コラム5 男性従業員の育児参加に積極的な企業の例2

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コラム5

男性従業員の育児参加に積極的な企業の例2


(株式会社 あわしま堂)

あわしま堂は,和洋生菓子を製造している,昭和43(1968)年設立の企業である。愛媛県八幡浜市に本社・工場を持つほか,京都,栃木に工場を持っている。従業員数は965名で,そのうち正社員は637名(女性297名・男性345名),パート328名(女性303名・男性25名)(平成30(2018)年7月現在)である。厚生労働省よりイクメン企業アワード2017特別奨励賞を受賞するなど,男性従業員の育児参加において大きな成果をあげている。

その下地として,平成24(2012)年11月から平成29(2017)年5月まで実施した「AWASHIMAみらいづくりプロジェクト」という女性活躍推進プロジェクトがある。従業員の両立支援について,ベテランから若手まで多様な世代,本社だけではなく支店・工場もメンバーになり,1年ごとに一定割合でメンバーをチェンジしながら,月1回1~2時間程度テレビ会議を使って討議を行った。

本プロジェクトを通じて,女性活躍のためには,ハード面の整備だけではなく,上司や男性従業員の理解などソフト面での対応の必要性が明らかになった。プロジェクト開始当初は企業内保育所の整備等即効性のあるハード面での解決策にばかり目がいっていたが,プロジェクトを進めるうちに,従業員対象のアンケート調査などを通じて従業員の意識・風土というソフト面の重要さがクローズアップされたのだ。また男性従業員は育児休業を取得したくても職場の雰囲気でちゅうちょしてしまうことが多く,社内文書で育児休業の取得を促してもなかなか成果があがらなかった。

これらを踏まえて,現在あわしま堂では,制度があるのに知らない従業員が多い現状から育児休業などについて分かりやすくコンパクトに説明した「両立支援お役立ちハンドブック」を作成し従業員に配布している。

また,上司が,自身の部下が育児休業を取得するケースを他人事とせず前向きなイメージを持ってもらうような取組みも行っている。具体的には,社内報(4半期に1回発行)で,育児休業を取得した男性従業員の子育て体験記を掲載し,育児休業を取得することの利点を伝え,さらに外部NPO法人の講師を招いて経営者・管理職対象のイクボスの研修を実施して,従業員が育児・仕事に加え,PTAや地域の青年団などの社会的領域の活動に参加することの意義を学習している。

同僚に迷惑をかけるのではないかという漠然とした不安から育児休業取得をちゅうちょする男性従業員も多いことを踏まえて,一定期間の休業取得義務化を実施している(1歳未満の子供を持つ従業員を対象に年間5日間の特別有給休暇を付与)。誰かが一定期間休んでも残されたメンバーで円滑に業務をこなすことができたという実体験が,漠然とした不安から休業取得をちゅうちょする事態を減らしていくはずである。

男性も含めた育児休業取得の促進は,業務の属人化の見直しにもつながっている。日々の業務に追われていると記録を適切に残していなかったり,必要な情報共有がなされていなかったりして,気付かないうちに,「その業務」は「その人」しかできないような状態にしていることが多い。育児休業の取得が,休業していない従業員も含めて,属人化の弊害に気付くきっかけになり,業務見直しの機会となっている。

一方,男性の育児参加を後押ししているのは,元来の社風の影響も大きい。

同社は「5S」や「カイゼン」など,現場からの改革を重視する社風があり,前述のAWASHIMAみらいプロジェクトも現場からのボトムアップのプロジェクトであった。そしてこれが両立支援の全社的な取組を促進することにつながった。

また,工場の現場では,子育て中のパートタイマーの女性従業員が多く,菓子製造のライン業務を中心に不可欠の役割を担っている。そのため共に働く男性従業員が,男性が育児に参加することの必要性を理解する機会が多い。また育児休業を取得した男性従業員が,子育て中のパートタイマー従業員の事情に配慮できるイクボスになるという好循環も生んでいる。