- 日時: 平成14年7月17日(水) 9:30~12:30
- 場所: 内閣府3階特別会議室
- 出席者
- 会長
- 島野 穹子 つくば国際大学教授
- 会長代理
- 原 ひろ子 放送大学教授
- 委員
- 大津 恵子 女性の家HELPディレクター
- 同
- 垣見 隆 弁護士
- 同
- 北村 邦夫 (社)日本家族計画協会クリニック所長
- 同
- 小谷 直道 読売新聞社特別編集
- 委員
- 同
- 小西 聖子 武蔵野女子大学教授
- 同
- 住田 裕子 弁護士
- 同
- 瀬地山 角 東京大学大学院総合文化研究科助教授
- 同
- 林 陽子 弁護士
- 同
- 前田 雅英 東京都立大学教授
- 同
- 若林 昌子 明治大学教授
- 議題次第
- 1 開会
- 2 女性のトラフィッキングについて
- (1) 女性のトラフィッキングについて
林 陽子 弁護士 - (2) 国連国際組織犯罪条約人の密輸議定書について 島戸 純 法務省刑事局局付検事
- (3) 自由討議
- (1) 女性のトラフィッキングについて
- 3 売買春について
- 4 閉会
-
(配布資料)
- 資料1
-
トラフィッキング関係基礎資料 [PDF形式:648KB]
- 資料2
-
林氏説明資料 [PDF形式:74KB]
- 資料3
-
法務省説明資料 [PDF形式:20KB]
- 資料4
-
売買春関係基礎資料 [PDF形式:85KB]
- 資料5
- 第13回男女共同参画会議女性に対する暴力に関する専門調査会議事録(案)
- 概要
○女性のトラフィッキングについて、林陽子委員から、国連国際組織犯罪条約人の密輸議定書について、法務省からそ れぞれ説明が行われた。
[自由討議]
○人身売買(トラフィッキング)について
- (前田委員)
- 法務省から説明のあった選択議定書の内容を国内で実現するには、刑法改正が必要となり、時間がかかってしまう。風 俗営業者に対する規制を厳しくする、売買春に関する罰則規制を見直すなどにより実質的な効果が得られる手段も考え られるのではないか。
- (瀬地山委員)
- 私は売買春というのは、全体として女性に対する暴力であるというふうには考えないという立場なので、売春で限定する のではなく人身売買兼売春という点で議論をすべきではないか。
- (前田委員)
- 国民一般に分かりやすくアピールしていくには、「トラフィッキング」の訳語としては「人身売買」が一番ふさわしいと思う。
- (垣見委員)
- 日本人でも、外国からだまされて連れてこられるところを除いて、外国人と同様の被害に遭っているケースがあり、受入 れ者、風俗店経営者、被害女性への対策は、外国人被害者についても日本人被害者についても共通するところがあると 考えるが、「トラフィッキング問題」を議論する上では、外国人被害者に焦点を当て論議をすることに異論はない。
- (小西委員)
- 18歳未満の女子の人身売買については、児童虐待の要素もあるのではないか。また、支援においては言葉の問題も大 きい。
- (北村委員)
- トラフィッキングには、外から日本に連れてこられるイメージがあるので、外国人の女性の問題が重視されるべきではな いか。国内における日本の女性の問題としては、売買春で扱うべきではないか。
- (林委員)
- 人の密輸議定書には、被害者の訴追の権利、精神的ケア、住居の保護といった内容が含まれており、外国人女性の問 題という認識は強くもつ必要がある。
- (大津委員)
- 人身売買の被害者を受け入れる民間シェルターは少ない上、被害者の帰国までの費用はシェルターで負担しなくては ならないので、国の支援が重要である。
- (若林委員)
- 議定書の批准に向けた議論をすることが大切である。現実的対策も重要であるが、批准のもたらすインパクトは大きい のではないか。そのために批准の壁を洗い出すことは、現実的対策にも連動するのではないか。
- (住田委員)
-
条約の批准とは切り離して、まず必要な対策について焦点を絞って提言することが必要である。
また、人身売買は、女性という性の差別の上に、外国人であること、経済的な問題等からの差別が根底にあり、日本はま ずその点を指摘した上でどういう対策を講じるかという理念、目的を挙げ、次にそのための手段に移るべきである。
○売買春について
- (瀬地山委員)
-
自ら進んで働いている人もいることから、売買春全体を女性に対する暴力と位置付けるべきではない。
自由意思に基づく売春もその背景には何らかの社会的制約があるとの考え方もあるが、社会的制約はすべての職業選 択にかかわっており、売春のみ特別視する理由はない。ただ、当然身体接触を伴う危険な労働であるので、そこでの暴 力については取り締まるべきである。 - (住田委員)
- 売買春の問題は、売買春する側というより、社会に対して、尊厳をもって生きるという大きな視点からの呼びかけ、働き かけという形が望まれる。
- (林委員)
- 売春は、売春防止法にあるように、違法である。今の法律を変えてまで単純売春を処罰することは必要ないが、違法で あることははっきりさせていくべきである。
- (前田委員)
- 第三者の関与なしの単純売春も違法であるが、そこまで刑事罰を広げる必要はない。買う側の男性、ホテトルやデート クラブといった売春を誘発するもの、児童を対象とする行為について規制を厳しくする必要がある。
- (北村委員)
- 買う側の男性の中には、大人の女性とのつきあい方ができず、金による支配でしか性行為を果たし得ない者も存在し、 このような性をめぐる問題の視点も失ってはいけない。
- (小西委員)
-
売る側には自由意思を、買う側には性的弱者の事情を持ち出すのは問題がある。
理念的に自由意思による売春はあるのかもしれないが、事実としてその結果生じる本人の健康や精神への影響も考えな ければならない。
慢性的に繰り返される暴力の被害について論じる時に、不用意に自由意思ということを持ち出すのに抵抗を感じる。 - (小谷委員)
- 強制のある売春が一番問題であり、これについて法的な処罰の問題など本当に効果的な対策を議論すべきである。
- (瀬地山委員)
-
国民が性道徳を共有するのは、世代の違いもあるので不可能だと思われるが、共有しなくても暴力が減るよう、自己決 定が保証されるためのプロセスを確認するものが必要である。
また、売春の位置付けではなく、現実に起きている暴力に警察がきちんと介入できるようなシステムをつくるべきである。 - (林委員)
- 買う側の男性に対する介入方法を議論し、男女共同参画基本計画の新しい論点として入れるべきである。
- (住田委員)
- 売春で組織的なものはほとんど暴力団とつながりがあり、効果的な手段としては厳正な取り締まりしかないと思うが、取 り締まり側にもっと女性が入り、女性の視点から救済手段に結びつくことが望ましい。風俗事犯の捜査の現場に女性警察 官をもっと配置するべきである。
- (小谷委員)
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売春で被害に遭って逃げてくる人を受け入れる体制をつくるべきではないか。
外国人女性に売春を強制している風俗店に対して、周辺住民が問題意識、関心を持つことが必要である。また、街角で大 量にまかれる売買春関係のビラについて対策が必要である。
○事務局から、第13回専門調査会の議事録(案)が提示され、了承された。
○次回の専門調査会の会議時間について、充分なヒアリングと検討のため、3時間で行うことが了承された。
○事務局から、次回以降の専門調査会について、9月2日(月)14時から、内閣府5階特別会議室で開催する予定で ある旨、説明があった。