平成22年版男女共同参画白書

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第1節 女性の人権を尊重した表現の推進のためのメディアの取組の支援等

1 メディアにおける男女共同参画の推進,人権尊重のための取組等

(1) 性・暴力表現を扱ったメディアの,青少年やこれに接することを望まない者からの隔離

内閣府では,「青少年育成施策大綱」(平成20年12月12日青少年育成推進本部決定)等に基づき,青少年を取り巻く有害環境への対応を図っている。また,有害環境の実態について調査・分析,情報の提供等を行うことにより,地域における有害環境の浄化活動に関する取組の推進及び関係業界等の自主的な取組の促進を図っている。

警察では,青少年保護育成条例により青少年への販売等が規制されている有害図書類について,関係機関・団体,地域住民等と協力して関係業界に対して自主的措置を講ずるよう働きかけるとともに,個別の業者に対する指導の徹底や悪質な業者に対する取締りの強化を図っている。

また,インターネット上の過激な暴力シーンや性的な描写を含むサイト等の少年に有害なコンテンツと少年を切り離すため,警察では,携帯電話やパソコンにおけるフィルタリングの普及のための広報啓発を行っている。

文部科学省では,青少年を取り巻くインターネット上の有害情報をめぐる深刻な問題に対応して,地域の実情に応じた有害情報対策の推進体制の整備を総合的に支援するとともに,平成20年度に引き続き有害情報に係る意識啓発のためのリーフレットやDVDの作成・配布を行った。


(2) 児童を対象とする性・暴力表現の根絶

警察では,平成20年6月に出会い系サイト事業者に対する規制の強化等の改正がなされたインターネット異性紹介事業を利用して児童を誘引する行為の規制等に関する法律(平成15年法律第83号)を効果的に運用し,インターネット異性紹介事業の利用に起因する児童買春その他の犯罪からの児童の保護を図っている。

また,平成16年6月に法定刑の引上げ等の改正がなされた児童買春・児童ポルノ法に基づき,児童ポルノ事犯の取締りを積極的に推進するとともに,心身に有害な影響を受けた児童の保護に努めている。

さらに,インターネット上に氾濫する児童ポルノを根絶し,深刻な人権侵害を受け,将来にわたり苦しむ被害児童を無くすための総合的な対策を推進することとし,平成21年6月,インターネットを利用した児童ポルノの拡散防止を焦点として,取締り,流通防止及び被害児童支援の三項目を施策の柱とする「児童ポルノの根絶に向けた重点プログラム」を策定したところであり,本プログラムに基づき,総合的な児童ポルノ対策を推進している。

特にインターネット上の児童ポルノ事案に対しては,児童ポルノ画像自動検索システム(CPASS(Child-Pornography Automatic Searching System):児童ポルノ画像等を警察庁が管理するデータベースに登録し,同一の画像等が更にインターネット上にあるかを検索し,ヒットした場合には登録した都道府県警察に自動的に通知するシステム)を運用しているほか,各国の保有する情報を共有化し,効率的かつ迅速な捜査,国際協力を推進するため,児童ポルノに関する国際的なデータベースの構築のための支援を行ってきた。

2 インターネット等新たなメディアにおけるルールの確立に向けた取組

(1) 現行法令の適用による取締りの強化

警察では,ネット上に流通するわいせつ図画等の違法な情報を,サイバーパトロール等を通じて早期に把握し,検挙等の措置を講じている。


(2) 青少年インターネット環境整備法に基づく取組

平成21年4月,(1)青少年がインターネットを適切に活用する能力を習得すること,(2)フィルタリング等により青少年がインターネットを利用して青少年有害情報の閲覧をする機会をできるだけ少なくすること,(3)国及び地方公共団体は民間の自主的・主体的な取組を尊重することを基本理念とする,青少年が安全に安心してインターネットを利用できる環境の整備等に関する法律(平成20年法律第79号。以下「青少年インターネット環境整備法」という。)が施行された。同法においては,内閣総理大臣及び関係閣僚からなる会議を内閣府に設置し,青少年が安全に安心してインターネットを利用できるようにするための施策に関する基本計画を策定し,実施することが規定されており,同法に基づき,「青少年が安全に安心してインターネットを利用できるようにするための施策に関する基本的な計画」(平成21年6月30日インターネット青少年有害情報対策・環境整備推進会議決定。以下「青少年インターネット環境整備基本計画」という。)が決定された。内閣府では,青少年インターネット環境整備法及び青少年インターネット環境整備基本計画に基づき,関係省庁及び関係事業者などと連携し,広報啓発活動や青少年のインターネット利用環境実態調査などを実施している。


(3) インターネット等新たなメディアにおける情報の規制等及び利用環境整備の在り方等に関する検討

内閣官房では,IT安心会議(インターネット上における違法・有害情報等に関する関係省庁連絡会議)の決定等に基づき,関係省庁における違法・有害情報対策に係る取組を督励している。

また,インターネット上の違法・有害情報に起因する問題に対し,官民横断的な実務家間での迅速かつ正確な情報共有を実現することにより,各業界における自主的な取組を推進するため,政府,事業者,関係団体等,関係セクターを横断したワンストップのスキームとして,「違法・有害情報対策官民実務家ラウンドテーブル」の枠組みを活用し,関係省庁,関係団体間の情報共有を図るとともに,関係団体における取組についての国民への情報提供を推進している。

さらに,関係団体等の違法・有害情報対策に係る取組を総合的に紹介するための「インターネット上の違法・有害情報対策ポータルサイト」により,違法・有害情報への具体的対策や関係省庁及び関係団体の取組等について,分かりやすく利便性の高い情報提供を推進している。

総務省では,性や暴力に関するインターネット上の有害な情報から青少年を保護するための有効な手段の一つであるフィルタリングに関し,総務大臣から携帯電話事業者等に対し,フィルタリングの導入促進及び改善等に関する要請を行うなど,その導入促進及びサービスの多様化に取り組んでいる。また,プロバイダ等に対して自主的なルールの形成及びその遵守を促し,情報提供発信を行う者のモラルを確立するため,広報啓発活動を推進している。さらに,平成21年1月に策定された,インターネット上の違法・有害情報対策の総合的な政策パッケージである「安心ネットづくり」促進プログラムに基づき,同年2月に設立された「安心ネットづくり促進協議会」を中心とする民間団体等の自主的取組を支援している。また同年8月より,違法有害情報相談センターの設置を支援し,関係事業者等によるわいせつ情報等の違法・有害情報への対応を促進している。

経済産業省では,インターネット上の違法・有害なコンテンツ(性・暴力)に対応したレイティング基準の改訂及びユーザー発信コンテンツ等(CGMサイト)におけるインターネット関係者に望まれる取組に関する検討を支援した。また,セミナー・キャンペーンの開催等を通じ普及啓発を実施している。

警察では,産業界等との連携の在り方について検討を行う総合セキュリティ対策会議を開催しているほか,都道府県単位でのプロバイダ連絡協議会等の設置を推進し,有識者,関係機関・団体,産業界等を通じ,官民が一体となってわいせつ情報等の違法情報・有害情報の排除を図っている。

また,平成18年6月に運用を開始したインターネット・ホットラインセンターでは,インターネット利用者から,インターネット上のわいせつ図画等の違法情報・有害情報に関する通報を受け付け,警察への通報や,プロバイダ等への削除依頼等を行っている。

3 メディア・リテラシーの向上

総務省では,放送分野におけるメディアリテラシー(メディアからの情報を主体的に読み解き,自ら発信する能力)の向上に資する教材を「放送分野におけるメディアリテラシー」サイトを通じて広く公開することにより,メディアリテラシーの普及を図っている。また,インターネット,携帯電話等の情報通信分野におけるメディアリテラシーの育成に資する教材(「ICTメディアリテラシー育成プログラム」)を開発し,普及を図っている。

文部科学省では,学校教育,社会教育を通じて,情報を主体的に収集・判断し,インターネットを始めとする様々なメディアが社会や生活に及ぼす影響を理解することで,情報化の進展に主体的に対応できる能力の育成を図っている。