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第1節 生涯を通じた男女の健康
(平均寿命と健康寿命の推移)
平成30(2018)年の平均寿命は,女性は87.32年,男性は81.25年であり,前年に比べて女性が0.05年,男性が0.16年延び,男女とも過去最高を更新している。
健康寿命について見ると,平成28(2016)年は,女性は74.79年,男性は72.14年であり,平成25(2013)年と比べて,3年間で女性は0.58年,男性は0.95年延びている(I-5-1図)。健康寿命と平均寿命の差は平成28(2016)年時点において,女性は12.35年,男性は8.84年であり,男性より女性の方が4割近く差が大きい。
(健康増進に必要な適切な自己管理)
健康増進や生活習慣病予防のためには,自ら健康管理を行うことが重要である。厚生労働省「国民健康・栄養調査」(平成30年)によると,肥満者(BMI≧25kg/m2)の割合は,男性の50代が37.2%と,男女及び全ての年齢階級を通じて最も高くなっている。やせの者(BMI<18.5kg/m2)の割合は,20歳以上では女性の20代が19.8%と,男女を通じて最も高くなっている。女性においては,年齢とともに肥満者の割合が高くなる傾向にあり,60代以上ではいずれも約20%以上となっている。
また,同調査によれば,運動習慣のある者の割合は,20歳以上全体では女性で25.5%(前年比3.1%ポイント減),男性で31.8%(同4.1%ポイント減)であり,この10年間でみると,男性では有意な増減はなく,女性では有意に減少している。年代別に見ると,65歳以上では女性で36.5%(前年比2.5%ポイント減),男性で42.9%(同3.3%ポイント減)となっているのに比べ,20~64歳では,女性で16.6%(同3.4%ポイント減),男性で21.6%(同4.7%ポイント減)と低くなっている。なお,女性の20代は7.8%,30代は8.9%と,男女,全ての年齢階級を通じて特に低くなっている。
(女性特有のがん)
女性に多いがんとして子宮がん,乳がん等がある。これらの女性の総患者数を厚生労働省「患者調査」(平成29年)で見ると,子宮がんは5.8万人,乳がんは22.9万人であり,平成26(2014)年と比べて子宮がんは0.3万人減少したが,乳がんは2.3万人増加した。
がんの罹患率の高い上位5つのがんを年齢階級別に見ると,1位の乳がんと5位の子宮がんは,年齢が上がるほど罹患率が上がる他のがんと異なり,20代後半から罹患率が上昇し,40代後半~50代前半でピークになる(I-5-2図)。
I-5-2図 女性の年齢階級別がん罹患率(平成27(2015)年)
また,乳がんや子宮がんは5年相対生存率が高く16,早期発見が重要であるが,我が国における女性のがん検診の受診率は,徐々に増加しているものの,なお低く,平成28(2016)年には,子宮がん(子宮頸がん)検診(20~69歳)は過去2年間が42.4%,乳がん検診(40~69歳)は過去2年間が44.9%にとどまる17(I-5-3図)。
I-5-3図 子宮がん(子宮頸がん)及び乳がん検診の受診率の推移
子宮頸がん検診,乳がん検診の受診率について,正規職員,非正規職員,仕事なしで家事を担う者を比べると,子宮がん(子宮頸がん)検診は,20代,30代の若い世代で非正規職員の受診率が低い。乳がん検診は,厚生労働省が推奨する40代以上の受診状況を見ると,非正規職員と仕事なしで家事を担う者で低い(I-5-4図)。厚生労働省では,市町村のがん検診の受診率向上のため,平成28(2016)年度から,一定年齢の者に対して,個別の受診勧奨・再勧奨を行う取組を進めている。また,がん検診を受けた者のうち,職域で子宮頸がん検診,乳がん検診を受けた者は,子宮頸がん検診が32.3%,乳がん検診が35.8%に上っており18,職域でのがん検診もがん対策の観点から大きな役割を担っている。
16国立がん研究センターがん情報サービス「がん登録・統計」。平成21~23(2009~2011)年診断例による5年相対生存率は,乳がん92.3%,子宮がん78.7%,子宮頸がん76.5%であり,全部位66.9%と比較して高い。
17過去1年間の受診率は,子宮がん(子宮頸がん)検診が33.7%,乳がん検診が36.9%。
18厚生労働省「国民生活基礎調査」(平成28年)より内閣府男女共同参画局にて算出した数値。
(人工妊娠中絶の動向)
人工妊娠中絶件数及び人工妊娠中絶実施率(15歳以上50歳未満女子人口千対)の長期的な推移を見ると,昭和30(1955)年から平成7(1995)年にかけて件数,実施率とも大きく減少し,その後も緩やかな減少傾向にある。年齢階級別に人工妊娠中絶実施率を見ると,昭和30年代には20代及び30代で特に高く,20歳未満は低かったが,現在は年齢階級間の差は縮小している。
平成30(2018)年度の人工妊娠中絶件数は161,741件,人工妊娠中絶実施率(年齢計)は6.4であり,年齢階級別では20歳未満が13,588件,4.7,20代が71,845件,11.8,30代が60,368件,8.4となっている(I-5-5図)。
(喫煙率及び飲酒率の動向)
平成15(2003)年から平成30(2018)年にかけての喫煙率の推移を男女別に見ると,女性は11.3%から8.1%まで低下し,平成22(2010)年以降は1割を下回っている。男性は46.8%から29.0%まで低下し,2年連続で3割を下回った。同期間における飲酒率の推移を見ると,女性は6.6%から8.3%に微増しており,男性は37.4%から33.0%まで,約4%ポイント低下している(I-5-6図)。