平成20年版男女共同参画白書

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第2節 多様な選択を可能にする教育・学習機会の充実

1 生涯学習の推進

(1)リカレント教育の推進

男女共同参画会議監視・影響調査専門調査会では,平成19年5月に政府が実施する男女共同参画社会の形成の促進に関する施策の実施状況及び今後の取組に向けての意見(多様な選択を可能にする能力開発・生涯学習施策について)の決定を行った。

文部科学省では,大学等における,編入学の受入れ,社会人選抜の実施,昼夜開講制の推進,夜間大学院の設置,公開講座の実施等や,大学・大学院や専修学校等の高等教育機関における,産官学の連携による先導的なプログラム開発や講座提供等の推進などにより,大学等の生涯学習機能の拡充とともに,キャリアアップを目指す社会人の受入体制の整備を図っている。

(2)放送大学の整備等

放送大学では,「21世紀の女性と仕事」等,女性のライフプランニングに役立つ科目を提供するとともに,キャリアアップ支援の一環として,地域活動や社会貢献活動など様々な分野に関して,それぞれ一定の科目群を体系的に学んだ学生に対して,学位以外の履修証明を与える科目群履修認証制度「放送大学エキスパート」を奨励している。

専修学校は,社会の要請に即応した実践的な職業教育,専門的な技術教育等を行う教育機関として着実に発展しており,女性の再チャレンジ支援においても大きな役割を果たしている。

また,多様な学習歴や生活環境を持つ者が高等学校教育を受けられるよう,単位制高等学校の充実が図られている。

文部科学省では,学校や民法法人の行う通信教育のうち,社会教育上奨励すべきものについて認定を行い,その普及・奨励を図っている。

(3)学校施設の開放促進等

文部科学省では,地域住民の学習機会や子どもたちの活動拠点(居場所)づくりを推進するため,学校施設を,子どもたちの安全確保に十分配慮しつつ,放課後や週末に開放し,多様な活動の場として提供する取組を支援している。また,地域コミュニティの拠点としての学校施設,クラブハウス,屋外運動場照明,屋内水泳プール,屋外水泳プール,武道場など,学校開放諸施設の整備を行っている。

(4)青少年の体験活動等の充実

文部科学省では,青少年が自立した人間として成長することを支援するため,青少年の主体性・社会性をはぐくむ社会体験や自然体験等の体験活動を実施した。また,関係省庁と連携した体験型環境学習等を実施した。さらに,独立行政法人国立青少年教育振興機構に設置されている「子どもゆめ基金」により,民間団体の行う体験活動等に対する助成を行った。

(5)民間教育事業との連携

文部科学省を始めとした府省庁等が連携して実施している「子ども見学デー」においては,平成19年8月22日,23日を中心に,各参加機関の業務説明や職場見学などを行うとともに,民間教育事業者等の協力を得ながら,子どもたちが夏休みに広く社会を知る体験活動の機会を提供した。

また,文部科学省では,生涯学習に係る活動を実践する場を全国的な規模で提供する「全国生涯学習フェスティバル」を開催しており,平成19年度は,11月2日から6日にかけて岡山県において実施した。この事業は,国民一人ひとりの生涯学習への意欲を高めるとともに,学習活動への参加を促進するため地方自治体や民間教育事業者との連携の下に実施されている。

(6)高度情報通信ネットワーク社会に対応した教育の推進

文部科学省では,「エル・ネット」(教育情報衛星通信ネットワーク)を活用し,全国の社会教育施設等に対して,多様な教育・学習情報の提供に努めるとともに,地域の特色あるコンテンツを全国に配信し,地域における学び・交流の場の拡大に努めている。

また,平成20年度からインターネットを利用したシステムへ移行することとしており,19年度は,その実施に向けシステム開発及び試行運用を行った。

(7)現代的課題に関する学習機会の充実

文部科学省では,地域住民がボランティア活動や,地域の様々な課題を解決する学習や活動などに取り組むことを通じて,住民同士のきずなづくりを推進する『「学びあい,支えあい」地域活性化推進事業』を実施した。

(8)学習成果の適切な評価

文部科学省では,様々な学習活動の成果が適切に評価されるような社会の実現に向け,生涯学習施策に関する各種調査研究を行うとともに,大学等において,各大学等の判断により,専修学校での学修などの成果を単位として認定することを促している。

また,平成19年6月に学校教育法が改正され,大学等が,社会人等の学生以外の者を対象とした一定のまとまりのある学習プログラムを開設し,その修了者に対して学校教育法に基づく履修証明書(Certificate)を交付できることとした。

2 エンパワーメント7のための女性教育・学習活動の充実

(1)女性の生涯にわたる学習機会の充実

文部科学省では,女性が主体的に働き方を選択していく知識を備え,自己の可能性やライフステージ別の自己イメージを若い時期から持てるよう,ライフプランニングに関する意識形成等を促す学習プログラム等の開発を目的とした調査研究を実施している。

(2)女性の能力開発の促進

文部科学省では,出産・育児等により就業を中断した女性等を対象に,「再チャレンジのための学習支援システムの構築」事業において,身近な場所でITやコミュニケーション能力等に関する講座等を実施し,再チャレンジを希望する女性に学習機会を提供している。

また,大学・短期大学・高等専門学校・専修学校が教育研究資源や職業教育機能を活用し,産業界や関係団体等と連携することなどにより,新たなチャレンジを目指す社会人(子育て等により就業を中断した女性を含む。)等のニーズに応じた専門的・実践的教育プログラムを開発・実施することを支援し,学び直しの機会の充実を図っている。

さらに,大学病院における女性医師・看護師に対する臨床現場定着や出産・育児等による離・退職後の復帰支援など,人材育成の取組を支援している。

(3)女性の学習グループの支援

文部科学省では,教育委員会や女性教育団体等が行う女性教育指導者の研修を奨励し,学習活動の企画・運営への女性の参画の促進を図るよう,女性教育指導者の養成に努めている。

(4)独立行政法人国立女性教育会館の事業の充実等

独立行政法人国立女性教育会館は,女性教育のナショナルセンターとして,基幹的女性教育指導者の育成,女性のキャリア形成支援や配偶者等からの暴力に関する問題の研修,女性の科学技術分野への参画支援など喫緊の課題への対応,アジア太平洋地域等の女性のエンパワーメント支援,男女共同参画社会形成に資する多様なニーズに応じた情報提供サービス等を行っている。

また,女性教育の振興や男女共同参画社会の形成に向けて顕著な業績を残した女性や女性教育・男女共同参画の行政施策に関する史料・資料の収集・整理・保存・提供を行う女性アーカイブセンターの開設に向け,平成18年度より関係資料の収集等女性のアーカイブの構築を行っている。

7 個人として,そして/あるいは集団として,意思決定過程に参画し,自立的な力をつけること。

3 進路・就職指導の充実

中学校及び高等学校においては,性別にとらわれることなく,生徒が自らの生き方を考え,自分の意志と責任で進路を選択・決定する能力・態度を身に付けることができるよう,進路指導の充実に努めている。

特に,高校生の就職状況については,ここ数年回復傾向にあるものの,依然として未内定者も存在することから,教師は進路指導主事等と連携して,組織的・継続的に就職を希望する生徒に対する就職相談・支援を行い,また求人企業の開拓などを行う「高等学校就職支援教員(ジョブ・サポート・ティーチャー)」を配置するなど,きめ細かな就職指導を展開している。

一方,高校生を始めとする若者を取り巻く厳しい就職環境については,学校を卒業しても就職も進学もしない者の増加やフリーター志向の高まり,就職しても早期に離転職する者の増加など,若者の勤労観,職業観の希薄化を指摘する声も少なくない。このことから,文部科学省では「キャリア教育の推進に関する総合的調査研究協力者会議」を設置し,児童生徒の発達段階に応じたキャリア教育の在り方及びその推進方策等について検討を行い,平成16年1月に報告書を取りまとめた。これらを踏まえ,17年度からは,「キャリア教育実践プロジェクト」を実施しており,具体的には,中学校を中心に5日間以上の職場体験を「キャリア・スタート・ウィーク」として実施し,地域の協力体制の構築等を通じ,キャリア教育の推進を図っている。

一方,これまでの高等学校におけるキャリア教育に関する取組は十分とはいえないとの指摘を踏まえ,平成19年度から,高等学校(特に普通科高校)における取組を充実するため,「高等学校におけるキャリア教育の在り方に関する調査研究」を実施している。

また,大学生に対する就職支援として,全国就職指導ガイダンスや各種会議において,企業に対して,学生の就職機会の拡充や,女子学生の男子学生との機会均等の確保に努めるよう要請するとともに,各大学等に対して,すべての学生にきめ細かな就職指導や就職相談体制の充実を行うよう要請している。

厚生労働省では,女子学生,女子高校生等に対して,女子学生向けの情報をポジティブ・アクションに関するサイト上で掲載することや,意識啓発セミナーの開催等により,的確な職業選択を行えるよう意識啓発を行っている。

総合科学技術会議では,「科学技術関係人材の育成と活用について」(平成16年7月決定,関係府省に意見具申)の中で,人材の活用に関する改革の方向として,女子生徒・学生が自然科学系の分野に進む意欲をかき立てるように進路指導の充実を図るとともに,身近なロールモデルを整備すること,大学等において進路選択等の悩みに関する相談体制を整備することを奨励している。