第2節 安心して親子が生活できる環境づくりに関わる課題

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第2節 安心して親子が生活できる環境づくりに関わる課題

1 ひとり親家庭等に対する支援の推進

厚生労働省では,母子及び父子並びに寡婦福祉法(昭和39年法律第129号)等に基づき,(ア)保育所等の優先利用,日常生活支援事業等の子育て・生活支援策,(イ)母子家庭等就業・自立支援センター事業,母子家庭等自立支援給付金等の就業支援策,(ウ)養育費相談支援センター等による養育費の確保策,(エ)児童扶養手当の支給,母子父子寡婦福祉資金貸付金の貸付けによる経済的支援策といった総合的な自立支援策を展開している。また,平成25年3月から施行された母子家庭の母及び父子家庭の父の就業の支援に関する特別措置法(平成24年法律第92号)等に基づき,ひとり親の就業支援に関する施策の充実や民間事業者に対する協力の要請等を行っている。

また,ひとり親家庭の自立支援の拡充を図るため,児童扶養手当法の一部を改正する法律(平成22年法律第40号)により児童扶養手当の支給対象を父子家庭の父にも拡大し(平成22年8月),生活保護の母子加算についても引き続き支給した。

平成27年度においては,経済的に厳しい状況に置かれたひとり親家庭・多子世帯等の自立を応援するため,支援を必要とする家庭に対し,行政の支援が確実につながる仕組みを整えるとともに,子育て,教育,生活,就業,住居,経済面等について,支援の一層の充実を図る必要があることから,「ひとり親家庭・多子世帯等自立応援プロジェクト」を策定した。

また,平成27年度補正予算において,ひとり親家庭高等職業訓練促進資金貸付事業を創設し,高等職業訓練促進給付金の支給対象者に対し,入学準備金・就職準備金を貸し付け,これらの者の修学を容易にすることにより,資格取得を促進し,自立の促進を図ることとしている。

平成27年10月からマザーズハローワーク事業として,ひとり親への支援の充実を図るため,地方公共団体やひとり親への支援を行うNPO法人等と連携した就職支援を実施している。

2 生活上の困難の次世代への連鎖を断ち切るための取組

貧困の世代間連鎖の解消等を目指し,政府は「子供の貧困対策に関する大綱」(平成26年8月29日閣議決定)等に基づき,子供の貧困対策を総合的に推進している。

内閣府では,子供の貧困対策が国を挙げて推進されるよう,国,地方公共団体,民間の企業・団体等によるネットワークを構築し,各種支援情報等の収集・提供や民間資金を活用した支援等,官公民の連携・協働プロジェクトを推進することとされており,平成27年10月に「子供の未来応援国民運動」を始動させた。

文部科学省では,生まれた家庭の経済状況等にかかわらず,全ての意欲と能力ある子供達が希望する教育を受けられるよう,例えば以下のような取組により教育費の負担軽減を進めている。

ア 幼稚園の入園料や保育料に係る経済的負担を軽減する「幼稚園就園奨励事業」を実施している地方公共団体に対して,その所要経費の一部を補助している(第6章第2節1(5)参照)。

イ 経済的理由により小・中学校への就学が困難と認められる学齢児童生徒の保護者への就学援助を実施する市町村に対して,生活保護法(昭和25年法律第144号)に規定する要保護者の就学援助にかかる経費を補助している。なお,要保護者に準ずる程度に困窮している準要保護者の就学援助にかかる所要の経費については,地方財政措置が講じられている。

ウ 高等学校段階の経済的支援については,授業料負担軽減のための高等学校等就学支援金や授業料以外の教育費に充てる高校生等奨学給付金等を実施している。高等学校等就学支援金は,年収約910万円12未満の世帯の生徒に,年額約12万円支給される。私立高校であれば所得に応じて年額最大約30万円まで加算支給される。また,高校生等奨学給付金は,低所得世帯(生活保護受給世帯・住民税非課税世帯)に対する支援として支給される。なお,いずれも返済不要の支援である。

エ 高等教育段階における取組として,意欲と能力のある学生等が経済的理由により進学等を断念することがないよう,独立行政法人日本学生支援機構が実施する大学等奨学金事業の充実や,各大学が実施する授業料減免等への支援を行うとともに,学生等に対し,自らが次の社会の担い手であることの気づきを促す各大学等の取組を奨励している。また,大学院生に対しては,給与型の経済的支援として,ティーチング・アシスタント(TA)やリサーチ・アシスタント(RA)の業務に対する給与を各大学が自主的に支給している。

12年収は両親のうちどちらか一方が働き,高校生1人,中学生1人の4人世帯の目安。