第3節 外国人が安心して暮らせる環境の整備

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第3節 外国人が安心して暮らせる環境の整備

法務省の人権擁護機関では,従来から,外国人に対する偏見や差別の解消を目指して,「外国人の人権を尊重しよう」を啓発活動の年間強調事項の一つとして掲げ,講演会等の開催,ポスターの掲出やリーフレットの配布等の啓発活動を行っている。また,英語や中国語等の通訳を配置した外国人のための人権相談所を設置し,日本語を自由に話せない外国人からの人権相談に応じている。このほか,特定の民族や国籍の人々を排斥する差別的言動がいわゆるヘイトスピーチであるとして社会的関心を集めていることから,こうした言動に焦点を当てた啓発活動に取り組んだ。

文化庁においては,我が国に居住する外国人が,日本語能力が十分でないことなどから,安心・安全に生活できないという問題を解決し,外国人が日本社会の一員として円滑に生活を送ることができるよう,日本語教育の推進を図ることを目的とする「『生活者としての外国人』のための日本語教育事業」を実施し,地域における日本語教育に関する優れた取組の支援,日本語教育の充実に資する研修及び調査研究を行っている。平成26年度は67団体に委託を行った。

文部科学省では,外国人児童生徒等教育の充実のために,日本語指導等を行うための教員定数の加配措置,独立行政法人教員研修センターにおける日本語指導者等に対する研修,各自治体が行う公立学校への受入促進・日本語指導の充実・支援体制の整備に係る取組を支援する事業等を実施しているほか,学校教育法施行規則(昭和22年文部省令第11号)において日本語指導が必要な児童生徒を対象とした「特別の教育課程」を編成・実施できるようにしている。

また,平成21年度から26年度まで,不就学・自宅待機等となっている外国人の子供に対して,日本語等の指導や学習習慣の確保を図るための教室を設置し,公立学校等への円滑な転入ができるようにする「定住外国人の子どもの就学支援事業」を国際移住機関(IOM)において実施した。

さらに,学習指導要領に基づき,子供たちが広い視野を持って異文化を理解し,共に生きていこうとする姿勢を育てるために,国際理解教育を推進している。

人身取引対策に関する関係省庁では,「人身取引対策行動計画2009」,「人身取引対策行動計画2014」に基づき,人身取引対策の取組を進めている(第10章第6節参照)。

法務省入国管理局では,人身取引が重大な人権侵害であるとの認識の下,被害者である外国人に対しては,関係機関と連携して適切な保護措置を講ずるとともに,被害者の立場を十分配慮しながら,本人の希望等を踏まえ,被害者が在留資格を有している場合には,在留期間の更新や在留資格の変更を許可し,被害者が不法残留等の出入国管理及び難民認定法(昭和26年政令第319号。以下「入管法」という。)違反の状態にある場合には,在留特別許可を付与するなど,被害者の法的地位の安定を図っている。

なお,平成17年から26年までの10年間で,入国管理局が保護又は帰国支援した人身取引被害者は330人であり,そのうち不法残留等入管法違反の状態であった145人全員に対し,在留特別許可を付与している。

日本司法支援センター(以下「法テラス」という。)では,人身取引被害者が,加害者に対して損害賠償請求を行うに当たっては,当該被害者が我が国に住所を有し,適法に在留している場合であって,収入等の一定の要件を満たすときは,総合法律支援法(平成16年法律第74号)に基づく民事法律扶助制度が活用可能であることから,婦人相談所等にリーフレットを配布して民事法律扶助制度の周知を行った。また,人身取引被害者が被害者参加人として刑事裁判に参加するに当たっては,収入等の一定の要件を満たす場合には,法テラスを経由して国選被害者参加弁護士の選定を請求することが可能であることから,被害者参加人のための国選弁護制度の周知も併せて行った。さらに,人身取引被害者が被害者参加人として刑事裁判の公判期日等に出席した場合には,裁判所を経由して被害者参加旅費等を請求することが可能であることから,被害者参加旅費等支給制度の周知も併せて行った。