生活困難を抱える男女に関する検討会(第13回)議事要旨 | 検討会 | 推進本部・会議等ホームページ

  • 日時: 平成21年7月22日(水) 13:00~15:00
  • 場所: 内閣府3階特別会議室
  1. 出席者

    袖井座長
    阿部委員
    鹿嶋委員
    小杉委員
    白波瀬委員

  2. 議題

    就業構造基本調査 国民生活基礎調査 特別集計

  3. 議事要旨

    ■ 就業構造基本調査 特別集計(白波瀬委員)

    ○「高い経済リスクを抱える層」として一人暮らし世帯、ひとり親世帯に注目して、就業構造基本調査を分析した。

    ○一人暮らし割合をみると、高齢層女性において増えている。

    ○一人暮らしの貧困率はどの年齢層においても、女性は男性に比べて高い。

    ○一人暮らしの貧困率を年代別にみると15年間で変化はあまり無く、貧困率が高いのは10代と60代以上層である。

    ○一人暮らしの貧困率を配偶関係別にみると、男性は未婚者が離死別者よりも高いのに対し、女性は離死別者が未婚者よりも高いという違いがある。

    ○ひとり親世帯について、子どもの経済的リスクの観点から見ると、ひとり親世帯にいる子ども、特に子どもが10代でひとり親世帯にいる場合の貧困率が高い。

    ○15~20歳の就学率を見ると、ひとり親世帯では二人親世帯に比べて低く、就学率は、母子家庭、父子家庭の順で低下する。

    ○父子家庭の子どもの就業状態を見ると、女性未婚子は非正規就労、男性未婚子は無業の割合が若干高い。

    ○母子世帯の母の就業について、母子家庭の母の非正規就労率(5割超)と無業率(2割弱)は年齢によらずほぼ一定である。配偶者のいる女性が年代とともに無業者から非正規就労へと移行していく傾向にあるのと対照的である。

    ○母子家庭の貧困率は高いが、年齢が高くなるにつれて低下する一方、父子家庭の貧困率は年齢が高くなるにつれて上昇する。

    ○母子家庭の母親の就労別貧困率は他国(米・英・仏・独・伊・スウェーデン・台湾)に比べて高いが、就業の有無による貧困率の差はほとんどない。日本の母子家庭の母の就労は貧困回避の機能を十分果たしていないと言える。

    ○標準型の世帯から外れることの経済的ペナルティーは男性の方が高い。

    ○母子世帯の貧困の背景に低賃金の非正規就労で家計を支えている状況がある。正規・非正規の格差改善とともに、経済的リスクに直面する母子家庭への経済的支援も検討すべき。

    ○父子家庭の貧困率は母子家庭より低いが、近年上昇している。父子家庭に潜在する経済リスクにも注目する必要がある。

    ■ 就業構造基本調査 特別集計(小杉委員)

    ○若年の女性で非正規雇用が増加していることから、若年層の非正規雇用をめぐる男女差に注目し、就業構造基本調査の分析を行った。

    ○若年層の正規社員比率は90年代の景気後退以降低下したが、2003年以降は全体的に回復の兆しが見られた。しかし学歴別にみると高卒以下の学歴の者ではむしろ正社員比率が低下し、学歴間格差が拡大している。特に女性での学歴間格差が顕著である。

    ○2007年のデータで世帯収入別に子どもの学歴を見ると、世帯収入が低い家庭ほど低学歴の者が多い。

    ○初職に関して、90年代の不況以降に卒業した20歳代後半以下の世代は非正規率が高く、男性の方が10%程正社員比率が高いという男女差がある。更に低学歴層は非正規化が顕著。

    ○正社員比率について、大卒者に限って見ると男女間格差は縮小したといえる。高卒者の場合には、正社員比率は大きく低下して、男女の差はそのまま残っている。

    ○正社員と非正規社員の収入に関して、正社員は年齢とともに収入が上がっていくが、非正規社員は上がらない。非正規社員でも、時間当たり収入は、わずかだが年齢とともに上昇する傾向が見られたが、高卒女性の場合はこの上昇も見られなかった。

    ○男女別に職業能力開発の状況をみると、勤務先訓練に関しては正社員とパート・アルバイトの差が大きいが同じ雇用形態の中では女性の方が実施率が高い。自己啓発については、正社員同士を比べると女性の方が実施率が高いが、パート・アルバイトにおける自己啓発については女性の方が低くなっている。

    ○学歴別に職業能力開発の状況をみると、雇用形態に関わらず高い学歴の者ほどの実施率が高い。能力開発の企業投資が最も少なく、自己啓発も実施しないのが低学歴の若年女性という傾向が出てくる。

    ○2006年から2007年の間の非正社員から正社員への移行した比率は、男性が29.8%、女性が11.5%であった。5年前に比べ非正社員から正社員への道は間違いなく太くなっているが、女性ではほんの少ししか増えていない。

    ○雇用形態の違いと結婚との関係をみると、男性では初職が非正規の人は40代でも結婚しにくいということが指摘できる。女性の場合は、正規・非正規によってほとんど差が無く、初職が非正規だから結婚しやすいというわけではないことを示している。

    ■ 国民生活基礎調査 特別集計(阿部委員)

    ○国民生活基礎調査によって貧困率の状況について分析した。

    ○2007年の貧困率の状況は、80年代から比べると大きく上昇しているが、95年からの12年間ではそれほど大きくは上昇していない。

    ○年齢層別では、高齢者は貧困率が高いが、全体的に見ると若干減少傾向である。他の年齢層では、2001年が景気が一番悪かった時点で貧困率も上昇しており、2007年は実際には2006年の所得であり、好景気の時点なので低下し、山型の動きになっている。

    ○年齢階層別の男性では、他の年齢階層に比べ20歳から24歳男性の貧困率が95年、2001年、2007年と急激に上昇している。40歳代、50歳代でも貧困率が上昇しているが、60歳以上では下がっている。

    ○年齢階層別の女性では、2001年、2007年と若年層で貧困率が上がり、高齢層では下がっているという様相は男性と同じだが、男性のように若年の急激な上昇は見られない。

    ○活動別では、65歳以上で主に仕事しているカテゴリーの方々の貧困率が非常に高いというのが見られる。高齢者でのワーキングプアが意外と多く、中でも女性が多い。

    ○雇用形態別では、正規社員に比べ非正規雇用の貧困率が高い。特にパート・アルバイト、派遣については、男性の貧困率は女性より圧倒的に高い。

    ○配偶関係別では、高齢者は有配偶の場合は男女ともに貧困率が低下している一方で、未婚や離別、死別など有配偶でない場合の貧困率は概ね上昇している。

    ○居住地区別では、20歳から24歳男性の急激な貧困率の上昇が見てとれるが、大都市になるほど貧困率の上昇は顕著になる。

    【意見交換】

    ○ひとり親世帯のジェンダー格差の中身については、親が母親か父親か、また、子が息子か娘かで違いがある。どうクロスして関係しているのか、制度的にもしっかり把握する必要があると感じている。

    ○有期限の雇用や短時間の雇用は必要であり、無くすべきものではないが、それが身分として固定されるということが問題。非正規から正規への移動が可能な社会をどうつくるか、非正規のままで所得を上げるにはどうすればいいかといことがポイントとなる。

    ○20歳から24歳の男性の貧困率が非常に高いことに関して、単独世帯、夫婦の未婚子世帯、その他世帯ともに、同年齢階層の男性の貧困率が上昇している。