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第1節 生涯にわたる男女の健康の包括的な支援
ア 包括的な健康支援のための体制の構築
女性の身体的・精神的な健康及び女性医療に関する調査・研究を進めるとともに、女性医療に関する普及啓発、医療体制整備、女性の健康を脅かす社会的問題の解決を含めた包括的な健康支援施策を推進する。【こども家庭庁、厚生労働省】
年代に応じて女性の健康に関する教育及び啓発を行うとともに、女性の健康の増進に関する情報の収集及び提供を行う体制を整備するために必要な措置を講じ、女性が健康に関する各種の相談、助言又は指導を受けることができる体制を整備する。【こども家庭庁、文部科学省、厚生労働省】
女性の心身の特性に応じた保健医療サービスを専門的・総合的に提供する体制の整備(例:女性の専門外来、総合診療を行う医療体制の整備)、福祉等との連携(例:心身を害した女性を治療する医療施設と配偶者暴力相談支援センターや民間シェルター、女性自立支援施設等との連携)等を推進する。【内閣府、厚生労働省】
女性の心身に多大な影響を及ぼす暴力や貧困等の社会的要因と、女性の疾患や生活習慣との因果関係について調査を行うとともに、月経関連疾患や更年期障害に対処するための医療者の関与の効果を検証するなど、女性の生涯にわたる健康維持に向けた保健医療の在り方等に関する調査研究を推進する。その成果の普及啓発に当たっては、行動科学の専門家の知見も活用し、必要な層に必要な情報を効果的に届ける方法を検討する。
あわせて、子宮頸がん検診・乳がん検診の更なる受診率向上に向けた取組を行う。
また、がんを始めとする疾患についても、引き続き、治療と仕事を両立できる環境整備の取組を推進する。【こども家庭庁、厚生労働省】
予期せぬ妊娠の可能性が生じた女性が、緊急避妊薬に関する専門の研修を受けた薬剤師の十分な説明の上で対面で服用すること等を条件に、処方箋なしに緊急避妊薬を適切に利用できるよう、薬の安全性を確保しつつ、当事者の目線に加え、幅広く健康支援の視野に立って検討する。なお、緊急避妊薬を必要とする女性には、性犯罪・性暴力、配偶者等からの暴力が背景にある場合もあることから、令和6(2024)年度も試行的に実施する「緊急避妊薬の販売を行うモデル的調査研究」においては、薬局とワンストップ支援センターや近隣の医療機関等との連携体制を構築した上で、必要な場合には、薬局から同センター等を紹介するなどの対応を引き続き行う。また、義務教育段階も含め、年齢に応じた性に関する教育を推進する。さらに、性や妊娠に関し、助産師等の相談支援体制を強化する。【内閣府、こども家庭庁、文部科学省、厚生労働省】
女性の健康の包括的支援に必要な保健、医療、福祉、教育等に係る人材の確保、養成及び資質の向上を図るとともに、医学・看護学教育における女性医療の視点の導入を促進する。【文部科学省、厚生労働省】
令和元(2019)年12月に施行された成育過程にある者及びその保護者並びに妊産婦に対し必要な成育医療等を切れ目なく提供するための施策の総合的な推進に関する法律(平成30年法律第104号)に基づき、妊娠期から子育て期に至るまでの切れ目のない支援の在り方の検討などを推進する。【こども家庭庁】
不適切養育などの成育歴や、生きづらさや社会的孤立などの背景を理由とした、覚醒剤・大麻等の使用者も認められるほか、向精神薬等を悪用した性被害も発生していることから、末端使用者への再使用防止対策、社会復帰支援施策等及び向精神薬等の監視・取締りを推進する。【警察庁、法務省、厚生労働省】
精神障害の労災認定件数が増加しているなどの状況を踏まえ、男女問わず、非正規雇用労働者を含む全労働者に対して、職場のメンタルヘルス対策等を通じた労働者の健康確保のための対策を講ずる。ストレスチェック実施や産業医の配置が義務付けられていない中小事業所で働く労働者の健康確保についても、引き続き、支援施策等を推進する等、対策を講ずる。【厚生労働省】
月経、妊娠・出産、更年期等ライフイベントに起因する望まない離職等を防ぐため、フェムテック企業や医療機関、地方公共団体等が連携して、働く女性に対しフェムテックを活用したサポートサービスを提供する実証事業を実施し、働く女性の就労継続を支援する。さらに、導入を目指す企業等への働きかけや、ユーザーの認知度を高める取組を行うことで、一層のフェムテックの利活用の促進を図っていく。【経済産業省】
経済的な理由等で生理用品を購入できない女性がいるという「生理の貧困」は、女性の健康や尊厳に関わる重要な課題である。このため、地域女性活躍推進交付金により、地方公共団体が、女性に寄り添った相談支援の一環として行う生理用品の提供を支援する。さらに、「生理の貧困」に係る取組の横展開に資するよう、また、生理用品を必要とする女性が必要な情報に基づきアクセスできるよう、各地方公共団体における取組を調査する。【内閣府、厚生労働省】
国立成育医療研究センターに「女性の健康」に関するナショナルセンターとしての機能を持たせるとともに、全国の研究機関等の支援のため、我が国の女性の健康に関する研究の司令塔機能を構築する。また、「女性の健康」に関わる最新のエビデンスの収集・情報提供ができる仕組みを構築する。【こども家庭庁、厚生労働省】
イ 妊娠・出産に対する支援
市町村による妊婦等に対する早期の妊娠届出の勧奨や妊婦健診等の保健サービスの推進、出産育児一時金及び産前産後休業期間中の出産手当金、社会保険料免除などにより、妊娠・出産期の健康管理の充実及び経済的負担の軽減を図る。【こども家庭庁、厚生労働省】
不妊治療の保険適用について、引き続き適切に運用する。また、現時点で保険適用の対象となっていない治療についても、先進医療の仕組み等も活用しながら、必要に応じて保険適用を目指す。【こども家庭庁、厚生労働省】
不妊治療や不育症治療に関する情報提供や相談体制を強化するため、性と健康の相談センター機能の拡充を図る。【こども家庭庁】
不妊治療について職場での理解を深め、男女が共に不妊治療と仕事を両立できる職場環境の整備を進める。令和4(2022)年1月から国家公務員に導入した不妊治療のための「出生サポート休暇」について、休暇を取得したい職員が取得できるよう周知啓発等を行うなど、引き続き不妊治療と両立しやすい職場環境の整備を図る。【厚生労働省、(人事院)】
小児・AYA世代(Adolescent and Young Adult:思春期・若年成人)のがん患者等が将来子供を出産することができる可能性を温存するための妊孕性温存療法、温存後生殖補助医療等に対する経済的支援を含む研究促進事業を引き続き推進する。【厚生労働省】
性と健康の相談センターなどにおいて、予期せぬ妊娠に関する悩みに対し、専門相談員を配置するなどして相談体制を強化し、市町村や医療機関への同行支援や、学校や地域の関係機関とも連携する。特に、出産前後に配慮を要する場合や、暴力、貧困、孤立、障害等の困難を抱える場合においては、より手厚い支援を行えるようにする。【こども家庭庁、厚生労働省】
母性健康管理措置について女性労働者等に周知するとともに母性健康管理指導事項連絡カードの活用を促進し、妊娠中及び出産後の女性労働者に対する適切な母性健康管理の推進を図る。また、男女雇用機会均等法の着実な施行により、妊娠・出産等に関するハラスメントの防止対策を推進する。【厚生労働省】
産後うつの早期発見など出産後の母子に対する適切な心身のケアを行うことができるよう、「こども家庭センター」等の関係機関と連携しつつ、地域の実情に応じ、産後ケア事業の全国展開や産前・産後サポートの実施を通じて、妊産婦等を支える地域の包括支援体制を構築する。シングルマザーを始め、出産・育児において、家族・親族の支援を得られにくい女性に対しても、手厚い支援を行えるようにする。【こども家庭庁】
産後うつのリスクも踏まえ、いわゆるワンオペ育児による負担の軽減のため、男性の育児参画を促す。公共交通機関、都市公園や公共性の高い建築物において、ベビーベッド付男性トイレ等の整備等を推進するほか、子供連れの乗客等への配慮等を求めることにより、男性が子育てに参画しやすくなるための環境整備を行う。【こども家庭庁、厚生労働省、国土交通省】
妊婦や子育てに温かい社会づくりに向けて、ベビーカーマークの普及促進を図る。【国土交通省】
若手産婦人科医の女性割合の増加などに鑑み、医師の働き方改革による、産科医師の労働環境の改善をしつつ、安全で質が高い周産期医療体制の構築のための産科医療機関の集約化・重点化を推進する。【厚生労働省】
出生前診断等に関する法制度等の在り方について、多様な国民の意見を踏まえた上で検討が行われる必要があり、その議論に資するよう、必要に応じ実態の把握等を行う。【こども家庭庁】
遺伝性疾患や妊娠中の薬が胎児へ与える影響などの最新情報に基づき、基礎疾患を抱える妊産婦や妊娠を希望している人に対する相談体制を整備する。【こども家庭庁、厚生労働省】
ウ 年代ごとにおける取組の推進
(ア)学童・思春期
学校・行政・地域・家庭が連携し、若年層に対して、以下の事項について、医学的・科学的な知識を基に、個人が自分の将来を考え、多様な希望を実現することができるよう、包括的な教育・普及啓発を実施するとともに、相談体制を整備する。【こども家庭庁、文部科学省、厚生労働省】
- 女性の学童・思春期における心身の変化や健康教育に関する事項(例えば、月経関連症状及びその対応、子宮内膜症・子宮頸がん等の早期発見と治療による健康の保持、ワクチンによる病気の予防に関する事項)
- 医学的に妊娠・出産に適した年齢、計画的な妊娠、葉酸の摂取、男女の不妊、性感染症の予防など、妊娠の計画の有無にかかわらず、早い段階から妊娠・出産の知識を持ち、自分の身体への健康意識を高めること(プレコンセプションケア)に関する事項
- 睡眠、栄養、運動、低体重(やせ過ぎ)・肥満、喫煙など、女性の生涯を見通した健康な身体づくりに関する事項
10代の性感染症罹患率、人工妊娠中絶の実施率、出産数等の動向を踏まえつつ、性感染症の予防方法や避妊方法等を含めた性に関する教育を推進する。
また、予期せぬ妊娠や性感染症の予防や必要な保健・医療サービスが適切に受けられるよう、養護教諭と学校医との連携を図る等、相談指導の充実を図る。【こども家庭庁、文部科学省、厚生労働省】
(イ)成人期
約8割の女性が就業している5ことから、企業における健診の受診促進や妊娠・出産を含む女性の健康に関する相談体制の構築等を通じて、女性がセルフケアを行いつつ、仕事に向かう体力・気力を維持できる体制を整備する。また、職場の理解も重要なことから、職場等における女性の健康に関する研修や啓発活動の取組を進める。その際、科学的に正しい情報を行動科学等の専門的知見も活用して効果的に伝える。
国が率先して取り組む一環として、内閣府等において新規採用職員や管理職を主な対象に、女性の健康に関するヘルスリテラシー向上に係る研修を実施する。【内閣府、厚生労働省、経済産業省】
子宮頸がん検診・乳がん検診の受診率の向上を図る。【厚生労働省】
国家公務員及び地方公務員については、各府省及び地方公共団体が実施する子宮頸がん検診・乳がん検診に関し、女性職員が受診しやすい環境整備を行う。
内閣官房内閣人事局においては、引き続き、「国家公務員健康週間」において、婦人科検診の重要性を含めた女性の健康に関する講演会を開催することにより国家公務員の意識啓発を図る。
人事院においては、引き続き、女性職員が受診しやすい環境となるよう周知啓発を行うことにより取組を推進する。(再掲)【内閣官房、総務省、全府省庁、(人事院)】
HIV/エイズ、梅毒を始めとする性感染症は、次世代の健康にも影響を及ぼすものであり、その予防から治療までの総合的な対策を推進する。【厚生労働省】
個人が自分の将来を考え、健康を守りながら妊娠・出産を実現することができるよう、以下の事項について、行政・企業・地域が連携し、普及啓発や相談体制の整備を行う。【内閣府、こども家庭庁、文部科学省、厚生労働省、経済産業省】
- 医学的に妊娠・出産に適した年齢、計画的な妊娠及びその間隔、子宮内膜症・子宮頸がん等の早期発見と治療による健康の保持、男女の不妊など、妊娠の計画の有無にかかわらず、早い段階から妊娠・出産の知識を持ち、自分の身体への健康意識を高めること(プレコンセプションケア)に関する事項
- 暴力による支配(配偶者等からの暴力、ハラスメントなど)の予防に関する事項
- 睡眠、栄養、運動、低体重(やせ過ぎ)・肥満、喫煙など、次世代に影響を与える行動に関する事項
思春期から若年成人期までのがん罹患及び治療による、将来の妊娠や年代ごとの健康に関する情報の集積や普及啓発を行い、相談体制を引き続き整備する。【こども家庭庁、文部科学省、厚生労働省】
喫煙、受動喫煙及び飲酒について、その健康被害に関する正確な情報の提供を行い、喫煙・飲酒が胎児や生殖機能に影響を及ぼすことなど十分な情報提供に努める。【こども家庭庁、厚生労働省】
(ウ)更年期
女性特有の疾患に対応した検診として、骨粗しょう症検診、子宮頸がん検診、乳がん検診が実施されており、特にがん検診の受診率及び精密検査の受診率の向上を図る。【厚生労働省】
性ホルモンの低下等により、心身に複雑な症状が発生しやすく、また更年期以降に生じやすい疾患の予防が重要で効果的な年代であるため、更年期障害及び更年期を境に発生する健康問題の理解促進やホルモン補充療法等の治療の普及を含め、包括的な支援に向けた取組を推進する。【厚生労働省】
更年期にみられる心身の不調については、個人差があるものの、就業や社会生活等に影響を与えることがあり、職場等における更年期の健康に関する研修や啓発活動の取組及び相談体制の構築を促進する。また、更年期症状による体調不良時等に対応する休暇制度を導入している企業の事例を紹介するとともに、その導入状況に関する調査結果を踏まえた周知を行う。【厚生労働省、経済産業省】
この時期は、更年期以降に発生する疾患やフレイル状態(加齢に伴う心身機能や認知機能の低下により支援が必要な状態)を予防するために重要な年代であることから、運動や栄養、睡眠などの生活習慣が老年期の健康に及ぼす影響について、老年期の心身の健康に資する総合的な意識啓発に取り組む。また受診率の低い被扶養者への働きかけなど、特定健康診査・特定保健指導の受診率向上を図り、生活習慣病の予防に取り組む。【厚生労働省】
(エ)老年期
我が国における高齢化の進展及び疾病構造の変化を踏まえ、口腔機能低下、認知機能低下及びロコモティブシンドローム(運動器症候群)等の予防、社会生活を営むために必要な機能の維持及び向上等により、男女ともに健康寿命(健康上の問題で日常生活が制限されることなく生活できる期間)の延伸を実現する。【厚生労働省】
フレイル状態になることが多いことから、フレイルの進展予防対策を実施する。【厚生労働省】
5 令和5(2023)年における25~44歳の女性人口に占める就業者の割合80.8%(総務省「労働力調査(基本集計)」)。