第2節 障害者が安心して暮らせる環境の整備

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第2節 障害者が安心して暮らせる環境の整備

(総合的な障害者施策の推進)

障害者施策については,障害当事者を構成員の中心とする障害者政策委員会からの意見等を踏まえ策定した「障害者基本計画(第3次)」(平成25年9月閣議決定)に基づき,施策の一層の推進を図る。また,障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律(平成25年法律第65号)の円滑な施行(平成28年4月)に向けて,同法に基づいて平成27年2月24日に策定した基本方針を踏まえて,国の行政機関の長及び独立行政法人等における対応要領,主務大臣における対応指針の作成等を進めるとともに,同法に係る国民への周知広報を行う。

これらによって,障害の有無にかかわらず,国民誰もが相互に人格と個性を尊重し支え合う「共生社会」の実現に向けて,障害者施策の総合的かつ計画的な推進に努める。

(障害者の自立を容易にするための環境整備)

「バリアフリー・ユニバーサルデザイン推進要綱」に基づき,高齢者,障害者,妊婦や子供連れの人を含む全ての男女が社会の活動に参加・参画し,社会の担い手として役割と責任を果たしつつ,自信と喜びを持って生活を送ることができるよう,ハード・ソフト両面にわたる社会のバリアフリー・ユニバーサルデザインを推進する。

また,高齢者,障害者等の自立を支援し,介護者の負担軽減を図るため,福祉機器開発のための実用化支援,情報バリアフリー環境の整備,道路交通環境等高齢者や障害者等が自立しやすい社会基盤の整備を推進する。

警察では,高齢者,障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律(平成18年法律第91号)に基づき,高齢者,障害者等が道路を安全に横断できるよう,音響により信号表示の状況を知らせる音響式信号機,信号表示面に青時間までの待ち時間及び青時間の残り時間を表示する経過時間表示機能付き歩行者用灯器,歩行者・自転車と車両が通行する時間を分離して交通事故を防止する歩車分離式信号等のバリアフリー対応型信号機の整備を推進する。また,標示板を大きくする,自動車の前照灯の光に反射しやすい素材を用いるなどして見やすく分かりやすい道路標識・道路標示の整備や横断歩道上における視覚障害者の安全性及び利便性を向上させるエスコートゾーンの整備を推進する。

国土交通省では,「どこでも,だれでも,自由に,使いやすく」というユニバーサルデザインの考え方を踏まえた高齢者,障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律に基づき,「移動等円滑化基準」への適合義務及び既存の施設等に対する適合努力義務を定めるとともに,「移動等円滑化の促進に関する基本方針」(最終改正平成23年国家公安委員会,総務省,国土交通省公示第1号)において平成32年度末までの整備目標を定めている。平成27年2月に閣議決定された交通政策基本計画においてもバリアフリーをより一層身近なものにすることを目標の一つとして掲げており,これらを踏まえながら,バリアフリー化の更なる推進を図る。また,市町村が作成する基本構想に基づき,重点整備地区において重点的かつ一体的なバリアフリー化を推進する。さらに,バリアフリー化の促進に関する国民の理解を深め,協力を求める「心のバリアフリー」を推進するため,高齢者,障害者等の介助体験や疑似体験を行う「バリアフリー教室」等を開催するほか,バリアフリー施策のスパイラルアップ(段階的・継続的な発展)を図りながら住まいづくり,まちづくり,都市公園,公共交通機関,道路交通環境の整備を推進する。

文部科学省では,インクルーシブ教育システム構築のための特別支援教育の推進について,障害のある児童生徒等の自立と社会参加の加速化に向けた取組の充実を図る。また,関係機関等の連携により学校現場における特別支援教育の体制整備を推進する。

(雇用・就労の促進)

厚生労働省では,近年,障害者の就労意欲が着実な高まりを見せる中で,より多くの就職希望を実現するとともに,男女共に生き生きとした職業生活を送ることができるようにするため,障害者の雇用の促進等に関する法律(昭和35年法律第123号。以下「障害者雇用促進法」という。)や「障害者雇用対策基本方針」(平成26年厚生労働省告示第137号)等を踏まえた就労支援について,ハローワークと地域関係機関との連携による「チーム支援」の推進や障害者就業・生活支援センターにおける就業と生活両面の一体的な支援の実施等により,質・量共に一層の強化を図る。

また,改正障害者雇用促進法に基づく雇用分野における障害者の差別禁止や合理的配慮の提供義務について,平成28年4月の施行に向けて広くその周知を図る。

文部科学省では,障害のある子供が自立し社会参加するために必要な力を培うため,特別支援学校及び高等学校において実践的研究を行うなど,キャリア教育・職業教育を一層推進し,福祉や労働等の関係機関と連携しながら就労支援の充実を図る。