ポジティブ・アクション研究会(第2回)議事要旨

  • 日時: 平成15年9月30日(火) 14:00~16:00
  • 場所: 内閣府5階特別会議室

(議事次第)

  1. 開会
  2. 日本における行政分野でのポジティブ・アクションの取組
  3. ドイツにおけるポジティブ・アクション(齋藤 純子氏より報告)
  4. ポジティブ・アクション研究会の検討の進め方について
  5. 自由討議
  6. 閉会

(配布資料)

資料1
日本における行政分野のポジティブ・アクションの取組
資料2
ドイツの行政におけるポジティブ・アクションの状況
資料3
レファレンス564,565「ドイツの男女平等政策」

(概要)

  1. 内閣府より、日本におけるポジティブ・アクションの取組について説明が行われた。
  2. 齋藤純子氏により「ドイツにおける行政のポジティブ・アクション」というテーマについて報告が行われた。
    • ○ドイツにおけるポジティブ・アクションの概念は構造的差別を解消し,包括的な意味で平等を実現することを目指すものという広いものである。男女平等原則が基本法等の法令に定められているが,公務部門については,成績主義の原則があり「適性,能力及び専門的業績に基づく任用」ということが決まっている。
    • ○連邦及び州の男女平等法の内容については,<1>男女平等計画の策定義務,<2>クォータ制,<3>差別の禁止,差別的選考基準の排除,<4>家庭と職業の両立のための規定,<5>平等問題担当者の任命義務という5つの共通する要素があり,全体的傾向としては,採用・昇進における女性優先の規定から,拘束的な目標値を含む男女平等計画へという流れになっている。
    • ○男女平等法のクォータ規定の合憲性・適法性については,憲法裁判所ではなく欧州裁判所が判断を示してきており,カランケ事件判決で同一資格のときに自動的に女性を優先するクォータ規定はEU法の規定に合致しないとされたが,マーシャル事件判決では,社会的制限規定によって絶対的かつ無条件の女性優先が回避されている限り女性クォータはEU法に合致するとされ,バデック事件判決もそれを追認している。現行のクォータ制の効果については,人事決定担当者の判断が必ずしも主観的評価や構造的差別から自由ではない,公務員代表委員会は現職員の利益を擁護する立場にあるなどの問題がある。
    • ○男女平等立法の二つの大きな流れとして,女性のための立法から性中立的な立法へと向かう流れと,逆に女性のための特別措置の強化・女性のための視点の主流化という流れがある。
  3. 本日の説明等について自由討議が行われた。その概要は以下のとおり。
    濱口氏
    ポジティブ・アクションの分野について,ドイツの州レベルで突出的な法制が実定化された政治的背景はどのようなものか。またドイツでは,官吏については行政法,職員,労働者については労働法と全く分かれるのか,両分野での考え方の違いのようなものが背景としてあるのか。
    齋藤氏
    政治的背景としては,ドイツでは女性運動が強かったこと,社会民主党が政権をとっていた州では平等政策が飛躍的に発展したことがある。また,平等法は官吏,職員,労働者に包括的に適応されるが,中の個々の規定では,一部官吏法の規定によるというものがあり,裁判所の立場の違いというものはかなりある。
    辻村委員
    ドイツでは昇進とか採用などの場面で女性を優遇する政策を結果のクォータや決定のクォータと呼んでいるが,日本よりも広い概念と解してよいのか。50%クォータであるということが前提となるのか。
    齋藤氏
    ほとんどの州が50%の目標を掲げている。基準となる領域がポイントで,公務員全体ではなく職種や,昇進させる等級等の男女比を見るという構成になっている。
    高橋氏
    ドイツを日本の参考にする場合,バックグラウンドなどで気をつけておくべきことはあるか。
    齋藤氏
    ドイツでは構造的差別があるということが公の認識になっている。日本ではその訴えが弱いので,ポジティブ・アクションだけを導入した場合に非常に反発を招く恐れがある。現状の男女差について理由,原因を追求する必要がある。
    辻村委員
    女性管理職の比率を問題にする際、入庁当時の女性割合などの多面的な統計が必要。また,各省庁がたてた計画は努力目標がほとんどであるが,ゴールアンドタイムテーブル方式に拘束力をつける方向で考えてもよいのではないか。
    濱口氏
    公務部門でポジティブ・アクションの取組がなされているのは,公的な意思決定にかかわるということがあるのか。
    齋藤氏
    国は民間と違って国の責務という基本法の規定が直接かかってくる。率先してモデルとして男女平等を実現すべき責務があるということでやっている。
    山川委員
    ドイツではダイバーシティの議論よりも,男女の構造的差別の解消ということが基本的な発想としてあると理解してよいか。
    安西委員
    アメリカで起こっているような受益者スティグマ論はドイツで出てきているのか。
    伊藤委員
    ヨーロッパのいわゆるアファーマティブ・アクション型というものはまず資格においては同一,少なくとも同等であることが前提であり,スティグマの話は出にくい。原則として同一の資格を持っている場合には優先するが,個別的には競合者との間で個別判断をすることになっている。ただ,この個別判断の過程が非常に不透明になる可能性がある。
    辻村委員
    ドイツの女性問題担当官のようなものを置くのは日本でも有効ではないか。
  4. 次回の研究会での検討項目について議論が行われ、次回は行政分野のポジティブ・アクションについて引き続き検討することとされた。