平成16年版男女共同参画白書

コラム > GEMの順位低下とその理由

2003年の国連開発計画(UNDP)「人間開発報告書」では、日本のGEM値は2002年の0.527(2000年のデータによる計算値)から0.515(2001年のデータによる計算値)に低下し,順位は32位から44位となったが,GEM値の変動には様々な要因が働いており,順位の高低をみる際にも注意を要する。まず,GEMの算定方法をみた上で,今回日本の順位が低下した理由について考えてみる。

■ GEMの算定方法

GEMは政治における参加と意思決定力,経済活動における参加と意思決定力,経済資源に対する力の3分野における女性への機会に焦点を当てたものであり,それぞれ男女の国会議員に占める比率,男女の管理職に占める比率と専門職・技術職に占める比率,男女の推定勤労所得(PPP US$)が構成要素として用いられている。これらの各指標について,次の式により人口で加重した平均値が等分布等価比率(EDEP)として求められる。

EDEP={女性の人口比率(女性の指標-1)+男性の人口比率(男性の指標-1)}-1

また,の政治との経済のEDEPは,50で割ることによって指数化され(男女の比率が同等となる50%を理想値としている。),の所得については,次の式により,男女それぞれの所得指数を求めた上でEDEPが算定されている。

所得指数=(1人当たりGDP-100)÷(40,000-100)

最後に,こうして求められる3つの指数化されたEDEPを単純平均してGEMが算出される(付注参照)。

■ 日本の順位低下の理由

もし,日本のGEM値が前年と同じ0.527ならば,他国のGEM値の向上により順位は38位となり,44位への順位低下にはGEM値そのものの低下も反映している。

そこで日本のGEM値低下の要因を構成要素別にみると(「人間開発報告書」では要素別のEDEPの数値,計算の途中経過,小数点以下の有効数字等の詳細は公表しておらず数値は試算値である),国会議員の女性比率に変化はなく,管理職の女性比率は減少したが,専門職・技術職の女性比率は増加し,全体として経済参加に関するEDEPの減少はわずかなものとなっている。つまり,推定勤労所得の水準の低下を受けた所得に関するEDEPの減少が,日本のGEM値が低下した大きな要因となっている(第1-1-13表)。そこで,推定勤労所得が低下した理由を検討してみる。

第1-1-13表 GEMの試算別ウインドウで開きます
第1-1-13表 GEMの試算

推定勤労所得は,女性の賃金比率はGDPにおける女性の分け前と同じであるという仮定の下で算出されており,非農業における男性の賃金に対する女性の賃金の割合と経済活動人口の男女比率から求められる女性賃金比率と,全体の1人当たりGDPを用いて推計される。2001年は女性の賃金比率はほとんど変化しなかったため,推定勤労所得の男女比の変化はわずかなものの,男女ともに円安によりドル換算の水準は大きく低下し,日本のGEM値を低下させることになった。

このように,GEM値は,女性の国会議員比率など,代表的な女性の各分野に関する参加を示す指標以外の要素の変動の影響も受けるものであることに留意しなければならない。

なお,日本の1人当たりGDPは,GEM上位国とほぼ同じレベルにあり,所得面からはGEM値を大きく引き上げる方向に寄与しているにもかかわらず,GEM値が低いのは,女性の国会議員比率,管理職比率及び男性の賃金に比した女性の賃金がGEM上位国と比較すると極めて低い水準にあるからである。

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