コラム18 食を通じた地域貢献活動と学び

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コラム18

食を通じた地域貢献活動と学び


(食遊三和)

「食遊三和」は茨城県古河市を中心に活動している女性起業家グループである。古河市の中でも,農業の盛んな地域(旧三和町)を拠点とし,正式名称は「古河市女性起業ネットワーク委員会 食遊三和」という。酪農家,露地野菜農家,米農家,苗生産農家,茶農家,農産加工家,それぞれ異なった農家の女性6名のメンバーからなるが,活動するに当たり,愛称を「食遊三和」とした。「食」を通じた「遊」び心のある活動(=頑張り過ぎず余裕をもって行う活動)の「食遊」の2文字と,旧三和町の町名に〈ネットワーク〉〈フットワーク〉〈チームワーク〉の3つの「和」の意をかけた「三和」の2文字を組み合わせた。

6名のメンバーが緩やかな「ネットワーク」で結びつくことによって,個々の経営を軸にしながらも組織の力を活かした販売促進やPR活動,商品開発,地産地消等地域貢献を行うことがメンバー共通の目的である。ブランドづくりのために,のぼりを作成し,色にこだわった共通ロゴを作成した。活動の際のエプロンもオレンジ色で統一し結束を強めた。オリジナルのパンフレットも作成,時間はかかったが商標登録も行った。

「食遊三和」の結成のきっかけは,旧三和町の「パートナーシップ推進協議会」の活動にまでさかのぼる。この活動に参加した女性のうち農産加工のスキルがある女性達が出会い,平成17(2005)年末に結成され,翌平成18(2006)年から本格的に活動をスタートさせたのが「食遊三和」である。

「協議会」の活動が結成の直接のきっかけになったが,それまでも6名のメンバーは個人個人で必要な情報の収集に努め,農産加工のための学びを行っていた。「食遊三和」結成後も,メンバーは,活動を継続・推進するために,行政,地元大学,関係団体,農業専門家などとのネットワーク・交流を通じて,商品づくりや販売戦略,地産地消の取組のための専門知識など活動に必要な学びを行うとともに,「グリーン・ツーリズム専門家養成講座」,「地産地消人材育成講習会」,「いばらき農業元気アップ女性リーダー育成事業女性リーダー育成専門講座」に参加するなど積極的に活動のための学びを行っている。メンバーそれぞれ本業があり,子育ての負担もあったため学びの時間をとることが大変だったが,家族の理解や協力もあり学び続けることが出来たという。

「食遊三和」のメンバーの写真

行政によるサポートも活動の継続にとって重要だった。古河市農政課からは,事業の運営管理や情報提供などのサポート,販売に向けたIT機器利用の指導も受けており,バックアップの一環で平成23(2011)年には商品の「古河ブランド」認証もなされた。茨城県の出先機関である坂東地域農業改良普及センターからは経営技術支援,情報提供の他,個々の農産加工品の開発,改善指導などのサポートを受けている。また「食遊三和」の商品は様々な賞(いばらき元気アップ大賞(平成22(2010)年),いばらきデザインセレクション2008審査員奨励選定,ハーモニー功労賞(平成24(2012)年)等)を受賞し,活動を進めていくにあたり大いに励みになった。

農産加工については,自家栽培の農産物,無添加,農産物本来の持ち味を活かす加工にこだわっている。商品の販売も「フットワーク」を活かし,地産地消の市内イベントだけではなく,道の駅「まくらがの里こが」で「食遊三和」ブランド商品の販売を行っており,東京にある茨城県のアンテナショップへの出品や東京ビックサイトでのイベントへの参加実績もある。

「食遊三和」は農産加工の活動だけではなく,その「チームワーク」を活かし,食育活動,グリーン・ツーリズム,研修の受入れ,料理教室など幅広い地域貢献活動も行っている。食育活動としては,トウモロコシ収穫体験,味噌づくり,そば打ち体験,ハーブ寄せ植え作り,釜戸炊きごはん体験,お茶淹れ体験などの「食農食育体験の場づくり」に地域の若い人も巻き込んで取り組んでいる。

「古河のお土産といえばこれ」というような魅力ある農産加工品作り,産地である古河の良いところのアピール,そして次世代育成が今後の抱負である。自分たちの活動を通じて地域の農業に携わる若い人たちを元気づけ,自分たちの技術を次世代に伝承したいという。サポートする古河市,茨城県としても「食遊三和」は6次産業化でリーダーシップを発揮する女性のグループとして最先端を行くお手本であり,最近組織された20代から40代の若手女性農業者グループと「食遊三和」との交流による相互の学びを期待しているとのことである。

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