平成20年版男女共同参画白書

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第2節 女性が中心となって切り開く地域の可能性―実践的活動から進化する男女共同参画―

(原動力は身近なものを大切にし,育てていこうという気持ち)

女性が中心的な役割を果たす地域活動の原動力となり,活動継続の推進力となっているのは,自らが主体となって,身近なものや人々を支え,大切にし,育てていかなければならないという強い思いであることが多い。

【事例】

1(まちづくり・観光)地域の生活文化づくりという夢の共有が結実

特定非営利活動法人 納川の会(島根県)

石見地域の生活資源の魅力や豊かさを地元の住民や外部の人々に伝えたいという強い思いがきっかけとなり,女性のためのフォーラム「鄙のヒナまつり」開催,古民家の再生,地域の生活文化を活かした服飾ブランドや工芸品づくり,地域住民との触れ合い交流イベント等幅広い活動を実施。


2(環境)地道な環境保護活動により女性に注目と期待

認定特定非営利活動法人 緑と水の連絡会議(島根県)

農薬の空中散布が地域の環境や地域に住む人々の健康に与える影響についての危機意識をきっかけに,牛の放牧を活用する等により三瓶山に広がる草原を保全していく取組や,保全活動を通じた子どもたちへの環境教育体験などを実施。

3(子育て)地域ぐるみで子育て支援

特定非営利活動法人 わははネット(香川県)

代表者が自らの出産の経験から,地域ぐるみで子育てを行う必要性を強く痛感したことがきっかけとなり,父親の育児への意識啓発のイベントや,結婚前の若者たちを対象に小さな子どものいる家庭へのホームステイ事業等を実施。

(身近な地域や生活に密着した視点と柔軟な発想に基づく活動)

女性が中心的役割を果たす地域活動は,身近なものに根ざし地域や生活に密着した生活者・消費者の視点,そして,既成概念やこれまでのやり方を変える柔軟な発想に優れているものが多い。こうした地域や生活に密着した視点と柔軟な発想が基礎となって,地域の身近な課題の解決につながったり,地域のニーズに合った活動が展開されている。

【事例】

4(まちづくり・観光)自立した女性たちの職業意識が地域ブランドを確立

豊見城市ウージ染め協同組合(沖縄県豊見城市)

地元の特産物であるサトウキビの茎や葉,穂を原料として抽出された色素を染料(ウージ染め)として利用し,服地や工芸品など各種の商品開発を実施。


5(農山漁村)地元の生産物を活かした「食」と「農」との交流による農村の活性化

からり農産物直売所(愛媛県内子町)

第三セクター「内子フレッシュパークからり」の中の直売所(からり農産物直売所)において,会員が自ら栽培した農作物を直接,消費者に販売。地域の資源である農産物を,消費者に直接販売することでそのニーズをくみ取ることができ,それを更に生産面に活かすなど,生産者にも消費者にも有益となっている。

6(市民活動支援)生活機能づくりのための市民事業融資により地域社会を改善

東京コミュニティパワーバンク(東京都)

市民自身が出資し,低金利・無担保で,自分たちの住む地域の福祉や環境保全といった社会的な事業への融資を実施。女性の参画による多様な視点を大事にし,地域社会を活性化する働き手を市民の側から応援しようという,一般金融機関とは異なるユニークなコンセプトが活動の基礎となっている。

7(教育)新しい発想による「がっこう」作り

特定非営利活動法人 トイボックススマイルファクトリー(大阪府)

特定非営利活動法人と行政との連携・協働の下,不登校・いじめ・ひきこもり・発達障害等様々な困難な状況を抱えた子どものための新しい「がっこう」を開設し,サポート活動を実施。緊急相談は365日24時間対応,施設内での活動や出席日数は在籍校での出席日数に反映するなど,新しい発想による教育活動の展開につながっている。

(緩やかなつながりによる柔軟な活動の展開と調整能力の優れた「連携・協働型」リーダーシップ)

女性が中心となって活躍する地域活動においては,女性がネットワークの核となって地域の多様な主体と連携・協働しながら活動を展開していることが多い。

多様な主体と効果的,効率的に連携・協働するためには,一般的な組織におけるリーダーシップとは異なり,対等な主体間をつなぐリーダーシップが求められる。

緩やかなつながりは,一つの課題の解決にとどまらず,様々な課題の解決に応用可能であり,活動の幅もそれに応じて広がってくる。

【事例】

8(まちづくり・観光)女性のネットワークが住みよい街づくりに貢献

桑折町女性団体連絡協議会(福島県桑折町)

町や県等行政,商工会,自治会などと連携・協働することにより,女性が議員や町長の役を務める町議会を模擬的に行う女性模擬議会の開催や各種男女共同参画に関する取組のほか,イベント等の地域おこしに関する取組を実施。


9(環境)照葉樹林と有機農業の里づくり

綾の自然と文化を考える会・オーガニックごうだ(宮崎県綾町)

代表者が活動の核となって,有機農業により栽培された野菜を利用したレストラン経営を行うほか,町や県や森林管理局等の行政,地域の自然保護団体等市民団体,地域に住む人々と連携・協働して,環境保全型農業を活かしたまちづくりへの取組や地元の照葉樹林を守り世界遺産とするための諸活動を実施。

10(まちおこし・観光)交流と連携によって動き始めた商店街

八島おかみさん会(京都府舞鶴市)

様々な分野で活動する28団体や地域に住む人々と連携しながら,地元の特徴を活かしたお土産の開発や空き店舗を利用した事業等を実施し,商店街の活性化を図っている。

11(防災)多様な主体との連携により火災ゼロを維持

大利根町婦人防火クラブ(埼玉県大利根町)

防火訓練だけでなく,防災の面で子どもへの防災教育,火の用心のパンフレットを家庭に配布するなどのきめ細かな防火活動等を行うほか,家庭訪問と併せて一人暮らし高齢者のケアなども実施。行政や地域内の住民との世代を超えた交流,他地域との交流を通じ,防火活動以外の美化活動等に発展している。

(意識を変える,行動を変える,人を育てる活動)

女性が主導する地域に密着した活動は,人々の意識を変え,行動を変え,そうした過程を通じて人々を育成する。地域に根ざした地道な活動を継続することによって,男女共同参画に関する意識,地域の伝統や環境を守る意識,子育てに関する意識等が地域に浸透していく。そうした意識の変革は,人々の行動に変化をもたらす。また,実践的活動を通じて女性が力を付け,政策・方針決定過程への参画が拡大されるという人材育成機能は重要である。

【事例】

12(農林水産・食育)女性の活躍が地域の農業のイメージを一変

女性農業機械オペレーターグループ「グリーンズ」(福岡県苅田町)

女性8名が,農耕用大型特殊免許や農業機械士の資格を取得し,農作業の受託や各種農産物の栽培等を実施。「男性が機械に乗って女性はその横で補助的な作業を行う」という従来の農業のイメージを変え,新たな農業の可能性を引き出した。


13(子育て・介護)絵本を通じた子育てと世代間交流

絵本コミュニティKURABU(北海道)

絵本の読み聞かせを行うほか,読み聞かせボランティアのための勉強会等を開催。保育園,保健センター,小学校,高齢者施設等,多くの地元の施設と連携し,活動を展開することによって,世代を超えて,地域における子育てや文化活動の重要性についての認識を深め,地域に住む人々の子育てや文化活動に対する姿勢を積極的にするという効果をもたらしている。

14(環境)レンタル食器で住民の環境意識が向上

特定非営利活動法人 スペースふう(山梨県増穂町)

イベントの際に大量に出る使い捨て食器のごみの山に対する問題意識から,イベント等の飲食に使用される使い捨て食器の代わりとなるレンタル食器(リユース食器)を提供する環境コミュニティ・ビジネスの展開を通じ,地元住民の環境意識や文化意識の向上に役立っている。また,活動のメンバーから,町議会議長や議員になる者が出ている。

(活動の成果や活動に対する積極的な評価による活動の持続性,発展性)

活動やその成果が周囲から認められ,評価され,メディアに取り上げられ,行政等から表彰,後援等を受ける。このような活動に対する積極的な評価が活動を持続させ,活性化し,更なる活動の発展をもたらす。

【事例】

15(まちづくり・観光)外国出身者を中心とした女将たちによる日本の伝統美の追求

銀山温泉の女将会(山形県)

橋のごみ拾いや花を植えるなどの温泉街の美化活動や観光イベントへの参加,研修会等を行うほか,温泉組合等と連携し,銀山温泉のまちづくりに参画。日本の伝統美を見直そうというリピーターも増え,観光客の増加という好影響を地域に与え,メディアで取り上げられる機会も増えた。これが,観光地としての魅力づくりにつながる更なる活動を生むという好循環をもたらしている。


16(防災・防犯)町ぐるみの防犯活動で空き巣が激減

杉並区馬橋地区ご近所付き合い広目隊(東京都杉並区)

蛍光色の目立つユニフォームであいさつをしながら練り歩く「あいさつパトロール」など毎日パトロールを行うほか,ごみ拾いなどの環境美化活動等を実施。地域の空き巣やひったくりが大幅に減少し,そのことから他地域からも注目されるようになり,「空き巣に狙われた町」というイメージの払拭につながった。また,平成19年に警視総監賞を受賞したことも活動の推進力になったと考えられる。