平成16年版男女共同参画白書

コラム > 女性専門外来の登場と今後の課題

ここ数年,新聞や雑誌などで「女性専門外来」という言葉を目にすることが多くなった。女性専門外来とは,内科や外科,婦人科といった従来の診療科の分類に属さず,女性の心と体を総合的に診察する新しい診療科で,各施設にほぼ共通している特徴としてスタッフが女性という点が挙げられる。この女性外来の登場は,世の中の女性のニーズに非常にマッチし,女性外来を受診するには何カ月も前から予約しなければいけないといった現象も起き,その勢いに押されるように女性外来を設置する病院が増えている。都道府県病院では千葉県立東金病院で初めて開設され,現在では,国立病院だけでも少なくとも五つの病院が,女性総合外来や女性診療外来,レディース外来という名称で女性専用外来を設けており,民間も含めれば,女性外来を診療科に掲げる病院・診療所は既に数百に上るとも言われている。

女性外来への需要が急増している大きな要因としては,女性が気兼ねなく様々な病気や体調の不安を同性の医師に相談できること,個室で診察を行うなど,他人が相談内容を聞くことのないようプライバシーに配慮がなされていること,総合的診療を行うため一人当たりの診療時間を長くとっていることなどが挙げられる。しかし,急激に増加しつつある女性外来にも課題はある。女性外来という科名を掲げていても,実際には女性の医師1人を置いているだけだったり,診療時間が週に一回,数時間しか設けられていなかったりする場合も多くあり,また,本来の女性医療とは内容が違うという意見もある。

女性医療は,アメリカで80年代以降研究が進んでいる性差医療(ジェンダー・スペシフィック・メディスン)の一つで,様々な病気の原因や治療法が男女では異なることが分ってきたことから始まったものである。この場合の性差には,男女のDNAによる性差だけでなく,一人一人の成長過程や生活環境,生活の中で与えられた役割などによって後天的に作られた性差も含まれている。性差によって病気の現れ方に差がある例としては,循環器系の同じ病気の症状の出方に男女間で差があったり,後天的に作られた性差によって更年期の症状などに違いがみられるといったことが報告されている。現在の女性外来が人気を得ている理由の一つである「同性の医師に診察してもらえる」ということが,女性医療の本来の目的なのではなく,性別や一人一人のライフスタイルも考慮した上で患者個人にあった診療が行われるのが本来の女性医療ということになろう。なお,性差医療には当然男性医療も含まれ,日本においても男性更年期外来といった男性専門外来が登場している。

今後は,同性が診療を行うというだけにとどまらず,本来の目的に沿った診療体制をいかに整えていくかが,女性外来等が患者一人一人にとって,より有効な医療機関となれるかどうかの大きなポイントとなると思われる。

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