第三部 「北京行動綱領」の重大問題領域の実施

4 女性に対する暴力

(1) 女性に対するあらゆる暴力の根絶

1)女性に対する暴力の根絶に向けての総合的な対策の検討

男女共同参画審議会は1997年6月、内閣総理大臣より「男女共同参画社会の実現を阻害する売買春その他の女性に対する暴力に関し、国民意識の変化や国際化の進展等に伴う状況の変化に的確に対応するための基本的方策」について、諮問を受けた。同審議会は、女性に対する暴力部会を設置して本諮問について調査審議を進め、1998年10月、それまでの審議を取りまとめた「中間とりまとめ」を公表した。同部会は、今後さらに審議を進め、答申に向けて部会案をまとめる予定である。

2)売買春に対する総合的取組の推進

a)風営適正化法の一部改正

「風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律の一部を改正する法律」が1998年4月30日に成立し、同5月8日に公布された。改正の主な特徴の一つとして、外国人女性が関与する売春事犯を防止するため、不法就労助長罪を犯したことを風俗営業の欠格事由とし、また、風俗営業者や、バー、スナック等を営む者又はこれらに女性を派遣して接客させる営業を営む者が、接客従業者に対して高額の債務を負わせたり、その旅券を保管したりする行為を禁止したことが挙げられる。

この規定は、1999年4月1日から施行された。

b)テレホンクラブ

46都道府県において、テレホンクラブ営業(電話回線を利用して不特定男女間の通信を媒介するテレホンクラブ、ツーショットダイヤル営業等のことで、女子少年が広告チラシを見る等により興味本位に電話をかけ、淫行等による性的被害、売春等の性的な問題行動の温床となるなどの問題が生じている。)を規制する条例が制定されたのを受け、その適切な運用に努めるとともに、各種違法行為の取締りの強化、関係機関・団体及び地域住民と連携したテレホンクラブの広告物の撤去活動、テレホンクラブに係る性的被害防止のための広報啓発活動等を行っている。

3)家庭内暴力

夫・パートナーによる妻への暴力等の家庭内暴力については潜在化しやすいので、警察では、当該暴力についてはもちろんのこと、暴力に至る前の夫婦間の問題についても相談があれば、指導、助言等を行っている。

家庭内の暴力であっても、暴行罪、傷害罪、逮捕監禁罪、強制わいせつ罪、強姦罪等の処罰規定の適用が排除されるものではなく、これらの処罰規定を的確に運用している。

夫・パートナーからの暴力などにより、危機に陥った女性を緊急に一時保護する目的で、民間の女性団体等がシェルターを開設している例が全国で約20ヶ所見受けられる。

なお、夫・パートナーの暴力に耐えきれず、妻や子どもが家から遠く離れた「母子生活支援施設」に身を寄せるケースが目立っていることから、1999年度より布団や衣類など身の回り品をそろえる費用を補助するなどの支援を行うこととしている。

4)セクシュアル・ハラスメントの防止対策の推進

人事院では、一般職非現業国家公務員を対象としたセクシュアル・ハラスメント防止対策を検討し、セクシュアル・ハラスメントの防止等に関する人事院規則を制定し、1999年4月1日から運用している。

教育機関においてはセクシュアル・ハラスメント防止についての取組状況の調査をしている。近年では認識も高まり、ガイドラインを作成したり、相談窓口を設ける大学が増えるとともに、情報交換や意識啓発に取り組む民間団体のネットワークが形成されている。

また、職場におけるセクシュアル・ハラスメントについては、第三部 A.6 女性と経済の(1)1)a)(iv)セクシュアル・ハラスメント防止規定の創設を参照。

5)被害女性に対する相談・保護・救済対策の充実

女性が性犯罪の被害の届出や相談を行いやすいよう、各都道府県警察の警察本部等に「性犯罪被害110番」等性犯罪相談窓口を設置しているほか、刑事手続や各種の救済制度について分かりやすく解説してあるパンフレットを被害者に交付したり、捜査状況や被疑者の処分状況等を適切に連絡し、被害者からの照会に対しても確実に対応するなどの適切な情報提供を行うことによって、被害女性の援助を行っている。

また、1996年以来、性犯罪被害者の立場に立った適切な対応により被害者の精神的負担の軽減を図るとともに、従来以上に適切かつ強力な性犯罪捜査を推進するため、各都道府県警察の警察本部等に「性犯罪捜査指導官」及び「性犯罪捜査指導係」を設置したほか、女性の警察官による事情聴取や鑑識活動、病院への付添い等精神的負担を緩和する施策や、専門職員等によるカウンセリング体制を強化して被害者の精神的回復を助ける施策を進めている。

また、公判段階においても、検察官において公判の公開停止、特定傍聴人や被告人の退廷等の措置を裁判所に対して申し出ることにより、被害女性が証言しやすい状況を整えるほか、不適切な質問に対する異議申立て等を行うことにより、 被害女性に対する保護を図っている。

法務省の人権擁護機関においては、人権相談などで女性に対する暴力が行われているとの情報を得た場合には、人権侵犯事件として調査し、その事実が認められた場合には、行為者に対して人権思想の啓発を行い、暴力行為の中止や再発防止を図るなど被害者の救済に努めている。

6)女性に対する暴力事案における被害者からの事情聴取、訴追、相談、救済等に携わる職員の養成・訓練等

性犯罪被害の潜在化の防止と被害者の精神的負担の軽減を図り、性犯罪捜査の適正かつ強力な推進を目的とし、全国の性犯罪捜査の指揮・指導を担当する性犯罪捜査指導官及び性犯罪捜査に専従している女性警察官を招致して全国性犯罪捜査指導官会議を開催している。

検察庁職員に対する各種研修において、人権問題や犯罪被害者に関するテーマで講義を実施しており、これらには、女性差別の現状や被害女性への対応に関する事項も含まれている。また、研修中の捜査・公判手続に関する各種講義や日常の執務においても、捜査・公判段階における女性被害者に対する配慮等について指導されている。

7)いわゆる従軍慰安婦問題

日本政府は、いわゆる従軍慰安婦問題について、1991年12月以降政府として全力を挙げ調査を行い、これまで、1992年7月及び1993年8月の2度にわたって調査結果を発表し、資料を公表するとともに、機会あるごとに元慰安婦の方々に対するお詫びと反省の気持ちを表明している。また、日本政府は、この問題についての道義的な責任を果たすという観点から、1995年7月に設立されたアジア女性基金(以下「基金」)の事業に対して必要な協力を行うことの閣議了解を行い、「基金」が所期の目的を達成できるように、その運営経費の全額負担、募金活動への協力等を通じ、「基金」 事業の推進に最大限の協力を行っている。

8)UNIFEMへの拠出

1995年の第50回国連総会において、我が国が主提案国となり、「女性に対する暴力撤廃におけるUNIFEMの役割」が決議され、それを受けて1996年にUNIFEM女性に対する暴力撤廃のための信託基金が設立され、1998年までに総額290.9万米ドルの拠出を行っている。

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