男女共同参画白書の刊行に当たって

本編 > 男女共同参画白書の刊行に当たって

内閣府特命担当大臣(男女共同参画)写真

内閣府特命担当大臣(男女共同参画)

橋本聖子

我が国においては,女性活躍の旗を高く掲げ,女性の職業生活における活躍の推進に関する法律(平成27年法律第64号)の制定,保育の受け皿整備の加速化,女性役員の登用に向けた企業への働きかけなどの取組を進めてきました。近年は,女性就業者数が大幅に増加し,子育て期の女性の就業率や第1子出産前後の女性の就業継続率も上昇しています。さらに,上場企業における女性役員数も大きく増加するなど,これまでの様々な取組の結果,我が国の女性活躍は着実に進展してきました。

しかし,働く女性が増える一方で,長時間労働の慣行や育児休業制度などを利用しづらい職場の環境や風土などが,女性だけでなく男性にとっても,仕事と育児や介護等との両立の妨げとなっているという現実があります。

こうした現実とあわせて,女性が依然として「家事・育児・介護」の多くを担っている状況下では,これまでの「ワーク・ライフ・バランス」の取組,すなわち,働き過ぎ防止による健康の確保や仕事と家庭の両立のみならず,家庭における「家事・育児・介護」での働き過ぎや一人で抱え込む負担についても考える必要があります。また,共働き世帯の増加など家族の在り方が変化する中で,「家事・育児・介護」において男性が主体的な役割を果たしていくこともますます重要になっています。

今回の白書では,このような問題意識の下,「『家事・育児・介護』と『仕事』のバランス~個人は,家庭は,社会はどう向き合っていくか」を特集テーマとしました。特集では,家庭内での「家事・育児・介護」の分担に焦点を当て,性別や家族類型ごとにバランスの推移や現状,課題を整理し,「家事・育児・介護」と「仕事」のより良いバランスを考え,見直してみることの意義や重要性を示しています。

また,今般の新型コロナウイルス感染症の拡大に起因する外出自粛や休業等に際しては,平常時における固定的な性別役割分担意識を反映して,増大する家事,育児,介護といった家族ケアの女性への集中や,生活不安・ストレスからのDV等の増加・深刻化なども懸念されていますが,一方で,テレワークやオンライン活用の普及により,ワーク・ライフ・バランスの推進や生産性の向上も期待され,在宅勤務を活用したフルタイム勤務や業務の幅の広がりなど,女性活躍の場の拡大につながる新たな可能性がもたらされています。男性の家事・育児等への参画を促す好機でもあります。

今回の特集が,各個人にとってだけではなく,各家庭にとって,さらには社会も含めて,コロナ後の世界も視野に入れつつ,「家事・育児・介護」と「仕事」のより良いバランスや分担を考えていく材料になることを願っております。

令和2年7月