第2節 障害者が安心して暮らせる環境の整備

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第2節 障害者が安心して暮らせる環境の整備

1 総合的な障害者施策の推進

障害の有無にかかわらず国民誰もが相互に人格と個性を尊重し支え合う「共生社会」を実現するため,政府は,「障害者基本計画」(平成14年12月24日閣議決定)及び「重点施策実施5か年計画」(平成19年12月障害者施策推進本部決定)に基づき,障害者施策を総合的かつ計画的に推進してきた。

平成21年12月には,内閣に障がい者制度改革推進本部(以下「推進本部」という。)を設置し,その下で障害のある方々を中心とする障がい者制度改革推進会議(以下「推進会議」という。)が開催され,我が国の障害者制度改革のための検討が進められた。

平成22年6月には,政府は,推進会議が取りまとめた「障害者制度改革の推進のための基本的な方向」(第一次意見)を最大限に尊重した形で,改革の工程表を含む「障害者制度改革の推進のための基本的な方向について」を閣議決定し,さらに,同年12月には,推進会議が取りまとめた「障害者制度改革の推進のための第二次意見」を踏まえ,障害者基本法(昭和45年法律第84号)について,障害者の定義や,障害者の地域社会における生活を支える観点等からの基本的理念の見直し,障害者政策委員会の設置等を盛り込んだ「障害者基本法の一部を改正する法律案」を23年3月に推進本部において決定した。この法案は,同年4月,国会に提出され, 7月に成立し, 8月に施行(一部は平成24年5月施行)された。

障害者基本法の改正により,平成24年5月,障害者基本計画の策定又は変更等に当たって調査審議や意見具申を行うとともに,計画の実施状況を監視や勧告を行うための機関として,内閣府に障害者政策委員会が設置された。同委員会では,25年度からの次期障害者基本計画の策定について,24年12月に意見を取りまとめた。障害者に対する差別の禁止の在り方については,同委員会に,24年7月に差別禁止部会が置かれ,同年9月には,同部会意見が取りまとめられた。

また,障害者基本法の一部改正等を踏まえた検討の後,平成24年3月に,推進本部において,障害者自立支援法(平成17年法律第123号)を「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律」(以下「障害者総合支援法」という。)とする内容を含む「地域社会における共生の実現に向けて新たな障害者保健福祉施策を講ずるための関係法律の整備に関する法律案」が決定され,第180回国会に提出した。同法律案は国会での審議により一部修正が加えられ,同年6月に成立した。

障害者総合支援法では,法の目的規定を改正し,基本理念を創設するとともに,「制度の谷間」を埋めるべく,障害者の範囲に難病等を加えること等を内容としている。

内閣府では,「共生社会」の理念の普及を図るため,「障害者週間」(12月3日から同月9日まで)を中心に,幅広い啓発・広報活動を行っており,平成24年度の「障害者週間」行事では,「障害者フォーラム2012」において,「アジア太平洋障害者の十年(2003~2012)」の最終年を記念して,障害者関係功労者及び団体の総理大臣表彰を行うとともに,全国から募集した「心の輪を広げる体験作文」及び「障害者週間のポスター」の最優秀作品の内閣総理大臣表彰等を行うなど多様な事業を実施した。

2 障害者の自立を容易にするための環境整備

文部科学省では,発達障害者(児)に対する乳幼児期から成人期に至るまでの一貫した支援を行うため,早期からの教育相談・支援体制の構築,高等学校等における発達障害のある生徒へのキャリア教育の充実等に取り組むほか,障害特性に応じた教材等の在り方等についての実践的研究を行っている。さらに,独立行政法人国立特別支援教育総合研究所の発達障害教育情報センターにおいて,発達障害に関する正しい理解や支援等に関する様々な教育情報等を,インターネットを通じて提供し,厚生労働省とも連携をしながら,必要なコンテンツ等の充実を図っている11

11国立特別支援教育総合研究所発達障害教育情報センター http://icedd.nise.go.jp/


政府は,「バリアフリー・ユニバーサルデザイン推進要綱」に基づき,高齢者,障害者,妊婦や子ども連れの人を含む全ての男女が社会の活動に参加・参画し,社会の担い手として役割と責任を果たしつつ,自信と喜びを持って生活を送ることができるよう,ハード・ソフト両面にわたる社会のバリアフリー・ユニバーサルデザインの推進に取り組んだ。

また,高齢者や障害者等の自立を支援し,介護者の負担軽減を図るため,福祉機器の開発のための実用化支援,情報バリアフリー環境の整備,高齢者等にやさしい住まいづくり,まちづくり,都市公園,交通機関,道路整備等高齢者や障害者等が自立しやすい社会基盤の整備を推進している。

バリアフリー法では,以下の内容を定めている。

ア 新設等の施設等(旅客施設,車両等,道路,路外駐車場,都市公園,建築物等)に対する移動等円滑化基準適合義務及び既設の施設等に対する移動等円滑化基準適合努力義務を規定

イ 市町村が作成する基本構想による重点整備地区の重点的かつ一体的なバリアフリー化の推進

ウ 国,地方公共団体,国民の責務として心のバリアフリーを規定

また,バリアフリー法に基づく「移動等円滑化の促進に関する基本方針」(最終改正平成23年国家公安委員会,総務省,国土交通省告示第1号)において,各施設等の移動等円滑化の目標値(2020(平成32)年度末まで)を定めているほか,当事者ニーズに即した施設の整備や教育訓練を行うことの必要性,市町村の定める基本構想における協議会の活用等当事者の参画を図ることの必要性,心のバリアフリー及びスパイラルアップ(段階的・継続的改善)といった国,国民等の責務に関する事項等を定め,住まいづくり,まちづくり,都市公園,公共交通機関,道路交通環境の整備を推進している(第2- 9- 1表)。

第2- 9- 1表 高齢者や障害者等の自立を容易にする社会基盤の整備 別ウインドウで開きます
第2 - 9 - 1表 高齢者や障害者等の自立を容易にする社会基盤の整備

3 雇用・就労の促進

文部科学省では,障害のある子どもが自立し社会参加するために必要な力を培うため,特別支援学校高等部等において職業教育に係る取組を推進している。

近年の障害者雇用状況については,雇用障害者数が9年連続で過去最高を更新するなど,着実に進展している。この進展を背景に,平成25年度から民間企業の法定雇用率を1.8%から2.0%にすることを盛り込んだ障害者の雇用の促進等に関する法律施行令及び身体障害者補助犬法施行令の一部を改正する政令(平成24年政令第165号)を公布した。

一方,中小企業を中心に更なる障害者雇用の取組を推進する必要があることから,平成24年度においては,中小企業向けの就職面接会を実施するなど,中小企業に重点を置いた,雇用率の達成に向けた指導を実施した。

また,精神障害等の多様な障害がある者については,ハローワークと福祉,教育等の関係機関とが連携し,就職から職場定着まで一貫した支援を行う「チーム支援」を実施するとともに,求職者へのカウンセリング業務や企業への意識啓発を行う「精神障害者雇用トータルサポーター」をハローワークに配置するなど,障害特性に応じたきめ細かな支援を実施した。

さらに,福祉,教育から雇用への一層の促進に向けて,地域で就労と生活の両面の支援を一体的に行う「障害者就業・生活支援センター」を拡充するとともに(平成23年度313センター→24年度316センター),その機能強化を図るなど,雇用施策と福祉施策が一体となった取組を行った。