第4節 ポジティブ・アクションの推進等による男女間格差の是正

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第4節 ポジティブ・アクションの推進等による男女間格差の是正

実質的な男女労働者間の均等を確保するためには,男女労働者間に事実上生じている格差の解消を目指す企業の自主的かつ積極的な取組である,ポジティブ・アクションが不可欠である。また,女性の活躍推進に向けた企業の取組を,投資家,就業希望者,消費者等から「見える」ようにすること(見える化)は,当該企業の取組が市場で評価されることを通じ,他の企業にも自主的な取組が波及する好循環が期待される。

平成28年4月には女性活躍推進法が全面施行され,国・地方公共団体,常時雇用する労働者数が301人以上の一般事業主(民間企業等)は,女性の採用・登用等の状況を自ら把握し,課題を分析した上で,その結果を踏まえ,数値目標の設定を含めた行動計画を策定・公表することや,女性の活躍状況に関する情報を公表することなどが義務付けられた(常時雇用する労働者数が300人以下の一般事業主は努力義務)。29年3月末現在,行動計画策定届出率は,常時雇用する労働者数が301人以上の一般事業主で99.9%,国・地方公共団体で100%となっている。また,女性の活躍状況に関する情報公表実施率は100%となっている。

内閣府では,平成28年9月に,同法に基づく国・都道府県・市町村の行動計画や,女性の活躍状況に関する情報公表等を一覧化して掲載した「女性活躍推進法『見える化』サイト」を開設した。同サイトにおいて,国・都道府県・市町村の女性の採用・管理職割合,男女別育児休業取得率,超過勤務の状況等の女性職員の活躍状況に関する情報を比較可能とした。

また,女性役員に関する情報の「見える化」など情報提供の充実を図るため,平成28年9月に上場企業の女性役員登用状況を一元的に集約・発信する「女性役員情報サイト」を開設した。このサイトでは,約3,600の上場企業の女性役員の数,割合を業種別に一覧化するとともに,政府の取組や,資本市場における女性活躍企業の評価の動きを紹介している。さらに,上場企業のうち女性役員が1名以上の企業を一覧化した「上場企業における女性役員の状況2017」ポスターを作成し,機運の醸成を図った。

加えて,内閣府では,女性の登用に関する取組及び実績並びにそれらの情報開示において顕著な功績があった企業を対象として「女性が輝く先進企業表彰」を実施し,平成28年12月に内閣総理大臣表彰2社,内閣府特命担当大臣(男女共同参画)表彰5社の合計7社を表彰するとともに,政府広報を活用した各種媒体により周知・啓発を行った。

厚生労働省では,女性活躍推進法に基づく指導等によりその履行確保を図るとともに,女性の活躍推進に関する取組の実施状況等が優良な企業に対しては,女性の活躍を推進している企業として「えるぼし」認定を行っている(平成29年3月末現在で291社を認定)。さらに,企業の自主的な取組を推進するため,必要な助言及び情報提供を積極的に行っている。

具体的には,女性活躍推進法に基づく一般事業主行動計画の策定・届出等が義務である301人以上の一般事業主(民間企業等)のうち,未届けになっている企業に対して「ローラー大作戦」を実施し,個別に強力に届出等を促すとともに,自社の女性活躍の状況把握,課題分析,行動計画策定を簡易に行える「一般事業主行動計画策定支援ツール」を作成し,事業主の取組の支援を行っているほか,「中小企業のための女性活躍推進事業」により,中小企業による女性活躍推進の取組を支援している。

さらに,企業における女性の活躍を推進していくため,女性の活躍に積極的に取り組む企業に対して助成金を支給しているほか,ポジティブ・アクション等に積極的に取り組む企業に対する「均等・両立推進企業表彰」を実施している。

また,企業が自社の女性の活躍状況や,仕事と家庭の両立支援に係る情報を掲載できる「女性の活躍・両立支援総合サイト」を整備している。また,当該サイトのコンテンツである,企業における女性の活躍状況に関する情報を一元的に集約したサイト「女性の活躍推進企業データベース」を活用した女性の活躍状況の情報開示を働きかけるとともに,「ポジティブ・アクション情報ポータルサイト」によりポジティブ・アクションに関する総合的な情報提供を行っている。

経済産業省では,平成24年度以降,女性をはじめ多様な人材の能力を活かして,イノベーションの創出,生産性向上等の成果を上げている企業を「ダイバーシティ経営企業100選」として表彰し,ダイバーシティ経営のすそ野の拡大を図っている。28年度は,「長時間労働の是正,多様で柔軟な働き方の推進」「経営層への多様な人材の登用」等の重点テーマを設定し,「新・ダイバーシティ経営企業100選」として,29年3月に31社(大企業13社,中小企業18社)を表彰した。

また,平成24年度以降,東京証券取引所と共同で,「女性活躍推進」に優れた上場企業を,「中長期の企業価値向上」を重視する投資家にとって魅力ある銘柄(「なでしこ銘柄」)として選定している。28年度は,29年3月に47社を発表した。