平成19年版男女共同参画白書

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女性研究者の育成・登用

近年,文部科学省の科学技術振興調整費「女性研究者支援モデル育成」が開始されたことなどもあり,大学等研究機関においては,女性研究者の採用・登用についてその取組が顕著である。ここではいくつかの特色ある取組について紹介する。

(1)「病後児保育室 星の子ルーム」(東北大学)

東北大学病院では,平成13年から教室員会という大学病院・医学研究科の助教授以下の教員・医員・大学院生などを中心とする団体と看護部が協働して病児保育施設を運営していた。これは大学内の病児保育施設として全国で初の設置であった。病児保育とは,病気の回復期で登園・登校できない状態でありながら家庭で世話をする人がいない子供を,保護者に代わって看護・保育するものである。医師が常駐していない施設なので,実際には回復期の病児を対象とした病後児保育を行ってきた。大学病院の協力を得ながら教室員会会員のボランティアで運営してきたが,18年4月から大学病院の病後児保育施設「星の子ルーム」として運営されるようになった。

東北大学は平成18年度から,文部科学省科学技術振興調整費「女性研究者支援モデル育成」事業を受けて「杜の都女性研究者ハードリング支援事業」を開始している。この事業の一環として,これまで病院地区でのみ利用されていた「星の子ルーム」は全学の職員・学生が利用できるように拡充されることになった。

病後児保育室 星の子ルーム

(2)北大赴任者の研究者パートナーのためのキャリア継続支援(北海道大学)

女性研究者はパートナーも研究者であることが多く(女性研究者の50%以上はパートナーも研究者),同じ地域にそれぞれが研究ポストを得られなければ,同居をあきらめるか,どちらかがキャリア継続をあきらめるかの選択を迫られることがある。若い夫婦にとって出産・育児期間を含む家庭形成期は,パートナーと同居し,二人が協力して仕事(研究)と家庭生活の両立を図ることが望まれる。二人でも乗り越えることが難しい出産・育児期間,パートナーと離れて一人で仕事(研究)・家庭生活の両方を抱えたら,女性でも男性でも非常に厳しい情況になり,潰れてしまう可能性が極めて高くなる。

北大の場合,首都圏や関西圏などの大学等研究機関が群立している地域と異なり,札幌キャンパス・函館キャンパスともに,近隣に研究ポストを得られる大学や研究機関が非常に限られており,研究者夫婦の一方が北大に赴任した場合,パートナーが同じ地域で活躍の場を探すことは著しく困難である。

そのため同学では,北大赴任者の研究者パートナーがキャリアを断念することなく,のびのびと能力を発揮し,キャリア継続できるような支援策を検討している。この支援策により北大が女性・若手研究者にとって魅力的な職場となることは,優秀な人材を招致していくために非常に重要である。現在においては,北大学内外・近隣の研究ポスト情報の網羅・提供や北大赴任者の研究者パートナーのための,独自の研究員ポストを創設するなどの支援を行っている。

(3)学内の大学院生等による理系進路選択の応援

女性の研究者を増やすにあたっては,女子中高生等の進路選択にあたって,興味をもってもらうことが重要である。

また,女子中高生にとって進路選択を含む自らの将来を考える際に,適切なロールモデルの存在は重要である。最も身近なロールモデルとなりうる女子大生・大学院生と直接話したり,一緒に手を動かして実験する機会を与えることで,理系分野へのあこがれや親近感を引き出すことを狙って以下のような取組がなされているところである。

○サイエンス・エンジェル(東北大学)

東北大学においては,理系部局の大学院に進学する女子学生支援や研究者を志す女子学生啓発のためにサイエンス・エンジェル(SA)制度を創設し,母校の出張セミナーや出前講座などを行っている。

サイエンス・エンジェル(東北大学)

○理系応援キャラバン隊(北海道大学)

北海道大学においても,同大学の女子学生・女子院生を中心に理系応援キャラバン隊を結成し,大型バスにスタッフと実験器材を満載して各地に遠征するなどの活動を行っている。

理系応援キャラバン隊(北海道大学)