第1節 仕事と生活の調和の実現

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第6章 男女の仕事と生活の調和

第1節 仕事と生活の調和の実現

1 仕事と生活の調和に関する意識啓発等の推進

平成19年12月に政労使の合意の下に策定された「仕事と生活の調和(ワーク・ライフ・バランス)憲章」(以下「憲章」という。)及び「仕事と生活の調和推進のための行動指針」(以下「行動指針」という。)に基づき,官民一体となり,仕事と生活の調和実現に向けた取組が行われている。

「憲章」及び「行動指針」に基づく取組の点検・評価結果として平成28年3月に公表された「仕事と生活の調和(ワーク・ライフ・バランス)レポート2015」では,「行動指針」で設定されている数値目標の目標年である32年に向けて,労使等の各主体が仕事と生活の調和の実現に向けた取組を加速していくとしている。また,仕事と生活の調和連携推進・評価部会では,ワーク・ライフ・バランスの重要性に鑑み,「女性活躍加速のための重点方針2015」や女性活躍推進法の成立等を踏まえ,公共調達においてワーク・ライフ・バランス等を推進する企業をより幅広く評価する枠組みについて検討を行い,27年12月,「仕事と生活の調和連携推進・評価部会報告書~公共調達においてワーク・ライフ・バランス等を推進する企業をより幅広く評価する枠組みについて~」を取りまとめた。

ワーク・ライフ・バランスの取組は,仕事と子育て・介護等を両立でき,その能力を十分に発揮することができるために極めて重要であることや,一般に,業務の改善・見直し等による業務の効率化,女性等多様な人材の確保・定着による企画力の高度化や市場の変化への対応力の向上等を通じ,生産性の向上が図られ,これにより,価格競争力の向上だけでなく,事業の品質の確保・向上につながることも考えられる。

平成28年3月22日にすべての女性が輝く社会づくり本部において,「女性の活躍推進に向けた公共調達及び補助金の活用に関する取組指針」を策定した。同指針では,女性活躍推進法第20条に基づき,国の契約のうち,総合評価落札方式及び企画競争方式を採る事業において,女性活躍推進法,次世代育成支援対策推進法(平成15年法律第120号。以下「次世代法」という。),青少年の雇用の促進等に関する法律(昭和45年法律第98号)に基づく認定等を取得した企業を,ワーク・ライフ・バランス等推進企業として加点評価することとしている。

内閣府では,社会全体の気運醸成に向けた取組として,「カエル!ジャパン」キャンペーンを推進しているほか,月に1回,ワーク・ライフ・バランスに関する国の施策や関連行事等の情報を分かりやすく紹介する「カエル!ジャパン通信」をインターネットで配信している。また,平成27年度は,企業におけるワーク・ライフ・バランスの取組を促進するため,関係団体と連携し,経営者及び管理職を対象としたセミナーを開催した。さらに,地方公共団体の担当者を対象としたセミナーを開催し,各地域の企業に対するワーク・ライフ・バランスの取組強化を図った。

加えて,企業における仕事と生活の調和推進のため,経営者・管理職等による人事評価を始めとした職場マネジメントの好事例を調査・研究し,その結果の周知を行った。

また,配偶者の出産直後の男性の休暇取得を促すことにより,男性の育児への参画・意識改革を進める「さんきゅうパパプロジェクト」(平成32(2020)年に男性の配偶者の出産直後の休暇取得率80%が目標)を立ち上げ,ロゴマークを定めるとともに,ハンドブックを活用した啓発活動を行った。

厚生労働省では,職業生活と家庭生活の両立を図りやすくするための雇用環境の整備に関する周知啓発活動を積極的に行っている。

特に父親の子育てについては,育児を積極的に行う男性「イクメン」を応援し,男性の仕事と育児の両立を推進する「イクメンプロジェクト」において,参加型の公式サイト7の運営やハンドブックの配布等を行うとともに,男性の仕事と育児の両立を積極的に促進し,業務改善を図る企業を表彰する「イクメン企業アワード」及び部下の仕事と育児の両立に配慮する管理職を表彰する「イクボスアワード」等表彰や企業向けセミナーの開催等により好事例の普及を図っている。

また,所定外労働時間の削減及び年次有給休暇の取得促進等を推進するため,厚生労働省幹部及び都道府県労働局長が日本各地のリーディングカンパニーのトップに働き方改革の実現に向けた取組の実施を働きかけるとともに,こうした企業の先進的な取組事例を広く普及させるために「働き方・休み方改善ポータルサイト」を活用して情報発信を強化するなど,企業の自主的な働き方の見直しを促進した。加えて,民間企業が「ゆう活」に取り組むよう,働きかけを行った。

さらに,10月を「年次有給休暇取得促進期間」として集中的な広報を行うとともに,地域の行事と連携して年次有給休暇の取組を促す「地域の特性を活かした休暇取得促進のための環境整備事業」を実施し,地域における休暇取得促進の気運を醸成した。

このほか,過労死等がなく,仕事と生活を調和させ,健康で充実して働き続けることのできる社会の実現のため,過労死等防止対策推進法(平成26年法律第100号)に基づき,過労死等防止対策推進協議会の意見を聴いた上で,「過労死等の防止のための対策に関する大綱」(平成27年7月24日閣議決定)を策定した。この大綱に沿って,調査研究等,啓発,相談体制の整備等,民間団体の活動に対する支援等の過労死等の防止に関する対策に取り組んでいる。

7厚生労働省委託事業 イクメンプロジェクト http://ikumen-project.jp/index.html

2 育児や家族の介護を行う労働者が働き続けやすい環境の整備

(1)働き方の見直し

厚生労働省では,労働時間等の設定の改善に関する特別措置法(平成4年法律第90号)及び「労働時間等見直しガイドライン」(労働時間等設定改善指針)(平成20年厚生労働省告示第108号)に基づき,所定外労働時間の削減及び年次有給休暇の取得促進を始めとした労使の自主的な取組を促進している。

(2)父親の子育てへの参画や子育て期間中の働き方の見直し

文部科学省では,就学時健診等の多くの親が集まる機会を活用した家庭教育に関する学習機会の提供を支援している。

また,父親の家庭教育への参加を促進するため,父親の家庭教育を考える集いや,企業に出向いた学習講座の実施等を支援している。

(3)企業における仕事と子育て・介護の両立支援の取組の促進,評価

厚生労働省では,企業における仕事と家庭の両立支援について,育児・介護休業法の履行確保に取り組んでいる。

また,次世代法により,平成27年4月から開始された認定制度(「プラチナくるみん」認定)等について周知を行っている。

また,育児や介護を行う労働者が働き続けやすい雇用環境の整備を行う事業主等を支援するため,両立支援等助成金の支給を行っている。

さらに,「女性の活躍・両立支援総合サイト」8において,仕事と家庭の両立に向けた企業の自主的な取組の参考となる指標や好事例等を周知するとともに,中小企業のための「育休復帰支援プラン」策定マニュアルや介護離職を予防するための両立支援対応モデルの周知を行っている。

加えて,仕事と育児・介護等との両立支援のための取組を積極的に行っており,かつ,その成果が上がっている企業に対し,公募により「均等・両立推進企業表彰」を実施し,広く周知を図っている。

また,国及び地方公共団体においても,職員を雇用する「事業主」の立場から「特定事業主行動計画」を策定して職員の職業生活と家庭生活の両立を推進している。

8厚生労働省委託事業 「女性の活躍・両立支援総合サイト」http://www.positive-ryouritsu.jp/

(4)農林水産業に携わる人々など多様な働き方における仕事と生活の調和の普及

農林水産省では,生産と育児や介護との両立を支援するため,家族経営協定の締結の促進を図った。

3 仕事と子育てや介護との両立のための制度等の普及,定着促進

内閣府では,介護休業や介護保険等の制度やサービス等,仕事と介護の両立に資する法制度や介護サービス等の情報を一元的に提供するための「『仕事』と『介護』の両立ポータルサイト」を運営している。

厚生労働省では,育児・介護休業法の内容について周知・徹底を図るとともに,同法に規定されている育児・介護休業や短時間勤務制度等を安心して利用できる職場環境の整備を支援している。

都道府県労働局雇用均等室では,計画的に事業所を訪問し,就業規則等で必要な制度が設けられているかを確認するなど,育児・介護休業法に規定されている制度の普及・定着に向けた行政指導を実施している。また,育児休業等の申出や取得を理由とした不利益取扱いに対しては,相談者の意向に配慮しつつ,事業所に対する報告徴収を積極的に行うなど,迅速かつ厳正に対応している。

また,育児休業を取得した労働者の雇用の継続を目的として,雇用保険を財源に,育児休業給付を支給している。