平成16年版男女共同参画白書

本編 > 第2部 > 第12章 > 第2節 地球社会の「平等・開発・平和」への貢献

1 国連の諸活動への協力

(1)会議・委員会等への協力

ア 国連婦人の地位委員会

2004(平成16)年3月,第48回国連婦人の地位委員会が開催され,「男女平等を達成するための男性と男児の役割」,「紛争予防・管理・紛争解決及び紛争後の平和構築への女性の平等参画」等につき議論が行われた。同委員会には,目黒依子上智大学教授が日本代表として出席した。

イ 国連総会第3委員会「女性の地位向上」審議

2003(平成15)年秋に開催された第58回国連総会において,「女性の地位向上」に関する議論が行われた。我が国よりは,房野桂国連婦人年連絡会国際部長等が出席した。

ウ 女子差別撤廃委員会

2003(平成15)年7月に開催された第29回女子差別撤廃委員会において,我が国の女子差別撤廃条約実施状況第4回・5回報告が一括して審議され,後日,委員会からの我が国の報告に対する最終コメントが公表された。

(2)国連機関・基金等への協力

平成15年度には,国連婦人開発基金(UNIFEM)に対して,81.44万ドルの拠出を行った。

また,我が国は,国連開発計画(UNDP)の下に設置したWID基金・人造り基金・IT基金を整理統合した「パートナーシップ基金」に327.9万ドルの拠出を行った。

さらに,我が国は,信託基金を国連教育科学文化機関(UNESCO)に拠出し,アジア・太平洋地域における識字教育や途上国における人材育成事業に協力しているほか,(財)ユネスコ・アジア文化センター等においても,成人非識字者の約3分の2を占める同地域の女性に対する教育の普及に積極的に協力している。

2 WID(Women in Development)/ジェンダーの推進

(1)基本的な考え方

世界の人口の約半分は女性であり,均衡のとれた持続的な経済・社会開発を実現するためには,女性が男性とともに経済・社会開発に参加し,同時に開発から受益することが可能でなくてはならない。

開発における男女の平等な参加と受益に向けて努力することは,一義的にはその国自身の課題である。しかし,先進国が開発における女性の参加と受益にも配慮した開発援助を実施することを通じて,開発途上国の努力を支援することができる。このようなWID/ジェンダーに配慮した開発援助は,均衡のとれた持続的な開発に貢献し,開発途上国の女性エンパワーメントなどを促進することになる。

我が国は,従来,国連や経済協力開発機構(OECD),開発援助委員会(DAC)等を始めとする国際社会における動向を踏まえながらWID/ジェンダーを推進してきており,平成5年に閣議決定した政府開発援助大綱(以下「ODA大綱」という)の下,7年に発表した「途上国の女性支援(WID)イニシアティブ」に基づいて,政府開発援助の実施にあたって,女性の一生のすべての段階を通じて,女性の地位向上と男女格差の是正に配慮するとともに,女性の教育,健康,経済・社会活動への参加といった分野を中心とした支援を積極的に行っている。また,11年に策定された「政府開発援助における中期政策」においても,「貧困や社会開発分野への支援」の項で,開発における女性支援(WID/ジェンダー)を重点的に取り組むべき課題の一つと位置づけている。

(2)推進のための取組

平成15年8月,政府は,これまで10年以上にわたって我が国の援助政策の基本文書であったODA大綱を閣議決定により改定した。今回の改定は,内外の情勢の変化を踏まえつつ,ODAの戦略性,機動性,透明性,効率性を高めるとともに,幅広い国民参加を促進し,我が国のODAに対する内外の理解を深めるために行われたものである。WID/ジェンダーに関しては,基本方針において,我が国のODAの政策立案段階から実施段階に至るまで,あらゆる段階において念頭に置かれるべき重要事項としてジェンダー平等の視点の考慮が盛り込まれ,「特に男女共同参画の視点は重要であり,開発への積極的参加及び開発からの受益の確保について十分配慮し,女性の地位向上に一層取り組む。」との一文が明記された。こうした考え方は,旧大綱においても言及されていたが,基本方針に盛り込まれることにより,より広範に配慮すべきものであることが明確化された。

この関連で,実施機関では,国際協力機構(JICA)が,平成14年にジェンダー主流化を推進するための指針として,課題別指針「ジェンダー主流化・WID」を作成した。また,国際協力銀行(JBIC)は,14年に,環境面にとどまらず住民移転や先住民族・女性への配慮も含む新ガイドライン「環境社会配慮確認のための国際協力銀行ガイドライン」を策定し,15年10月より全面的に施行している。

政府としては,今後とも男女共同参画の視点を重視し,公平で効果的な経済協力を目指すとともに,女性の地位向上に一層取り組んでいく考えである。また,女児を含む女性をエンパワーする(能力を開発する)ことにより,社会や経済の開発が促進されることにも留意していく。

(3)様々な枠組みを活用した援助案件の実施

我が国としては,無償資金協力事業(草の根無償資金協力及び日本NGO支援無償資金協力を含む),NGO事業補助金,有償資金協力事業,専門家等の派遣等の技術協力事業を通じて,WID分野における支援を継続している。さらに,これら事業の評価を行うことで,より効果的な事業の実施を図っている(第2-12-1表)。

第2-12-1表 様々な枠組みを活用した援助案件の実施別ウインドウで開きます
第2-12-1表 様々な枠組みを活用した援助案件の実施

3 女性の平和への貢献

我が国は,平和を推進する国際機関の役割の重要性を認識し,また,紛争時において最も支援を必要とする人々は女性や子どもであることを考慮し,これら女性や子どもを含む人間一人一人の保護・能力を強化することにより人づくり・社会づくりを通じて国づくりを進める「人間の安全保障」の考え方を推進している。この観点より,国連難民高等弁務官事務所(UNHCR),国連児童基金(UNICEF)等の人道支援国際機関に対し積極的な協力を行っているほか,我が国が国連に設置した人間の安全保障基金を通じて国連婦人開発基金(UNIFEM)がアフガニスタンにおいて実施する国内避難民及び難民女性の社会参加を推進するプロジェクトを支援している。

4 国際分野における政策・方針決定過程への女性の参画の促進

我が国では,近年,国際会議への政府代表団の女性のメンバーが漸次増加しており,2004(平成16)年の第48回国連婦人の地位委員会及び2003(平成15)年秋の第58回国連総会においても,民間女性を「日本代表」,「政府代表代理」等の資格で派遣したほか,女子差別撤廃委員(女性)も2006(平成18)年までその任期を務めることとなっている。

また,日本人女性の国際機関への参画も進んでおり,国連を含む国際機関における日本人の女性職員数(専門職以上)は,1975(昭和50)年の19人から2003(平成15)年には362人と大幅に増加している。

5 国際交流・協力の推進

(1)あらゆるレベルにおける国際交流・協力の推進

外務省では,平成7年度より毎年日本・ヨルダン・エジプト・パレスチナ女性交流プログラムを実施しており,15年度は「女性と平和」をテーマとして,ヨルダン,エジプト,パレスチナより教育分野で活躍する女性を我が国に招へいするとともに,我が国よりは,ヨルダン,エジプトを訪問し,関係者と意見交換を行った。

技術協力事業として国際協力機構(JICA)においては,WID/ジェンダーに知見や関心を有する外部有識者を招いた「ジェンダー・WID懇談会」並びに重点課題別支援委員会「開発とジェンダー」を定期的に開催しているほか,平成15年度には国際協力機構(JICA)の様々な事業においてジェンダー主流化を促進するための有識者を交えた第二次分野別ジェンダー・WID研究会を実施した。また,プロジェクトの計画段階において,WID/ジェンダー専門家が対象地域の社会/ジェンダー調査を行い,男女格差の縮小や男女の参画を促すような実施計画案への提言を行っている。また,OECD/DACジェンダー平等ネットワーク並びに国連婦人の地位委員会に継続して参加し,開発援助におけるジェンダーの取組について他の援助機関と知見を共有している。国際協力銀行(JBIC)では,「保健セクター目標に関するインフラの関連性評価手法開発」を,国連人口基金(UNFPA)との共同研究プロジェクトとして実施し,道路セクターを例にとり,経済インフラの整備がミレニアム開発目標(MDGs)にも掲げられている「妊産婦の健康の改善」に,どのように貢献するか調査し,今後のプロジェクトにおける配慮事項についての提言を得た。

内閣府は,男女平等に向けて特に早くから取組が行われている欧州諸国での男女共同参画の動きや変化について情報を得るとともに,政策担当者との意見・情報交換ネットワークづくり等を目的として,欧州評議会第29回男女平等運営委員会(2003(平成15)年12月)に,オブザーバーとして参加した。また,全国的視野に立った男女共同参画社会の形成の促進を図るとともに,国際的協調をより深めるべく,我が国と共通の課題を持つ諸外国の男女共同参画分野における有識者を東京都及び岡山県に招へいして「男女共同参画グローバル政策対話」を開催した。

厚生労働省では,「女性と仕事の未来館」において,我が国の女性労働関係者と開発途上国の女性労働関係者との相互交流を行い,我が国のこれまでの女性労働の経験,就労支援策に関する情報提供と技術的支援を実施する等,「開発と女性」の視点を踏まえて,開発途上国への援助を推進した。

(2)国際的な水問題への取組

我が国は,2003(平成15)年3月,滋賀,京都及び大阪において第3回世界水フォーラム及び同閣僚級国際会議を開催した。このとき採択した閣僚宣言は,水が環境十全性を持った持続可能な開発,貧困及び飢餓の撲滅の原動力であり,人の健康や福祉にとって不可欠なものであること,水問題を優先課題とすることが世界的に喫緊の必要条件であり,その行動の第一義的責任は各国にあること,そして国際社会は国際・地域機関とともに,これを支援すべきであることを謳い,その際,ジェンダーへの十分な配慮とともに,政府により地方自治体及びコミュニティの権限強化が促進されるべきことを宣言するとともに,水管理においては,水政策においてジェンダーの視点に十分留意し,便益の共有における公平の確保に取り組むことにより,家庭及び近隣コミュニティに根ざしたアプローチに一層強い焦点をあて,良いガバナンスを確保し,すべての関係者の参加を更に促進するとともに,すべての行動における透明性及び説明責任を確保するべきであることを宣言している。

(3)女性の教育分野における国際交流・協力の支援

文部科学省では,女性教育団体が行う指導者の海外派遣事業等に対して助成するとともに,女性団体等が実施する地域の国際化・国際理解に関する学習や国際交流・協力活動の促進に努めている。

また,独立行政法人国立女性教育会館では,国際的な視野からの課題分析を行うとともに,参加者間の国際的情報ネットワーク形成の推進,国際レベルでの女性のエンパワーメントを実現するための情報処理技術の研修,途上国における女性教育の推進支援等を実施している。このほか,各種団体等の国際交流機会の確保を図るとともに,同会館の活動や最新の日本女性の現状について,英文で海外に紹介する「NWEC Newsletter」を年2回発行している。

(4)経済分野における国際協力

APEC(アジア太平洋経済協力会議)においては,2002(平成14)年9月に行われた第2回APEC女性問題担当大臣会合での合意に基づき設置が決定されたAPEC女性問題担当組織ネットワーク(GFPN)の第1回会合が2003(平成15)年5月にタイ王国のコンケンにて開催された。この会合ではAPECにおいて持続的かつ効率的にジェンダー主流化を進めるための今後の活動方針や課題,本ネットワーク会合を毎年開催することが決定された。なお,次回会合は2004(平成16)年に南米のチリで開催される予定となった。

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