仕事と子育ての両立支援策に関する専門調査会 検討状況報告

  • 平成13年4月
I
はじめに
II
専門調査会の開催状況
III
これまでの専門調査会における議論
IV
論点整理(提言の柱立てのイメージ)

(参考資料)
仕事と子育て両立支援策に関する意見募集結果


  • I はじめに

    少子高齢化の進展等、我が国の社会経済情勢が急速に変化していく状況にかんがみ、女性も男性も、家庭生活における活動とその他の活動を両立させ、安心して子育てができる社会を築くことが、二十一世紀の日本の新生を可能ならしめる緊急の政策課題となっている。

    仕事と子育ての両立支援策に関する専門調査会は、このような考えの下、男女共同参画会議における緊急の取り組みとして、「仕事と子育ての両立支援策」に関して、今後重点的に取り組むべき点や配慮すべき点の検討を行い、この問題に対して、会議として「緊急性、有効性、具体性、象徴性」を備えた処方箋を作ることを目的として設置されたものである。

    本専門調査会は、2月5日に第1回会合を開催し、以来、4回の調査会及び委員による長時間の意見交換会を開催し、関係省庁、保育関係者、企業関係者からのヒアリングを行うとともに、国民からの幅広い意見募集を行うなど、精力的に検討を進めてきたところである。

    この検討状況報告は、専門調査会の検討状況を中間的に男女共同参画会議に報告するため、これまでの広範な議論について主要な論点別に整理を行ったものである。

    今後、今回の検討状況報告に対する男女共同参画会議議員の御意見等も参考にしながらさらに検討を進め、早急に最終報告をとりまとめることとしたい。


  • II 専門調査会の開催状況
    • 第1回 平成13年2月5日(月)
      • 政府における仕事と子育ての両立支援策について
        内閣府、厚生労働省からのヒアリング
      • 自由討議
    • 意見交換会 平成13年2月24日(土)
      • 自由討議
    • 第2回 平成13年2月27日(火)
      • 仕事と子育ての両立支援に関するヒアリング
        保育関係者からのヒアリング
      • 自由討議
    • 第3回 平成13年3月16日(金)
      • 仕事と子育ての両立支援に関するヒアリング
        企業関係者からのヒアリング
      • 検討状況報告に関する議論
    • 第4回 平成13年3月26日(月)
      • 検討状況報告(案)について

  • III これまでの専門調査会における議論
    1. 企業・働き方に関する議論
      • (1) 企業の姿勢の改善
      • (2) 勤務時間、勤務体系の多様化
      • (3) 育児休業制度の充実
      • (4) 労働者の意識改善
    2. 保育に関する議論
      • (1) 保育の受け入れの増
      • (2) 保育の利用を柔軟に
      • (3) 保育の質の向上
      • (4) 公設民営型保育所の普及
      • (5) 保育ママ(ベビーシッター)への支援
      • (6) 学童保育、放課後対策
      • (7) その他
    3. 地域社会に関する議論
      • (1) 親への支援、教育
      • (2) 地域における街づくり
    4. その他
      • (1) 専門調査会の進め方
      • (2) 提言の方向性について
      • (3) 両立支援に関する基本的な考え方

    1. 企業・働き方に関する議論
      • (1) 企業の姿勢の改善
        • 男女共同参画審議会でつくってきたものが、なかなか労働界や会社の仕事の在り方に届いていない。
        • ファミリーフレンドリー企業への税制優遇措置の検討。
        • 両立支援に積極的な企業が業績がいいことをデータとして示せないか。
        • 制度は整っていてもリストラとの関係等実際の取得環境は厳しい。
        • 両立する社員は21世紀を支える人材を育てる親だとの発想に立つべき。
        • 経営者の意識が変わることが必要。
      • (2) 勤務時間、勤務体系の多様化
        • 日本的雇用慣行(勤続年功賃金、雇用保障)のシステム自体が、女性が働くことと完全に矛盾しており、慣行を保護する制度の改革が必要。
        • 人事制度を複線にしていくべき。手をつけた企業に対して優遇措置を。
        • コース別人事の多様化。
        • 派遣労働者やパートタイマー、あるいは一度退職した人が正規労働者になりやすいような、多様で弾力的な働き方の実現。
        • 派遣、パート労働者への対応。
        • 短時間勤務の制度化。(育児休暇の未取得分振り替え等)
      • (3) 育児休業制度の充実
        • 男性に1年間に12日間の育児休業を義務付け。
        • パパクォータ制、段階的育児就業、育児休暇の貯蓄・引出し制。
          (日本の男性サラリーマンは現実には取得しないとの意見もある。)
        • 派遣労働者やパートタイマーにも育児休業がきちんと取れるようにする。
        • 両親が同時に育児休業を取れるようにする。
        • 男性の出産休暇制度の導入。
        • 病児休暇制度の導入。
      • (4) 労働者の意識改善
        • 男性社員が実際に育児を経験し、積み重ねにより職場の雰囲気を変える。
        • 学生時代から社会人にかけて人生設計やサービスの選択等のライフプラン教育をし、手段の情報をも提供することが重要。
        • 両立した結果企業に残った女性が人材として活躍できることが必要。
        • 両立は自立した個人の生き方の問題。キャリアプランやライフプランを指導、相談できる人が必要。
    2. 保育に関する議論
      • (1) 保育の受け入れの増
        • 公立保育園の拡充が必要。(すべて公的とするかは議論の必要あり。)
        • 新規設置の際、既存の保育所との競合のため市町村の認可が下りない。ノンアクションレターの導入により、公正明大な行政プロセスを確保すべき。
        • 官庁等の公的施設が施設内保育所を作る。
        • 企業内保育所の設置。(需要については疑問との意見もある。)
        • 都心等のオフィスビルを週末の保育所として一部開放する。
        • 空きのある保育園への送迎サービス提供。
        • 潜在的な待機児童も考えて対策を考えるべき。(実態調査の実施)
        • 専業主婦でも子供を預けられるようにする。
          (まず今現職で仕事をしている人のサポートをするべき。)
      • (2) 保育の利用を柔軟に
        • 公立保育園を強化しつつ、新設の公立保育園では、夜間保育など、多面的なサービスを民間と協力してやっていく。
        • 公立保育園の良さを知り、認め、拡大しながら、その施設を使って民間が夜間や休日を引き継ぐなど、両者のいいところが強調されればいい。
        • 働き方による順序づけで公立保育園への入園が決まるシステムは問題。
        • 公立保育所は、基本的に民営化すべき。民間でできることを政府がやるのが最大の問題。
        • 基本的に自治体はサービスをよくしようとするインセンティブが働く構造になっていない。
        • 病児保育で保育所の活用ができないのは、児童福祉法にそのように規定されているため。
        • 病気の子どもを小児科医や病院で、1~2日臨時に預かってもらえる制度。
        • 保育時間の延長、育児休業取得との関係改善、入所期間のフレキシブル化、緊急時の対策、失業中の利用、能力開発のための利用など。
        • 駅を中継地(保育所分室等)として、駅からシャトルで往復可能なサテライト保育所を設置。サテライト保育所にレストランを備える。
      • (3) 保育の質の向上
        • 保育園110 番など、相談を受け解決する機関の設置。
        • 子育てを担当する保育士の資質向上に必要な研修制度など。
        • 政府は監視員として、民間保育所の監査など、警察に近い機能を持つべき。
        • 保育園と利用者の直接契約。
      • (4) 公設民営型保育所の普及
        • 施設とサービスは基本的に分けるべき。公立保育園の運営を民間に委託すれば、利用サービス者の排除により質が担保できる。
        • 公立保育所の営業終了後、民間が引き継いで経営することができないか。
        • 大都市・周辺部では施設は公が用意し、運営費を補助する形で民間が経営する形式の普及が望ましいのではないか。
        • 情報公開及びサービス水準のチェックを十分に行わせることにより、運営の質を確保することが必要。
        • 企業に補助金を出すよりも、公立以外を選ばざるを得なかった個人に経費が還元される仕組みをつくるべき。
        • 民間企業に国家の補助をすべきかは大きな議論。
      • (5) 保育ママ(ベビーシッター)への支援
        • 危険負担を公的にサポートするしくみが必要。
        • 保育を手伝う親戚などを保育ママと認めて支援をする。
      • (6) 学童保育、放課後対策
        • すべての学校に学童自習室を設置。
          (大都市周辺でのみ行うべきとの意見もある。)
        • 学童保育が保育園より短いことは不満。すぐ7時に改善できるのでは。
        • 経営は市町村が民間に委託することも検討。
          (公的な責任を持たせるような仕組みが必要との意見もある。)
        • 教員OBの再雇用、学生と生徒がボランティア(奉仕)として参加、等。
        • 学童保育を小学校高学年まで伸ばす。
        • 学校終了に連動する(学級閉鎖、休日、病児など)ように学童保育を行う。
      • (7) その他
        • 保育料の税制控除が必要。
          (税制で支援するか、予算措置で支援するかは議論が必要。)
        • 公立保育所に関して、公務員の給与が高コストにつながるというが、主として女性が雇用される場の賃金についてのみ厳しい議論があるということに、ジェンダーギャップを感じる。
    3. 地域社会に関する議論
      • (1) 親への支援、教育
        • 親の教育が必要。(親が子どものことを知らない。)
        • 産む人や両親になる人の子育てに対する心構えが必要。病気などの時どうするのか考えておかないと、サービスがあっても使わない。
        • 奉仕体験により学生・生徒が子供に触れる機会をつくることも重要。
        • 過剰な情報が母親を追い詰める原因となるケースがある。(3歳児神話等)
        • 両親学級が平日の昼間で参加できない場合がある。(働く親に配慮すべき)
        • 働く母親が参加しやすい学校運営をすべき。
        • 学校や幼稚園の行事等を、よほどのことがない限り平日に行わないよう意識を徹底する。
      • (2) 地域における街づくり
        • 職住近接を街づくりの基本戦略とし、地域に保育所をビルトインする。
        • ポストベッドタウン→キッズタウンと呼称してはどうか。
        • 21世紀の子育て風景として4世代同居社会のイメージを描いてはどうか。
    4. その他
      • (1) 専門調査会の進め方
        • 各委員で意見がかなりあるようなので、一度、時間をかけた議論ができる場を設けてはどうか。
        • 日本の問題を考えるときに世界の子どもたち及び女性たちの問題にもつながる視点を入れることができれば、若い世代にとっても説得的ではないか。
        • 政府関係者が自己批判をし、どこが悪いのかという情報提供を望む。
        • 政府のいろいろな提言がなぜうまくいっていないのかを整理するべき。
        • 短期、中期、長期/制度、意識のように、いくつかに分けて考えるべき。
        • 利害関係者のコンセンサスではだめ。この場は自分の組織の利害とは無関係に話せるので、思い切った提言をしていきたい。
      • (2) 提言の方向性について
        • 具体的で、緊急にできて、そして有効で象徴性のあるものを1つでも2つでも提言できればよい。
        • みんなの価値観を少しずつ変えられるような施策ができればよい。
        • 短期決戦で提言をしていく以上は、目に見える、しかもわかりやすい、実現してよかったと思ってもらえる、そういうものに焦点を当てていければいいのではないか。
        • 目に見えるような形の極めて具体的な、これでこれだけ助かるということがわかるということが必要ではないか。
        • 企業や人事制度についてのコメントを外部へ発信するときには、もっと専門的な用語を並べる等しておかないと、企業は動いてくれない。
        • 今、両立に直面している人たちに具体的な変化を体験させることができれば、非常に具体的に満足度が上がる。
        • 要請するポイントを絞り、男女共同参画会議で大臣に意見ができるようにまとめていきたい。
        • 敵はだれかということが重要。だれが少子化対策や男女共同参画を妨げているのかということを明確にする。
        • 意識を高めるだけでなく、実際に行動が起こらないと変化は感じられない。
        • 待機児童について複数の定義で指標をつくり、これに合わせた予算や方策を提示したい。
        • なぜ今までの施策がうまくいかなかったのか分析したい。
        • 都市の雇用労働者だけでなく、地方や自営業者についても考える必要がある。
        • 両立が主な検討対象だが、専業主婦とのバランスも大事。
      • (3) 両立支援に関する基本的な考え方
        • 女性の人生にとっても、社会にとっても、女性と男性が仕事と子育てを両立していくことは、最重要課題の一つ。
        • 経済学と男女共同参画や少子化対策は水と油の関係という考え方は明らかに間違っている。仕事と子育てを両立させていくことは、経済的にも、社会的にも多方面に大きな効果がある。
        • 児童虐待の理由の1つに、自分の夢をあきらめたための子どもに対する過剰期待がある。両立支援の徹底で虐待の潜在的な危険性をかなり緩和できる。
        • 一度きりの人生において、生き方を自由に選択でき、どのような選択でも、社会に、子供を産み育てることを支える機能が備わっていることが必要。
        • 日本は優秀な人材に子育てをさせようという気があるのかどうか。
        • フルタイムで仕事をしていると両立できない現状を克服するべき。
        • 個人が多様な働き方を効率的に行えるより良い社会をつくっていくことで、少子化も自然と抑制されるのではないか。
        • 政府がやるべき仕事は、民間が仕事をしやすいような規制の緩和や改革。目に見える規制の緩和を行い、民間で自己責任で自分の選択が自由に実現できる社会をつくるために、シンボリックで効果的な施策ができればと考える。
        • 女性が子育てをしながら仕事ができるようなインフラ整備が必要。
        • モデル事業等が実現できるように、総理のリーダーシップで予算上の特別枠を配慮してもらえないか。
        • 施策や計画に英語名を使う必要はない。誰でもわかる言葉にして、子育てと仕事の両立は必ず大丈夫になるという決意を持つことが重要。
        • 政府はこのところ急ピッチで問題意識も非常に鋭く持っている感じがする。そのペースで内閣府が押していけば相当いいことが進むのではないか。
        • 自治体の達成度情報、例えば待機児童の解消数や延長保育の実施にかかった期間などを公表し、評価が悪いことは恥ずかしいとの認識を持たせるべき。
        • 社会の意識の変革をどうするか。男性の子育て、母親の知識や未熟さ、家庭のしつけや教育など、意識の問題は政府の仕事。
        • 待機児童半減(ゼロ)政策を行い、達成できないところを公表する。
        • 企業を変えていかなければならない。
        • 根本対策として男女共同参画の教育を進めていくことが大事。
        • 既に実行されている両立支援策の宣伝、浸透を図るべき。
        • 職場が変わらなければ両立はできない。
        • 共働きも専業主婦も安心できる育児学、家庭教育学を立ち上げるべき。
        • 「民営」「民間」という概念を定義すべき。
        • 地方自治体が主導となるべき。
        • 指標化して目標を立てさせ、達成度をチェックして自治体を押していく。

  • IV 論点整理(提言の柱立てのイメージ)
    • 呼びかけ
      1. 職場が変われば両立できる
      2. 待機児童ゼロ作戦
      3. 多様で良質な保育サービスを
      4. 必要な地域すべてに学童保育を
      5. 地域こぞって子育てを

    当専門調査会は、仕事と子育ての両立支援をわが国男女共同参画社会実現に重要かつ緊急の課題として受けとめ、具体的で実効ある解決策を求めて論議を重ねてきた。これまでの論議から、ここにその論点整理をまとめ、中間報告としたい。

    仕事と子育ての両立は、人間として生きていく上で不可欠の条件であり、その条件が満たされてこそ、社会全体も人間性に満ちた持続可能な発展を遂げることができる。残念ながらわが国の仕事と子育て両立の環境は、他の先進国に比べても不十分である。子育て年齢の女性の労働力率は低く、いわゆるM字型の女性労働力率が最も明確に表れる先進国となったといえる。一方、男性の育児など家事参加時間もまた他の先進国と比較すると極めて少ない。

    仕事と子育てという、おとなの人間として当然な目標を、それぞれの人生で両立できるよう、社会は総力を挙げて支援し、社会システムそのものを両立支援型に構築し直す必要がある。その認識はこのところ急速にひろがり、少子化対策を含めて国においては新エンゼルプランなどを策定、地方公共団体においてもそれぞれ努力を重ねてきた。

    にもかかわらず、地域によっては保育所に待機児童があふれ、質の低い無認可施設の事故等が伝えられている。また、日本の女性労働力率のM字型カーブは変わらず、多くの非正規雇用者として働く女性たちの労働条件は低く、男性たちは依然として仕事本位、企業本位の閉塞感の中で活力を失っている。このような状況が結果として少子化をもたらしている。のびのびと仕事と子育ての両立ライフを満喫する声は低く、両立をめざす女性のため息、あきらめ、息切れのほうが強く聞こえてくる。

    企業はいまだに女性を効率が悪い労働力と見、男性も、子育てや家事は本来女性の役割という見方を捨てきれず、女性自身も母親が最高の保育者との考えから、両立への自信を確立しきれていない。仕事と子育ての両立を進めるためには、真の男女共同参画を促進し、社会システム全体の見直しが必要である。

    この課題の解決のために、これまで数多くの提言等が行われてきている。それにもかかわらず、期待どおりに定着・進展し、効果を上げるに至っていないのはなぜであるのか。真剣な討議の結果、当専門調査会は、おおむね以下のような理由によるものではなかったかと考えるに至った。

    • 施策は適切であっても総ての関係者に目配りするあまり、体系づけにこだわり総花的画一的であり、地域のニーズと適合しなかったこと。
    • 企業側に「両立ライフ」を支援する姿勢が拡がらなかったこと。多くの企業では、両立でなく「仕事単立」の、男性をモデルとした硬直した雇用システムを変えていない。法制度があっても利用する風土ではなかったこと。
    • 女性の中に急増中の非正規雇用者(短時間労働者など)に、育児休業制度など施策が実態として及ばず正規雇用者との格差が拡がってきたこと。
    • 保育関係者の熱意と専門性にもかかわらず、公立をはじめとする認可保育施設については、措置から契約への変化を踏まえ、柔軟な運用について出された通達・制度変更が、保育現場に変化を呼び起こすにまで到っていないこと。
    • 保育サービス提供者側と利用者側のニーズがかみ合わず、その調整が情報提供を含めて不十分だったこと。
    • 地域の公共施設・社会資源を両立支援に利用しようとするとき、既存の法制度やタテ割意識が障壁となり、地方分権の実が生かされていないこと。

    そこで当専門調査会は、これまでの両立支援施策の意義を踏まえながら、ここに緊急性、有効性、具体性かつ象徴性ある施策として以下のような論点整理を中間報告としてまとめた。今後、男女共同参画会議をはじめ各方面の関係者の意見をさらに取り入れつつ、本報告に向けて討議を重ね、可能な限り具体的な目標を入れていきたい。

    仕事と子育てのバランスのとれた両立ライフの普及は、社会全体に多様で多面的な人間らしい生活を保障する。地域で三世代、四世代が共生し、社会的孫育て、子育てが実現し、その中で育つ子どもたちが、社会の支援のまなざしと豊かな人間関係に支えられ、より健やかに育つことを、私たちは心から願っている。

    論点整理

    1. 職場が変われば両立できる
      • 各企業が、仕事と子育ての両立がしやすい多様な雇用形態や処遇、弾力的な労働時間制などに一層積極的に取り組む。そのため、政府としても各種支援・要請を行うとともに、税制面などでも配慮する。
      • 育児休業制度ならびに出産休暇の十分な活用を求める。とりわけ男性の育児休業取得を奨励するとともに、出産休暇を制度化する。(父親の産休5日間)
      • 企業の両立指標を開発・公表するとともに、優良企業については内閣総理大臣が表彰する。また、各企業に両立支援の風土を育てるため、経営者や幹部の研修を推進する。
    2. 待機児童ゼロ作戦
      • 待機児童の解消をめざし、潜在的な需要を含め、達成数値目標及び期限を定めて実現を図る。特に、待機児童の多い地域の保育施設を重点整備する。
      • 保育の拡充は公立及び社会福祉法人立を基盤としつつ、さらに、民間活力を導入し公設民営型など多様化を図る。また、自治体等の適正な基準を満たした施設の設置は迅速に行う。
      • 学校の空き教室など利用可能な公共施設は保育のために弾力的に活用する。また駅など便利な拠点施設を保育に活用するための助成を行う。
    3. 多様で良質な保育サービスを
      • 病院や診療所における病児・病後児保育及び、保育所における病後児保育を一層推進するとともに、延長保育や入園時期の弾力化、育児休業中の上の子の受け入れなどの柔軟な受け入れを実現する。
      • 民営型保育所の参入による多様できめ細かなサービスの展開や公立保育所の終業時間後の民間による補足サービスなど、民間の資源も活用した良質なサービスを供給し選択の幅を拡大する。
      • 保育や育児に関連する各自治体の創意工夫を奨励し、各種モデル事業に対し財政的措置を講じる。また、好事例に関して情報ネットワークを通じて広く紹介する。
      • 利用者が保育内容を十分把握できるよう、経営主体に対して十分な情報開示を義務づける。また、地域の育児に関する情報を利用しやすい形で提供する。
    4. 必要な地域すべてに学童保育を
      • 大都市周辺部等の学童保育が必要な全ての地域で学校・児童館等に学童自習室を整備し、時間的にも保育園と同等のレベルを確保しつつ、ニーズに応じた弾力的な学童保育を推進する。
      • 運営は公的な責任の下に民間の活用を図り、豊富な経験をもった地域のさまざまな人材を活用する。
    5. 地域こぞって子育てを
      • ファミリー・サポート・センターを整備するとともに、良質なベビーシッターの紹介や保育ママの支援など、多様な家族支援サービスを充実させる。
      • 学生や生徒が男女共同参画社会の担い手として子育て支援を体験するボランティア活動の機会を作る。
      • 保育所等が組み込まれた職住近接の街づくりを促進するため、街づくりに関するコンペを行う。
    • ※その他、検討中の主な事項
      • パート、派遣労働者に対する具体的対策について
      • キャリアプランとライフプランの適切な組み合わせへの支援について
      • 仕事と子育ての両立が必要な親のための教育・啓発の在り方について
      • 男性の育児休業を促進する"パパクォータ"について
      • 保育に要した経費に関する所得税控除について
      • 専門調査会の検討結果の男女共同参画会議における取扱いなどフォローアップについて
      • 提案する施策を実現するための予算上の配慮について
    • など