国連婦人の地位委員会合意結論等

政府、国際機関及び民間部門は、女性がその有償・無償の労働を通じ、また使用者、被雇用者及び起業家として、経済成長に行う寄与を認識すべきである。政府及びこれらの機関は、以下の措置を採用すべきである。

  1. 政府、国際機関、民間部門、非政府機関及び社会的パートナー(使用者団体及び労働組合)は、あらゆるレベルにおける経済的意思決定への女性の完全な参画の促進に対する系統的かつ多面的なアプローチを採用し、経済開発政策及び貧困撲滅計画を含む経済政策の実施におけるジェンダーの主流化を促進すべきである。この目的のために、政府は、有償労働者、管理職、使用者、選出公職者、非政府機関及び労働組合の構成員、生産者、家庭管理者及び消費者としての女性の影響能力と経済的意思決定能力を高めることを強く求められる。政府は、女性及び男性の有償・無償の経済活動全般に関する情報を盛り込む、政策及び計画のジェンダー分析をおこなうよう奨励される。政府、国際機関、特に国際労働機関(ILO)、民間部門及び非政府機関は、女性の経済状況に影響を及ぼす政策分野のケース・スタディ及びジェンダー分析の最善の実践を開発し、共有すべきである。
  2. 女性の経済におけるエンパワーメント及び経済的地位の向上を保障するためには、国内及び国際レベルにおける資金の十分な動員、並びに多国間、二国間及び民間の提供源を含む、女性の地位向上のためのあらゆる利用可能な資金提供機構から開発途上国への新規及び追加資金の十分な動員も求められよう。
  3. 政府は、労働市場の男女差別を打破し、女性の被雇用能力を高め、女性の技能を効果的に向上させ、特に科学、新技術及びその他の潜在的かつ革新的な雇用拡大分野における職業選択へのアクセスを拡大するために、教育制度における偏向の撤廃を促進し、支援すべきである。
  4. 民営化、金融及び貿易政策をはじめとする自由化政策を含む経済政策及び構造調整計画は、マクロ及びミクロ経済がジェンダーに及ぼす影響調査に基づいて、男女のプラスになる結果を生み出すために、これらの政策に最も大きな影響を受ける女性からのデータを投入して、ジェンダーに配慮したやり方で策定され、監視されなければならない。政府は、とりわけ、財政改革、公共部門の改革及び雇用の創出を含むマクロ経済政策がジェンダーに配慮し、中小企業に好意的なものになるよう保障すべきである。地方レベルの規則及び行政協定は、女性起業家に届くものでなければならない。構造変革期や経済後退期に女性が差別を受けないよう保障するのは、政府の責任である。
  5. 政府は、女性の権利、特に農村女性及び貧困の中で暮らす女性のそれが、土地、財産所有権、相続権、信用、及び女性銀行や協同組合といった伝統的な貯蓄制度を含む経済資源への平等なアクセスを通じて推進・実施されつつあることを保障すべきである。
  6. 国際社会は、信用、自営、及び経済体への組み入れへの女性のアクセスを保障する少額融資制度の促進を目指す国内の取組みを積極的に支援すべきである。
  7. 少額融資制度は支援され、かつ、女性の経済的なエンパワーメントと安寧、所得獲得能力及び経済体への組み入れの増進に対する影響の点からその有効性を評価するための監視を受けるべきである。
  8. 政府、民間部門、並びに教育と経済活動への参画の面で男女の均衡を推進する訓練サービスを提供する市民社会の機関は、体系的な能力作りと意識啓発、及び、実務・管理手腕及び新技術の使用能力を含む技術能力の改善と向上に焦点を合わせるべきである。女性の知識に基づいた、地方の伝統的技術及び生産物も、支援・推進されるべきである。
  9. 非政府機関及び女性団体は、すぐれた女性起業家に対する奨励措置を開発すべきである。政府、金融機関、非政府機関、市民社会、女性団体及び関係するその他の行為者が、技術援助サービス又は技術援助計画、市場情報、訓練、地域及び国際レベルのものを含むネットワークの創設及び十分な財政的支援を通じ、また適当な場合には奨励措置の開発によって、女性の起業及び自営活動を促進することが重要である。持続可能な開発と貧困撲滅とのつながりを強化するために、環境関連の、機知に基づいた、輸出志向の産業において女性が所有する企業まで、そのような奨励と支援が及ぶべきである。
  10. 最高意思決定ポストへの女性の参画のクリティカル・マスを確保するために、政府は差別を禁止する法律を施行及び監視すべきである。公務及び民間部門は、これらの法律を遵守し、法人組織に変革を導入すべきである。積極的措置(ポジティブ・アクション)又はアファーマティブ・アクションは、経済体の、女性の参画が不足している部門及びレベルにおける女性の地位向上にとって効果的な政策手段になり得る。政府は使用者に対し、客観的で透明な採用手続き、ジェンダーに配慮したキャリア・プラン、及び監視・説明責任制度の導入を奨励すべきである。
  11. 社会的パートナー(労働組合及び使用者団体)及び非政府機関は、女性の地位向上のための先進的プログラムを採用する企業及び機関の監視及び公表と、差別を禁止する法律に違反する会社の情報の公表を検討すべきである。
  12. 政府は、「北京行動綱領」で特定された、職業差別及びあらゆる形態の雇用差別の撤廃のための行動を実施する取組みを強化すべきである。そのことに関して、女性の雇用確保と労働市場への女性の再統合のための条件を、特別な考慮の対象にする必要がある。非公式部門の仕事及び不規則な仕事の女性にも、十分な配慮がなされなければならない。
  1. 政府、労働組合及び民間部門は、最低賃金及び低賃金産業に特別な焦点を当てつつ、同一価値労働同一賃金を達成するために、有償・無償の労働を通じて開発された女性の技能、知識及び専門技術の真の価値、及び有償労働の要件と条件全般をより十分に反映するための方策及び手段を含む、女性が大多数の職業と男性が大多数の職業の賃金を比較するための分析手段を開発し、利用すべきである。同一価値労働同一賃金の原則の実施に当たっては、ジェンダーに配慮した監視がきわめて重要である。この分野の包括的な政策立案には、以下の事項を含めるべきである。
    (a)
    分析手段の利用
    (b)
    効果的な法律
    (c)
    男女の賃金の透明性
    (d)
    性別分業及び男女の固定観念化した選択の変革
    (e)
    使用者のための効果的なガイダンス
  1. 政府は、特に、女性がその多数を占める最も弱い立場の労働者が見られる産業で既存の法律を施行することを含め、低賃金労働者の安寧を増進するための戦略を開発するよう奨励される。
  2. 女性が公式経済、そして特に経済的意思決定に完全に組み込まれることは、現行の性別分業を、男女が平等な待遇、賃金及び権力を享受する新しい経済構造に変えることを意味する。このためには、男女間における有償・無償労働の分担の改善が必要である。政府は、労働と個人生活及び/又は家庭生活の調和を促進するための、児童及び被扶養者のケア、親休業及び男女のための柔軟な就業制度、及び適当な場合、労働時間の短縮などの法律的・行政的な施策の策定・促進・実施を適宜含む措置を取るか又は奨励すべきである。
  3. 政府は、家庭を基盤にした労働者に関する、新たなILO条約の批准を考慮すべきである。
  4. 政府及び使用者は、よりよい教育・雇用機会を創出し、女性及び児童の人身売買を防ぎ、闘い、労働市場における女性差別を撤廃することによって、移住女性労働者の権利の保護を保障すべきである。
  5. 政府は、自国で企業活動を行うすべての国内企業及び国境を越えた企業の慣行を監視し、それらの慣行に関わる機会均等政策及び労働法を施行すべきである。
  6. 女性及び男性は、女性に好意的な企業及び社会的責任を果たす企業を特定し、投資やその企業のサービス又は製品の利用を通じて支援すべきである。
  1. 農業、食糧生産、ボランティア労働、家族経営企業、天然資源管理及び家事における労働といった女性の無償労働は、経済に対して多大な貢献をしている。無償労働は、以下のやり方を含む、既存の及び改良された方法によって測定され、評価されるべきである。
    (a)
    国民経済計算には含まれていない無償労働を数量的に測定し、その価値を評価する方法の改善に努め、中核的な国民経済計算とは別個だがそれと整合性をもったサテライト勘定又はその他の公的経済計算にその価値を正確に反映すること。
    (b)
    無償労働を数量的に測定するための、定期的な時間利用調査を実施すること。
    (c)
    開発途上国及び移行期経済諸国に対し、女性の無償労働を評価して目に見えるようにすることについての資源及び技術的援助を提供すること。
  1. 国際社会、特に債権国及びブレトンウッズ機関を含む国際金融機関は、開発途上国の対外債務及び債務の金利支払いの問題に対し、それが女性及び女性プログラムに及ぼす影響を考慮して、特に後発開発途上国のための、債務減免、補助金及び譲歩的な資金の流れを含む現行の債務免除及び減免方法を基礎にした、効果的かつ公平で開発志向の永続的解決法をさらに追求すべきである。
  2. ブレトンウッズ機関を含む国連システムの諸基金、諸計画並びに専門機関、及び世界貿易機関は、男女平等を支援するための各自の計画及び政策の有効性を確保するために、現場レベルを含むあらゆるレベルにおける調整及び意見交換を各自の権限の範囲内で改善すべきである。
  3. 開発政策は、女性の経済的なエンパワーメントに焦点を合わせるべきである。それらの政策をより効果的なものにするためには、マクロ・レベルの国家政策とミクロ・レベルにおける男女の経済的・社会的な役割及び関係との相互関連が明確でなければならない。民営化、金融及び貿易政策を含む自由化政策が女性に及ぼす影響が、評価されるべきである。
  4. 政府は、国連システムの財政、経済開発、貿易及び通商分野の政策立案を扱う管理機関(たとえば、国連総会第5委員会及び第2委員会、経済社会理事会、貿易開発理事会、工業開発理事会、世界貿易機関理事会その他)に勤務する自国代表を指名する際、できるだけ早く女性がクリティカル・マスに達することに特別の重点を置いて、男女均等目標に専心すべきである。
  5. 労働市場の性別分業と、経済的意思決定を含む高級レベルの管理的地位への女性の参画状況を監視し、女性が最高管理レベルに参画した場合の利点と逆に排除された場合の損失を示すための基本的な手段として、男女別統計の作成及び利用を促進すべきである。国連システムについては、1998年度の総合報告及び世界の女性の地位に関する報告に、女性管理職に関するデータの項が特別に加えられるべきである。この措置は、男女均衡目標の達成状況に対する特別な監視の仕組みとなり得よう。
  6. 民営化、金融及び貿易政策を含む、構造調整及び自由化政策が女性に及ぼす影響などの問題はさらに吟味されるべきであり、第52回国連総会での検討に向けて、開発への女性の効果的な動員と組み込みに関する事務総長報告の文脈の中で取り上げることもできよう。
  7. 国際社会は国際協力を強化しつつ、国内・国際両レベルにおける市場並びに技術及び資源への女性の平等なアクセスをも確保する、開かれ、ルールに則り、公平で、安定し、非差別的で透明かつ予測可能な多国間貿易システムの重要性を強調すべきである。
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