めて就職するときは、有期契約 労働者となって労働市場に帰ってくるという選択肢しかほとんどないわけです。正社員の場合は極めて少ない。そうすると、無 期契約の中での多様性を選ぶならば、30歳で子どもを産むまでは8時間のフルタイマーでやってきたけれども、週40時間労働 をしてきたけれども、子どもが生まれてからは、週30時間労働を選択したいとか、25時間労働を選択したいと言えば、正社員で ありながら、労働時間の短い選択をして3年間を過ごす、あるいは2年間を過ごす、あるいは、そのときに出産でなくても、改め て勉強する時間を週何時間はとりたいので、40時間労働から25時間労働に切りかえる。そして3年後には新たな力をつけて、 もう一度40時間労働、フルタイマーで働くということは、身分の不安定さを持たないで選択できるようにしたら、企業にとってもよ りいいのではないか。そういうことこそ、今後多様化としては進めるべきところではないかと思います。
    大沢委員
    それは正社員の短時間労働的な働き方をふやすということですね。
    大澤会長
    ほかにいかがでしょうか。
    坂橘木委員
    連合が今言っているような方はメンバーじゃないですよね。連合を組織しているのはフルタイマーの男性中心、大 企業がメンバーで、そのメンバーでない人たちに対する要望を、どれだけの説得力をもって要求できるかという問題をどういうふ うに考えておられますか。
    林副事務局長
    今、おおむね750 万人の組織人員の中で、パート労働者を組織しているのはわずか20万余りです。例えば、 スーパーマーケット、デパート、そういうところに働いているパートタイマーの人たちを中心に組織化しています。それ以外の人た ちの声というのが、連合がつかめるかどうかという問題だと思いますが、初めて2000年の春季生活闘争から、パートタイマーの 賃金を1時間10円上げるという目標を立てました。そして、自分の組合、企業に、自分の組合が所属する企業に、パートタイ マーを組織していなくても交渉の課題にそのことを上げていこうという方針を立てて、連合がパートタイマーの人たちも含めた均 等待遇に近づける問題を社会的な問題と認識して取り上げていますという姿勢を示していきたいということで始めているわけで す。まだ1年目ですので、10円の賃上げを要求できたところもあれば、できなかったところも実態としてあります。賃上げ交渉と いうのは、個別企業単位というところに、そういう問題は入っていきますので、連合の方針が、即単組のところの交渉に影響を 与えるというところまではなかなか難しい面がありますので、時間はかかると思いますが、そういう動きというのを連合が示すこ とによって、社会的には関心を持っていただけ、労働組合にも入ろうというふうな人たちも出てきてくださるのではないだろうかと 思っています。そして、パートタイマーの人たちの声をしっかり聞くために、各地方連合ごとにパート旬間などでは、地域のパート タイマーの人たちと一緒に集会を開いたり、学習会を開いたり、相談ダイヤルを設置したりしながら、問題を共有して取り上げて いきたいという考え方を持って始めたところです。
    坂橘木委員
    そのときに内部で、フルタイマーとパートタイマーとで利害が対立する面が出てくると思うんです。例えば、経営側 にパートタイマーの賃金を上げてくれと言ったら、経営者側がフルタイマーの賃金を下げるのを認めてくれと言ってきたらどうしま すか。
    林副事務局長
    そういうところが、具体的には恐らく単組の交渉では出てくる可能性としてはあるわけですが、どうするかとい うところまでについて、連合が指導性を発揮するというところには至っておりません。問題を提起しながら、単組での取組を期待 するという段階です。ただ言えることは、必ずしも従来のようにパートの賃金を上げる、条件を上げるという取組が正社員にとっ てマイナスであるかといえば、そうではなくて、良質で低コストのパートタイマーがどんどんふえていくことによって、高い賃金の 正社員の価値が下がってくる。つまり、あなたたちはなくても、この人たちが安くてもっと良質の労働者ですよということによっ て、だんだん先細りをしてきてしまうという業種も出てきているわけです。そういうところでは、パートタイマーの労働条件をうんと 上げることによって、共存していくというか、均等待遇に近づく取組をすることによって、双方が共存できるというふうな業種もあっ て、実績も上がっています。流通関係のところでは、そういうところが顕著になっています。
    木村委員
    どうも御説明ありがとうございました。3点ほど教えていただきたいことがあるんですが、第1点は8ページの第1 -3表で、規定で別に定めた条件の該当者というところがあります。支給制限条件のところです。一方が所得税法上の控除対 象並びに配偶者で、次のところが規定で別に定めた条件の該当者というものですが、これはどういった条件になっているので しょうかというところが第1点です。
     第2点は3ページを見ますと、第1-29の女性パートタイム労働者と一般労働者の賃金格差の推移ですけれども、昭和53年 から見まして、すごく格差が開いている。この格差が開く要因を幾つか考えますと、パートタイム労働が賃金の低い職種に広 がってきた、あるいは一般労働者の方が事業主に対して交渉力が大きくて、分配がそっちの方になされた、あるいは、ここで問 題視しています税制の影響があったがために、パートタイマーの賃金が低く据え置かれるようなことがあった。こういった幾つか 考えられる要素のうち、どういったものが一番大きいと考えておられるかということが第2点です。
     3点は、賃金+扶養手当とか住宅手当ということで、全体として年功賃金を見ますと、生活給という色合いが強い我が国の賃 金というものを前提にして、そこからまた報酬比例型の年金というのがあるのですけれども、現行の年金制度は、私は二重の調 整をしていると思うんです。1つは、生活費ということについて、まず現役時代の賃金で調整していまして、本来ならば、その賃 金をもとにした年金でかなり生活給が重要だという人は、そこの調整で終わっていると思うんですけれども、さらに支給される段 階で結果として、扶養手当のようなものがついている状況になっていますね。だから、実態としては二重の調整になっていると 思うんですが、その点についてはどういうふうに思われますかという、その3点です。
    林副事務局長
    ちょっと1点目が聞き取れなくて申しわけありません。
    木村委員
    1点目は、8ページの1-3の表で、配偶者への支給条件が所得税法上の控除対象というものではなくて、2番目 に書いてありますように、規定で別に定めた条件と書いてありますが、別に定める条件というのは、所得税というか、税法とか、 そういったものはまるで関係ないのかどうかというところが問題意識としてはあるんです。
    林副事務局長
    ここのところは、一番最初は所得税法上の控除対象者となっていますけれども、もう一つ、別に定めるという のは、保険などの加入資格の条件として130 万円というのがありますね。そのことを指しているというふうに思います。
     それから、2つ目の質問の3ページの格差拡大をしてきている原因は何かというのは、第一が何かというのはわからないで す。ただ、パートタイマーが最初に入った時期というのは、それほど、これはいいぞというほどのメリットをそんなにはじき出さな いで、時間単位で働けるというところで、時間単位給みたいなものがかなり強かったのではないかと思うんです。例えば、沖縄 というのは未だに正社員とパートタイマーの時間給の差が本土のように余り大きくないんです。それはアメリカ型の最初の時間 給的な考え方がずっと残っているからだと思うんですが、日本も最初に入ってきたときはそうだったんだろうと思うんです。これは 推測ですので、よくわかりません。
     3点目は何ですか。
    大澤会長
    3点目というのは、標準報酬と、それに基づく保険料の中に、住宅手当や扶養手当の分が入っているということで すか。
    木村委員
    補足的な給付も含めて、いろんなものを合体して標準報酬を決めていますよね。だから、そこのところでかなり生 活給的なものが反映されていて、それなのに給付の段階で、今の制度ですと、被扶養配偶者を保護するような制度がついてい るという、その保護する根拠として生活保障なんだと、生計費保障なんだと論拠を立てる人がいますが、私はそれは二重の調 整になっている面が強いと思っているんです。それについての林先生の御意見を伺いたいと思います。
    林副事務局長
    私も二重だと思いますね。実際に女の人の賃金がもともと、最初はそういうものが上積みされない。男性の 世帯賃金に対して、女性はその分は違いますよということで低いところで出して、男性にはこれだけプラスした賃金を払っておい て、それで計算した年金なんだから、もうそれでいいじゃないかと思うけれども、それにプラスまた乗せてくるわけですよね。加 給年金というのが入ってきたりしていますので、二重の調整になっている不合理というのは確かに私もあるというふうに思いま す。
    福原委員
    無期と有期と定年制の関係というのはどのようにお考えなんですか。定年制というのは、実際は実態としてあるん だけれども、制度としては、これまたあいまいなんですよね。一方では、フリーエージとかという観念が提起されているんです ね。無期にしておいて、50になったからそろそろやめてくださいというのも、ちょっとぐあいが悪いのではないかという気がするん ですが。
    林副事務局長
    その仕事の内容だとか、時間だとか、そういうものは変えることが可能ではないかというのはありますね。
    福原委員
    本人がですか。
    林副事務局長
    会社の。
    福原委員
    被用者がということですか。
    林副事務局長
    はい。
    福原委員
    被用者が変えると、本人は変えられたというふうになってしまうのではないか。
    坂東局長
    日本はどうして定年制をしいているかというときに、よく説明としてレイオフだとか、有期の契約をしていなくて、無 期だから、定年制をしかないと回転しないんだというような言い方をされるのをよく聞きますけれども。
    福原委員
    それは男女の問題のずっと前ですよね。
    坂東局長
    そうです。
    福原委員
    ですから、新しい男女が共同で働くという状況のもとに、定年制という問題も、社会慣行なのか、それとも実際の 契約なのか考え直さなくてはいけない時代にきているのではないか。社則みたいなものにあるところもありますが内規のような ものであり、本人から判をもらっているわけではないので、社則で契約しているわけではないと思うのだが。
    小島委員
    定年制という話ですと、日本でいうと同じ組織に働いて何歳までなんですが、欧米流の定年制というのは年齢で 雇用制限しないから、組織であると、あなたは年齢はまだいいけれども、能力がないからと首になって、次の職場に移るという 流動性ですよね。定年制というのは、要するに、それぞれの国で持っている意味が違うんですよね。日本は企業内労働市場だ けができ上がって、その中での定年制をしいて、要するに定年制を延ばすというと、ある程度年功賃金が前提であり、多少緩め ても年功で、上の方は賃金が高いと。それをまた使うのかというと企業が拒否するわけですね。これはとんでもないと、今コスト を抑えなければいけないと。アメリカ型の定年制というのは、採用の条件として年齢で差別するかしないかという話で、要するに 年齢以外の条件で能力がなければ、企業はどこで首を切ってもいいわけですね。あるいは能力があれば、どの企業にも70なら 70まで勤められる。
     ひとつ伺いたいのは、要するに基本的に日本の男女格差というのが日本特有の非常にユニークな問題なのか、あるいは日本 の制度が展開の中でたまたま生まれているのかどうか。基本的に企業は、日本では労働の変動期かということを企業は一生 懸命言っており、その方向になっているわけです。それは、何も女性の方のパートだけではなくて、男性の方にも変動期にしよ うと賃金構造も変えているわけですし、男性正規社員の雇用構造も当然変わりつつあるわけです。今非常に大きな変化期なわ けです。それがどういう理念でどういう基本方向にいくのか。この瞬間だけで、この問題があるから、ここだけ直してほしいという ことですと、一つの時代の大きな流れを読み損なうのではないかと思うんです。どういう理念でどういう方にいくのか、いろいろな 企業が今、試行錯誤していますが、何が本物で、どっちの方に基本的に向かうのかと。向かう方向がまずければ政策的に対応 しなければいけないんですが、今はどういう状況にあるのか。どの国も雇用の問題で試行錯誤があるし、今ある雇用制度という のがどこの国でも、いろんな変遷を経て変わりつつあって現時点にあるわけですね。アメリカ型ですと、正規社員といっても有期 ですよね。あなたは年俸は幾らで3年間と。だめだと3年じゃなくても首を切られたりする。日本の場合は無期だけれども、おっ しゃるとおり、インプリシットな長期雇用の、お互い何も言わないけれども、契約書にもないし、確認もしないけれども、結果的に そうなっている面があって、結果的にそうなったものが、今、崩れ落ちてみんなパニックになっているんですね。基本的に変化の 方向を押さえて、その中で今起こっている部分的なそれぞれの現象をとらえ直さないと、ジャングルの中で議論する格好になる のではないかという気がするんだけれども。
    大澤会長
    時間も尽きてまいりまして、小島委員のただいまの御指摘は、今日のヒアリングの枠を越えている部分もござい ますので、今後とも検討させていただきます。今日の林さんのお話の趣旨は、雇用システムの影響調査というようなことであれ ば、まず何よりも有期・無期というのは、正社員と非正社員、正規・非正規と理解してよろしいんでしょうか。
    林副事務局長
    簡単に言えば、そうですけれども、我々は非正規社員というのは、使いたくないというのもあります。同じ労働 をしていながら、何で正規でないという、労働の尊厳を損ねるような言葉ではないかという気持ちがありますので、そういうことを 言わなかったんですが、実態上そうというふうに理解していただいて結構です。
    大澤会長
    日本の会社のしきたりというのは、正社員というのがいて、それ以外の人がいるということになっていて、そういう 区別のあること自体が非常に大きな間接差別のもとになっている。そういう区分、正社員なのか、そうでないのかという区分の 影響こそを調査すべきだという御提言だったというふうに受け取らせていただきます。
     したがいまして、この専門調査会は、そういう正社員・非正社員という区分そのものの影響というのも念頭に置いていくべきと いう点は御指摘のとおりとは思います。ただ当面は、社会保障制度や税制と、それと連動する福利厚生制度などの影響につい てというのが以前の審議会からの引き継ぎ事項でございまして、今はそこに集中をしておりますけれども、少し方向を変えたと ころから、つまり正規・非正規という区別が社会保険上の扱いですとか、税制の扱いと連動している部分があるという点では、 その問題にも影響調査専門調査会として取り組んでいるということは御理解いただきたいと思います。
     2分ぐらいでよろしくお願いします。
    岡沢会長代理
    今日のヒアリングの範囲を越えていますが、例えば連合では、労働市場政策における制度の改革というの はタイムスパンをどれぐらいで考えようとするのか。先ほどの小島委員の意見と全く同じなんですが、既得権益とネットワークが あって、それを振りほどくために何年ぐらいのタイムスパンで将来ビジョンを描くべきなのかというのを、制度改革のとき、どれぐ らい未来を見つめながら考えられているのか。
    林副事務局長
    私の答える範囲を越えるというふうに申し上げた方がいいかと思いますが、ワークシェアリングの問題を今検 討しておりますので、その中で必ず出てくるというふうに思います。それについては個人的な見解になりますので、控えたいと 思います。
    大澤会長
    どうもありがとうございました。
     それでは、日本労働組合総連合会からのヒアリングは以上とさせていただきます。林さん、お忙しい中、大変ありがとうござい ました。
     (林副事務局長、退室)
    大澤会長
    では、続きまして、私と事務局からワーキングチームの研究経過について報告をさせていただきたいと存じます。
     まず事務局から資料の説明をお願いいたします。
    浜田参事官
    では、資料の2に基づいて御説明いたします。
     資料2「ワーキングチーム研究経過報告」というのがございますが、まず現在までの経過の前に、全体的なワーキングチーム の研究手順を改めて申し上げたいと思います。ワーキングチームは、最終的には、税、社会保障、雇用システムに係るモデル ケース別の受払を推計すること、そういう税、社会保障、雇用システムなどを変更した場合の受払の変化を推計することを目標 にしています。その手順としまして、<1>にございますように、国内外の税、社会保障制度を文献等で調べなければいけない。そ れから雇用システムの方は、これも前にこの専門調査会の御了解をいただきました通り、配偶者手当等をアンケート調査の実 施などで調べ、今アンケート調査を実施、回収しているところでございます。その後<3>にございますように、モデルケースごと に、<1>で調べました税、社会保障などの制度、具体的には配偶者控除とか配偶者特別控除といった税の話、第3号被保険者、 遺族年金などの社会保障、それから<2>の雇用システム関係のアンケート調査、そういうものに基づきまして受払を推計します。 それから<4>で、同じモデルケースで、今度は<1>で外国の制度も調べることにしておりますので、それを参考にしまして、<3>の 税、社会保障や雇用システムを現状から外国の制度を参考にしたような形で変更した場合の受払の変化、これを推計するとい う手順で考えております。
     その中で「2.」にございますように、現在までの研究経過といたしましては、<1>の国内外の税制、社会保障制度の現状の調 査、これを行っているところでございます。具体的には、こういう税や社会保険料に関します家族に対する配慮というのを、oec dのtaxing wagesという資料に基づいて調べているところでございます。次のページに簡単に一覧表にしたものがございますけ れども、これはまだ調べているところですので、あくまで暫定的なもので、今後さらに調べたいと思っております。
     それから雇用システムの方は、アンケート調査を実施中でございます。このoecdの資料によりある程度、税の控除制度と か社会保険料がわかると。あと幾つかのケースについての計算例がございます。ただ、社会保険料は税ほど詳しくはないんで すけれ
     ども、こういう計算例的に推計というのは可能だと思います。
     次の2ページが、あくまで暫定的なもので、まだ今後調べなければいけないのですが、各国の税制、社会保険料等です。
     日本を含む5か国でございますけれども、まず一番上に平均所得がございますが、これは所得控除などが平均的な所得に比 べてどれぐらいあるかという目安のために、御参考までに挙げてございます。
     それから、課税単位は個人単位が主でございますが、ドイツは選択制になっていて、多くは合算制になっているということで す。
     それから、所得控除について、日本は配偶者控除、配偶者特別控除という配偶者への配慮があります。あとイギリスですが、 marital status という、結婚すると控除がふえるような制度があるようです。ほかの国は特にそういうのは見当たらないというこ とです。
     それから、税額控除の方ですが、オーストラリアの方で扶養配偶者の控除がございます。それ以外のところは、ドイツ、ス ウェーデンは子どもへの配慮ということで、配偶者の控除はない。それから、イギリスは特になくて、日本も配当控除等で、ここ での関連するようなものは特にございません。
     それから、地方税についてはないところと、控除がほぼ国と同じ仕組みのところがございます。
     それから、社会保険料についてはオーストラリアがmedicare税といった、医療関係のものがあるけれども、ほかは税の方で やっているようでございます。それからドイツは各保険料がある。スウェーデンは、保険料率だけですが、これは年金の保険料 でございます。イギリスが10%ぐらい。日本は御存じのように、年金、医療、失業等の保険料がございます。
     それからあと、普遍的現金給付ということで、子どもに対する給付がドイツ以外はあるということでございます。
     それから次に、3ページでございますけれども、これが先ほど申し上げたoecdの計算例でございまして、これは表のような 形で数値が並んでいるのがございますけれども、オーストラリア、スウェーデン、イギリス、ドイツ、アメリカ、日本の6か国につき まして、その下のa、b、cとございますが、aは配偶者の一方が、これは男女通しの平均賃金ぐらい稼いで、もう一方はゼロ。い わゆる被扶養配偶者とかそういう状態のところです。bはもう一方が3分1ぐらい。cは、もう一方が3分の2ぐらいです。そういう ケースについて各国の制度に従って計算したものでございまして、a、b、cとなるにつれて、負担率が上がっていく。そういうよう な場合は被扶養配偶者への配慮がなされているだろうということでございます。
     a、b、cとある下に概要を書かせていただきました。この計算例によりますと、ドイツ、アメリカ、日本というところが片働きの 方、つまりaの方がbやcに比べて税負担率が低く、最終的に全部を足したところ、つまり、税に社会保険料を加え、現金給付を さしひいた負担率が低いので、被扶養配偶者の配慮があるように見えます。ただ、制度のところで配慮している国は、日本、イ ギリスとオーストラリアということになっていまして、この結果と食い違いがあるんです。この要因としましては、配偶者のもう一 方の方の就業に伴って世帯所得がふえていくわけです。合計100 から合計167 までふえるわけですが、そういう世帯所得の増 加の税や社会保険料への影響が含まれることも考えられます。したがって、配偶者への配慮を見ようとすると、同じ世帯所得で 比較する必要があるということでございます。
     さらに申しますと、先ほど申しましたように、制度の調べはあくまで暫定的なものですので、その辺をさらに調査すれば、この あたりの食い違いは解消される面もあると思います。
     ということで、4ページの「当面の研究予定」について、今のような各国の制度の調査をさらに進める。そういう調査した結果を 踏まえまして、世帯所得を同じにして扶養配偶者への配慮を、そこにあるようなケース分けで各国について明らかにするという ことを予定しております。これは、最初の1ページ目で申しましたワーキングチームの研究手順の<3>、<4>、ケースごとの受払の 推計の予備的な作業のようなものになると考えております。
     方法としましては、ここに挙がっておりますケースごとに、税・社会保険料、給付を計算して比較をすると。特に妻にかかわる 所得控除や税控除の割合を計算します。それぞれのケースについて、ケース1、2、3、4となるにつれて、世帯全体の所得が だんだん高くなるようなケースを想定しています。世帯所得が平均賃金の3分の2から平均的なもの、それから3分の4、3分の 5というようなことで考えておりまして、それぞれのケースの中では世帯所得は同一だが、夫と妻の賃金収入の内訳が異なるよ うにさらに場合分けします。例えばケース1について、1-1 では、夫だけで稼いでいるような場合、1-2 ですと、夫と妻が3分の 1ずつ稼ぐというぐあいに、世帯の所得は同じだが、その内訳が違うというようなケースについて比較を行うというような予定で考 えております。
     私の説明は以上でございます。
    大澤会長
    ありがとうございます。引き続き、私から報告します。「ライフスタイルの選択に影響が多い社会制度・慣行」、日本 を中心として比較社会政策論から見てどうかとい点の制度ごとの国際比較で見る現状です。若干、今、事務局から説明してい ただいたところと重複する印象もお持ちかもしれませんけれども、今のところの議論がどうなっているかというのをワーキング チームで確認しながらやっております。それを簡単に御紹介していきます。日本の社会制度の慣行というのは、比較の観点か ら見るとどういうタイプなのかということで、社会保障、税制、労働政策や住宅、教育といった社会政策の類型論というのがこの 間、発達してきております。
     最初に、breadwinner/individual modelというのは、93~94年くらいのころに言われ始めたことでして、bredwinner(稼ぎ主)と 個人モデルというのはどういう違うのかという、目のつけどころについては、ほとんど単位の問題に終始しております。
     それから2番目の「脱家父長化」という議論は、これは90年代の後半くらいになって出てきた識別の指標なんですけれども、 雇用平等の規制がどのくらい制度化されているかとか、それから単位、遺族給付が廃止されているとか、それから家族支援の 制度化の度合いということになっています。1番目は単位の問題、2番目は制度がどうなっているかという問題で、実際その制 度が運用されて機能した結果、家計や個人にどういう帰着、そして成果を及ぼしているかという見極めが今なお今後の課題に なっております。
     その関係で注目されるのは、walter,korpiという人が比較的最近、新しい類型を出しておりますので見てみますと、これは<1> と<2>の組み合わせになっています。<1>というのは、福祉国家制度をジェンダー観点から見たのを、これまたタイプを設定するとい うことでして、3つのタイプ、一般的な家族支援をやっているタイプと共稼ぎ支援をやっているというタイプ、そのどちらでもない市 場志向(market-oriented)のタイプというふうに区別していまして、それぞれ区別をする指標というのは、a、b、cあるいはdとい うふうになっております。
     結果が4ページ目の表2ということでして、日本を見ていただきますと、一般的な家族支援というのも低い方、それから共稼ぎ 支援というのも同程度に低い方でして、結局どちらも低いですから、日本はmarket-oriented というふうにこの限りではなりま す。他方で社会保険制度の構造というのを類型化しますと、それは限定的保障タイプ、それから国家コーポラティストタイプ、基 礎保障タイプ、最後に包括タイプ、これは北欧などを指して包括タイプというふうに言いますけれども、そういうふうに区別してみ た場合に、日本は国家コーポラティストタイプというものになります。2つを組み合わせた結果が4ページ目の下の段の第6表な んですけれども、state corporatist の国というのは、ほかにはベルギー、ドイツ、イタリア、フランス、オーストリアというふうに大 陸ヨーロッパの国であることがおわかりいただけます。日本は、社会保険のタイプがstate corporatist なんだけれども、ジェン ダー観点から見た福祉制度のタイプとしてはmarket-oriented ということになります。この組み合わせの場合には、ジェンダー 不平等は小さいはずなのに、日本は高いというふうに出ているので、類型論の中でしばしば言われていますけれども、仮説に 反する、もうちょっと強く言うと異様なケースということになります。
     ちなみに、階級不平等のところが、日本がブランクになっているのは、これはルクセンブルク・インカム・スタディ・プロジェクト (ルクセンブルク所得研究プロジェクト)のデータベースに日本がデータを出していないために、こういう同じ正確度での比較がで きないということを意味しています。我々が取り組もうとしているのは、国内での指定統計など再集計して、lisに匹敵するよう なことというのをやろうと。仕方がないから自前でやるしかない。既存のデータベースではここまでしかできないということをやろ うというわけです。
     あと4のところで見ました「制度ごとの国際比較で見る現状」というのは、今までこの専門調査会で議論されてきたこと、御報 告いただいたことなどを集約したというものでございます。国民年金の第3号被保険者についていえば、保険料拠出なしで被扶 養配偶者自身の年金を支給している国というのは日本とアメリカとイギリスですけれども、日本の基礎年金満額というのは、英 米の配偶者給付よりも高くなっていて、被扶養配偶者というのを優遇している制度というふうに言えます。自分が保険料拠出し ていない人に給付しないのはドイツ、スウェーデンですけれども、ドイツの場合には、離婚の際に夫婦間の年金分割があり、他 方、スウェーデンでは、最低保障年金というものがある。それから、被扶養と認められるための年収の限度額がこれらの国でど うなのか。これは今後確認をしていきたいと思っている重要なポイントでございます。
     遺族厚生年金については、日本は男女で明文的な差別があり、掛け捨て問題も起こっている。健康保険は被扶養配偶者拠 出なしで受給をする。介護保険も同様というふうになっております。失業保険の問題というのは、ジェンダーの以前に給付が非 常に薄い。これは橘木委員の著書の中にも指摘をされていることでございますけれども、ジェンダー視点から見ますと、今日の 非正規ではありませんが、加入しない雇用者が多くて、受給者の女性比率というのは、雇用者の女性比率よりも相当低くなっ ているというようなところがございます。生活保護は、非常に限定された支給であり、給付基準もさほど高くない中で、補足性原 理、これはほかのリソースを活用して、最後の最後で生活保護を受けられるというのが補足性原理ですが、非常に強くなってお りまして、それはとりわけ母子世帯にとって過酷な結果になっております。
     ここでは税制や現金給付というのをパッケージとしてとらえていますけれども、児童支援パッケージとして、日本は企業の家族 手当を含めても、ギリシャ、ポルトガル、スペインと並んで児童支援パッケージが低い国でございます。これが高い国というの は、所得制限のない児童手当制度を持っています。日本は住宅費は格段に重いので、住宅費を控除すると児童支援パッケー ジはマイナスになってしまう。つまり子どもを持つことでパニッシュされるという国になっております。出生率との関係を見ると、 80年代の出生率の変化が児童支援パッケージの手厚さというのと相関関係を持っていまして、相関関係の児童支援パッケー ジの低い国では、80年代出生率が低変化したということが確認されている。最後に税制については、日本は個人単位なんだけ れども、人的控除による家族配慮介護が大きいということで、まとめますと、家計の構造ということもにらまないといけないんで すが、世帯主勤め先収入への依存度が高い。そして賃金制度だけではなく、社会保障や税制の影響も大きくなっています。つ け加えれば、税・社会保障による所得移転の累進度というのが低いタイプになっているというようなことです。
     今後は、データの使用については現在申請中でございまして、まだ二、三か月は許可が下りてデータを手にするまで時間が かかるわけですけれども、これら既存のデータをパッチワーク的に探っているものをもっと統合してまとめて、データが使用可能 となったときにはきちんとパラメーターセットができているし、それから、オルタナティブなパラメーターセットというのも整えた上 で、本格的な分析に入りたいということです。
     つけ加えますと、昨日の日経新聞の朝刊の経済教室のところに、基本問題専門調査会の委員でいらっしゃる八代尚弘さん が、ちょっと堪忍袋の緒が切れたという感じの記事を載せていらっしゃいました。世帯主の保険料が同じでも、専業主婦世帯だ けで生涯に基礎年金、遺族年金で2,300 万円、医療給付で1,200 万円の給付が追加されていると。こんなことでは働くと損に なる社会ではないかというふうに書いていらっしゃいまして、家族の働き方にかかわらず、個人単位で負担し受給する仕組みが 前提となるという記事を書いていらっしゃいます。私はこの記事を見て、叱咤激励されているのか、ほとんど叱咤されているのか という気分になったんですが、同じ保険料負担でも生涯で受け取りが同じ保険料でもこれほど違ってくるという計算は比較的す ぐにできるわけです。けれども、影響調査専門調査会では、エビデンスベーストの報告を出さなければいけないので、諸外国で 行われている成果のレベル、制度がこうなっているというのではなくて、その制度が動いて機能した場合の家計や個人にとって の帰着や最終成果のレベルのところまで一応確認をした上で、日本の社会政策システムのタイプや、それがライフスタイル選 択に及ぼす非中立性のようなものを確認していきたいというふうに鋭意努力をしているところです。
     ただ、そうこうしている間に、永瀬委員も委員の一人である厚生労働省に設けられている女性と年金検討会の方が、最終報 告を出すというようなことで報道もされております。八代さんの記事や、3号被保険者問題を女性と年金検討会も見送りにしてし まったという検討結果が出てきつつある中で、この専門調査会として何かコメントのようなものをしなくていいのかということも非 常に気になってまいりました。そこはこの場で皆さんの御意見をいただきたいというふうに思っているところです。
     それで、ただいまの報告について御質問や御意見等をお願いいたします。
    木村委員
    まず何点か申し上げたいと思うんですが、大澤会長がおっしゃった「ライフスタイルの選択に影響が多い社会制 度・慣行:日本の場合」のところで、これはサジェスチョンですが、生活保護のところで、当然入っているかもしれないのですけれ ども、日本の支給要件が、国が入る前に、まず家族がその人を救済することができるかというのを調べますね。
    大澤会長
    扶養照会という。
    木村委員
    それで、イギリスは個人単位になってしまって、そういう条件も調べる方がここの影響調査にはいいのではないか ということが1つです。
     それから第2点は資料2の2ページです。私がこれがよくわからなくて、例えば3ページで各世帯の粗賃金に占める割合とか 出ていますけれども、もしこの表に基づいてやるのだったら、これは働いている稼得期だけに注目したようなことになるのでしょう か。というのは、例えば年金課税の問題にしますと、年金は保険料を払うときと積立の段階、それから年金給付としてもらうとき の3段階のいずれに年金を掛けるかということは、年金に対する支出課税にするのか、あるいは総合所得課税にするのかという フィロソフィのもとに組み立てられているわけで、年金課税も保険料を払うときから給付の段階まで見ないとよく見えないことが あるし、それからまた、大澤会長からの報告にありましたが、年金給付の段階で、ドイツのように被扶養配偶者のことを全然認 めないというところもありますし、それでも遺族年金はあるとかいろんな状況があるので、やはりエビデンスに基づいたということ であっても、生涯を通じた見方というのはやはり必要ではないか。そうでないと、社会保障制度は重要な点を失うような気がして います。
    大澤会長
    このtaxing wagesというのは、とにかく既存のものですぐできるということで、瞬間風速的に現役の片働きなの か、共働きなのかというところで見ようとしているものですが、当然生涯を通じる受払というのが問題になってくると思います。
    坂橘木委員
    これはウェッジズだけですか、インカムじゃないんですか。
    大澤会長
    名前はtaxing wagesといって、賃金というふうに書いていますね。グロスウェッジというふうに、粗賃金という。
    木村委員
    これはパーセントあるけれども、母数は何なんですか。粗賃金ですか。
    大澤会長
    男女合わせた平均賃金です。グロスです。
    坂橘木委員
    でも、税金は所得にかかるわけでしょう。
    大澤会長
    はい。
    坂橘木委員
    これは源泉の勤労所得だけにかかっている税なんですか。
    大澤会長
    と思われます。
    坂橘木委員
    異様に低いですね。
    坂東局長
    地方税も含んでですよね。
    坂橘木委員
    わかりません。事務局は分かりますか。
    浜田参事官
    これは平均的な賃金の子どもが2人いる労働者です。
    坂橘木委員
    タックスサンプルは、ウェッジじゃなくて、ウェッジアーナーに関して計算したということですか。
    浜田参事官
    そうです。
    福原委員
    ウェッジアーナーのインカムでしょう。
    坂橘木委員
    そういうことですね。わかりました。taxing wagesといったら、 wagesにtaxを掛けるという意味にとるでしょう。だか ら誤解しました。すみません。
    木村委員
    大澤先生がおっしゃったことで、年金分割で、今年の5月に調べに行った範囲では、スウェーデンで保険料のうち 積立部分について、夫婦で年金分割するということがあったと思うんです。
    福原委員
    年金の、3号被保険者というのは、ここで解決するわけにいかないので、解決すべき問題の一つとして残されてい るという言い方がいいんじゃないでしょうか。
    大澤会長
    それは女性と年金検討会の最終報告でもそういう書きぶりになるんですか。一応6つの改革案が併記ですよね。
    永瀬委員
    3号に関しては意見が分かれておりまして、そして私自身は、改革すべき、それも世代によって差をつけて見直す べきものだと思っております。特に将来を見通した場合に、3号というのは全生涯、20歳から60歳までの、つまり40年にわたっ て奥さんであれば給付はしても年金保険料はいいですよという制度ですので。3号をこのまま残しておいてうまくいくとは到底思 えないのです。
     ただ、85年改正のときに、これを入れたときには、一つの平等の思想として入れたものであったと。その後いろい ろ社会状況が変わっていく中で変化はあるのでありますが、しかし、未だ女性が働けない現状を見ると、これはとれないという ふうに主張なさる委員も複数いらっしゃいますので、これがどういう方向でまとまるかは、まだ検討会の時間が残されております が、方向性としては、解消の方向を見通すということについては合意がとれているのではないかと思いますけれども、それがあ らゆる男女共同参画が実現した際にはなくなるべきものだという程度のものであると随分先のこととなりますので、どうなるので あろうかということは私も非常に責任があるなと思っております。ただし、大勢の方々のかかわるものでありますし、現状、特に 50代になりますと、第3号の制度が入ってからの年金期間は短いですから、第3号の結果、積み立てられた基礎年金分という のはいまだに低い人も多いと思うんです。そういった実態などを踏まえてみますと、特に50代以上ぐらいの方ではなかなか難し いと考える人も多いのではないだろうかと。私の世代ですと、そろそろ人生現役40年全期間を夫に養われているという意図の 人は少ないと思いますし、さらに30代になってくると、また随分違うのではないだろうかというふうに私は認識しております。まだ 検討中ということでございます。
    坂橘木委員
    永瀬委員に一つ質問なんですが、6つの案の中に、税方式に変えれば保険料拠出なし、基礎年金に関してね。 そういう意見は6つの中に入っていないですか。
    永瀬委員
    6つの中には入っていません。その他の論点という中で入っていたと思います。
    坂橘木委員
    それは保険料拠出なしで税方式に変換すればいけるでしょう。そういう意見は全く無視ですか。
    永瀬委員
    無視はされておらず、そういう御意見もあるけれども、それは全般にかかわることなので、女性と年金検討会とい う場ではその他というところに入れるにとどめるということなのではないかと私は理解しております。
    大澤会長
    それに関連して御意見をいただきたいんですが。
    坂橘木委員
    6つの案を簡単に説明してもらえますか。
    坂東局長
    事務局から簡単に説明しますか。
    永瀬委員
    第1案というのは、賃金分割です。夫の賃金が妻にあったものと想定して、妻に賃金が半分きて、そこに今と同じ パーセンテージだけれども、それがそれぞれの権利になると。やはり事務局から続けて説明して下さい。
    浜田参事官
    1案は、永瀬委員がおっしゃったようなことです。それから2案は、専業主婦が定額負担、例えば1号被保険 者、自営業者などと同じような定額負担をするという仕組みです。それから第3案は、同じ定額負担なんですが、専業主婦の夫 の方の名義で定額負担をするという案です。それから第4案は少し複雑ですが、被用者をグループ分けして、専業主婦世帯の 被用者、つまり専業主婦世帯のサラリーマンと、そうじゃない人、共働きや単身者等のサラリーマンと分けて、専業主婦の年金 保険料は専業主婦世帯のサラリーマンの方で持つという仕組みです。
    永瀬委員
    専業主婦のいる世帯でのリスクの分かち合いと、そうじゃない共働き世帯でのリスクの分かち合いということで す。結果的には、専業主婦世帯の方がやや保険料が上がるだろうということは予想されています。
    浜田参事官
    第5案は基本的に今の制度なんですが、標準報酬の上限をもっと上げるということです。専業主婦世帯は、夫 の所得が高い世帯が多いといった批判があることに対して、標準報酬の上限を上げることによって、そういう世帯の夫はたくさ ん払ってくださいという整理です。
    永瀬委員
    今、報酬上限が62万ですが、62万以上の人は100 万でも62万と評価されていますのを、その上限をもう少し上げ ていくけれども、恐らく給付には余り反映しないという考え方ではないかと思います。
    浜田参事官
    第6案は、第3号被保険者を育児・介護期間中、そういう者に限るということです。専業主婦といっても育児や介 護のためにやむを得ずなっているというか、そういうところに絞って第3号の対象にするという案でございます。
    永瀬委員
    第6案については、私自身は加えて、今、移行期ですので、3号でない主婦の期間については、短い就業期間で も働くと年金が増えるというような形に何らかの追加的なインセンティブがつくといいのではないかと思っているところです。育児 離職するかどうかは、子どもを育てることをどう考えるかという個々人のそれぞれの価値観によるところが多く、年金の社会保険 料のとり方が強い影響を与えているとは思いませんが、一方で就業に戻るときには、社会保険料 のあり方が労働抑制をし ている。日本の今の年金制度というのは40年、あるいは就業期間がもっと長ければ長いほど報酬比例部分というのはどんどん 増えていく。それから報酬額が高ければ高いほど年金が増えていくような仕組みになっているわけですけれども、一般に育児 等を負担する方の厚生年金加入期間というのは多分短いだろうと。しかも、報酬も復帰後にはがたっと落ちるだろうと、そういう ことをもう少し年金上考慮できないだろうかというのが、私が追加的に提案したい内容でございます。ただ合意は得ていません が。
    岡沢会長代理
    説明を聞いているだけだと、平均寿命が延びて、ライフスタイルがもっと多様化するときに、随分、単線路線 で論じていると感じます。もっと離婚が頻発化し、同棲が頻発化しというようなことを想定した形をとっていないですよね。
    永瀬委員
    離婚分割は原則認めようという形にはまとまりました。
    岡沢会長代理
    離婚とか、同棲とか、事実婚とかをどういうコンセプトでとらえていくのかということをやらないと、と思います。
    永瀬委員
    自分の個人で積み上がる年金と考えるか、世帯で積み上がっていく年金と考えるか、その根本的なところが、世 帯というのが中心で案が組まれているというふうに感じてはおります。それが不十分だという、そういう御意見でございますね。
    木村委員
    私、この間、ヒアリングをオブザーバーとして聞かせていただきました。私の印象では、第3号被保険者の問題を ぜひ変えていかなければならないというのは、女性の委員は見た限りでは、まずほとんどそういう意見であったと。男性からも、 変えるのが反対という人はそんなに多くないのではないかというふうな印象を持ったんです。
     年金分割のことだって、女性と年金検討会では、どういう形で分割するかというのは一致がないのに、年金分割をやっていく のですね。第3号被保険者の問題については、いろんな方法があるからまとまっていないということになってくるのだから、同じ ような現状があるにしろ、報告書のまとめ方は全然違う。
     それで私の本論に入りますけれども、この専門調査会では、男女共同参画社会基本法に関連する視点から、やれるところは やったらいいと思っています。
    坂東局長
    男女共同参画の視点からライフスタイルに中立性があるかどうかという視点ははっきりしていると思います。
    大澤会長
    それに、さきほどエビデンスベーストと言いましたけれども、本格的な分析は2月か3月以降にならないと開始でき ないという中で、しかし、迅速にレスポンスするということを考えると、自ずと意見というよりは、あれがいいとか、これがいいとか という意見には到底ならないだろうとは思います。
    大沢委員
    こういうことになれば、こういうインパクトがあるぐらいのことは言って、それでもいいのかどうかというのは、みんな で決めなければいけないことで、それまで決めることはないと思うけれども、例えば同棲の問題とか、結婚の問題とか、世帯主 義であるとか、そういうことについてのコメントはしてもいいと思うんですね。もう一つは、この基本的な視点というのは、負担の 平等性ということから、この問題を取り上げているわけですか。もう一方の、例えば一つの重要な課題としては、女性の能力活 用をいかに進めるかという、これだけ少子高齢化になったときに、支え手をふやすような年金制度のあり方を考えていくというと ころからこの議論をしていくと、全然違った結論が出るのではないかと思うんですよね。
     被3号の問題というのは、支え手をふやすというところの問題と、それから女性能力活用を妨げているのかどうかという問題 で、現実には影響がないとは言いきれないわけですよ。先ほどの小島委員の話のように、将来一体どういう方向に日本の社会 をもっていくのか、労働形態になっていくのかということと非常に大きくかかわってきて、一番大きい影響がもう既に起きている。 ここ1年で正社員が98万人減って、非正規が64万人ふえているということは、完全に企業が非正規依存に傾いていて、これは 適正なポートフォリオの割合を超えて、そういう状況になっているということは、個人の平等の問題ではなくて、日本全体にとっ て、こういうシステムが究極的にはマイナスに働いていくということだと思うんですね。そこに誰も発言していないということが私 には・・・。やはり発言すべきではないか。どういう形で発言するかは別にしても、非常に大きなマイナスの効果というのを、支え 手をふやしていくためにどうすればいいか、女性の能力が全然活用されていない状況というのを将来どう考えていくのかというこ とに対して、言わなければいけないのではないか。これからの理想形というのは、夫婦ともに非典型で働くような労働市場に なっていく可能性だってあると思うんです。そこはよくないというふうに思います。もし私の意見を言わせていただけるとしたら、 そこは絶対言うべきではないかと思います。
    永瀬委員
    それに関して、よく考えてみると非常に大きいのが雇用のあり方なんですよね。つまり大体女性が結婚するとや めると。それが4割ぐらい、もっとやめているんですよ。結婚するとやめる、出産するとやめる。そしてどうにか妻子を養っていける ような賃金であるし、一方で幼い子どもを持ったら無業者がいないとなかなか家庭が成り立っていかないような働き方である。 そして、そういう人のことを第3号というのは守ってきた制度というような位置づけもできると思うんです。それを変える必要があ り、私は変わる方向にあるんだと思っていたんですが、この前、日経連の方の話を伺う機会があって、全然変わっていなかった んだと思いました。つまり、能力のある男性をどんどん活用したいと。女性も今の男性並みにどんどん働く人であれば活用した い。でも、それ以外の人はちょっとこちらに行っていただきたいというわけではないですけれども、そういうようなニュアンスを感じ たんですね。それは国際競争の中でどうやって日本企業は生き残っていくとか、そういうことを真剣に考えた上での一つの考え 方かもしれませんけれども、しかし、私は雇用のあり方そのものを変えないと、それと同時に、年金制度も変わっていけるので あるかなと思います。雇用のあり方をもっと、特に経営者団体と労働者側でもう少しどうにかなる方向にもっていけないのだろう かということを、出産退職、結婚退職、新しいデータが出るたびに、ああ正社員で続けている女性はやっぱりこれくらいだったか と見るたびに思います。そしていい仕事にはカムバックできないということになっています。
    大澤会長
    今日、前半の方の連合からのヒアリングでも、その点が強く指摘されました。
    福原委員
    いずれにしても、労働形態は変わりますね。先ほど岡沢委員の御指摘のように、夫婦の問題も流動的になること を考えて、先のことを考えていくのか、現状を追認しておいて、別に先の部分を構築するのかというのが分かれ目ですね。
    木村委員
    私も、まさに大沢委員がおっしゃったような印象ですね。第3号がこうだという、公平の観点のデフェンスは非常に してあるのだけれども、全体的なグローバルな働くことに中立的なという問題意識から見ると、私はやはり力点が少ないというよ うな印象を持ちました。
    坂東局長
    年金制度には、本当に世代の公平性ですとか、財政的基盤の安定だとかいろいろな観点があり得て、いわば制 度官庁である厚生労働省としては、総合的に判断をなさるだろうと思うんですけれども、この専門調査会というのは、そうした全 体的な視点ではなしに、男女共同参画の視点から報告はあり得るのではないかと思います。
    大澤会長
    今後の日程確認も含めて、事務局から御説明いただけますか。
    浜田参事官
    個票のデータの件について、統計局との相談が時間がかかっています。 中間報告に関しては、雇用システム のアンケートは、こちらでやっている調査なので間に合うと思いますし、そのあたりを材料に、今出たようなお話も含めて、中間 報告はまとめていけばどうかと思います。
     次回は来年の1月16日水曜日の10時から12時ということです。場所は内閣府の第3特別会議室です。
     第5回の議事録案につきまして、1週間ほどで御修正の御意見をいただければありがたいと思います。いただいたものを修正 しまして、次回の1月16日のときにお諮りしてオープンということにさせていただきたいと思います。
    大澤会長
    それでは、これで影響調査専門調査会の第6回会合を終わります。本日はどうもありがとうございました。

(以上)