第2節 多様な選択を可能にする教育・能力開発・学習機会の充実

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第2節 多様な選択を可能にする教育・能力開発・学習機会の充実

1 生涯学習・能力開発の推進

(1)総合的なキャリア教育の推進

子供たちが,社会の一員としての役割を果たすとともに,それぞれの個性,持ち味を最大限発揮しながら,自立して生きていくことができるよう,後期中等教育修了までに,生涯にわたる多様なキャリア形成に共通して必要な能力や態度を培うキャリア教育の推進が求められている。

中央教育審議会が平成23年1月に答申した「今後の学校におけるキャリア教育・職業教育の在り方について」で提言された具体的方策17を踏まえ,文部科学省では,全国で,高等学校関係者を対象にキャリア教育の意義や重要性について理解を深めるための「キャリア教育推進アシストキャラバン」の開催や,「学校側が望む支援」と「地域・社会や産業界等が提供できる支援」をそれぞれ書き込むことができる機能を持つポータルサイト18の運営を行っている。

また,平成25年度からは,企業による出前授業などの教育活動支援,職場体験・インターンシップ受入れ先の開拓やマッチングを行う,地域において学校のキャリア教育を支援する組織の整備を促進する「地域キャリア教育支援協議会設置促進事業」を開始した。

さらに,男女ともに多様な選択が可能となるよう男女共同参画の視点に立ったキャリア形成支援を推進するため,高校の進路指導等で活用できるブックレットの普及を進めた。

平成23年度からは,社会全体でキャリア教育を推進していこうとする気運を高め,キャリア教育の意義の普及・啓発と推進に資することを目的として,文部科学省,厚生労働省,経済産業省は合同で,「キャリア教育推進連携シンポジウム」の開催も行っている。

経済産業省では,平成22年度から,先進的な教育支援活動を行っている企業・団体を表彰する「キャリア教育アワード」を,23年度からは文部科学省と共同で教育関係者と地域・社会や産業界等の関係者の連携・協働によるキャリア教育に関するベストプラクティスを表彰する「キャリア教育推進連携表彰」を実施することで,キャリア教育の普及・推進を図っている。

また,平成17年度に,職場や地域社会で多様な人々と仕事をしていくために必要な基礎的な力を「社会人基礎力」として整理し,大学教育を通した育成の普及を図っている。19年度より「社会人基礎力」の育成事例を学生自身がプレゼンテーションする「社会人基礎力育成グランプリ」,22年度より大学教職員や企業人事担当者を対象に社会人基礎力の教育手法などについて発信・意見交換を行う研修会を実施している。

17今後の学校におけるキャリア教育・職業教育の在り方について(答申)(平成23年1月31日中央教育審議会) http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo0/toushin/1301877.htm

18文部科学省 子どもと社会の懸け橋となるポータルサイト http://kakehashi.mext.go.jp/

(2)ライフプランニング支援の促進

文部科学省では,女性が長期的な視点で自らの人生設計(ライフプランニング)を行い,能力を発揮しつつ,主体的に生き方を選択することを支援するため,文部科学省のホームページ19で情報提供を行っている。

19文部科学省 男女共同参画社会の推進のために http://danjogaku.mext.go.jp/index.html

(3)現代的課題に関する学習機会の充実

文部科学省では,高齢者が生涯学習を通じて地域づくりに主体的に参画することを促進するため,平成26年6月に三重県四日市市,同年11月に東京都において,高齢者の生涯学習に関する研究成果や各地域の先進的な取組事例等を活用した研究協議を行う「長寿社会における生涯学習政策フォーラム」を開催した。

また,消費者が自ら進んで,その消費生活に関し必要な知識を習得し,必要な情報を収集するなど自主的かつ合理的に行動することを支援するため,消費者教育のより一層の充実を図った。さらに,学校教育における消費者教育の推進のための調査研究や,地域における消費者教育を一層推進するため,「消費者教育フェスタ」の開催や消費者教育アドバイザーの派遣,社会教育の仕組みや取組を活用した実証的調査研究等を実施した。

(4)リカレント教育の推進

文部科学省では,大学等における編入学の受入れ,社会人入試の実施,昼夜開講制の推進,夜間大学院の設置,履修証明プログラムや公開講座の実施等により,大学等の生涯学習機能の拡充とともに,キャリアアップを目指す社会人の受入れ体制の整備を図っている。

(5)放送大学の整備等

放送大学では,多彩な300の科目を提供するとともに,地域活動や社会貢献活動等様々な分野で一定の科目群を体系的に学んだ学生に対して,学位以外の履修証明を与える「科目群履修認証制度(放送大学エキスパート)」を推進した。また,文部科学省では,放送大学の学習環境の整備・充実や学習機会の拡大のための支援をしており,平成26年度から高度な社会人研究者の養成を行う博士後期課程を新たに設置するなど,社会人のニーズに対応したキャリアアップ支援の充実に一層努めた。

専修学校は,社会の要請に即応した実践的な職業教育機関として着実に発展してきており,平成26年5月現在,3,206校に約66万人の生徒が学んでいる。そのうち,約7万人が社会人であり,社会人への学習機会の提供において大きな役割を果たしている。また,産業界等のニーズを踏まえた中核的専門人材養成を推進していく観点から,専修学校,大学等と産業界等が産学官コンソーシアムを組織し,生徒・学生,社会人等が就労やキャリアアップに必要な知識・技術・技能を習得するための学習システムの構築を図った。

さらに,学習歴や生活環境等が多様な者が高等学校教育を受けられるよう,単位制高等学校の配置が進んでおり,平成25年度までに974校が設置されている。

そのほか,文部科学省では,学校や一般社団法人,一般財団法人の行う通信教育のうち,社会教育上奨励すべきものについて認定を行い,その普及・奨励を図っている。

(6)学校施設の開放促進等

文部科学省では,地域住民の学習機会や子供たちの活動拠点(居場所)づくり等を推進するため,学校施設を,子供たちの安全確保に十分配慮しつつ,放課後や週末等に開放し,多様な活動の場として提供する取組を支援している。また,学校・家庭・地域社会が連携協力することの重要性に鑑み,地域コミュニティの拠点としての学校施設,クラブハウス,屋外運動場照明,水泳プール,武道場等,学校開放諸施設の整備や活用を支援している。

(7)青少年の体験活動等の充実

文部科学省では,青少年の体験活動を推進するため,全国的な普及啓発,防災教育の観点に立った体験活動の推進,青少年の体験活動推進に関する調査研究,企業の社会貢献としての体験活動推進に関する企業CSRシンポジウム等を実施し,青少年の体験活動の機会の充実と普及啓発を図るとともに,地域における家庭,学校,青少年関係団体,NPO等をネットワーク化し,相互の情報交換や情報共有,事業の共同実施等を円滑化するためのプラットフォームの形成を支援している。

また,独立行政法人国立青少年教育振興機構では,全国に28ある国立青少年教育施設を活用し,様々な体験活動の機会と場を提供している(平成26年度は約510万人が利用)。さらに,「子どもゆめ基金」事業によって,民間団体が実施する体験活動等に対する助成を行っている。

(8)民間教育事業との連携

文部科学省を始めとした府省庁等が連携して実施している「子ども霞が関見学デー」においては,平成26年8月6,7日に,各参加機関の業務説明や職場見学等を行うとともに,民間教育事業者等の協力を得ながら,子供たちが夏休みに広く社会を知る体験活動の機会を提供した。

文部科学省では,行政や大学等の教育機関,NPOや民間団体,企業等の関係者が一堂に会し,多様な主体が協働した地域づくり,社会づくりについての研究協議等を行い,その成果を発信するとともに,継続的な活動が推進されるよう,様々な分野にまたがる関係者等のネットワーク化を図るための取組として「全国生涯学習ネットワークフォーラム2014」を宮城県で開催した。

(9)学習成果の適切な評価

文部科学省では,様々な学習活動の成果が適切に評価され,その成果の社会的通用性の向上が図られるよう,民間事業者等が行う検定試験の評価や情報公開の取組を促進することなどにより,検定試験の質の確保や向上を図っている。平成26年7月には,「検定試験の自己評価等に関するアンケート調査」の結果を公表(自己評価の実施割合約6割)して,関係団体による取組を促すとともに,検定試験の受検者等の活用に資するよう,文部科学省のホームページで情報提供を行った。また,検定試験における第三者評価に関する実践的調査研究を実施するなど,「自己評価」から「外部評価」への発展に向けて取組を進めている。さらに,大学等において,各大学等の判断により,専修学校での学修等の成果を単位として認定することを可能としている。

2 エンパワーメントのための女性教育・学習活動の充実

(1)女性の生涯にわたる学習機会の充実

文部科学省では,女性が主体的に働き方・生き方を選択できるよう,若い時期から結婚,妊娠,出産といったライフイベントを視野に入れ,長期的な視点で自らの人生設計を行うことを支援するため,ホームページで情報提供を行っている(本章第2節1(2)参照)。

(2)女性の能力開発の促進

文部科学省では,大学病院における女性医師・看護師に対する臨床現場定着や出産・育児等による離・退職後の復帰支援等,人材育成の取組を支援している。

独立行政法人国立女性教育会館では,女子大学生を対象に,将来,社会や組織を支える女性リーダーの育成を目的として,「女子大学生キャリア形成セミナー」を実施した。

(3)女性の学習グループの支援

文部科学省では,教育委員会や女性教育団体等が行う女性教育指導者の研修を奨励し,学習活動の企画・運営への女性の参画の促進を図るよう促している。

独立行政法人国立女性教育会館では,女性団体リーダー等を対象に,地域の男女共同参画を積極的に推進するリーダーとしてのエンパワーメント等を目的とした「女性関連施設・地方公共団体・団体リーダーのための男女共同参画推進研修」を実施したほか(本章第1節4参照),利用者のニーズに応じた研修プログラムの作成を支援するとともに,職員の専門性をいかし男女共同参画や女性教育等に関する積極的な情報提供を行っている。

(4)独立行政法人国立女性教育会館(NWEC)の事業の充実等

独立行政法人国立女性教育会館は,女性教育のナショナルセンターとして,基幹的女性教育指導者の育成,女性のキャリア形成支援や女性に対する暴力被害者支援に関する研修等喫緊の課題への対応,アジア太平洋地域等の女性のエンパワーメント支援,男女共同参画社会形成に資する多様なニーズに応じた情報提供サービス等を行っている。

また,女性アーカイブセンターでは,女性教育の振興や男女共同参画社会の形成に向けて顕著な業績を残した女性や女性教育・男女共同参画の行政施策に関する史・資料を収集し,展示や閲覧,所蔵資料データベースである女性デジタルアーカイブシステム20等を通じて提供している。

そのほか,平成26年度も埼玉大学・埼玉県私立短期大学協会との連携授業等を試行的に実施し,男女共同参画の視点に基づくキャリア教育プログラムの共同開発等に取り組んでいる。

女性教育情報センターでは,男女共同参画社会形成を目指した情報の総合窓口「女性情報ポータル“Winet(ウィネット)”」において,事業企画や施策の実施の参考となる人材の情報提供を目的とした「男女共同参画人材情報データベース」を公開し,その充実に努めている。また,女性が様々な新しい分野へチャレンジし,キャリアを形成していくために有用な事例(ロールモデル)や学習支援情報を提供している。

20独立行政法人国立女性教育会館 女性デジタルアーカイブシステム http://w-archive.nwec.jp/

3 進路・就職指導の充実

中学校及び高等学校においては,性別に捉われることなく,生徒が自らの生き方を考え,自分の意志と責任で進路を選択・決定する能力・態度を身に付けることができるよう,進路指導の充実に努めている。

特に,平成27年3月卒の高校新卒者の就職状況(平成27年3月末現在)については,就職内定率が前年同期を上回り改善が見られる一方,女子の就職内定率が男子に比べて低く,また就職率は地域によって差が見られる状況となっている。こうした状況を踏まえつつ,進路指導主事等と連携して,組織的・継続的に就職を希望する生徒に対する就職相談・支援を行い,求人企業の開拓等を行う「高等学校就職支援教員(ジョブ・サポート・ティーチャー)」を配置するなど,きめ細かな就職指導を展開している。

一方,高校生を始めとする若者の就職行動をめぐっては,学校を卒業しても就職も進学もしない者の増加やフリーター志向の高まり,就職しても早期に離転職する者の増加等,若者の勤労観,職業観の希薄化を指摘する声も少なくない。このため,文部科学省では,子供たちが,社会の一員としての役割を果たすとともに,それぞれの個性,持ち味を最大限発揮しながら,自立して生きていくことができるよう,キャリア教育を推進している(本節1(1)参照)。

そのほか,大学生に対する就職支援として,全国就職指導ガイダンスや各種会議において,企業に対して,学生の就職機会の拡充や女子学生の男子学生との機会均等の確保に努めるよう要請するとともに,各大学等に対して,全ての学生にきめ細かな就職指導や就職相談体制の充実を行うよう要請している。

厚生労働省では,女子学生等が的確な職業選択を行うことができるような啓発資料を作成し,大学や高等学校を通じて配布することにより,意識啓発を図っている。また,学生に対して,就職先を選択する際には,「女性の活躍・両立支援総合サイト」等を参考にしながら,企業の女性の活躍状況やポジティブ・アクションの取組も考慮するよう,大学等を通じて啓発を図っている。

総合科学技術会議では,人材の活用に関する改革の方向として,女子生徒・学生が自然科学系の分野に進む意欲をかき立てるように進路指導の充実を図るとともに,身近なロールモデルを整備すること,大学等において進路選択等の悩みに関する相談体制を整備することを奨励している。