第1節 生涯を通じた男女の健康

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第1節 生涯を通じた男女の健康

(母子保健関係指標の動向)

女性は,妊娠や出産をする可能性もあり,生涯を通じて男性とは異なる健康上の問題に直面する。

厚生労働省「人口動態統計」(平成24年)によると,平成24年の出生数は103万7,231人,乳児死亡数は2,299人,新生児死亡数は1,065人,周産期死亡数は4,133人となっており,乳児死亡率,新生児死亡率,周産期死亡率についての長期的な動向を見ると,いずれも総じて低下(改善)傾向にある。

また,平成24年の出生数を母の年齢別にみると,30~34歳が35.5%と最も多く,次いで25~29歳が28.2%となっており,40歳以上は4.1%と少なくなっている。一方,母の年齢別周産期死亡率(出産千対)を見ると,25~29歳が3.3と最も低くなっているが,30歳代以降は年齢とともに増加し,45歳以上では18.5となっている。

(人工妊娠中絶件数の動向)

人工妊娠中絶件数及び人工妊娠中絶実施率(15歳以上50歳未満女子人口千対)について昭和50年から平成24年度までの動向を見ると,総数では件数,実施率共に総じて減少傾向にある(1-4-1図)。また,20歳未満の件数の全年齢に占める割合は,昭和50年の1.8%から,平成14年度には13.7%となり,それ以降減少傾向にあったが,20年度以降5年連続で上昇し,24年度には10.5%と,前年度に比べ0.2ポイント上昇した。

1-4-1図 年齢階級別人工妊娠中絶の推移 別ウインドウで開きます
1-4-1図 年齢階級別人工妊娠中絶の推移

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(女性特有のがん)

女性特有のがんとして子宮がん,乳がん等があり,これらのがんの総患者数を厚生労働省「患者調査」(平成23年)11 で見ると,子宮がんは5.5万人,乳がんは19.2万人となっている。

11宮城県の石巻医療圏,気仙沼医療圏及び福島県を除いた数値。

がんは早期発見が重要であるが,厚生労働省「国民生活基礎調査」(平成22年)によると,我が国における女性のがん検診の受診率(過去2年間)は,子宮がん検診においては20歳以上で32.0%,乳がん検診においては40歳以上で31.4%であり,欧米諸国と比べて低い状況にある。

(若年での感染が多いHIV感染者12

凝固因子製剤による感染例を除いて,平成25年末までに我が国において報告されたHIV感染者及びエイズ患者の累計報告件数(平成25年速報値)は,HIV感染者1万5,783件,エイズ患者7,188件となっている。

平成25年に新規で感染が報告されたHIV感染者は1,077件(男性1,035件,女性42件),エイズ患者は469件(男性451件,女性18件)で(平成25年速報値),前年に比べてHIV感染者・エイズ患者の報告件数はともに増加した。HIV感染者は過去3位,エイズ患者は過去2位であった。HIV感染者の推定感染地域を見ると,全体の85.0%(915件)が国内感染となっている。

感染が報告された時点の年齢で年代別に新規で感染が報告された感染者報告数(平成25年速報値)を見ると,20歳代が全体の29.1%,30歳代が34.4%を占めており,HIV感染者は20歳代,30歳代に集中している。

12HIV感染者とは,HIV(ヒト免疫不全ウィルス)に感染している者を指す。一方,エイズ患者とは,HIV感染によって免疫不全が生じ,ニューモシスティス肺炎等の日和見感染症や悪性腫瘍が発生した者を指す。

(健康増進に必要な適切な自己管理)

健康増進や生活習慣病予防のためには,自ら健康管理を行うことが重要である。厚生労働省「平成24年国民健康・栄養調査」によると,肥満者の割合は,男性では,40歳代が36.6%と,他の年齢階級に比べて最も高く,次いで50歳代が31.6%となっている。女性では,年齢とともに肥満の割合が高くなる傾向にあり,60歳代以上では約5人に1人となっている。一方,低体重(やせ)の者の割合は,女性では,20歳代が21.8%と最も高く,次いで30歳代が17.1%となっている。

運動習慣のある者の割合は,「平成24年国民健康・栄養調査」によると,男性で36.1%,女性で28.2%と平成23年と比べてほぼ変わらない。年代別に見ると,男性は70歳以上が,女性は60歳代が最も高く,それぞれ約5割,約4割で,男性では50歳代以下ではいずれも2割台,女性では30歳代が最も低く13.9%となっている。

(喫煙率の動向)

喫煙率の推移を男女別に見ると,男性は平成15年の46.8%から24年の34.1%まで低下しているが,女性では15年は11.3%,24年は9.0%とほぼ横ばいで推移している。年代別に見ると,ここ数年男女ともに20歳代の喫煙率が低下傾向にある(1-4-2図)。

1-4-2図 喫煙率の推移(男女別・年代別) 別ウインドウで開きます
1-4-2 図 喫煙率の推移(男女別・年代別)

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(上昇を続ける女性医師等の割合)

女性の高学歴化に伴い,医師等の専門職に就く女性も増加しており,医療施設で働いている医師,歯科医師に占める女性の割合は引き続き上昇傾向にある。女性医師の割合は昭和51年の9.4%から平成24年の19.6%まで上昇を続けている。薬局・医療施設で働いている薬剤師に占める女性の割合は14年まで上昇したが,それ以降は横ばいとなっている(1-4-3図)。

1-4-3図 女性の医療施設従事医師,同歯科医師,薬局・医療施設従事薬剤師の割合の推移 別ウインドウで開きます
1-4-3図 女性の医療施設従事医師,同歯科医師,薬局・医療施設従事薬剤師の割合の推移

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医師を取り巻く状況を見ると,慢性的な長時間労働,夜勤や当直等不規則な勤務形態により女性医師の中には,育児,介護等と仕事との両立が難しい者もおり,医師不足が社会問題となっている。特に,産婦人科医,小児科医については,新規に医師になる者の多い20歳代でそれぞれ68.3%,49.0%となっている女性医師の割合が,年齢が上がるにしたがって低くなる傾向がうかがえ,こうした状況を放置すると一層深刻な問題となるおそれがある(1-4-4図)。

1-4-4図 年齢階級別医師数(産婦人科・小児科,男女別・年齢別)(平成24年) 別ウインドウで開きます
1-4-4 図 年齢階級別医師数(産婦人科・小児科,男女別・年齢別)(平成24年)

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