平成18年版男女共同参画白書

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第5節 人身取引への対策の推進

「人身取引対策行動計画」(平成16年12月人身取引対策に関する関係省庁連絡会議決定)に沿って,関係施策を推進している。

平成17年12月に閣議決定された男女共同参画基本計画(第2次)において,女性に対するあらゆる暴力の根絶を図るため,人身取引について総合的・包括的な対策を推進することとされた。

国際的な組織犯罪である人身取引は重大な犯罪及び人権侵害であるとの認識の下,「国際的な組織犯罪の防止に関する国際連合条約を補足する人(特に女性及び児童)の取引を防止し,抑止し及び処罰するための議定書」が,平成17年6月,第162回通常国会において,承認されるとともに,人身取引その他の人身の自由を侵害する犯罪に対処するための法整備に関し,人身売買罪等の創設を内容とする刑法等の一部を改正する法律(平成17年法律第66号)が全会一致で可決,成立した。同年12月現在,一部を除いて施行されている。

また,我が国は,政府協議調査団をタイ,フィリピンに続いて,コロンビア,ロシア,ルーマニア,ウクライナ等に派遣し,先方政府やNGO等の関係機関との協力を促進するとともに,人身取引に関連した地域間会合等の主催や人身取引の防止等に関して国際的な支援を行うなど積極的な取組を行っている。

内閣府では,女性に対する暴力をなくしていく観点から,関係省庁,地方公共団体等と連携・協力して,国民一般に対し,人身取引に関する広報・啓発活動を実施している。

警察では,女性と児童の人身取引を防止するため,関係法令による適切な取締りを始め,被害女性の保護等の総合的な対策を,関係省庁,関係団体と連携して推進する一方で,日本国民による海外での児童買春等の問題については,児童買春・児童ポルノ法に基づく取締りを推進するとともに,CSEC(Commercial Sexual Exploitation of Children)東南アジアセミナーの開催等により,外国捜査機関との情報交換の緊密化や連携強化に取り組んでいる。さらに,警察庁では,人身取引問題について,在京大使館,関係NGO等との間で,人身取引問題に関するコンタクトポイントを設置して人身取引に関する情報交換を行っている。

また,人身取引の被害者である外国人女性が,風俗営業や性風俗関連特殊営業において売春の強要等の搾取を受けている状況を改善するため,平成17年11月に成立した風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律の一部を改正する法律(平成17年法律第123号)において,1人身売買の罪等を風俗営業の許可の欠格事由に加えること,2接待飲食等営業を営む者等に接客従業者の生年月日,国籍,就労資格等の確認を義務付けることなどを内容とする改正を行った。(平成18年5月から施行)

法務省では,平成17年6月に成立した刑法等の一部を改正する法律において,出入国管理及び難民認定法に関し,1人身取引等の定義規定を置くこと,2人身取引等の被害者が上陸特別許可・在留特別許可の対象となることを明確にすること,3人身取引等の被害者を資格外活動・売春関係業務従事を理由とする退去強制の対象から除外すること,4人身取引等の加害者を上陸拒否・退去強制の対象に加えることなどを内容とする改正を行い,17年7月から施行した。

厚生労働省では,人身取引被害者の適切な保護及び支援を行うため,各都道府県婦人相談所が自ら一時保護所で保護を実施することに加え,平成17年度より婦人相談所からの委託により,婦人保護施設や民間シェルター等における保護を実施している。

独立行政法人国立女性教育会館では,人身取引を予防し,女性のエンパワーメントに資する教育・啓発のあり方に関する調査研究を実施するとともに,外務省,国際移住機関(IOM)と共催で,国際的機関のネットワークを図り,問題解決に向けた取組を推進するための国際シンポジウムを開催した。