本編 > 1 > 特集 仕事や職業キャリアに関する女性の学び直し・暮らしを充実させる男性の学び直し~学び直しの現状と分析~
男女共同参画の取組を進めるに当たっては、様々な社会情勢の現状を踏まえる必要がある。令和6(2024)年時点での我が国の平均寿命は、女性が87.13歳、男性が81.09歳であり、令和52(2070)年には女性91.94歳、男性85.89歳に達すると推計されている(特-Ⅰ図)。長い人生を見据えると、「教育、仕事、老後」という単線型の人生設計ではなく、人生のステージに応じた多様な働き方、生き方を選択できることが男女を問わず重要である。また、社会活動への参加者は、現在の生活に満足している割合が高い傾向にあり(特-Ⅱ図)、学習・自己啓発・訓練の実施率は、高齢者を含め近年上昇傾向にある(特-Ⅲ図)。希望に応じて、自らの知識や経験を生かせる役割や居場所を持つことも、長い人生を豊かにする大切な要素である。
社会構造も大きく変化している。未婚者や単独世帯が増え1、女性の就業率は上昇し、令和7(2025)年には、15~64歳女性の約4分の3が就業している。共働き世帯数は専業主婦世帯数の3.5倍となり、妻がフルタイムで働く共働き世帯数も増加している2。一方で、男女間における仕事と家事・育児・介護の分担の偏り3、女性に多い非正規雇用4、職種の偏りなどを背景に、男女間賃金格差は依然として存在する5。女性の所得向上・経済的自立は、男女の置かれた状況の違いなどを背景に生じている様々な困難の解消に資すると同時に、個人が尊厳をもって生きることにも深くかかわる重要な課題である。
また、人口減少の局面において、地域社会の維持や地域課題の解決の担い手の確保も課題である。自治会、PTA、自主防災組織など地域における多様なステークホルダーの協働の下で地域課題を解決していくことの重要性が高まる中、地域の住民として課題を知り、その解決に向けて学ぶことの意義は大きい。
さらに、AI(Artificial Intelligence(人工知能))6を始めとするテクノロジーは急速に進展し、幅広い分野で活用され、我が国の産業構造にも影響を与えている。他方、急速な技術革新や時代の変化に対応するために、女性も男性も、年齢にかかわらず、必要な知識やスキルを継続的に身につける必要性が高まっている。
このような状況を踏まえると、人生の様々な段階における多様な学び直しは、今後ますます重要性を増してくるものと考えられる。かかる観点から、学び直しに参画する機会をめぐって、社会における制度又は慣行を背景として男女間に格差が存在するとしたら、男女共同参画社会の形成の推進の観点から対応が必要になると考えられる。
そこで、本特集の第1節及び第2節では、政府統計及び内閣府で実施した意識調査結果等から社会環境の変化と学び直しに対する人々の意識を明らかにし、第3節では、多様な学び直しの促進の重要性とその支援の在り方について考察する。
特-II図 社会活動への参加状況と現在の生活に満足している者の割合(男女、年齢階級別・令和7(2025)年)![]()

特-III図 過去1年間の学習・自己啓発・訓練の行動者率の推移(男女、年齢階級別)![]()

1 家族の姿の変化については、「令和4年版男女共同参画白書 特集-人生100年時代における結婚と家族~家族の姿の変化と課題にどう向き合うか~」で分析している。
2 総務省「労働力調査(基本集計)」によると、令和7(2025)年時点で、15~64歳の就業率は、女性75.3%、男性84.6%となっている。また、総務省「労働力調査(詳細集計)」によると、雇用者の共働き世帯(妻64歳以下)は1,254万世帯、専業主婦世帯(男性雇用者と無業の妻から成る世帯(64歳以下))は358万世帯となっている。
3 男女間の分担の偏りについては、「令和5年版男女共同参画白書 特集-新たな生活様式・働き方を全ての人の活躍につなげるために~職業観・家庭観が大きく変化する中、「令和モデル」の実現に向けて~」で分析している。
4 総務省「労働力調査(基本集計)」によると、令和7(2025)年時点で、正規の職員・従業員は、女性1,341万人、男性2,367万人、非正規の職員・従業員は、女性1,450万人、男性678万人となっている。
5 厚生労働省「令和7年賃金構造基本統計調査」によると、一般労働者(短時間労働者以外の常用労働者)の賃金(令和7(2025)年6月分として支払われた所定内給与額の平均)は、女性285,900円、男性373,400円。男女間賃金格差(男性=100)は、76.6となっている。また、短時間労働者の1時間当たり賃金は、女性1,418円、男性1,769円となっている。
6 総務省・経済産業省「AI事業者ガイドライン(第1.2版)」(令和8(2026)年3月31日)における定義は次のとおり。
- AI…「AIシステム」自体又は機械学習をするソフトウェア若しくはプログラムを含む抽象的な概念。
- AIシステム…活⽤の過程を通じて様々なレベルの⾃律性をもって動作し学習する機能を有するソフトウェアを要素として含むシステム(機械、ロボット、クラウドシステム等)。
- AIモデル(MLモデル)…AIシステムに含まれ、学習データを用いた機械学習によって得られるモデルで、入力データに応じた予測結果を生成する。
- 生成AI…文章、画像、プログラム等を生成できるAIモデルに基づくAIの総称。
特集のポイント
第1節 人生100年時代における生活や社会構造の変化
- 平均寿命・健康寿命が延伸するとともに、女性・高齢者の就業率の向上を含め働き方や社会構造に大きな変化がみられる。
- いわゆる「L字カーブ」を始めとする男女間の格差は依然として存在している。他方、男性は女性に比べて、孤独や社会的孤立に陥りやすい傾向がある。
- AIなどテクノロジーが急速に発展しその利用が拡大する一方で、各種のデジタルデバイドが存在し、その発展に不安を感じる人も相当みられる。
- 職業訓練や自己啓発をした者の割合は、女性の方が低く、職業上必要とされるスキルの習得における男女差につながっていると推測される。
- 産業構造の面では、AIなどのテクノロジーの進展により、様々な産業においてAI・ロボット等利活用人材を含む専門職や現場人材が不足する可能性が指摘されている。
第2節 人生を豊かにする学び直しへの意欲と障壁
- 学び直しの一般的な意義・必要性は、相当な割合の人々が認めている。女性の方が認める人が多く、特に中高年の女性で割合が高い。
- 男女ともに、1年以内に学んでいる者は、そうでない者に比べ、現在の普段の暮らしの中で自分の役割や居場所が「あると思う」とする者の割合が顕著に高い。
- 学び直しの意欲があっても、実際に学び直しを行っている者は多いとはいえない。仕事や職業キャリアに関する学び直しについて、「学ぶ意欲がある」と答えている者のうち、女性の約7割、男性の約6割が「学ぶ意欲はあるが、過去1年以内に学んでいない」と答えた。暮らしを充実させる学び直しについても、男女とも7割前後の者が「学ぶ意欲がある」と答えているが、その半分以上は「学ぶ意欲はあるが、過去1年以内に学んでいない」と答えた。
- 学び直しへの障壁としては、男女ともに「金銭的な余裕がない」、「時間的な余裕がない」、「何を学んでいいか分からない」といった回答が多い。
- 女性は男性に比べ「金銭的な余裕がない」、「家事等が忙しくて時間がない」といった回答が、男性は女性に比べ「仕事が忙しくて時間がない」、「学んでも会社から評価されない」といった回答が多い。
第3節 多様な豊かさを実現できる社会の形成に向けた学び直しの促進
- 学び直しに意欲を持つ者が直面する経済的事情、時間的制約、情報の不足や不安、キャリアへの影響・職場からの評価といった障壁の解消が求められる。
- その実現に当たっては、経済的事情にも配慮した教材やプログラムの提供、就業環境の改善を通じた学び直しに充てられる時間の確保、具体的な学び直しのテーマや機会の積極的な提示など、行政等による環境整備の役割も重要と考えられる。
- 男女共同参画社会の形成の観点からは、地域における連携・協働の拠点である男女共同参画センターが、学び直しへの障壁に関する男女の傾向の差を踏まえ、地域の実情に応じた課題の解決に資する多様な学び直しの機会を提供することの意義は大きい。国としても、ガイドラインの周知、地方女性活躍推進交付金、独立行政法人男女共同参画機構の取組等により支援する必要がある。
- 「人生を豊かにする学び直し」は、個人の成長のみならず、地域・社会課題の解決、ひいては我が国の経済成長などを通じて、女性も男性も暮らしやすい多様な幸せ(well-being)の実現する社会の形成につながる。
