ポジティブ・アクション研究会(第9回)議事要旨

  • 日時: 平成17年3月2日(水) 10:00~12:00
  • 場所: 内閣府3階特別会議室

(議事次第)

  1. 開会
  2. ポジティブ・アクション研究会報告書について
  3. 自由討議
  4. 閉会

(概要)

○報告書についての自由討議が行われた。その概要は以下のとおり。

【総論について】

辻村委員
ポジティブ・アクションの定義について、暫定的特別措置とするのか、基本法上の積極的改善措置とするのか、全体的に明確にしておいた方がいい。また、優遇措置という言葉を使うと、混乱が生じると思う。女子差別撤廃委員会では、2004年1月の一般的勧告25号で、temporary special measuresと呼ぼうとしており、この勧告についても書き込んだ方がいいのではないか。
高橋座長
確かに、優遇という言葉は避けるようにした方がいい。
伊藤委員
ヨーロッパでは、ポジティブ・アクションについて、過去の償いとしてのものということではなくて、あくまでも現在被っている不利益に対するものだという方が、支配的な法的考え方である。「過去における」ということを定義の内容に入れるのは議論の余地のあるところではないか。
辻村委員
ポジティブ・アクションの概念と分類については、一応便宜上(1)厳格なポジティブ・アクション、(2)中庸なポジティブ・アクション、(3)穏健なポジティブ・アクションの3つに分けるけれども、それぞれの中に憲法上問題になるものも、ならないものもあるという説明の方がよいのではないか。
安西委員
効力の強さによって3つに分ける場合、大体プラス方式というのが真ん中に入る。ところが、プラス方式にはクォータと同じくらい強いものもあり、中庸が厳格より強いということがあり得るという問題がある。また、分野によってポジティブ・アクションの許容範囲が違うということも書く方がよいのではないか。
高橋座長
ポジティブ・アクションの合理性の判断基準について、抽象的に書いて基本的な考え方の方向だけ出す程度の方が無難かなという気もする。
安西委員
アメリカの公民権法上、アファーマティブ・アクションの許容性の基準があり、それに大体近いものなら、別におかしくはないという感じがする。ただ、基本的に重要なのは、負担が過度にならないような形態であることである。
辻村委員
日本国憲法の解釈論としては、結果の平等か機会の平等かということではなくて、形式的平等か実質的平等かという議論をしてきている。実質的平等も14条の保障範囲に入るという議論の中で、実質的平等の中には機会の平等を超えたものも当然ある。日本国憲法が保障しているのは機会の平等だというように断定的に書くのはどうか。
高橋座長
形式的平等か実質的平等かでいくと、通説は形式的平等である。
伊藤委員
報告書の記述は憲法学説一般ではという話ではなく、ポジティブ・アクションに対する批判を紹介するものなので、こだわらなくてもいいのではないか。
辻村委員
ポジティブ・アクションの中には結果の平等になるものと、機会の平等に応えるポジティブ・アクションと両方があるが、我々が考えているポジティブ・アクションは、機会の均等を求めるものだというように整理すればよいのではないか。
高橋座長
現行の憲法が結果の平等も認めているとは言えない。
安西委員
社会構造の不平等があるがゆえに、同じ機会を形式的に提供しても、その実質的な価値は違うということをきっちり出さないと説得力にかけるのではないか。ポジティブ・アクションというのは、本当は正確に言えば、実質的平等プラスアルファではないか。
辻村委員
近代の平等感についての記述があるが、日本国憲法は20世紀の憲法であり、実質的平等の配慮が入っているから、近代が形式的な機会の平等だったということは説得力ある説明にはならないのではないか。
高橋座長
ここでは、平等についての近代の考え方は機会の平等を形式的に保障することで、現代の考え方は機会の平等を実質的に保障する、そういうとらえ方をしている。
山川委員
機会の平等の実質的保障というのは、非常にぴったりくるような気がする。報告書に盛り込んだ方が良いと思う。

【各論について】

高橋座長
政治分野におけるポジティブ・アクションとして、女性候補者をある程度たくさん擁立した政党に対してお金の援助を増やすことを記述するか。
辻村委員
政党の自発的な取り組みが必要だから、政党の自発的な取り組みを促すような政策として、女性候補者の擁立に積極的な政党に助成金を付けるということだと論理的には整合なのではないか。
高橋座長
なぜ日本では女性の政治家進出が少ないのかについて、きちっと研究をしてまとめていく必要がある。
安西委員
政治分野は、ポジティブ・アクションの許容度が強いのではないかということは、報告書に少し書いた方が良いのではという感じがする。
高橋座長
行政分野において、ポジティブ・アクションと国家公務員法の定める成績主義との関係の問題で、国の重要課題である男女共同参画に対する理解、問題意識の高さを、採用の場面などで能力ととらえることはできるか。また、女性の育成、登用、部下の育児休業の取得促進といったものを、実績として評価していくということも考えられるか。
伊藤委員
能力として評価するには、職務内容との関連性が必要ではないか。
山川委員
アメリカにおいては、管理職の評価の一つの要素として、機会均等の実現を含めることをベストプラクティスとして推奨されている。日本においても、従業員の平等な能力発揮を促進するという観点から、評価の一要素とすることはあり得るんじゃないかと思う。
高橋座長
教育分野において、工学部のような非常に女性が少ない分野において、女性のみ募集を行うことについてはどうか。
伊藤委員
ヨーロッパ法上は、完全に女性だけの枠というのをつくって、それだけは確保するというスタイルはだめだという判例がある。一般入試の枠か推薦枠かというのは考慮に当たっての大きな要素だろう。

○研究会は第九回を持って終了することとされ、座長と男女共同参画局長から挨拶が行われた。報告書案については、今回の議論を受け、事務局において修正を行うこととなった。