平成21年版男女共同参画白書

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第5節 人身取引への対策の推進

1 人身取引対策行動計画の積極的な推進

「人身取引対策行動計画」(平成16年12月人身取引対策に関する関係省庁連絡会議決定)に沿って,関係施策を推進している。また,我が国は,政府協議調査団をタイ,フィリピン,コロンビア,ロシア,ルーマニア,ウクライナに続いて,インドネシア,カンボジア,ラオス等に派遣し,先方政府やNGO等の関係機関との協力を促進するとともに,人身取引に関連した地域間会合等の参加や人身取引の防止等に関して国際的な支援を行うなど積極的な取組を行っている。

「男女共同参画基本計画(第2次)」においては,女性に対するあらゆる暴力の根絶を図るため,人身取引について総合的・包括的な対策を推進することとされている。

2 関係法令の適切な運用

警察では,人身売買の罪等を風俗営業の許可の欠格事由としてこれらの罪を犯した者を風俗営業を営む者から排除し,接待飲食等営業を営む者等に接客従業者の生年月日,国籍,就労資格等の確認を義務付けている風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律(昭和23年法律第122号)を適切に運用し,人身取引の被害者である外国人女性が,風俗営業や性風俗関連特殊営業において売春の強要等の搾取を受けている状況の改善を図っている。

法務省では,出入国管理及び難民認定法(昭和26年政令第319号)に関し,人身取引等の定義規定を置くこと,人身取引等の被害者が上陸特別許可・在留特別許可の対象となることを明確にすることなどを内容とする改正を行い,平成17年7月から施行しているところ,17年から20年までの4年間で,不法滞在者であった人身取引被害者の外国人女性104人全員に対して,在留特別許可を与えた。

3 被害者等の立場に立った適切な対処の推進

内閣府では,女性に対する暴力をなくしていく観点から,関係省庁,地方公共団体等と連携・協力して,国民一般に対し,人身取引に関する広報・啓発活動を実施している。

警察では,女性と児童の人身取引を防止するため,関係法令による適切な取締りを始め,被害女性の保護等の総合的な対策を,関係省庁,関係団体と連携して推進する一方で,日本国民による海外での児童買春等の問題については,児童買春・児童ポルノ法に基づく取締りを推進するとともに,CSEC(Commercial Sexual Exploitation of Children)東南アジアセミナーの開催等により,外国捜査機関等との情報交換の緊密化や連携強化に取り組んでいる。さらに,警察庁では,在京大使館,関係NGO等との間で,コンタクトポイントを設置して人身取引に関する情報交換を行っている。また,平成19年10月から,少年の福祉を害する犯罪や人身取引事犯の被害者となっている子どもや女性の早期保護等を図るため,警察庁の委託を受けた民間団体が,市民から匿名による事件情報の通報を電話で受け,これを警察に提供して捜査等に役立てようとする「子どもや女性を守るための匿名通報モデル事業」を運用している。

厚生労働省では,人身取引被害者の保護の充実を図るため,平成18年度より婦人相談所で保護した人身取引被害者の医療費(他法他制度が利用できない場合に限る)について補助している。

外務省では,人身取引被害者の安全な帰国及び社会復帰のため,IOM(国際移住機関)の「トラフィッキング被害者帰国・社会復帰支援事業」への拠出を平成17年度より開始し,被害者の帰国(平成20年12月末までに総計144名)や帰国後の社会復帰を支援している。また,「日本の人身取引対策」パンフレットを作成・配付するなど,人身取引問題についての国内外の啓発に努めている。

独立行政法人国立女性教育会館では,人身取引とその防止・教育・啓発に関する調査研究を実施している。平成19年度から,その成果に基づき教材及び啓発プログラムの開発に取り組んでいる。