第4節 非正規雇用労働者の処遇改善,正社員への転換の支援

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第4節 非正規雇用労働者の処遇改善,正社員への転換の支援

1 同一労働同一賃金の実現に向けた均等・均衡待遇の取組や正社員への転換に向けた取組の推進

雇用情勢が着実に改善しているタイミングを捉え,正社員を希望する方の正社員転換や非正規雇用を選択する方の待遇改善を推進することが重要である。このため,厚生労働大臣を本部長とした「正社員転換・待遇改善実現本部」において平成28年1月に策定した「正社員転換・待遇改善実現プラン」や,各都道府県労働局に設置した本部において同年3月までに策定したそれぞれの「地域プラン」に基づき,非正規雇用労働者の正社員転換・待遇改善を強力に推進している。

パートタイム労働者がその能力を一層有効に発揮することができる雇用環境を整備するため,パートタイム労働法に基づく是正指導等により同法の着実な履行確保を図った。また,パートタイム労働者の均等・均衡待遇の確保に向けた事業主の取組を支援するために,「パートタイム労働者活躍推進企業表彰」を実施し受賞企業の取組を広く発信するとともに,事業主に対する職務分析・職務評価の導入支援・普及促進等を行った。

働き方改革実現会議においては,正規雇用労働者と非正規雇用労働者の待遇差がどのような場合に不合理とされるかを事例等で示した「同一労働同一賃金ガイドライン案」が示された。

また,実行計画を踏まえ,雇用形態にかかわらない公正な待遇の確保に向け,パートタイム労働法,労働契約法,労働者派遣法の改正を含む「働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律案」を第196回通常国会に提出した。

2 公正な処遇が図られた多様な働き方の普及・促進

有期契約,パート,派遣等の非正規雇用労働者には,企業側の人材ニーズや労働者に様々な働き方の選択肢が提供されるなどの面もあるが,雇用が不安定,賃金が低い,能力開発機会が乏しいなどの課題がある。

このため,非正規雇用労働者の正社員化,処遇改善といった企業内でのキャリアアップに取組む事業主に対してキャリアアップ助成金を支給し支援している。

また,職務等に着目した「多様な正社員」モデルの普及・拡大を図るため,「多様な正社員」の導入事例や,非正規雇用労働者の正社員化等の取組事例の収集,ホームページでの周知・啓発を図るとともに,シンポジウムや企業向けセミナー等で社会的気運の醸成を図るほか,「多様な正社員」の導入を検討している企業への支援として,モデル就業規則の作成やコンサルティング等を実施した。さらに,厚生労働省では,労働契約法において定められた,有期労働契約が5年を超えて反復更新された場合に,労働者の申込みにより期間の定めのない労働契約に転換させる仕組み(いわゆる「無期転換ルール」)等について,無期転換ルールの概要や先行導入した企業の好事例,支援策等をまとめたポータルサイトの開設,無期転換ルールの導入手順等をまとめたハンドブックの作成,全国47都道府県でのセミナー開催など,あらゆる機会を活用して無期転換ルールの周知・啓発及び導入支援を行った。

また,有期契約労働者の育児休業・介護休業の取得要件の緩和や,育児休業・介護休業等に関するハラスメントの防止措置が盛り込まれた改正育児・介護休業法の周知徹底を図るとともに,指導等により,同法の着実な履行確保を図っている。

派遣労働者については,労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律等の一部を改正する法律(平成27年法律第73号)により,派遣元事業主に対し,均衡待遇の確保のために考慮した内容を派遣労働者の求めに応じて説明する義務や,派遣先に対し,福利厚生施設の利用機会を与えるよう配慮する義務等を課すこととされた。改正法の内容を解説したパンフレットを作成し都道府県労働局で配布するとともに,都道府県労働局が説明会を開催するなどにより周知を行った。

国の行政機関で働く非常勤職員の給与については,民間における同一労働同一賃金に向けた取組なども踏まえて,平成29年5月に,30年度以降特別給(期末手当/勤勉手当)に相当する給与の支給を開始すること等を各府省等間で申し合わせた。

人事院では,平成29年7月に,「非常勤職員の給与に関する指針」(平成20年8月人事院事務総長通知)を改正し,勤勉手当に相当する給与の支給に努めること等を定めた。

また,非常勤職員の休暇について,平成29年8月の人事院勧告時の報告において,今後,民間における同一労働同一賃金の実現に向けた議論を踏まえ,慶弔に係る休暇等について検討を進めていく旨言及した。

総務省では,地方公共団体の臨時・非常勤職員について,一般職非常勤職員に関する「会計年度任用職員」制度を整備するとともに,特別職非常勤職員及び臨時的任用職員の要件を厳格化し,任用・服務の適正化と期末手当を支給可能とすることを一体的に進めるための改正法(「地方公務員法及び地方自治法の一部を改正する法律」(平成29年法律第29号))が平成29年5月に成立したことから,32年度の改正法の施行に向け,各地方公共団体において条例・規則の制定等の必要な準備が円滑に進められるよう,改正法に係る運用上の留意事項などを示した「地方公務員法及び地方自治法の一部を改正する法律の運用について」(平成29年6月総行公第87号・総行給第33号総務省自治行政局公務員部長通知)及び「会計年度任用職員制度の導入等に向けた必要な準備等について」(平成29年8月総行公第102号・総行給第39号・総行女第24号・総行福第191号・総行安第38号総務省自治行政局公務員部長通知)の発出や説明会の開催を行うなどの支援を行った。

また,非常勤職員の育児休業について,雇用保険法等の一部を改正する法律(平成29年法律第1号)において地方公務員の育児休業等に関する法律(平成3年法律第110号)が改正され,取得可能な期間が最長で子が2歳に達する日までとされた(平成29年10月1日施行)ことを受け,各地方公共団体に対し,改正内容に即して条例等の整備を行うよう通知した。さらに,一般職非常勤職員について育児休業制度を設けていない団体も見受けられるため,必要な条例の整備について要請した。