第2節 妊娠・出産等に関する健康支援

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第2節 妊娠・出産等に関する健康支援

厚生労働省では,地域において安心して産み育てることができるよう,リスクの高い妊産婦や新生児等に高度な医療を提供する総合周産期母子医療センター等に対する財政支援を行うほか,分娩施設が少ない地域において,新規に分娩施設を開設する場合などの施設・設備整備や,産科医の不足する地域の医療機関への産科医の派遣に対する財政支援等を行った。また,令和2(2020)年度より,令和元(2019)年度に都道府県が策定した産科・小児科における医師確保計画に基づいて医師派遣調整等を行っている。さらに,令和2(2020)年度からは,妊婦が安心安全に受診できる医療提供体制を整備するため,産科及び産婦人科以外の診療科の医師に対する研修の実施や医師が妊婦の診療について必要な情報を得られる相談窓口の設置に対する財政支援を行っている。

加えて,産科においては,医師と助産師の連携を推進することとしており,安全・安心な出産ができるような体制整備に努めるほか,女性の妊娠,出産を含めた健康上の問題の重要性について,広く社会全般の認識が高まるよう,地方公共団体等とも連携しながら周知徹底を図った。

さらに,周産期医療の充実のため,「妊娠と薬情報センター」(国立研究開発法人国立成育医療研究センター)において,薬が胎児へ与える影響等の最新のエビデンス(研究成果等)を収集・評価し,その情報に基づいて,これから妊娠を希望している人や妊婦の方の相談に応じた。また,小児用医薬品の安全対策の更なる推進を図るため,「小児と薬情報センター」(国立研究開発法人国立成育医療研究センター)で収集された小児用医薬品の使用情報や,その他これまでに得られている情報を整理収集し,専門家等が参加する検討会で評価の上,必要な情報提供を行っている。また,妊娠期から子育て期にわたるまでの様々なニーズに対してきめ細かな相談支援を提供する子育て世代包括支援センターの整備を行い,箇所数を増加するとともに,令和元(2019)年12月に公布された母子保健法の一部を改正する法律(令和元年法律第69号)を踏まえ,地域の実情に応じて,退院直後の母子に対する心身のケア等を行う産後ケア事業等を実施し,妊娠期から子育て期にわたる切れ目のない支援を提供する体制の構築に向けた取組を推進している。

また,妊娠や出産,人工妊娠中絶等の悩みを抱える方に対して,訪問指導等の母子保健事業を活用した相談支援のほか,「女性健康支援センター」等において相談援助,特定妊婦等に対する産科受診等支援や若年妊婦等に対するSNSやアウトリーチによる相談支援,緊急一時的な居場所の確保等を行っている(女性健康支援センター:令和2(2020)年8月1日時点84か所)。

さらに,不妊治療の経済的負担の軽減を図るため,現行の助成制度について所得制限の撤廃や助成額の増額(1回30万円)等,大幅な拡充を行った。

人事院では,国家公務員における不妊治療と仕事の両立の観点から,引き続き民間の状況を注視しつつ,不妊治療を受けやすい職場環境の醸成等を図っており,令和2(2020)年度は,不妊治療と仕事の両立に関する実態や職場環境の課題等を把握するための職員向けアンケートを実施するとともに,アンケート調査の機会を捉え,不妊治療に関する周知資料も配付した。

このほか,男女雇用機会均等法及び育児・介護休業法について,法の周知や雇用管理上の措置を講ずるに当たっての取組支援を行っている(第2章第2節及び第4章第1節参照)。

また,働く妊産婦の母性を守るため,男女雇用機会均等法に基づく母性健康管理措置(健康診査の受診等に必要な時間の確保及び医師等の指導事項を守るために必要な措置を講じること)及び労働基準法の母性保護規定(産前産後休業,危険有害業務の就業制限等)について,事業主,労働者,医療関係者等に対し周知徹底を図っている。また,企業や女性労働者等に対して母性健康管理に関する情報を提供する支援サイト「妊娠・出産をサポートする女性にやさしい職場づくりナビ」の運営等を行っている。

また,令和2(2020)年5月に新型コロナに関する母性健康管理措置を新設し,その適用について周知徹底を図った。また同措置として医師等の指導により休業が必要とされた妊娠中の女性労働者が取得できる有給の休暇制度を設け,当該休暇を取得させた事業主に対する助成を行った。

さらに,母性健康管理に関して必要な措置を講じないなど男女雇用機会均等法に違反している企業に対して指導を行うとともに,労働者と事業主の間の紛争については,都道府県労働局長による紛争解決の援助及び機会均等調停会議による調停により,紛争の円滑かつ迅速な解決を図った。

加えて,事業主が母性健康管理の措置を適切に講ずることができるように,女性労働者に対して出された医師等の指導事項を的確に事業主に伝えるための「母性健康管理指導事項連絡カード」について,利便性向上等のために令和3(2021)年3月に改正する(適用は令和3(2021)年7月)など,その利用を促進している。