第6分野 男女共同参画の視点に立った貧困等生活上の困難に対する支援と多様性を尊重する環境の整備

本編 > 2 > 第1部 > II > 第6分野 > 第1節 貧困等生活上の困難に直面する女性等への支援

第1節 貧困等生活上の困難に直面する女性等への支援

ア 就業・生活の安定を通じた自立に向けた取組

1 男女の均等な機会及び待遇の確保の徹底、男女間の賃金格差の解消、女性の就業継続や再就職の支援、職場における各種ハラスメントの防止、政府の支援情報を一元的に提供する「女性応援ポータルサイト」の運営により、ワーク・ライフ・バランスの推進等に向けた取組を行っている。【内閣府、厚生労働省】

2 男性に比べ女性の方が雇用者に占める非正規雇用労働者の割合が高いことが女性が貧困に陥りやすい背景の一つとなっていることから、公正な待遇が図られた多様な働き方の普及、同一企業における正規雇用労働者と非正規雇用労働者との間の不合理な待遇差の解消等を推進している。【厚生労働省】

3 令和4(2022)年10月に、短時間労働者への被用者保険の適用拡大に係る企業規模要件を501人以上から101人以上に引き下げた。また、令和4(2022)年10月及び令和6(2024)年10月の短時間労働者への被用者保険の適用拡大に向けて、準備・周知・広報を行った。(再掲)【厚生労働省】

4 内閣府では、配偶者からの暴力の被害者等の保護や自立支援を図るため、交付金の交付により、官民連携の下で民間シェルター等による先進的な取組を推進する都道府県等への支援を行っている。(再掲)【内閣府、法務省、厚生労働省、国土交通省、関係府省】

5 困難を抱える者の課題は、経済的困窮を始めとして、就労活動困難、病気、住まいの不安定、家庭の課題、メンタルヘルス、家計管理の課題、就労定着困難、債務問題など多岐にわたり、かつ、こうした課題を複数抱える者が存在する。これを踏まえ、複合的な課題を抱える生活困窮者のそれぞれの状況に応じ、包括的な支援を行いその自立を促進するため、生活困窮者自立支援法(平成25年法律第105号)に基づく相談支援、就労支援、多様な就労機会の提供、居住確保支援、家計相談支援等を行っている。【厚生労働省】

6 困難女性支援法の成立を踏まえ、婦人相談所(新法の女性相談支援センター)や婦人保護施設(新法の女性自立支援施設)の機能強化など各都道府県での支援体制の計画的な整備、常勤化や市町村への配置の促進などを含む婦人相談員(新法の女性相談支援員)の人材の確保・養成・処遇改善の推進、広域的な民間団体相互の連携基盤の構築の検討を含めた民間団体との協働の促進など、新法の令和6(2024)年4月の円滑な施行に向けた環境整備を図っている。【厚生労働省】

イ ひとり親家庭等の親子が安心して生活できる環境づくり

1 ひとり親家庭の実情に応じ、マザーズハローワーク、母子家庭等就業・自立支援センター等において、ひとり親を含む子育て中の女性等に対するきめ細かな就職支援を実施している。また、ひとり親家庭の親等の就労支援に資する職業訓練や各種雇用関係助成金の活用を推進している。さらに、就職に有利になる資格の取得や主体的な能力開発の取組を促進し、生活の安定を図るため、ひとり親家庭の親に対する給付金等の支給を実施している。加えて、企業に対して、ひとり親の優先的な雇用について協力を要請し、助成金を通じて企業の取組を支援するとともに、マザーズハローワーク等において、協力企業に関する情報を提供した。【厚生労働省】

2 ひとり親家庭等が安心して子育てをしながら生活できる環境を整備するため、以下の取組を含めた総合的な支援を展開している。【内閣府、厚生労働省、国土交通省】

  • ひとり親世帯や住宅困窮度の高い子育て世帯に対し、公営住宅への優先入居や、民間賃貸住宅を活用したセーフティネット登録住宅の推進、登録住宅の改修、入居者負担の軽減、居住支援等への支援を通じ、住まいの確保を支援している。
  • ひとり親家庭の子供に対する、放課後児童クラブ等の終了後に生活習慣の習得・学習支援、食事の提供等を行うことが可能な居場所づくりを支援している。
  • 児童扶養手当の支給、母子父子寡婦福祉資金貸付金の貸付けにより経済的な支援を実施するとともに、引き続き支給要件の周知等を図っている。
  • デジタル化社会到来の中で、女性が経済的に自立できるよう、女性デジタル人材の育成など、多様な主体による連携体制の構築の下で地域の実情に応じて地方公共団体が行う取組を地域女性活躍推進交付金により支援している。

3 ひとり親家庭を対象とした様々な支援情報を提供している。また、ひとり親家庭の相談窓口において、ひとり親家庭が抱える様々な課題や個別のニーズに対応するため、適切な支援メニューをワンストップで提供する体制を整備している。【厚生労働省(こども家庭庁)】

4 養育費の取決め等の促進や別居時の婚姻費用の分担制度などについて、動画やパンフレット等による効果的な周知・啓発を行っている。養育費等相談支援センターや地方公共団体における養育費の相談支援について、多様な方法での提供や、身近な地域での伴走型の支援、専門的な相談を更に充実・強化するとともに、離婚前後親支援モデル事業を通して、弁護士等による支援を含めた離婚前からの親支援の充実や、関係部署の連携強化を含めた地方公共団体の先駆的な取組への支援を実施している。また、養育費等の取決めなどに関する法的支援について、効果的な支援策の組合せの在り方や、養育費の支払を求める民事執行手続における困難を解消するための支援の在り方等について、地方公共団体と連携したモデル事業による実証的な調査研究を行った。第三者から債務者の財産に関する情報を取得する手続を新設するなどした民事執行法(昭和54年法律第4号)の改正法による全ての手続が、令和3(2021)年5月から利用可能となったため、引き続き関係機関等への周知をしている。また、経済的に余裕のない者でもこれらの手続を円滑に利用できるようにするため、法律相談援助や弁護士・司法書士費用等の立替えを行う日本司法支援センター(法テラス)の民事法律扶助について、関係機関等への周知に努めている。子供の最善の利益を図る観点から、養育費制度の見直しを含め、父母が離婚した後の子の養育の在り方について、引き続き必要な検討を進めている。【法務省、厚生労働省(こども家庭庁)】

5 家庭の経済状況等によって子供の進学機会や学力・意欲の差が生じないように、以下の取組を推進している。【文部科学省、厚生労働省】

  • 生活困窮世帯等に対する学習支援や進路選択に関する相談等の支援のほか、子供や保護者の居場所づくりや生活に関する支援
  • 学校におけるスクールカウンセラー、スクールソーシャルワーカー等の配置の充実を図るとともに、地域全体で子供の成長を支える地域学校協働活動の一環として、全ての小・中・高校生を対象とした地域住民等の協働による放課後等の学習支援・体験活動を推進
  • 高校中退を防止するため高等学校における指導・相談体制の充実を図るとともに、高校中退者等を対象とした学習相談及び学習支援を実施する地方公共団体等の取組の支援等
  • 教育費に係る経済的負担の軽減

文部科学省では、誰もが家庭の経済状況に左右されることなく、希望する質の高い教育を受けることができるよう、教育の無償化・負担軽減に向けた取組を行っている。

例えば、初等中等教育段階における取組としては、経済的理由により就学が困難と認められる学齢児童生徒の保護者に対して、各市町村において行われる学用品費の支給等の就学援助事業のうち一部に対する補助を行い、予算単価の増額など制度の充実を図っている。

後期中等教育段階における取組として、授業料を支援する「高等学校等就学支援金」を支給しており、令和4(2022)年度においては、令和2(2020)年度に私立高校等に通う年収約590万円未満世帯の生徒等を対象に支給額を大幅に引き上げた措置を、引き続き着実に実施するとともに、早生まれの生徒等に係る判定基準の改善を図った。

また、低所得世帯(生活保護受給世帯・住民税非課税世帯)を対象に授業料以外の教育費を支援する「高校生等奨学給付金」については、給付額の増額を行った。

さらに、高等教育段階における取組として、真に支援が必要な低所得世帯に対して、授業料等の減免措置と給付型奨学金の支給を併せて行う「高等教育の修学支援新制度」を実施している。

6 子供の貧困対策が国を挙げて推進されるよう、「子供の貧困対策に関する大綱」(令和元年11月閣議決定)に基づき、官公民の連携・協働プロジェクトとして「こどもの未来応援国民運動」を展開している。具体的には、草の根で子供たちに寄り添った活動を行うNPO等の支援団体と、その活動を支援する意思と資源を持つ企業等とのマッチングの促進、民間資金を活用した「こどもの未来応援基金」によるNPO等の支援団体に対する活動資金の支援等を行っている。本基金については、令和4(2022)年度末時点で約1億9,500万円の寄付が寄せられ、令和4(2022)年度には、申請のあった496団体から146団体を審査により選定し、令和5(2023)年4月から実施される活動を支援することが決定された。また、地方公共団体が実施する子供の貧困対策の取組を支援する「地域子供の未来応援交付金」について、これまで市町村が、食事・食材等の提供を行うNPO等を支援する事業については、補助上限額が150万円だったところ、これを350万円まで大幅に引き上げるなど、物価高騰の影響を踏まえ、こども食堂などのこどもの居場所を整備する地方公共団体に対する支援を拡充した。【内閣府(こども家庭庁)】

ウ 子供・若者の自立に向けた力を高める取組

1 社会人・職業人として自立できる人材を育成するため、キャリア教育・職業教育を体系的に充実させている。進路や就職に関する指導も含め、男女共に経済的に自立していくことの重要性について伝えるとともに、自らの学びのプロセスを記述し振り返ることができる教材「キャリア・パスポート」の効果的な活用等を通じて、長期的な視点に立って人生を展望し、働くことを位置付け、準備できるような教育を推進している。【文部科学省】

2 若者が充実した職業人生を歩んでいけるよう、就業等の実態を男女別等きめ細かく把握し、新規学校卒業者への支援、中途退学者や未就職卒業者への対応、フリーターを含む非正規雇用で働く若者への支援等を行っている。【文部科学省、厚生労働省】

3 ニート、ひきこもり等、困難を有する子供・若者が、社会生活を円滑に営むことができるよう、子ども・若者総合相談センター、地域若者サポートステーション、ひきこもり地域支援センター等において、多様な主体間の連携により、複数の支援を組み合わせて行うなど、地域の実情に合った切れ目のない支援を行っている。【内閣府(こども家庭庁)、文部科学省、厚生労働省、関係府省】

4 小学6年生、中学2年生、高校2年生及び大学3年生などを対象とした実態調査の結果及び令和3(2021)年5月の「ヤングケアラーの支援に向けた福祉・介護・医療・教育の連携プロジェクトチーム」の取りまとめ報告を踏まえ、令和4(2022)年度よりヤングケアラー等がいる家庭への家事・育児支援、地方公共団体単位での実態調査や関係機関・団体等職員への研修、コーディネーターの配置やピアサポート等地方公共団体においてヤングケアラーを早期に発見し、必要な支援につなげるための先進的な取組について必要な経費を支援している。このほか、国は、当事者、支援者相互のネットワーク形成支援や社会的認知度向上のための集中的な広報啓発を行っている。【文部科学省、厚生労働省(こども家庭庁)】