第5回男女共同参画会議影響調査専門調査会

  • 日時: 平成13年10月25日(木) 16:00~18:00
  • 場所: 内閣府3階特別会議室
  1. 出席者
    • 大澤 会長
      大沢 委員
      岡沢 委員
      木村 委員
      小島 委員
      高尾 委員
      橘木 委員
      永瀬 委員
      福原 委員
  2. 議事
    • (1) 開会
    • (2) 雇用システムに関する日本労働組合総連合会ヒアリング
    • (3) ワーキングチーム研究経過報告
    • (4) 閉会
  3. 議事概要
    大澤会長
    定刻を過ぎましたので、多少遅れられるという御連絡のある委員もいらっしゃいますが、ほかの方はそろっておい でですので始めたいと存じます。ただいまから男女共同参画会議の影響調査会第5回会合を開催いたします。
     まず、今月の3日に開催された男女共同参画会議の本会議に、橘木委員から、この専門調査会について、本日の配付資料1 「影響調査専門調査会の検討会状況について」という資料に基づいて報告をしていただきましたので、この点、お知らせいたし ます。
     では、お手元の議事次第に従って本日の審議を進めていきたいと存じます。本日は、女性のライフスタイルの選択に影響が 大きい制度に関して、厚生労働省及び財務省からのヒアリングをお願いしております。
     まず、厚生労働省から第3号被保険者制度や遺族年金などについて御説明お願いしたいと思います。
     厚生労働省年金局年金課から榮畑さんがおいでになっていますので、どうぞお願いいたします。
    榮畑課長(厚生労働省年金局年金課)
    年金課長の榮畑でございます。座らせていただいて御説明させていただきます。
     お手元に「厚生労働省説明資料2」をお配りさせていただいておりますが、これに沿いまして、手短なところは手短にさせてい ただきますけれども、御説明させていただきます。
     資料の一覧というのを最初につけてございますが、資料1から資料6までです。特に、先ほども会長の方からも御紹介がござ いましたが、3号被保険者問題、遺族年金問題等、いわば「女性のライフスタイルの変化等に対応した年金の在り方に関する 検討会」を昨年から発足させて、そこで検討をずっと進めてきていただいておるところでございますが、そこの検討会の議論の 状況なり検討状況なりを御説明、御報告させていただければと思っております。したがいまして、資料一覧は、ずっと書いてご ざいますとおり、女性と年金検討会での検討に提出させていただいた資料を中心に、今日のこの資料一覧もつくらせていただ いております。
     最初の資料1でございますが、女性と年金をめぐる問題については女性と年金に関して指摘されているような主な課題といた しまして、下の方の(1) で第3号被保険者問題、もう1枚おめくりいただきまして、(2) 短時間労働者の年金の扱い、(3) で離婚 時の年金分割の問題、(4) で育児期間の取り扱い、(5) で遺族年金、その他幾つかの検討課題が指摘されておりまして、今ま さにこれに沿いまして、議論をずっと積み重ねてきていただいております。
     4ページで、検討会委員の皆様方の一覧表をつけさせていただいております。お茶の水女子大の袖井教授に座長をお願いい たしまして全員で16人の委員、そのうちの半数以上が女性という構成でお願いしております。
     もう1枚おめくりいただきますと、これまでの検討状況で、5ページ、6ページは検討の経過で、昨年の7月19日に女性と年金 の検討会をスタートさせていただきまして、10月3日まで12回議論を積み重ねてきていただいております。その間、例えば5回 目から8回目にかけては、各検討会に加わっていただいています委員のレポートに基づく御議論をお願いしたり、第7回では、 検討会委員以外の先生方からの御報告をいただいて御議論をお願いしたり、それから、9月の末に行いました第11回では、専 業主婦もしくは専業主婦経験者の方々に来ていただいてのフリートーキングをしたりと幾つかの形で検討を重ねてきておりま す。
     それで、来週の火曜日、10月30日に第13回が予定されておりまして、それ以降、そこに書かせていただいているような日程 で、できれば年内に意見書、報告書をお取りまとめいただけないかというようなつもりで御論議をお願いする予定でございます。
     中身でございますが、資料2に「女性のライフスタイルの変化・多様化と年金制度」と書かれてございますが、まさに多様なラ イフスタイルをお持ちの女性の方々、結婚前に就労、非就労、結婚・出産後なおも雇用を継続、しかしその間いろんな働き方が あるのでございましょうが、雇用を継続するような方、それから結婚・出産を一つのきっかけとして職を離れられますけれども、そ の後もう1回再就職、これもフルタイムなのかそうでないのか、短時間労働なのかというような違いもございましょうし、それから また1回離れた後ずっと専業主婦という方もおられるでしょうし、またそんなにないと思いますが、全期間専業主婦というような 方もございましょうし、こういう中で、一番端に書いてございますが、いろいろな人生経験に即しまして年金額が変わってきてい ます。
     例えば、厚生年金を全期間40年で入った場合、それからそうではなくて結婚・出産退職後もう1回再就職して厚生年金適用、 フルタイムで働いたような場合、23年9か月と計算したらこのような年金額になるし、そうではなくて結婚・出産退職後ずっと専 業主婦を続けてそれほど大して厚生年金期間がない、6年ぐらいしかないような場合には2階の報酬比例年金がそこに書かれ ているような金額になるし、もしくは全期間専業主婦ということであれば、全く厚生年金、2階の報酬比例年金が出ない1階の基 礎年金だけということになるし、女性のまさに多様なライフスタイルに応じていろんな形で年金の水準というのはあるのではなか ろうかということを資料の2で見ていただければと思います。こういう多様なライフスタイルに即応した年金制度に必ずしもなって はいないのではないかというところから、今の女性と年金の検討会の御議論が行われているところでございます。
     資料の3は、9月の第10回の検討会に出させていただいた資料でございまして、これまでの議論の概要というのを9月3日の 段階で、整理をしたものです。項目だけ見ていただきましても、1ページに基本的な考え方、4ページ以降、3号についてこのよ うな御議論がございます。3号に関してはいろんな御議論がございますから長くなっているのですが、8ページ以降が短時間労 働者への適用の問題。これも大変重要な女性の年金の水準を高めていく、充実させていくためには大変重要な課題だろうと 思っております。10ページに育児期間、これもその期間、もし結婚・出産退職等になるとしたらその期間の年金水準が下がる。 報酬比例年金がつかないような問題をどういうふうに考えるかというようなことも女性の年金水準を考えていく上で大きな課題に なるだろうと思っております。それから、11ページで夫婦が離婚されるときの年金分割、下で遺族年金、そういうような課題につ きましての9月段階での御議論というのを整理させていただいたところでございます。
     それから資料の4番で、そういう議論を踏まえまして、この検討会で女性と年金問題検討していく上での諸論点ということで資 料の4を、この検討会に出させていただいて、大体こんなことではないかというような御議論があったところでございます。資料 4、2ページ、4番というのを見ていただきますと、女性と年金、女性のライフスタイルの変化等に対応した年金制度をもう一回考 え直していく上で、年金制度上、具体的に議論していくべき制度設計上の論点としてどのようなものがあるかというと、そこで6 点ばかり書かせていただいておりますが、どのような世帯を標準として、特に厚生年金の給付設計を行うのか。今の厚生年金 は、妻は専業主婦で全く厚生年金加入期間がない一方、夫は厚生年金40年加入という世帯を想定して、片働き家庭で23万8, 000 円の年金水準を設定しておりますが、それを先ほど申しましたような多様化してくる女性のライフスタイルの中でどういう世 帯を想定して給付設計を行えばいいのかという問題です。それから、まさに3号の保険料負担の公平性をどのように考えるかと いう問題です。
     それから、短時間労働者、育児、離婚、遺族年金。遺族年金も片働き・共働きの給付水準の差の話とともに、制度上、男女の 取り扱いの違いがある。制度上、受給権者となれるのが、あるケースで女子だけだと、男子はなれない、そういうようなことがあ るような男女の取り扱いの違いをどう考えるか。そういう点を具体的な論議していただくべき制度設計上の論点として挙げてお ります。
     これをどういう視点から御議論いただくのかというのが、最初のページに戻りまして資料4の1番で、例えば社会保険制度とし ての年金制度の「能力に応じて拠出し、ニーズに応じて給付する」原則の下で、どのように制度を見直していくべきか。このとき に一つ考えなければならないのは、女性の年金の必要な年金水準の保障というのをどういうふうに考えていくべきか。公平性、 特に3号の保険料負担を考えたときに、片働き・共働き間とか、世帯・単身間、所得階層間、男女間等々の公平性というのをど のように考えるのか。
     さらに言うと、そこから発展する議論といたしまして、年金の給付を行う負担を考えていく単位として、個人と世帯の関係をどの ように整理していくべきかというような論点。それから先ほどもちょっと申しましたが、社会保険制度としての年金制度の拠出・ 給付の原則、「能力に応じて拠出し、給付はニーズに応じて」という原則を修正し、特に第3号被保険者の保険料問題を想定い たしますと、この原則だけで対応しきれないかもしれない。そのときに年金制度を新しく受益に応じた負担という考え方を入れ得 るのかどうか。さらにそういうことを総体として考える上での男女共同参画をどのように進めていくのか、そういうふうな視点がま ず1つあります。
     それから、1ページの下でございますが、各個人の多様な選択に中立的な制度を考えていくにはどうすればいいだろうか。1 つは一番下の3行でございますが、働き方、短時間労働者等との雇用形態の多様化に対応してどのように見直すか。その次 の2ページでございますが、仕事と家庭の両立支援というのをどういうふうに考えるか。特に子育て期の保険料負担とか年金給 付などについて。
     それから3番目の視点といたしまして、急速な少子高齢化の影響を緩和するためには、支え手を増やしていくというふうなこと を考えてどのように制度を見直すべきか。これも幾つかの議論があろうかと思います。
     ただ、3ページの5番でございますが、一方で、女性と年金問題の検討だけではなくて、むしろ次のような環境整備が必要な のではないかということをあげております。例えば、女性の就労支援のための施策の充実、それから、公的年金の財政方式は 世代間扶養でございますから、次世代を担う者の育成が本質的な問題です。そういうときに年金制度における対応も含めた少 子化対策の積極的な推進をどう考えるのか。それから、特に年金制度の中でもサラリーマンに対する制度としての構成が共通 いたします健康保険、税制、民事法制、企業の扶養手当等々、いわば女性と年金の問題は当然議論されなければならないの でしょうけれども、環境整備をどういうふうに考えていくべきなのだろうか。そういう諸論点を9月3日に提出させていただきまし て、御議論を深めていただいたところでございます。この諸論点に沿いました形で、その後も議論が進められてきているところで ございます。
     資料5でございますが、そのうちの特に10月3日の前回の検討会で、第3号被保険者制度に係る議論がかなり熱心に行われ たところでございます。そのときの資料がこの資料5でございます。第3号被保険者問題に関しまして幾つかの議論を、これま での検討会の内外における御議論、御意見を整理いたしまして、資料5の7ページでございますが、これまで議論があった第3 号被保険者に係る保険料負担の考え方を厚生労働省の方で整理して典型化させていただいたものを、i案からvi案までとい うことで整理させていただきました。その案を出すときに、i案からiv案は保険料負担は負担能力、応能でとるのか、受益に応 じた応益という原則を入れ得るのか。それから具体的な負担の在り方として定率なのか定額なのか。それから誰に負担してい ただくのか、負担者は妻なのか夫なのかという基本的な考え方の整理の下にまとめたものです。さらにv案は、育児介護期間 中だけに3号期間を限ればどうかという考えのもので、そのような考え方を幅広く整理したものです。
     それを8ページ以降で、それぞれの案につきましての現行制度との対比で給付と負担の考え方というか、具体的な給付と負 担がどういうふうに変わっていくのかということとともに、それを御議論していただくために、例えば1つ御紹介いたしますと9ペー ジでございますが、i案というのは、これは夫婦間での賃金分割を行った上で、賃金分割された賃金に対して定率の保険料負 担を求めていくというものですが、これについて、どのようなところが議論の焦点になるのかという点を9ページで幾つか整理さ せていただいております。配偶者の所得に対する潜在的持分権の具体化という考え方自体がどうなのかというところから、こう いうところをどう考えるんですかということでの議論の焦点となるような点を整理させていただいております。それをvi案まで整理 したのがこの資料でございます。
     最初の資料1に戻っていただきますと、6ページでございますが、10月3日に3号の具体的な考え方に即して議論いたしまし て、今後その10月30日と11月9日に3号も含めまして、先ほど御紹介させていただきました制度設計上の具体的な検討課題に 即した、いわば各論的な論点についての議論をあと2回で深めていただければと思っております。これはまさにいずれも大変難 しい議論がかなり交錯するところでございますが、そこをうまく整理した形で御議論を深めていただければと思っております。そ の中では、正直申し上げますと、第3号被保険者制度につきましてはいろいろな対案、今の制度からこう変えればどうなるか、 ああ変えればどうなるかというのを幾つも考え方を整理させていただいておりますが、いずれもなかなか壁がある、山があると いうことで、検討会の中でも議論がまだ多岐にされておりますし、事務局としてもどう整理できるのかというのを大変悩んでいる というような状況でございます。同じように、これからまた10月30日、11月9日で御議論されていくような厚生年金の世帯のとり 方、標準的な世帯のとり方をどう考えるかとか、短時間労働者の適用の問題だとか遺族年金、離婚の問題だとか、どれをとっ ても恐らく難しい論点が出てくるのだろうと思いますが、そこを何とかうまく整理をさせていただいて検討会としての報告書をお 取りまとめいただけないかというようなことで今議論を進めさせていただいているところでございます。
     この検討会での報告書を何とか年内にお取りまとめいただければ、私どもといたしましては、2004年の次の年金制度改正、 財政再計算の中での大きな課題として、その報告書を踏まえまして、なお議論を進めていきます。女性のライフスタイルの変化 等に対応した年金の在り方につきましては、今後もそのような形で精力的な検討を続けさせていただければというように考えて いるところでございます。
     それからもう1つ、資料6は諸外国の、特に女性と年金に関します、今申し上げました幾つかの論点につきましての資料を整 理させていただいたものをお配りしております。時間の関係上、説明は省略し、時間のあるときにごらんになっていただければ と思っております。
     以上でございます。何とぞよろしくお願いいたします。
    大澤会長
    どうもありがとうございました。ただいまの御説明について、御質問や御意見がございましたらお願いいたします。
     当専門調査会の委員の皆さんの中には、年金に関して専門的な御著作がある方が多数いらっしゃいますので、いろいろ御議 論があろうかと思いますが、当専門調査会としての視点というのは、男女の社会における活動の選択に対して制度が中立であ るか否かといった観点からの検討でございますので、多々興味深い論点はございましょうが、そこのところに絞った御質問や御 議論をお願いしたいと思います。
     いかがでしょうか、どなたからでも。
    木村委員
    どうも御説明ありがとうございました。今日いただいた資料の3の「これまでの議論の概要」のところを説明してい ただきたいと思います。まず1の「基本的な考え方について」の3つ目の○のところですけれども、『社会保険は、「能力に応じて 拠出し、ニーズに応じて給付する」のが原則』というのは、これはどこに根拠があるのでしょうか。
    榮畑課長
    この資料自体は、検討会の中の各委員の御発言を、いわば集めてきたものでございまして、そういう点では、検 討会の議事録を集約整理させていただいたものでございます。したがいまして、今、先生がおっしゃるようなことも含めまして、 いわば各委員が言われたことというのを、そのまま書かせていただいておるというものでして、一々私どもがそれをどう思うか、 こう思うかというところまで議論をしてつくったペーパーではないということを御承知いただければと思います。
    木村委員
    そういう面があるとしても、そのときに御発言された委員が何か根拠を示されたということはないんですか。ここだ けではなくて、この文章2つが様々なところで使われておりますよね。
    榮畑課長
    この文章2つというのは。
    木村委員
    社会保険が何とかというのが原則というのと。
    大澤会長
    資料4の1ページ目の下から3番目あたりにも原則として引用されております。「能力に応じて拠出し、ニーズに応 じて給付する」という言葉が。
    木村委員
    これを何回も繰り返すのであれば、よほどこれに対する強い支持とか、根拠が示されたのかと思いまして。
    榮畑課長
    実情を申しますと、検討会の発言の中で、ここに書いているからこうだというようなところは示されていないのです が、まさに年金の体系を見ていただければ、賃金という能力に応じて保険料をいただいて、それで必要度に応じて給付設計を 組んで、給付をしてきているというふうなことを1つの言葉で集約したら、こういう言葉になるのかなというように私どもは理解して おります。
    木村委員
    でも、1つの制度がそうだからといって、原則までには普通はならないのではないですか。
    榮畑課長
    諸外国で多くやっているのも、まさに能力に応じての拠出でございます。所得比例、報酬比例拠出の年金制度と いうのは、先進諸国ほぼどこでもとられております。
    高山委員
    資料4の頭の1番のところの方が議論しやすいと思うんですけれども、資料3は、各委員の発言をまとめたという 資料ですけれども、資料4は、これからの議論をするに当たっての整理のメモですよね。こちらの方が基本的なベースだと私は 思っております。その第1のところに同じ文面が書いてあるわけです。国民年金を見ると、能力に応じて拠出するという原則が 貫徹するとは思わないんですね。定額保険料でやってきたわけですから。給付の方を見ますと、厚生年金にしても、共済年金 にしても、定額部分と報酬比例部分があるわけですね。あれはニーズに応じた給付に本当はなっているのかというのは見解は 分かれると思うんです。恐らく応益部分はあるというふうに考える。拠出部分と直接リンクしたアンドエンタイトルメントというふう に言うと思うんですけれども、拠出部分と直接リンク、給付と拠出が直接つながっているという意味で報酬比例部分を考える人 たちはいるわけで、そうすると、それは必ずしもニーズとは言えないわけですよね。要は、今でも2つの制度があって、別々の原 理が事実上採用されている。今後の日本として、今の制度でも原理原則は分裂しているわけですよ。これから年金制度を改革 するなり将来に向けて何かするときに、では、どういう原理でやるかということですね。それをまたこことは別で、原則のまま引き ずって将来向かっていくのかということなんですけれども、今2つに分裂している原則をどうするのか。将来に向けて、これとは違 う原則というのはないのかあるのかということが恐らく下に書いてあって、公平性の話だとか、受益に応じ負担だとか、貢献に応 じた給付だとか、こういう観点がいろいろありますねということが問題点として指摘しているわけですね。恐らく大原則の話で、 多分女性と年金だけの議論だけでなくて、もうちょっと大きな広がりを持つ問題ですから、多分ここの原則の整理を検討会で十 分にするとは私は予想していないんですけれども、とりあえず年金局というか、あるいは年金課長さんの個人的な意見でもいい んですけれども、ここのところに関する基本的な年金課長さんの考え方はどうなのかということの御説明はないのでしょうか。
    大澤会長
    関連しますので、重ねて私から御質問したいのですけれども、今、高山委員は、国民と厚生年金で2つの原理に 事実上なっていないかという御指摘だったんですけれども、私の見るところ、厚生年金でも、まず標準報酬最高限というものが ありますので、能力に完全に比例した負担にはなっていない。他方で給付の方は、はっきりと拠出に応じる、負担に応じる給付 になっているわけですから、ニーズに応じた給付にはなっていないというふうに思われるのに、これを原則のもとでというふうに 前提して議論を進めていくことはどうなのかという問題がございます。
     それから、応益というのはないのかと申しますと、国民健康保険には明らかに応益分というのがあるわけですから、社会保険 だからといって応能負担原則だけだということにはならないのではないかというふうに感じるものですから、やや年金から国保の 方に話をずらしたかもしれませんけれども、そのあたりを。
    木村委員
    ○の4の方で「負担の見返りとして給付がある私的保険原理」と書いてありますけれども、私的保険原理ではなく て、社会保険そのものもある一定の期間保険料を納付するとか、そういった拠出の要件を満たすものに給付するんだというの で、社会保険の定義そのものが拠出を要求してやるんじゃないですか。完全に導入するのは無理と書いてありますけれども、 社会保険そのものが原則がそうなんじゃないですか。あと社会保険の特徴は、能力に応じて拠出し、ニーズに応じて給付する というのではなくて、特徴ではなくて、原則といいますか、それはむしろ強制加入の方にあるのではないでしょうか、私はそう考 えていますが。
    榮畑課長
    幾つか言われましたが、かなり大きな議論ですから、先ほどの高山先生が言われたお話の中で、国年と厚年は 原理が違うのではないかというお話がまずございましたが、今確かに国民年金は定額保険料、定額拠出なのでございますが、 こちらがわざわざ御説明申し上げるまでもなくて、私は1号グループ、国民年金グループでも、ちゃんと所得が把握できるのであ れば、いろんな仕事ぶり、収入の形態がまちまちのような方を含めて全て所得がきちんと把握できるのであれば、やはり原理 原則は応能拠出原則になるべきではないだろうかと考えております。ただ一方で、そういうふうな実態に必ずしも残念ながら なっていないということから、いわば今のような定額の保険料負担をお願いして、定額の給付をやっておるということです。した がいまして、1つの大きな考え方としての応能拠出、能力に応じた拠出という議論というのは、本来的な姿としてはあるべきな のではないだろうかと思っております。
     そのときに、先ほど会長がおっしゃられました標準報酬の上限をどう考えるか、標準報酬の上限で保険料負担が打ち止めに なって、そこから給付も止まっているというのを公平と考えるかどうかという議論がございます。しかし、一方でその点では、上限 をつけずに青天井にした上で保険料をとって、給付をすることをどう考えるのか、現行の制度では、そこは一応給付と負担の余 りに高い年金額、余りに高い保険料額とならないような歯止めとして上限をつくっておりますが、これも何年かごとに引き上げて いっております。3号被保険者にかかる給付と負担の公平性を考えていく上でも上限を引き上げていくことが、対応案の1つとし て出ておりますし、十分この検討会の中でも御議論されていくべきことなのではないかと思っております。
    大澤会長
    ニーズに応じて給付するということであれば、上限を取り払った上で給付の方は打ち止めということもあり得るわけ ですから、負担に応じた給付にこだわるからこそ標準報酬最高限が外せないという関係にあるとすれば、その意味でも、能力に 応じて拠出し、ニーズに応じて給付するというのが現行の原則であるという認識は妥当ではないということになりませんでしょう か。
    榮畑課長
    大きな原則は、能力に応じて拠出し、ニーズに応じて給付するというものがあるが、その例外として上限をこえる 部分があるのではないかと思っております。上限の議論は私どもは認識した上で、そこで不公平が生じるのをどう考えるのかが 1つの論点、問題点だろうというような認識をしております。
    大澤会長
    これも大問題なんですが、この点にばかりこだわっているわけにもまいりませんけれども、高山委員、さらに続け て御質問おありでしょうか。
    高山委員
    この検討会で本来やるべきなのは資料4の2の方だと思うんですけれども、大きな宿題を出されたような感じで、 多様な選択に中立的な制度という話ですね。私自身も悩んでいてなかなか回答がないんですけれども、諸外国の例をいろいろ チェックしているんですけれども、どうもうまい手がないんですね。そこにもいろいろ書いてあるんですが、雇用形態の多様化とい うことで、民間の制度だと対象をきめ細かく想定して、いろんなものをつくり得るんですね。ところが、公的な制度というのは、民 間の制度とは違って強制加入だとか、あるいは公正性とか別の考え方をどうしても入れてこざるを得ない。民間と全く同じ考え 方でできないものが公的な制度にはあるわけです。そうすると、中立性というのがそこで貫徹できるのかということが私自身は 非常に悩ましい問題だなというふうに思っているのですね。恐らく行政当局、年金局の人たちもこれは悩んでいると思うんです けれども、言葉として中立的というのはいいのですが、本当に中立性というのは担保できるのかという、細かく詰めていくと、どう しても中立的でないところが残ってしまうということだと思うのです。そこは検討会なり男女共同参画会議の大方針ですよね。中 立性という話は。本当に公的な制度でどこまでできるのかということはもう少し慎重に議論を、具体的な例を通じてやった方がい いのではないかなというふうに私は思うのですけれども、年金の世界で言うと、そう容易でないなというのが私の率直な感想で す。
    大澤会長
    ことは年金の問題だけではないと思うのですけれども、神野委員は年金に関して大胆な御提案をなさっていると お見受けしますけれども、先ほどの自営業の方の所得の捕捉等にかかわって、被用者と自営業者、あるいはその家族従業者 との制度を一本化する上での困難、それをいかにしてクリアするかということにかかわって御意見や、それから榮畑さんへのコメ ントがちょうだいできればと思うのですけれども。
    神野委員
    ちょっと考えていることが違うかもしれませんが、ひとつ、この問題に関していうと、個人の多様な選択に中立的な 制度をどうカウントするかというときの私のポイントは、家族内における無償労働をどういうふうに評価するか、制度の中に入れ ていくかという話だと思うのです。これは全く無視するか無視しないか。というのは、私のように年金というのを失った賃金の保 障部分だというふうに完全に考えて、老後の生活を保障するというのはとりあえず別問題としてカウントしてしまえば、失った賃 金の保障部分だ、賃金代替だという理解にしておけば、無償労働はどうカウントするかということにかかわってくるのではないか と思うのです。そういう議論から考えていけば、自営業者の場合には、事実上、賃金分割というか、所得分割をやっているわけ ですね。自営業者の場合における所得分割をどう把握するかということで制度を組み立てていけばいいというのが、ただ、現実 の制度と私の考えているのと違うので、つまり賃金代替だというふうに年金を考えてしまえば、整理の仕方としては、自営業者 の場合には所得分割をどういうふうに制度化するかという問題で還元すればいいというふうに考えているのですね。そうすると、 それは無償労働の話もちょっとひっかかって還元できるので、そこの処理の仕方を仕組めばいいというのが、簡単に言ってしま えば制度の問題点なんですね。
     あともう1つ、財政学の議論を言うとまた混乱し始めるんですけれども、応能原則と応益原則というのは、我々の議論から言う と、応能原則というのは単純累進にしろ、超過累進にしろ、累進的な負担じゃないと応能負担というふうに言いませんので、そ れから給付の方について言うと、年金なんかの場合には、我々の場合には公共サービスの利益というふうに言っていますの で、年金制度があることによって受ける利益ですから、直接本人が受ける利益ではないわけです。つまり義務教育の利益という のは誰が受けているかというと、義務教育は義務教育を受けた人の利益ではなくて、義務教育があることによって社会が受け ている利益を誰が受けているかというふうに考えますので、直接的なことではないのでなかなか難しいんですが、もしも本当に 保険の金額をもらった人が、そのもらった額に応じて負担するということであると、保険というのは私的にしろ何にしろ、そういうこ とはできるのかと。いずれにしても、何かの形で再分配をするわけですよね。ですから、リスクをプールするわけだから、ちょっと そういう制度はあり得ないので、余りこの議論というのは意味がないような気もするんですね。ちょっとコメントになっていません が。
    大沢委員
    例えば、ほかの国では無償労働についてはどのような形で考えて年金制度に算入しているのでしょうか、御存じ でしたら教えていただきたいと思います。
    榮畑課長
    今、大沢先生が言われたのは、例えば主婦のアンペイドワークみたいなことですか。
    大沢委員
    はい。
    榮畑課長
    そうしたら、それを評価している国はないです。違っておれば直していただいたらいいのですが、私が承知してい る限りではないです。
    高山委員
    税法とも関係すると思うんですけれども、税制でもやっている国はないんじゃないでしょうか。主婦のアンペイド ワークをやっている国は。
    神野委員
    2分2乗みたいなものをどう理解するかという話になるのですよ。
    榮畑課長
    アンペイドワークではなくて、有り得るとしても現実の賃金とか収入とかの2分2乗です。
    神野委員
    そうです。2分2乗のときでも、夫の得た所得に対する貢献みたいな形でいっているわけですから、本来の無償労 働ではないわけですね。そうではないのですが、そこは評価されているというふうに考えないと、同じ所得を得ている共稼ぎ夫 婦と、同じ所得を得ている片稼ぎ夫婦とでは、同じ所得を得ている片稼ぎ夫婦の方が担税力があるというふうに考えるときに は、何かの形でアンペイドワークを評価しているわけですね。分業の利益があるというふうに評価しているわけだから、そこだけ 担税力があるから、あなたはもう少し、ここでいえば保険料を負担してもいいんじゃないですかというふうに言えなくもないわけで す。
    榮畑課長
    そこはどういうふうに客観的に把握できるかですね。
    神野委員
    客観的に把握できるかも難しいので、2分2乗はちょっと違うけれども、制度の中でそれを評価して入れるときの根 拠にするわけですね。
    榮畑課長
    私が知り得ている限りでの2分2乗というのは、まさに賃金収入を足して2で割ると。賃金だけではないですけれ ども、とにかく収入を足して2で割るという形ですよね。
    神野委員
    2分2乗は、今のカウントにはなっていないんだけれども、そうじゃないほかの制度やなんかを入れるときに、その 制度の根拠として負担をしてもらうときに、つまり共稼ぎ夫婦の方が軽い負担になる制度を入れたり、逆に専業主婦のいる家族 の方が重い負担になるような制度を入れるときの根拠として使うと。正確に幾らですかと言われると、それはそうじゃないけれど も、そういう制度が入るときに使うということはあり得るでしょうということですね。
    榮畑課長
    3号の議論の中でも、受益という議論はございます。応益的な負担、受益に応じた負担というのを入れないと、従 来の考え方ではなくて、違う切り口でないと、片働き世帯と共働き世帯との間で差はつけられないのではないかという議論は確 かにこの中でございます。そのような形で今議論がされてございますが、正直申しまして、甲論乙駁という状態でございまして、 事務方としても大変難しい問題だというふうに悩んでいるというのが率直なところでございます。
    高山委員
    年金において、所得分割をやっている国が幾つかあり、増えているんですけれども、基本的には所得は夫婦の間 で違うかもしれないけれども、年金額は夫婦同じにしようという哲学なんですね。それは夫婦の所得が違うのはなぜかというと、 いろいろ理由はあるんですけれども、双方が共同の意思決定をやっているという暗黙のみなしがあるんですね。夫婦の間で賃 金が違うことに関して合意している。ただし、ベネフィットにつながるレベルでは、共同意思決定に基づいて夫婦平等にしようとい う発想なんです。ところが、夫婦はそれぞれ勝手に賃金を稼いでいる。相手の意向とかそういうのは全く関係ないというふうに考 えると、2分2乗というのはなかなか考え方を貫徹するのは難しくて、個人単位だとか、そっちの話にいく話だと思うんです。です から、夫婦の在り方、賃金なり、所得をどう決定しているのかということの事実判断になりますね。そこによって、私は将来の選 択方法は分かれるのではないかと思っています。
    大澤会長
    ほかにいかがでしょうか。まだ多少の時間がございますが。
    福原委員
    これから後で税法のことをお聞きするわけですね。それともう1つ、民法との関係というのはどういうふうになってい るんでしょうか。
    大澤会長
    民法との関係と申しますと。
    坂東局長
    相続分ですね。
    福原委員
    ええ。
    坂東局長
    離婚時の財産分割とか。
    福原委員
    その辺はどこで解決というか、整合性をとっていくのでしょうか。
    大澤会長
    それは税制の話を伺ってから議論した方がよいような気がいたしますけれども。
    福原委員
    その問題が、今相続で大変大きいのですね。
    坂東局長
    社会保険制度のうちでも、例えば健康保険ですと、能力に応じて拠出し、ニーズに応じて給付を受けても、不公平 だという話は余り出ないわけですよね。誰も好き好んで病気になっているわけではないわけで、たとえ低所得の人が手厚い医 療を受けることについてはみんな納得するわけですが、年金について、そうした国民のコンセンサスがなかなか得にくい部分が あるというのは、恐らく基礎年金レベルの、必要最低限、シビルミニマムといったような部分だけは本来は公的に公平に強制的 に行うべきであって、報酬比例部分の考え方が十分に整理されていないことに根本的な原因があるような気がしますけれども、 遺族年金ですとかそういったような問題も含めて、報酬比例部分はかなり私的保険の考え方に準じていると思うんですが、どう してあれだけの報酬比例部分を2階建てで公的にしなければならないのだろうか、その論拠は何なんですか。
    榮畑課長
    報酬比例部分を廃止とか民営化という議論も確かにございます。ただ、私どもはサラリーマンの退職後の収入レ ベルと自営業グループの退職後の収入レベルというのは、調査を見ても、年金以外でとってみたら大きく違っております。現役 だったころに自営業で御夫婦が暮らされていたような世帯と、サラリーマンで奥さんが専業主婦だったような世帯との高齢期に なってからの年金以外の収入の額というのは明らかに違っております。半分ぐらいになっております。それを考えますと、サラ リーマンobの老後の所得保障は1階だけだったら、がくんと落ちてしまいます。報酬比例年金を公的年金としてやることによっ て、サラリーマンobの老後の所得保障がきちんとなっている。基礎年金に報酬比例年金を足しますと実は両者とんとんになっ ているんです。また、諸外国どこの国でも公的年金は報酬比例です。若干違う国は一部ございますが、米、英、独、仏、ス ウェーデン、どこでも報酬比例でやっています。それはなぜかといったら、まさに報酬比例の保障をやることが年金の大きな役 割だというような選択をされてきたのではないかと思っています。このようなことから、1階だけではなくてサラリーマンを対象とし た2階を公的年金としてやるというのは、どうしても必要なことではないかというふうに考えております。
    大澤会長
    こういう角度からお聞きしてもよろしいでしょうか。つまり民間の年金制度で物価スライド、賃金スライドをやれてい る制度はあるのかないのか、それから、終身給付というのが民間の保険では果たして可能なのかどうかという角度からお聞き するとどうでしょうか。
    榮畑課長
    まさに先生がおっしゃるとおりでございまして、スライドをやれているようなものはございませんし、任意でどれぐら い加入してこられるかわからないようなところでスライドを財政的に担保できる保障は原理的にいってもないのではないかと思っ ております。そういう点で賃金、物価、そういうものに応じたスライドをやっていけるということは公的年金でなければできない仕 組みだろうと思っております。それから終身でというのは、一部民間個人商品では出てきているとは聞いていますが、基本的に は難しい話ではなかろうかと思っておりまして、まさにスライドかつ終身だということが公的年金の給付面での大きな特徴では ないかと思っております。
    大澤会長
    ほかにいかがでしょうか。あとお一人ぐらい御質問ないし御意見の時間があろうかと思いますけれども。
    大沢委員
    自営業世帯とサラリーマン世帯の間での制度の違いとか不公平について目にするのですが、現在それについて はどういう形で調整を図ろうとしているのか、それに対する議論というのは何かあるのでしょうか。
    榮畑課長
    本当にずっと苦しんできているわけですが、60年改正前でいう厚生年金と国民年金の違い、医療保険でいう健康 保険と国民健康保険の違いというのは、結局被用者グループと自営業者グループの公平性というのは担保できるかどうかとい うことに尽きてきているのではないだろうかと思っております。そこの2つのグループの稼得形態、それからもうちょっというと所 得の把握の違いみたいなことから、そこの2つのグループを一つにできない。一つにすることがかえって公平じゃないのではな いかということで、縦割りの2つの制度になっている。それは年金でも医療保険でもそうです。しかしその間で、そうは言っても就 業形態等々の変化に応じて自営業者の国年、国保の方の財政が大変になってくるので、そこを何らかの意味で両者で財政的 に調整をしようじゃないかとなり、それが年金でいえば基礎年金となる。基礎年金は必ずしも財政的な調整という意味だけでは ないのですが、効果としては基礎年金はそういう効果を持っているし、健康保険でいったら、老人医療制度というのを、まさにそ の間の財政というのをならしていこうじゃないかという意味で調整している。そのときに、あくまでも財政調整で使われている指 標、切り口も、その間の両者の収入額、所得額で調整というのは一切やっていません。やっているのはみんな頭割りでしか やっていません。それはまさにその間の収入、所得の把握というのを同じように比べたら、サラリーマンの方が不利なんだろうと いうふうな発想のもとにあり、収入で、所得で両者の調整をやっているという制度は我が国の社会保障上どこにもございませ ん。全部頭割りでやっています。ただ、サラリーマングループの中は所得での調整をやっています。
    大澤会長
    ほかにいかがでしょうか。
     重ねて神野委員にお伺いしたいんですけれども、自営業者の所得の捕捉というのはそれほど難しいものなのでしょうか。つま り神野委員は、1号、2号、3号の垣根を取っ払った一元的なシステムというのを提案されていると思うんですけれども。
    神野委員
    年金制度と組み合わせるというのが1つのやり方としてありますね。イタリアもスウェーデン方式を導入して所得捕 捉を容易にするというような制度を入れて自営業者の所得をつかまえるというようなことはないわけではないですね。特に年金 の場合に、事業所得だけを保障するというふうに割り切っておけば、そこは捕捉できるはずです。事業所得に関する比例だけで いいということであれば、つまり資産所得は除外してしまえば。年金で資産所得は保障する必要はないわけですよね。事業所 得だけの捕捉だけでいいわけです。
    榮畑課長
    必要経費なんかはどういうふうにして把握するんですか。事業所得というのは、収入から必要経費を落とした後の 概念でございますね。
    神野委員
    今、所得比例にするような、本人の保険料に応じた確定拠出型にすればという前提の話をしておりまして、申しわ けありません。今の制度ではなくて、確定拠出型の賦課方式みたいなスウェーデンとかイタリアみたいな形でやっている方式に すれば事業所得の捕捉は容易になるだろうと。その場合にはどんどん必要経費を増やしてやっていってもらって別に構わない わけです。
    榮畑課長
    年金が小さくなるからですね。
    神野委員
    そうです。今の制度でいくと、日本の場合には大体国民年金は同じ額なものですから、それは脱税のインセンティ ブが働いてしまいますけれども、そうじゃなくしておけば、幾らでも必要経費を上乗せしてもらって構いません。その代わり年金 はありませんよというふうにしておけば出てくるということです。
    高山委員
    スウェーデンは、もともと所得捕捉についてかなりうまくいっているヨーロッパで例外的な国ですよね。イタリアは私 と神野さんは多分評価が違っていて、あの制度を導入してもイタリアはまだうまくいっていないという。
    大澤会長
    どうもありがとうございました。やや時間前ではございますが、厚生労働省からのヒアリングは以上とさせていた だきます。
     榮畑さん、お忙しい中どうもありがとうございました。
     (榮畑課長、退席)
    大澤会長
    では、続きまして、財務省から配偶者控除、配偶者特別控除などについて御説明をお願いしたいと存じます。財 務省からは、主税局の税制第1課の山崎さんにおいでいただいております。山崎さんお忙しい中どうもありがとうございます。よ ろしくお願いいたします。
    山崎課長補佐(財務省主税局税制第一課)
    財務省主税局の山崎と申します。座って御説明させていただきます。
     資料は、資料3を用意しております。
     財務省といたしましては、男女共同参画社会の実現というのは我が国社会の在り方を決定する重要な課題の1つであると認 識しておりまして、税制面においてもこのような動きを踏まえながら、就業とか婚姻とかそういう個人のライフスタイルの選択に 対する効率性、中立性を損なうことのないよう、絶えずその在り方を検証していく必要があると考えています。
     本日は男女共同参画法の視点から議論されている税制についての各種論点があると思いますけれども、事務局の方から依 頼のありました配偶者控除、配偶者特別控除についてを中心に御説明させていただきたいと思います。
     資料は、前回、神野委員が御説明なさった点と重複する部分もかなりあるかと思いますけれども、御容赦願いたいと思いま す。
     資料をまず開けていただきまして、1ページ目からなんですけれども、いきなり控除の話に入る前に、我が国の所得税の計算 の仕組みを若干触れさせていただきます。
     給与所得者の場合ですけれども、事業所得者も基本的には同じでございますので、見ていただきますと、収入から必要経費 分としての給与所得控除を引きまして、それから各種の人的控除、それから所得控除を控除しまして、それに累進税率を掛け るという仕組みになっております。ここで問題になってくるのは、左から3番目の所得控除の部分と税率の掛け方ということでご ざいます。
     日本の場合は諸外国と比べまして、給与所得控除、所得控除といった部分がかなり大きくて課税ベースが相当抜け落ちてい るのではないかという指摘、それから諸外国と同様に累進税率のカーブというのが類似の税制改正によって相当緩和されてい るというような状況にございます。
     こういう仕組みを適用する上での課税単位の問題でございますけれども、納税者の世帯のうちで配偶者や扶養親族も所得を 稼いでいるというような場合に、課税対象となる所得を個人ごとにとらえるのか、世帯全体でとらえるのかということが課税単位 としていろいろ利用されておりますけれども、2ページ目をおめくりいただきまして、誰が所得をとらえるのかというところで、大ま かに2つに分かれるということで、所得を稼ぐ人それぞれに着目して課税するのを個人単位課税として、一番上に書いてありま すけれども、日本とかイギリスといったような問題。それから夫婦とか世帯といった世帯全体でとらえるものを世帯単位課税と 言っております。世帯単位課税はその中でさらに分かれまして、世帯全体でとらえた所得を分割するのか分割しないのかと。分 割する方法も均等に割るのか、それともフランスでやっておりますように、若干ウエートをつけて割っていくのかといったような仕 組みそれぞれでございます。
     我が国の所得税は一番上に書いてありますように、所得を稼ぐ人を課税単位として稼得者ごとに税率表を適用する、税率表 は1本ということになっております。そういう意味では個人単位課税と整理されるべきものかなと思います。これは個人が一定の 所得を稼ぐ場合に、通常その所得というのは個人に帰属するものということで、所得が帰属する個人ごとに税負担を求めるとい うのが合理的であり適当ではないかという考え方に基づいております。
     2ページというのは、g5だけでございますけれども、3ページ目をおめくりいただきますと、oecd30か国の課税単位について 総分類分けしております。一番左にあります個人単位をとっている国が30か国中26か国ございまして、どっちが主流かというと 個人単位が世帯の主流になっていると。ただ、例えばドイツとかアメリカみたいに個人単位と世帯単位の選択みたいになってい る国もございます。
     それから4ページ目でございますけれども、これは課税単位についての各国の沿革ということでございます。我が国は、初め 所得税ができたときには世帯単位であり、合算で非分割というようなやり方をとっておりましたけれども、1950年(昭和25年)の シャウプ税制以来個人単位主義を採用しております。
     諸外国を見ていただきますと、アメリカなんかは個人単位と世帯単位、これは州によって財産制度が異なっているというような 背景もあるということですけれども、2つになっている。それからイギリスは、かつては夫婦単位で合算非分割ということでやって おりましたけれども、1990年から個人単位主義に移行しております。その辺が目立つところかなと思います。
     それで、個人単位を適用すべきなのか、2分2乗方式などの世帯単位を採用すべきなのかという議論というのは昔からありま すけれども、世帯単位課税を採用した場合には、独身者世帯に比べて夫婦者世帯の方が相対的に有利になってしまう。それ から片稼ぎ世帯と共稼ぎ世帯を比べると片稼ぎの方が現行と比べて相当有利になるといったような問題があります。これは先 ほど御説明しました所得税の仕組みの中で税率表のところで累進税率を適用しているということから生ずるものでございます。
     さらに我が国の場合は、給与所得控除という控除率が低減する仕組みがございまして、割って所得を小さくすればするほど、 その控除率が大きくきいてくるといったような仕組みになっておりますので、例えば2分2乗みたいに世帯単位で分割というよう な課税をすれば、夫婦者世帯また片稼ぎ世帯が大幅に有利になってしまうといったような問題がございます。他方、個人単位 課税というのは婚姻とか配偶者の就業に対しては、相対的には夫婦単位課税に比べれば中立であるということで、我が国は 1950年以降、個人単位課税を採用することが適当であるというふうに思っておりますし、政府税調の方でもそういう方向でやっ ております。ただ、個人単位、世帯単位という課税単位にかかわらず、配偶者とか扶養親族といった世帯構成に応じて各種の 所得控除が設けられているようになっております。これは諸外国もこのような仕組みをとっているところがあります。
     本題の配偶者に係る控除について御説明いたしますけれども、もう1ページ開けていただきまして、人的控除というのがたくさ んあります。特に基礎的な人的控除と特別な人的控除というふうに分けておりますけれども、我が国の場合は課税単位として は個人単位を採用しつつ、この配偶者とか扶養親族といったようなものについて控除を設けております。これは所得がないとか 所得が少ないといった扶養親族または配偶者を有している場合には、独身と比べて労働者自身の担税力が少ないのではない かという点に着目して、それを斟酌する趣旨で設けているものでございます。
     次のページに配偶者控除と配偶者特別控除の沿革を書かせていただきました。まず配偶者控除につきましては、かつては扶 養親族の中の1人目ということで扶養控除が適用されておったんですけれども、昭和36年に、当時の資料を見ますと、夫婦は 相互扶助の関係にあり、一方的に扶養している親族とは異なる事情があるのではないかということで、控除額を本人と同じ金 額ということで、扶養控除とは独立した控除ということで配偶者控除を新たに創設した。以来、控除水準というものは本人の基 礎控除と同額の水準で推移してきております。
     それから配偶者特別控除は右側の欄ですけれども、昭和62年、63年に所得税の抜本的な税制改正をしたわけですけれど も、そのときに納税者本人の所得を稼ぐことに対して配偶者が貢献している、それに配慮すべきではないかということと、あと配 偶者控除について控除の対象となる配偶者に所得要求が付されているということで、パートなどで働いて配偶者の所得が一定 額を超えると配偶者控除が摘要されなくなってしまうということで、税引後の手取額が世帯全体で減少するといったような、手取 りの逆転現象みたいなものへの対応の観点。それから消費税が入るということで、全体的に所得税の負担を低くしなければい けないといったような話もありまして創設されたものでございます。
     次のページを開けていただきますと、具体的にその税引後の手取りの緩和の仕組みというものをしておりますけれども、下に 白いところ、配偶者控除38万円というのは、かまぼこみたいに乗っかっていますけれども、この表は下が配偶者の所得、給与 所得でございまして、縦軸は納税者本人が受ける控除の額ということにしています。配偶者は、給与収入65万円までは給与所 得控除の最低保障額ということがありますので、基本的には所得はゼロです。それから103 万円までは基本的には配偶者控 除の所得要件である所得38万円以内ということで配偶者とか本人の方にその配偶者控除が適用されるわけですけれども、103 万円を超えてきますと所得要件に合致しないということで配偶者控除がゼロになってしまう。それで世帯全体として1万円増え ただけで控除額38万円がなくなってしまうというような状況がかつてあったわけです。
     これについて手取りの逆転を防ぐためになだらかな控除の形にするということで、配偶者特別控除を上乗せという形ですけれ ども、上の方に5万円刻みでなだらかに控除額が減少して103 万円、要するに配偶者控除がなくなる瞬間のところでもう一度 38万円が復活するような複雑な仕組みになっておりますけれども、この配偶者特別控除と配偶者控除全体で台形の形の控除 というものをつくっております。
     これによりまして、次の8ページですけれども、グラフにしておりますが、これは世帯全体の手取額みたいな税負担額というも のをあらわしておりますけれども、もし配偶者特別控除がない場合、この103 万円のところで税負担が急激に上昇するというこ とで、ここに逆転が生じておったわけですけれども、これを配偶者特別控除を入れることによって、この実線のようななだらかな 税負担のカーブにするということになっております。このような仕組みによりまして、かつての配偶者控除が、配偶者特別控除 がなかった場合の逆転
     現象の問題というものは、少なくとも税制上は解消されたというふうに考えております。
     ただ、次のページにありますように、依然としてパートの収入をめぐって手取り逆転現象を理由とするパート等労働者の労働調 整が指摘されているというのは承知しております。
     これは平成7年に労働省で行われた「パートタイム労働者相互実態調査」ですけれども、よく103 万円の問題で引き合いに出 されていますデータですけれども、全体として労働調整を行うという人が4割ぐらいいる中で、何を理由に労働調整を行なってい るのかといったようなアンケートに対しまして、「税制上の控除が大きいんだ」という人が81%いるということになっております。し かしながら、現実には先ほど説明しましたように、お金という意味では税制上の手取りの逆転というのは生じていないというふう に認識しております。これは一定の収入水準になりますと社会保険制度、先ほどの年金とかそういう話で被扶養者にならなく なったり、または企業の方の給与ということで、配偶者手当とか扶養手当というのを出していると思いますけれども、これの所得 制限を税制の切れ目のところに合わせているといったようなものに密接にかかわってくるということに留意する必要があると考え ております。確かにアンケート上は、「税制上の控除」という人が81%いるということですけれども、実際はその制度の誤解によ るものではないのかなというふうに考えております。
     10ページですけれども、それは今言いました一番左側がその所得税法、地方税もそうですけれども、控除対象配偶者、所得 水準でございます。右側の3つは健康保険法上の被扶養者とか国民年金法上の第3号被保険者ということで、扶養者に当たる かどうかの分かれ目のところでございまして、一番右側が給与ということで代表的に国家公務員の扶養手当の基準を書いてお ります。現実にはここの分かれ目のところで例えば保険料が生じたり、保険料の掛金が生じたり、それから手当がなくなったり といったようなことの方が大きいのではないかと思っております。
     次のページは、今年、経済産業省の「男女共同参画に関する研究会」が税金と配偶者手当、給与の方の配偶者手当、それ から保険料というのを合成させた世帯全体の手取額というものを発表したものでございます。ここの研究会の報告書では小さい 字で書いてありますけれども、配偶者控除、配偶者特別控除は段階的な調整がなされているため壁になっていないという評価 をいただいております。
     次の12ページは、男女共同参画社会の形成の状況に関する年次報告ということで、6月に内閣府が出した報告ですけれど も、ここでも先ほどの平成7年のデータで聞いておられまして、税金とか社会保障、配偶者手当を考慮して収入調整を行ってい る者が未だに少なくないということで、そういう仕組みがそのパートタイム労働者の評価に影響を与えていると。ただ下に4行 で、税制上の手取りの逆転現象が解消されているのではないかということです。
     それから13ページですけれども、これは先ほどグラフで御紹介いたしました経済産業省の「男女共同参画に関する研究会」で すけれども、ここで103 万円とか130 万円の壁という問題を取り上げておりまして、次のページに「税制は就労に関して中立的」 と、これはいわば思い込みというふうに書いてありますけれども、私どもそこまで言いませんけれども、こういう研究成果を発表し ている調査会もあるということでございます。
     15ページは、これは今年の連休を挟んで毎日新聞に出た読者の欄のところの切り張りでございます。下の方が4月に会社員 の方が出しておりますけれども、税制がパート収入増加を阻んでいるのではないかという投稿がございました。これに対して、 上の方の投稿ですけれども、これは会社の経理をやっている方がそれに対する反論をしているということで、そういう意味で制 度の誤解というものも徐々になくなってきている面があるのかなというふうに考えております。
     ただ、今の手取り逆転の問題はそういうことでございますけれども、配偶者に係る控除について別の観点から問題があるので はないかということでございまして、近年、配偶者に係る控除について女性の社会進出は男女共同参画社会の進展などを踏ま えて就労に対する税の中立性から、その性格、在り方の見直しが必要ではないかという意見が高まってきていると。これは昨 年の7月に税制調査会の方で3年に1回出しております中期答申というものですけれども、そこでも若干指摘されておりまして、 1ページ開けた17ページに下線を引いてありますけれども、配偶者控除、配偶者特別控除について、そういう女性の社会進出、 男女共同参画社会の進展などを踏まえて見直しが必要であるという意見が高まってきているという指摘をいただいております。
     ちょっと読ませていただきますと、その次の段階ですけれども、「基礎的な人的控除が世帯構成員の数などに応じて納税者の 担税力を調整するための仕組みであることを踏まえると、配偶者を有する納税者への配慮として配偶者控除と配偶者特別控除 の2つの控除の適用を認めていることは、納税者本人や扶養親族に係る配慮と比較してかなり大きいものとなっています。」こ れは要するに基礎控除は38万ですけれども、配偶者控除と配偶者特別控除をフル適用すれば76万の控除があると。これは世 帯構成員の数に応じた負担能力の調整の仕組みという点から見ていかがなものかという指摘でございます。
     それから、「また、就業している配偶者であっても、所得が一定額以下であれば、自らは基礎控除の適用を受けて課税関係が 生じない一方で、その者の配偶者である納税者本人は、その課税所得金額の計算上、配偶者控除等の適用を受けており、そ の意味でいわば二重の人的控除を享受する結果となっています。」ということで、パート労働者の場合などは、配偶者の方で給 与所得控除と基礎控除を適用しつつ、本人の方では配偶者控除を適用していると。要するに基礎控除部分が二重になっている のではないかといったような指摘がございます。
     ただ、一方で、その後ろにも「なお」というところがありますけれども、「配偶者控除等は現実的には多数の世帯に適用され、 定着していることなどからも、慎重な検討を要するのではないか」ということ、それからまた、我が国の個人所得課税の課税最 低限の1つであるということで、要するに、これを見直すということは、課税最低減額が動いてくる。増税になったり減税になった りするといったような点についても留意しつつやるべきではないかといったような御意見もございます。
     主要国を見ましても、税制上、配偶者に対して何らかの配慮をする制度というものが設けられておりますので、きりゼロにして しまうというのもなかなか難しいという指摘でございます。
     また、例えば配偶者特別控除、先ほどの指摘からいうと2つの控除の適用を認めるのはおかしいということであると、単純に いえば配偶者特別控除をなくしてしまえばいいかということになりますが、それについては、また昔のパート問題というのが再燃 してしまうのではないかというようなことにも留意する必要があるのではないかということでございます。
     資料としましては、19ページ、課税最低限の状況ということで書いておりますけれども、我が国の所得税の課税ベースを決め る1つの要素として課税最低限というのがありますけれども、その中に、これはいろいろな所得控除の積み重ねでございます が、配偶者控除、配偶者特別控除といったようなものがこの中に入ってきていると。これを削るということは、要するにそれだけ 全体の税負担というのは上がるということでございます。
     我が国の個人所得課税というのは累次にわたる控除の拡充とか税率控除の緩和ということで、税負担額としては諸外国に比 べて最も低い水準となっていると。特に中低所得者の税負担は小さいものになっているという状況になっております。
     その次のページで、課税最低限の国際比較とか、さらに税負担の国際比較を設けておりますが、そういう状況になっておりま す。個人所得課税については、本来は経済社会の構造変化などに応じて基幹税として国の歳入を賄うための税金として十分 なものかどうか。また、課税ベースとしての所得のとらえ方にも留意しつつ、抜本的に見直す必要がある今の状況からすれば、 そういう状況であると思っております。その中で配偶者に係る控除につきましても、最初の指摘にありますように、女性の社会 進出とか男女共同参画社会の進展などを踏まえつつ、また税負担能力の源泉を調整するといった、所得控除のそもそもの趣 旨といったようなもの、それからあと、その他のいろいろな基礎的な人的控除とのバランスをどう考えるかといったようなものと か、あと制度自体が簡明なものとなっているのかどうかといったような点から検討を加える必要があると思っております。
     ただ、この問題については直接税負担ということに直結してくる問題であって、その見直しについては様々な議論があるという ことで、国民的な議論で検討されるべき問題ではないかというふうに思っております。
     最後になりますけれども、少子高齢化とか、社会経済情勢が急速に変化する中にあって、性別にとらわれることなく、その個 性と能力を十分発揮できるといったような男女共同参画社会の実現というものは政府の最重要課題の1つであると財務省も 思っておりまして、今後とも女性の経済的・社会的自立というものを阻害しないように、税制を考える際にも適切に対処してまい りたいと思っております。
     以上が説明でございます。
    大澤会長
    どうもありがとうございました。ただいまの御説明について御質問や御意見
     をお願いしたいと思います。25分程度時間があろうかと存じます。
    木村委員
    私は2つのコメントと、あと1つは財務省としての御意見はまだないと思いますので、御自分の意見を教えていた だきたいというのが3つ目のことです。
     一番初めのコメントは、配っていただきました14ページに、それで思い込みによるものであることがわかるとあるんですが、私 の方の学生が昨年ぐらいにした調査によりますと、企業が実態として103 万円のところで厚生年金に入るか入らないかというの をしているところもあるんです。税制の責任という意味ではなくて、単なる思い込みの部分もあるかもしれないけれども、それに プラスして企業が、本来ならば4分の3というところでパートのところを切らなければいけないんだけれども、実態として103 万円 のところで簡便的にやってしまっているというところも見受けられたというので、単なる思い込みというのは、ちょっと強過ぎるか なと思っております。
     それから2番目のコメントは、配偶者特別控除とか配偶者控除というのは、本人の基礎控除もあるんだから厚遇し過ぎると思 います。もし所得の低い人をどうするかというような問題になってきたときには、カナダがやっているように、そのときには本人の 基礎控除を夫の方、働いている配偶者の方に使ってもいいというふうな制度を設けてもいいのではないかと思っています。
     それから第3番目の点ですけれども、先ほど高山委員もおっしゃったんですが、税とか社会保障というのは、ある意味で個人 の意思決定に中立的でないということはあり得ないと思うんです。どのようにすれば超過負担的な影響が全体から見て小さくで きるか、あるいは社会の望む方向に対してマイナスの影響を与えないでおけるかということだと思うんですが、1つは課税最低 限を低めるということも選択肢としてあると思います。
     今から申し上げることについて個人的な見解を伺いたいんですけれども、例えば、給与所得控除と基礎控除を低めてしまっ て、あと税収中立的にするために、税率を低めるというような選択肢は将来的にあり得ると思われますか。
    山崎課長補佐
    個人的な意見ということですけれども、なかなか立場上難しいので。課税最低限については、財務省として は政府税調でも基本的に国際的に見て非常に高いと言っている。高いと言っていることはどういうことかというと、低くすべきだ ということを裏から言えば言っていることなんですけれども、ただ、そのときにどこに着目してやるのか。課税最低限といっても課 税最低限という1個の控除があるわけではなくて、いろんな控除の積み重ねになりますので、そういう意味では、確かに給与所 得控除というのは理屈の上でも水準の上でも非常に大きいというふうに思っております。ただ、我が国の場合、課税最低限とい う以上に給与所得控除が定率控除で青天井になっておりますので、税負担面で言えば、課税最低限としては、例えばドイツと 日本は大体似たようなものなんですけれども、それ以上に収入が上がってきた場合に、日本の方はどんどんそれに応じて給与 所得控除がひけてきますけれども、ドイツの方は、まだ若干違う仕組みになっているということで、特に課税最低限の面から言 えば、給与所得控除というのは非常に問題が大きいのではないかと思っております。なかなかそれは外向けには言いづらいん ですけれども、給与所得控除の問題については、政府税調の中期答申でも、もともと給与所得控除というのは何なのかというこ とで、必要経費の概算控除部分と他の所得との負担調整ということで今整理されているんですけれども、他の所得との負担調 整というのは何なのかといったところ、必要経費の概算控除としては水準としては非常に高過ぎる。それを埋めているのは他の 所得との負担調整ということですけれども、果たしてそれが今の経済実態に合っているのかというようなものも疑問としてあると 思います。ですから、将来的にも給与所得控除は見直しの対象になるとは思いますけれども、いかんせん、今の状況で増税と いうのもなかなか財務省としては言いづらいところであります。
     一方、そういう意味では課税最低限というのは広く、薄く、所得税という税金を通じて、国の財政を支えるという意味では、課 税最低限はできるだけ低いことは望ましいというのは確かだと思います。個人的見解と言うとあれですけれども、課税最低限は 何らかの形で、一番候補になるのは恐らく給与所得控除だろうというふうに思っています。
     一方、税収中立の意味から税率を引き下げるという点についてはちょっと違っていまして、今、財務省の理解としましては、所 得税というのは、本来あるべき姿、国際的な負担率から比べると非常に低い。税金を通じて財政を支えるには不十分であるの ではないかと思っています。ですから、本来は税収中立ということではなくて、税収中立という形というのはなかなか考えづらい ということです。
     あともう1つは、所得税というのは消費税ではございませんので、垂直的公平の観点とか、経済の自動安定化機能の観点と かというような役割も持っていますので、累進を全くフラットにするというのはなかなか難しい。ある程度の所得再分配機能がな いと、所得税としての役割というものがありますので、税率のフラット化というのも自ずと限界があると思いますし、現在、所得税 の10、20、30、 37という税率構造は、諸外国と見てもそれほど遜色ないというよりも、非常に低い税率構造になっておりますの で、これ以上フラット化するのはいかがなものかというのが財務省の方の見解でございます。そうすると、そのまま増税というこ とで、身も蓋もないことになってしまいますので、余り公式見解としてはなかなか言えないんですけれども。
    坂橘木委員
    私はその点に非常に関心があって、増税を言うよりも、こんなに所得税は低い負担なのに、何で重税感が強いん だということを、みんなが何で文句を言うということを勉強された方が大事だと思います。税金をとられていないのに、何で日本 人はこんなに重税感の不満を言っているのかというのを積極的に財務省が展開されれば、国民も納得するような気がしますけ れども、どうでしょうか。
    山崎課長補佐
    税制面だけではないと思いますけれども、例えば税制でも資産に対する課税とか、最近の話題で言えば株 式の譲渡非課税というものが、そのほかの税金と比べて非常に不公平じゃないかといったような問題、それと租税特別措置と いうのがありますけれども、そういった問題が不公平感というのがあって重税感につながっている部分があると思いますので、 そこは一つ一つ地道な作業でございます。
    坂橘木委員
    それともう1つは、支出側にむらがあるという認識が国民の間にあって、それを払拭することも大事ですね。
    山崎課長補佐
    政府税調の中期答申で、今、税金は不十分で見直さなければいけないと言いつつも、歳出の方の徹底した 合理化がないと負担増を国民に納得していただくわけにはいかないというような言い方もされていますし、財務省もまさにその とおりだと思っております。単純増税は、現実的にも私たちも立てられないと思っています。
    福原委員
    もし今のお話でやっていくと、再び法人所得税との乖離が生じて、個人所得を法人の方にみなし法人みたいな形 に移行するということが出てくるのではないですか。
    山崎課長補佐
    例えば最高税率なんかの話だとそういうことになり得ます。中期答申等にありますように、今は国と地方を合 わせて50%ということですけれども、これよりも上げるというのは、これからは選択としては難しいと思います。ただし、今以上に フラット化するというのもどうなのかと思います。
    神野委員
    私、前に発表させていただいたときに申し上げたんですけれども、割と課税の公平性をきちっと貫かないために、 かえってジェンダーバイアスみたいなものが起こり兼ねないような制度になっているのではないかというのが今の制度の対する 僕の考え方なんです。個人単位だけれども、これは財務省の責任というわけではなくて、控除による家族配慮が大き過ぎるほ ど使っているということは間違いないわけです。それは課税の公平性を割と崩すような形で入ってきているということが多いわけ です。例えば、特定扶養親族に対する控除なども中間層に対する租税負担が非常にあったということから入ってきたりしていま すけれども、それは逆に資産の取得をきちっとやっていないというようなことと絡んでいますから、総合的な意味で絡むんだけれ ども、全体として見ると、国際比較してみると、家族的な控除というのは非常に大き過ぎるという印象なんですが、それはいか がでしょうかということと、先ほど特別配偶者控除などを、それはパート問題と絡みますけれども、これはちょっと無理だというふ うにおっしゃったのはパート問題がまだ生じてしまう。
    山崎課長補佐
    単純にやめれば。
    神野委員
    ということなんだけれども、その場合でもパート問題に対応したり、様々な政策に対応するのに、日本は控除を使 い過ぎるんですよね。で、ぐしゃぐしゃになってしまうという印象なんですよね。ほかの国でパート問題で控除をやったということ はあるかしらというのを、この消失控除も、これで入っているわけではない。どこの国のを真似たのでしょうか。
    山崎課長補佐
    少なくともg5では、こういう形の控除にはなっていないはずです。
    神野委員
    ないですよね。だから、消失控除を入れたというのはかなり制度的に画期的だけれども、余りそういう対応ないで すよね。
    山崎課長補佐
    制度全体としては複雑になっているのは確かだと思います。
    神野委員
    ほかの国でもそういう対応をしていないですよね。それはしょうがないけれども。
    山崎課長補佐
    もともと、例えば扶養控除にも同じ問題は生じ得るわけですね。いい年した息子が、ちょっと働いたところで、 あとは控除対象から外れてしまうというような問題は起こり得るんですけれども、そっちの方は余り問題にならないわけです。表 面化しないわけですね。62、63年の議論のときには、まさに税制によって壁ができているんだという話がありまして、私どもとし ては、本当にそうなのかなというのがありますけれども、確かにグラフで比べてみると、こういう状況になっているということに対 して何らかの対応をしなければいけない声といいますか、それに対応して、本来は簡素な税制という意味からはちょっとどうな のかなという話ではありますけれども、対応しているもので、確かに諸外国でそういう仕組みをとっていないというのは、諸外国 にも多分こういうことは起こり得るんだと思いますけれども、そこはどうなのかなという点です。
    神野委員
    配偶者控除で落ちてしまうでしょう。それはさっき言ったようにかなりニュートラルじゃないですよね。家族の中で別 に配偶者だけじゃないから、働きに出るのもあって。
    山崎課長補佐
    配偶者の控除をとっているところは、所得要件というのがあるので。
    神野委員
    家族全体の所得に対応するのに配偶者控除でいくというのはないでしょう。
     つまり、ほかの人だって働きにいくんだから、その場合でも壁があるはずですよね。
    山崎課長補佐
    そうですね。それはあるはずなのに、それは壁になっていないと。もっと言えば、本人も課税最低限380 万で あれば本来そこに壁があるはずなのに、それがなっていないと。なぜ配偶者だけに壁になっているのかというところで、それは 本当に税制の問題なのかどうなのかということだと思います。
     控除を使い過ぎているという話はおっしゃるとおりでございまして、複数に税率を使うというのはできませんので、結局課税 ベースでいろいろやってしまうというところで、確かに控除が多いというのは御指摘のとおりで、政府税調等からでも簡素合理化 というような御指摘というのは受けております。それも、基礎的な人的控除だけでも種類があって、配偶者控除、配偶者特別控 除もそうですけれども、扶養控除も、先生がおっしゃったように特定扶養控除とか老人の扶養控除の割増とかいろいろあって、 そういうところに若干政策税制の顔が出てきている。ただし、それをなくしていくというのが基本なんですけれども、平成11年に 扶養控除の年少部分について、38万円を10万円上げまして48万円にしたことがありまして、それは消費者対策だというような 政治の話もあって入れたわけですけれども、それは控除でやるよりも、本来は歳出で重点にやるべきではないかという話が平 成12年度改正のときにありまして、10万円をもう一度また戻したわけです。本来の形に戻したんですけれども、やはり国会とか では相当増税ではないかという御批判はあったので、本当はきれいな形で、例えば一人頭38万なら38万ですぱっといくのが一 番きれいなんですけれども、1回つくってしまうとなかなか難しいということがあります。そこは主税局が頑張りきれないからだと いうとそうかもしれません。ほかにも、株にも控除を入れてみたいとか、いろんなところにいろんな控除があります。できるだけ、 そういう新規な控除というのは入れないようにということで頑張っているんですけれども、なかなかできないということでございま す。
    神野委員
    前提としてみると、ちゃんと個人単位になっているのに、女性を家庭の中に閉じ込めるような税制になっているの ではないかと思われてしまう原因というのは、いろんな政策的な意図を込めた本来の所得税の原則からいうと、最低生活費免 税というのは理念を超えた人的控除になってしまっているわけですよね。
    山崎課長補佐
    そこがいろんな配慮はしておりますけれども、例えば段階的な控除にすることによって、少なくとも働けば働く ほど手取りは増えるような形にはなっているはずなんですね。だから、それをもって税制が女性を家庭に閉じ込めているのかど うかというのは必ずしも言えるのかどうかと思います。
    木村委員
    103 万円というのが高過ぎるのも税制ですよね。
    山崎課長補佐
    103 万円というのは、要するに給与所得控除の65万円というのがあるというのが一番大きいと思うんですけ れども。
    木村委員
    だから、消失控除になっているからといって、税制の責任ではないというのはちょっと逃れ過ぎではないのでしょう か。
    山崎課長補佐
    ただ、ここで、例えば先ほど木村先生からありました14ページのところの思い込みというのは、これはほかの 調査会のところを引用させてもらっていますけれども、前のところに、非課税限度額を超えると申告して追加的に税金を納めな ければならなくなることとか、税制上、控除かなくなることというのは、確かにそうですけれども、それによって税負担が逆に増え てしまうというようなことはないので、そこは思い込みではないですか。
    木村委員
    税制というのはもっと給与所得控除とか全部込めて考えますと、かなり・・・。
    山崎課長補佐
    そのときに、103 万円のところの壁があるにしても、普通の人はないわけですね。私なんかも課税最低限 で、子ども2人と妻とあるわけですけれども、そこのところで別に仕事をやめるかというとやめないわけですね。だから、そこは税 制なのかどうなのかということで、仮に税制の区切りのところ、いろんなところで利用されているのではないかという問題。それ は税制を動かしたところで、それは直るのかどうかというのはあると思うんです。
    神野委員
    配偶者控除とか、配偶者に対する控除全体として、それから扶養者に対する控除、これが基礎控除を超えてし まっている国はないですよね。日本だけだよね。
    山崎課長補佐
    子どもに対する控除は、アメリカの場合は一人頭幾らの人的控除になっているんでけれども、それとは別に、 小さい子どもについては税額控除を上に乗せていたりとかしていますので、全くないとは思いませんけれども、日本みたいに配 偶者控除に関して倍になっているというのはないかもしれません。そこは税調の方の指摘でもありますように、高過ぎるのでは ないかといったような問題意識というのは持っております。課税最低限は税負担全体に響くので、そこだけとらえてピンポイント で直すというのはなかなか難しいというのは御理解いただきたいと思うんです。
    大澤会長
    福原委員が民法との関係で御質問されまして、それはこちらのセッションに回してはというふうに申し上げました が、その点いかがでしょうか。
    福原委員
    相続税の問題になってくるので、今、所得税の話だけでしたから。これは次の機会ですね。そこで結局はアンペイ ドに対する報酬というのは一体どうなのかということを、コンセプトをつくらないといけないのではないかという気がいたします。
    大澤会長
    では、大沢委員。
    大沢委員
    おっしゃる意図がだんだんわかってきて、こういった配偶者控除、配偶者特別控除があるから壁ができているわけ ではないというのは計算してみるとそのとおりだと思うんですが、1つの制度だけで論じてしまっていい問題ではなくて、例えば 103 万円のところで家族手当の支給が打ち切られるという問題は、税務署ではないですが、企業で払われる賃金そのものに世 帯の生活を保障するような考え方というのがあるし、それから、130 万円のところで第3号被保険者の問題がありまして、130 万円を超えるとまた負担が増えるということで、その100 万円から130 万の間でかなり控除がいろいろと出てくるんですね。
     私たちが経済産業省で研究会をやったときも、この制度がいけないというようなことではなくて、むしろ全体として103 万円あ たりで収入調整をするのが一番いいというコンセンサスのようなものができていて、主婦の人たちもそれを前提にライフススタイ ルができていて、それから企業側も、103 万円で多くの企業が雇うときに、労働者側に選んでもらっているんですね。103 万円 未満で働きますかどうしますかと。これが自発的な調整になっているのかどうかわからないんですが、そういった形で103 万円 から130 万円にかけては、ここら辺の収入調整をすることを前提に今まで女性の働き方が規定されてきたことは事実だと思うん です。
     それと、もう1つの問題というのは、パート賃金がなぜここまで低いのかということで、よく国際会議などで日本の女性の賃金 カーブ、所得分布を見ますと、100 万ぐらいに1つ山があって、180 万に山があるんですね。ちょうど収入調整するか、それを超 えて働くとすると、保育所の費用ですとか、通勤費とか、通勤にかかる時間コストというようなことを考えてみると、130 万を超え るとそれがペイするだろうなと。そこら辺でちょうど山になっているということで、制度が働き方を規定しているということが実際に あるということは実証研究で確かめられているということを財務省でも事実として認識していただきたいと思います。
     大きな問題は、なぜパート賃金が低いのかということで、やはり同じ仕事をしても、パートとして働くか、正社員として働くかと いうことで賃金が全然違うんです。約2割は低い、もしかしたらもっと低いかもしれない。それから手当も低いという問題があっ て、これは税制の問題を超えて、例えば、法律体系そのものが正社員のみを対象とした法律体系をつくって労使関係の問題で もあると思います。ですから、経営者側からしてみると、非正社員を雇った方が得な仕組みというのをこの制度がつくっている。 だから、女性が収入調整することが問題だという認識が今は高まっていますが、私はむしろそういう制度によって経営者側も同 じ仕事をしてもらうのだったら、派遣労働者やパート労働者を使った方が得だというような仕組みになっていることが、今の日本 の経済の正社員の比率を低めるような傾向になってきていて、結果として正社員も不満だし、非正社員も不満だという両極端 の問題が出てきているんですね。だから、そこの問題を解決しないと、パートに課税してもいいと思うんですが、それなりの賃金 をもらえば税収も増えると思うんです。パートにそれによって年金の保障ができるならば、年金がもっと増えるというような老後の 保障があれば払っても構わないというふうに言うんだと思うんですが、そこら辺がないままに、例えば、こういった制度を全部変 えていくと、結構つらいところで収入調整している共働き世帯に負担がいくということになって今のデフレ経済の中で、それが果 たして可能なのかどうかというのがちょっとよくわからないんですね。考えるときに、そこまで含めて制度を変えるということを今し ていかないといけないのではないか。
     話がいろいろと飛躍しましたが、そこら辺について、財務省では、今の経済ですとか、パート労働者が置かれた現状というのを どういうふうに認識されているのか教えていただければ幸いです。
    山崎課長補佐
    難しい問題ですけれども、1つこの問題で難しいのは、103 万というものを分解すると、資料で言えば19ペー ジ。これは103 万とそのまま書いてありませんけれども、ここでいえば、一番下の独身の給与所得者の課税最低限114 万 4,000 円とありますけれども、103 万円は、要するに給与所得控除と基礎控除、この合計なわけです。これはパートの人だけに かかるものではなくて、全員、要するに今の日本の社会であれば、基本的にほとんどの人がサラリーマンですから、サラリーマ ンであって、納税者であれば給与所得控除も基礎控除も両方かかっているわけです。103 万というのが今のほかの手当とかあ あいうものとちょうどその辺になっているということで、そこで当たらないようにするということだと、この2つをどっちか見直さなけ ればいけないということになるんですけれども、パートだけでは給与所得控除をしないのかとか、基礎控除は関係ないのかと いったようなことにもならない。出口がない難しいところではあるんです。
     ただ、給与所得控除の65万円というのは最低保障なんですけれども、これがどうなのかという問題はあって、要するに65万円 までは経費100 %と見ているというのと一緒なんですけれども、それが本来の必要経費の考え方からしてどうなのかといったよ うな問題があると思います。これは非常に難しいところなんですね。財務省でできるとすれば、逆の話なんですが、パート減税し てくれとかいうようなことについて、いやいや、そうじゃないですよという話をしている。あといろんな新規の控除をどんどんつくれ というような要望に対して、弱者に中立という観点からは、そんなに政策的にいろいろ控除を増やすわけにはいきませんよという ようなことで対応しているということになってしまうんですけれども、全然答えになってないんですけれども、税制で何かということ だと、ちょうど給与所得控除、基礎控除という全く基本中の基本の部分にかかる部分なので、解決するのは難しい。
    大澤会長
    議論は尽きないのでございますが、ヒアリングは以上とさせていただきたいと思います。大変お忙しい中御出席あ りがとうございました。
     (山崎課長補佐 退席)
    大澤会長
    最後に、事務局からの連絡事項がございましたらお願いいたします。
    浜田参事官
    第6回の会合は、11月29日木曜日16時から18時です。
     それから、第3回の議事録を資料4ということでお配りしておりますが、これは皆様の御意見に沿って修正したものでございま すので、この後オープンにさせていただきたいと思います。それから、第4回の議事録の案について1週間ほどで御意見をいた だければありがたいと思います。それで、次の第6回のときに第4回の議事録を出して、その後オープンということにしたいと思 います。
     以上よろしくお願いいたします。
    大澤会長
    それでは、以上をもちまして、影響調査専門調査会の第5回会合を終わります。本日はどうもありがとうございま した。

(以上)