コラム7 柔軟なキャリアパスの支援による多様な働き方の創出の取組

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コラム7

柔軟なキャリアパスの支援による多様な働き方の創出の取組


(静苑ホーム)

入所者と手を携える従業員の写真

静苑ホームは,社会福祉法人北海道友愛福祉会が経営する昭和48(1973)年に設立された介護事業所である。事業内容は,介護老人福祉施設・短期入所生活介護・通所介護・居宅介護支援・訪問介護であり,利用者の状態の変化に対応できるよう介護事業を包括的に実施している点に特徴がある。ほかには地域貢献事業として,福祉教育・子ども食堂・キッズボランティアなど多世代を対象とした事業を行っている。従業員187名中女性142名,正社員100名中女性66名と女性が従業員の大半を占めている1

利用者のニーズに的確に対応できる包括的な介護・地域貢献事業を遂行するために,従業員の学びやキャリア形成に関して,様々な支援が行われている。

まず介護福祉士・社会福祉士などの国家資格の取得を,資格取得助成金という制度によって積極的に支援している。具体的には,資格取得を目指す無資格者を育成スタッフとして採用した場合や従業員が通信教育等によって資格を取得する場合,費用を補助している。

資格の取得は,手当の増額,等級の上昇にもつながる仕組みとしており,学びへの意欲が向上するようにしている。

また,従業員に個別のミッション・役割を与え,新規採用スタッフのチューターや実習学生の指導担当,各種委員会やプロジェクトのメンバーの役割を担うことにより,役割手当が給付される仕組みになっている。人事考課制度においても,上司による育成面接を年3回行い,目標管理を共同で行うことによって,従業員の育成を可視化している。

さらに学びやキャリアパスを継続的なものにするため,社内FA・求人制度という独自の制度によって,従業員が自身の思い描いたキャリアを形成することを支援している。例えば,子育てに合わせて就労時間の調整を考えている従業員に対しては夜勤のない在宅の部署への異動という希望を実現したり,資格を取得したので新しい職種に挑戦したいという希望や,認知症ケアの勉強のためにグループホームに異動したいという希望を実現したりしている。

入所者と並んでいる従業員の写真

福祉に関する学びの機会を地域に提供している点にも特徴がある。地域で介護を学ぶ学生等を対象に月15,000円を支給する返済不要の奨学金事業や,施設の介護・福祉職が小中学・高校で福祉の授業を行う福祉教育も行っている。このように静苑ホームは,地域で福祉サービスを提供するだけではなく,地域貢献事業により地域における福祉の担い手づくりのための学びの機会の創出の役割も果たしている。

介護業界は女性の割合が高い業界で離職率の高さも指摘されてきたが,静苑ホームの新卒スタッフの初年度定着率は10年連続で100%を達成し,介護離職は5年間で3.7%,平均勤続年数も女性8年3か月,男性9年8か月となっている。同会のように,公的資格の支援に加えて,社内でのキャリアパスの仕組みを整え,また従業員の生活状況を踏まえたキャリアの変更が可能であることを明確化することは,多様な学びの機会と働き方を実現し,従業員の意欲ややりがいにもつながっているのである。

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1平成31(2019)年1月現在