平成17年版男女共同参画白書

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第1節 多様なライフスタイルに対応した子育て支援策の充実

1 多様なライフスタイルに対応した子育て支援策の充実

急速な少子化の流れを変えるため,平成15年7月に成立した少子化社会対策基本法(平成15年法律第133号)に基づき,政府が講じるべき施策として「少子化社会対策大綱」が16年6月に閣議決定され,今後,特に集中的に取り組むべき4つの重点課題として,1若者の自立とたくましい子どもの育ち,2仕事と家庭の両立支援と働き方の見直し,3生命の大切さ,家庭の役割等についての理解,4子育ての新たな支え合いと連帯,が設定された。

また,本大綱に盛り込まれた施策を効果的に推進するため,「重点的に推進すべき少子化対策の具体的実施計画について(新エンゼルプラン)」(平成11年12月大蔵・文部・厚生・労働・建設・自治6大臣合意)に代わる新たなプランとして,「少子化社会対策大綱に基づく重点施策の具体的実施計画について(子ども・子育て応援プラン)」を平成16年12月に少子化社会対策会議にて決定したところである。

(1)保育サービスの整備

厚生労働省では,平成16年度において,待機児童の解消に向け,保育所を中心に,約5万人の保育所受入児童数の増を図るため,特定保育事業の拡充,保育所の緊急整備などを実施した。

また,待機児童が50名以上いる市区町村等においては,待機児童解消に向けた総合的な取り組みのための保育計画の策定を行った。さらに,新エンゼルプランに基づき,多様な需要に応える保育サービスの提供を実施した。

また,国庫補助対象の放課後児童クラブを800か所増の1万2,400か所とした。このほか,年長児童等が赤ちゃんと出会い,ふれ合う場づくり,中・高校生の交流の場づくり,絵本の読み聞かせ,親と子の食事セミナーを開催するなどの「児童ふれあい交流促進事業」を新たに実施した。

経済産業省では,商店街の空き店舗を活用して,保育所等を設置・運営する際の改装費や賃借料など立ち上げに係る費用の一部を補助し,待機児童問題の解消や女性の社会進出といった少子化社会等への対応を図っている。

(2)幼稚園における子育て支援の充実

文部科学省では,平成13年3月に策定された「幼児教育振興プログラム」に基づき,幼稚園の教育機能や施設を開放して,子育て相談を実施するなどの子育て支援に係る実践的な調査研究(子育て支援総合推進事業)を実施するとともに,幼稚園の通常の教育時間の前後などに行われる「預かり保育」を実施する幼稚園に対して支援を行うなど,幼稚園における子育て支援を推進している。

また,平成16年度から新たに,新しい幼児教育の在り方のモデルの構築を目指し,幼保一体型施設や幼稚園における子育て支援など,地域における幼児教育に関する様々な課題に対応した体制の構築に関する調査研究を実施している。

(3)子育てに関する相談支援体制の整備

文部科学省では,これまで,子育てやしつけに関する悩みや不安を持つ親の相談に気軽に応じ,アドバイスを行う「子育てサポーター」を養成してきたが,平成16年度からは,子育てサポーター同士の相互連携の促進や,情報交換の機会の提供などの役割を担う「子育てサポーターリーダー」を養成し,相談支援体制の一層の充実を図った。

また,子育てのヒント集として,家庭における子育てやしつけのあり方や様々な相談窓口を紹介した「家庭教育手帳」を作成し,乳幼児等を持つ親に配布した。

さらに,独立行政法人国立女性教育会館では,家庭教育の重要性に鑑み,家庭・家族の変化,家庭教育の実態や親の意識等に関する国際比較調査を実施している。

(4)児童虐待への取組の推進

児童虐待の防止については,関係府省庁,関係団体(24団体)等による児童虐待対策協議会において,国レベルのネットワークの構築を図っている。

また,児童虐待の発生予防,早期発見・早期対応,児童の保護と自立に向けた支援,アフターケアという一連の取組全般にわたり,関係府省庁や地方自治体,関係団体等の連携・協力により,その取組の推進を図っている。

厚生労働省では,発生予防から社会的自立に至るまで切れ目ない支援を図ることとしており,1発生予防や早期発見を促進する観点から,養育が困難になっている家庭を訪問し,育児・家事の援助等を行う育児支援家庭訪問事業の創設,2虐待を受けた児童を保護・支援する観点から,児童養護施設の小規模グループケアの推進,総合的な家族調整を行う家庭支援専門相談員の配置,自立援助ホームの拡充などが行われた。

また,地域の住民に最も身近な市町村における虐待防止ネットワークの設置を促進している。

法制度についても,1平成16年10月には,児童虐待に係る通告義務の範囲の拡大等を内容とする改正児童虐待防止法が施行され,216年12月3日には,児童相談に関する体制の充実等を内容とする改正児童福祉法が公布され,同日から順次施行されるなど,その充実が図られているところである。

警察では,平成16年4月に改正された児童虐待の防止等に関する法律(平成12年法律第82号)の趣旨を踏まえ,児童虐待事案の早期発見と迅速かつ確実な通告,児童相談所長等による児童の安全確認等に万全を期するための適切な援助,適切な事件化と児童の支援等に努めるなど,関係機関との緊密な連携を図りつつ,被害児童の迅速かつ適切な保護に努めている。

法務省の人権擁護機関においては,子どもの人権問題に関する専用の電話相談窓口である「子どもの人権110番」を設置するなどして相談体制の充実を図っている。また,児童虐待を含む虐待をテーマとした啓発冊子の作成・配布,講演会・研修会等の実施などの啓発活動を積極的に推進するとともに,人権相談,人権侵犯事件の調査処理を通じて,児童虐待の問題に取り組んでいる。

文部科学省では,児童虐待への適切な対応等について,学校教育及び社会教育関係者に対し引き続き周知を図り,学校教育・社会教育関係者と児童相談所等の関係機関との緊密な連携を図っている。

(5)子育てを支援する良質な住宅,居住環境及び道路交通環境の整備

国土交通省では,子育てを支援する良質な住宅,居住環境の整備として,公共賃貸住宅の整備等において保育所等の子育て支援に資する施設等の一体的整備を推進している。加えて大規模な公共賃貸住宅団地の建替えに際し,保育所等の施設との併設を原則化し,生活拠点の形成を図っている。さらに,安全で安心な道路交通環境の整備として,歩道,自動車道等の設置,歩行者等を優先する道路構造の整備等,交通安全施設等の整備を推進している。

警察では,子ども連れでも自宅周辺や通学路を安全に安心して歩くことができるよう,交通事故が多発している住居系地区や商業系地区を国土交通省とともに「あんしん歩行エリア」として指定の上,信号機,光ビーコン等の交通安全施設等を重点的に整備し,生活道路における通過交通の進入抑制や速度抑制,外周となっている幹線道路における交通流円滑化等の道路交通環境の整備に努めている。

また,交通安全の観点からの子育て支援策として,関係機関・団体とも連携しながら,チャイルドシートに関する講習会の開催,レンタルの充実のための支援等を実施し,チャイルドシートの普及促進に積極的に取り組んでいる。

(6)子育てバリアフリー等の推進

国土交通省では,高齢者,身体障害者等の公共交通機関を利用した移動の円滑化の促進に関する法律(平成12年法律第68号)や高齢者,身体障害者等が円滑に利用できる特定建築物の建築の促進に関する法律(平成6年法律第44号)等に基づき,多くの方が利用する建築物,公共交通機関及び道路や公園等の公共施設について,妊産婦や子連れの方にも利用しやすいように段差の改善等のバリアフリー化を推進している。

また,ハード整備と併せて,国民一人ひとりによる高齢者,身体障害者等に対する理解と協力,すなわち「心のバリアフリー」の実現を図るため,交通バリアフリー教室の開催等ソフト面の施策についても積極的に推進している。

さらに,安全で安心して利用ができる幼児送迎サービスを提供するための個別輸送サービス(STS:スペシャル・トランスポート・サービス)の普及を推進している。

2 ひとり親家庭等に対する支援の充実

母子家庭の母等については,平成15年4月に施行された改正母子寡婦福祉法に基づき,1子育て短期支援事業,日常生活支援事業の子育てや生活支援策,2母子家庭等就業・自立支援センター事業,母子家庭自立支援給付金等の就業支援策,3養育費の確保策,4児童扶養手当の支給,母子寡婦福祉貸付金の拡充等の経済的支援策といった自立支援策を総合的に展開している。

また,平成15年7月に成立し,同年8月に施行された「母子家庭の母の就業の支援に関する特別措置法」に基づき,より一層の就業支援策を講じている。

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