第1節　女性に対するあらゆる暴力の予防と根絶のための基盤づくり

○　女性に対する暴力の予防と根絶に向けて，「女性に対する暴力をなくす運動」を国民運動としてその時々の課題を重要テーマとして設定し，効果的な広報啓発を一層推進する。また，被害者自身が被害と認識していない場合があることや，被害を受けていることを言い出しにくい現状があることも踏まえ，女性に対する暴力に関する認識の向上や，悪いのは被害者ではなく加害者であり，暴力を断じて許さないという社会規範の醸成を図る。【内閣府，法務省，関係府省】

○　様々な状況に置かれた被害者に情報が届くよう，官民が連携した広報啓発を実施するとともに，加害者や被害者を生まないための若年層を対象とする予防啓発の拡充，教育・学習の充実を図る。また，高齢者における配偶者からの暴力被害も多いことを踏まえ，高齢の被害者に支援の情報が届きやすいよう広報・啓発を充実させる。【内閣府，文部科学省，厚生労働省，関係府省】

○　「多様な困難に直面する女性支援政策パッケージ」（令和元年12月多様な困難に直面する女性に対する支援等に関する関係府省連絡会議取りまとめ）に基づき，配偶者等からの暴力をはじめとする複合的困難により，社会的に孤立し，生きづらさを抱える女性に対する支援を政府一体となって推進する。【内閣府，関係府省】

○　関係行政機関等において，相談窓口の所在等を広く周知するとともに，電話相談や窓口相談についてサービス向上を促進するため，電話相談の番号の周知や相談しやすくするための工夫，SNS等を活用した相談の実施等の方策を検討する。厚生労働省においては，婦人相談所の体制について，DV被害者，性暴力被害者などの相談に，土日祝日を含め，24時間対応が可能となるよう支援体制の強化を図る。【内閣府，警察庁，法務省，厚生労働省】

○　中長期にわたる被害者の心身の回復を支援するため，トラウマ・ケアの専門家を育成し，身近な場所で適切な相談・カウンセリングが経済的負担なく受けられる体制を構築していくとともに，ニーズに応じた対応が可能な民間団体や自助グループの活動を促進する。【内閣府，警察庁，厚生労働省】

○　被害者と直接接することとなる警察官，検察職員，更生保護官署職員，地方出入国在留管理局職員，婦人相談所職員，児童相談所職員，民間団体等について，男女共同参画の視点から被害者の置かれた立場を十分に理解し，適切な対応をとることができるよう，より一層の研修機会の拡大等に努めるとともに，関係機関間や職員間の連携を促進する。婦人相談所一時保護所等の入所者による携帯電話等通信機器の利用に際して，通信機器の性能や取扱いによって生じ得る危険性等について，婦人相談員や一時保護所等の職員が十分理解の上，対応するための研修費用を補助する。【内閣府，警察庁，法務省，厚生労働省，関係府省】

○　ケーススタディの手法やオンライン研修教材の活用等により，SNS等を活用した相談を含む，現場における対応に重点を置いた各職務関係者に対する研修を充実させ，支援に携わる人材育成を図る。【内閣府，警察庁，法務省，厚生労働省】

○　女性に対する暴力に関する認識を深め，被害者の置かれた状況に十分配慮できるよう，刑事司法関係者に対する研修等の充実を図る。【法務省】

○　法曹養成課程において，女性に対する暴力に関する法律及び女性に対する暴力の被害者に対する理解の向上を含め，国民の期待と信頼に応える法曹の育成に努める。【法務省，文部科学省】

○　女性に対する暴力に関する被害者支援の充実を図るため，民間シェルター等と警察や福祉などとの協働が円滑に行われるよう，官民双方向の連携の仕組みを構築するとともに，民間団体の活用による支援の充実に努める。民間支援団体への一時保護委託の積極的な活用を進めるため，同伴児童に対する教育のための環境整備や人身取引被害者への支援等に係る一時保護委託費の拡充を図る。【内閣府，警察庁，法務省，厚生労働省，関係府省】

○　被害者に対しては，暴力の形態や被害者の属性等に応じて，相談，保護，生活・就業等の支援，情報提供等をきめ細かく実施する。また，官民・官官・広域連携の促進を通じて，中長期的見守りなど切れ目のない被害者支援を実施する。【内閣府，警察庁，法務省，厚生労働省，関係府省】

○　婦人保護事業の見直しに基づく新たな制度の構築に向けた検討を加速するとともに，被害者が実態に即した支援を受けることのできる効果的な支援の在り方等を引き続き検討する。その際，行政，有識者，民間団体等が連携し，実態把握を進める。【厚生労働省】

○　重大事件等の暴力被害に関する必要な検証を行い，重大な被害につながりやすい要因を分析し，今後の対応に活用する。【警察庁，関係府省】