第5分野 女性に対するあらゆる暴力の根絶

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第2節 性犯罪・性暴力への対策の推進

1 性犯罪・性暴力は、被害者の尊厳を著しく踏みにじる行為であり、決して許されないものである。「相手の同意のない性的な行為は性暴力である」等の認識を社会全体で共有し、性犯罪・性暴力の根絶のための取組や被害者支援を強化していく必要がある。こうした認識の下、「性犯罪・性暴力対策の更なる強化の方針」(令和5年3月30日性犯罪・性暴力対策強化のための関係府省会議決定)に基づき、令和5(2023)年度から令和7(2025)年度までの3年間を「更なる集中強化期間」として、性犯罪・性暴力の根絶のための取組や被害者支援を強化する。【内閣府、警察庁、こども家庭庁、法務省、文部科学省、厚生労働省、関係府省】

2 刑法及び刑事訴訟法の一部を改正する法律案及び性的な姿態を撮影する行為等の処罰及び押収物に記録された性的な姿態の影像に係る電磁的記録の消去等に関する法律案についての国会審議の状況等を踏まえ、適切に対応する。【法務省、関係省庁】

3 監護者による性犯罪・性暴力や障害者に対する性犯罪・性暴力等の実態把握に努めるとともに、厳正かつ適切な対処に努めるなど、必要な措置を講ずる。【こども家庭庁、法務省、文部科学省、厚生労働省、関係府省】

4 男女間の取り巻く環境の変化に応じた被害傾向の変化等に対応する施策の検討に必要な基礎資料を得ることを目的に平成11(1999)年度から実施している「男女間における暴力に関する調査」について、令和5(2023)年度調査を実施する。(再掲)【内閣府、関係府省】

5 各都道府県警察の性犯罪被害相談電話につながる全国共通番号「#8103(ハートさん)」の活用についての広報や性犯罪捜査担当係への女性警察官の配置推進等、性犯罪被害に遭った女性が安心して警察に届出ができる環境づくりのための施策を推進し、性犯罪被害の潜在化防止に努める。【警察庁】

6 性犯罪に関して被害の届出がなされた場合には、被害者の立場に立ち、明白な虚偽又は著しく合理性を欠くものである場合を除いて、即時に受理することを更に徹底する。また、被害届受理時の説明によって、被害者に警察が被害届の受理を拒んでいるとの誤解を生じさせることがないよう、必要な指導を行う。告訴についても、被害者の立場に立って、迅速・的確に対応する。【警察庁】

7 性犯罪等の被害者は、PTSD(心的外傷後ストレス障害)等の精神的な疾患に苦しむケースが少なくない現状を踏まえ、捜査関係者を含む関係者において、被害者の精神面の被害についても的確に把握し、事案に応じた適切な対応を図る。【警察庁、関係府省】

8 関係省庁は、「女性活躍・男女共同参画の重点方針2022(女性版骨太の方針2022)」(令和4年6月3日すべての女性が輝く社会づくり本部・男女共同参画推進本部決定)を踏まえ取りまとめた「痴漢撲滅に向けた政策パッケージ」(令和5年3月30日内閣府、警察庁、法務省、文部科学省、国土交通省取りまとめ)に基づき、痴漢は重大な性犯罪であるという認識の下、徹底した取締り等による加害者への厳正な対処、被害申告・相談をしやすい環境の整備、痴漢対策等のための防犯アプリの普及や鉄道事業者等と連携した痴漢防止の広報・啓発活動等の取組を関係府省が一体となって実施する。【内閣府、警察庁、法務省、文部科学省、国土交通省】

9 性犯罪・性暴力被害者のためのワンストップ支援センターについて、24時間365日対応化や拠点となる病院における環境整備等の促進、コーディネーターの配置・常勤化などの地域連携体制の確立、専門性を高めるなどの人材の育成や運営体制確保、支援員の適切な処遇など運営の安定化及び質の向上を図る。

また、全国共通番号「#8891(はやくワンストップ)」を周知するとともに、ワンストップ支援センターの通話料の無料化を継続する。夜間・休日においても相談を受け付けるコールセンターの設置及び地域での緊急事案への対応体制の整備、各都道府県の実情に応じた被害者支援センターの増設等、相談につながりやすい体制整備を図る。さらに若年層等の性暴力被害者が相談しやすいよう、SNS相談「Cure time(キュアタイム)」を実施する。

厚生労働省では、若年層を始めとした困難を抱えた女性が支援に円滑につながるよう、都道府県に対し、SNSを活用した相談窓口の開設準備、運用に関する支援を行う。(再掲)【内閣府、厚生労働省、関係府省】

10 ワンストップ支援センターと婦人相談所・婦人相談員などとの連携を強化し、機動的な被害者支援を展開する。また、被害者の要望に応じた支援をコーディネートできるよう、性犯罪被害者支援に係る関係部局と民間支援団体間の連携を促進する。さらに、障害者や男性等を含め、様々な被害者への適切な対応や支援を行えるよう、研修を実施する。【内閣府、警察庁、厚生労働省、関係府省】

11 若年層等の性暴力被害者が相談しやすいよう、SNS相談「Cure time(キュアタイム)」を実施する。

厚生労働省では、若年層を始めとした困難を抱えた女性が支援に円滑につながるよう、都道府県に対し、SNSを活用した相談窓口の開設準備、運用に関する支援を行う。(再掲)【内閣府、厚生労働省】

12 被害者からの事情聴取に当たっては、その精神状態等に十分に配意するとともに、被害者が安心して事情聴取に応じられるよう、引き続き、女性警察官等の配置や、被害者の心情に配慮した被害者専用の事情聴取室の活用などによる事情聴取等の推進に努める。被害者の事情聴取の在り方等について、引き続き、精神に障害がある性犯罪被害者に配慮した聴取(代表者聴取)の取組の試行を行うほか、より一層適切なものとなるような取組を検討し、適切に対処する。また、被告人の弁護人は、被害者に対する尋問に際しては、十分に被害者の人権に対する配慮が求められることにつき、啓発に努める。【警察庁、こども家庭庁、法務省、国土交通省】

13 被害者に対する不適切な対応による更なる被害を防止する観点も含め、支援に従事する関係者に対して、啓発・研修を実施する。また、刑事司法に関係する検察官等に対し、性犯罪に直面した被害者の心理や障害のある性犯罪被害者の特性や対応についての研修を実施する。

内閣府では、性犯罪被害者等が安心して必要な相談・支援を受けられる環境を整備するために、ワンストップ支援センターの相談員等を対象としたオンライン研修教材を作成し、提供するとともに、研修を実施する。【内閣府、法務省、関係府省】

14 医療機関における性犯罪被害者の支援体制、被害者の受入れに係る啓発・研修を強化し、急性期における被害者に対する治療、緊急避妊等に係る支援を含む、医療機関における支援を充実させるとともに、支援に携わる人材の育成に資するよう、取り分け女性の産婦人科医を始めとする医療関係者に対する啓発・研修を強化する。【厚生労働省、関係府省】

15 性犯罪被害者に対する包括的・中長期的な支援を推進するとともに、警察庁においては、医療費・カウンセリング費用の公費負担制度の効果的な運用を図る。

内閣府では、性犯罪・性暴力被害者支援のための交付金により、ワンストップ支援センターを利用する被害者の医療費・カウンセリング費用の助成を行う。また、性犯罪に関する専門的知識・技能を備えた医師、看護師、医療関係者等や民間支援員の活用を促進する。【内閣府、警察庁、法務省、厚生労働省】

16 性犯罪・性暴力事件及びその裁判に関する報道において、被害に関する詳細な描写や被害者が特定される情報が深刻な二次被害をもたらすことから、その取扱いの配慮について、メディアへの啓発を行うための必要な検討等を行う。【内閣府、関係府省】

17 医師や看護師を養成する教育の中で、性犯罪被害等に関する知識の普及に努める。【文部科学省、厚生労働省】

18 被害者の心のケアを行う専門家の育成等相談体制の充実を図る。【厚生労働省】

19 都道府県警察及び保護観察所において、13歳未満の子供を対象とした暴力的性犯罪受刑者の出所後の所在等の情報を共有し、その所在を確認するなどして、再犯防止を図る。【警察庁、法務省】

20 刑事施設及び保護観察所において性犯罪者に実施している専門的プログラムの着実な実施や、指導者の育成など、性犯罪者に対する再犯防止対策を進める。【法務省】

(21) 二次被害防止の観点から被害者支援、捜査、刑事裁判手続における被害者のプライバシー保護を図るとともに、メディア等を通じた的確な情報発信により性犯罪に対する一般社会の理解を増進する。【内閣府、警察庁、法務省、関係府省】

(22) 性犯罪・性暴力の実態把握に努めるとともに、これを含め、性暴力等を許さない気運の更なる醸成に向けた予防啓発の拡充に努める。【内閣府、関係府省】

(23) アダルトビデオ出演被害について、性をめぐる個人の尊厳が重んぜられる社会の形成に資するために性行為映像制作物への出演に係る被害の防止を図り及び出演者の救済に資するための出演契約等に関する特則等に関する法律(令和4年法律第78号。以下「AV出演被害防止・救済法」という。)による出演被害の防止及び被害者の救済が適切に図られるよう、同法の趣旨や、出演契約の特則等の周知を進めるとともに、相談窓口であるワンストップ支援センターにおける被害者への相談支援の充実、SNSの活用等による広報啓発の継続的な実施、厳正な取締りの推進等に努める。また、AV出演被害防止・救済法の施行後における被害等の状況について適切に把握する。さらに、関係機関等の協力を得て、差止請求や拡散防止に係る措置に関する支援の充実に取り組む。【内閣府、警察庁、法務省、関係府省】