第2節 政治・行政分野における女性の参画

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第2節 政治・行政分野における女性の参画

1 女性の政治への参画状況

(国会議員)

1970年から2002年までの変化をみると,すべての国において,女性の国会議員の増加がみられるが,その増加の時期や増加のスピードに差がみられる(第4図)。

スウェーデンは,1970年代から高い水準となっており,1990年に約40%となるまで着実に増加し,2002年では45.3%となっている。その他の国においては,1970年から85年まではどの国でも低く,ほとんど差がない状況であったが,ドイツ,イギリス,アメリカでは1985年以降に増加がみられ,特にドイツでは1987年の選挙において大きな伸びを示し,2002年では32.2%となっている。

日本,韓国では,1995年以降上昇しているものの,その伸びは小さく,2001年でも10%を下回る状況となっている。

第4図 女性議員割合別ウインドウで開きます
第4図 女性議員割合

(閣僚)

スウェーデン,ドイツでは,閣僚に占める女性の割合が40%を超えている。また,韓国,フィリピン,アメリカ,イギリスにおいても,女性の国会議員の増加を反映し,閣僚に占める女性割合も年々増加している。特に,ドイツ,韓国では,近年著しい増加がみられる。日本においては,内閣によってかなり差があり,年々着実に増加しているとはいえないが,現在は,国会議員に占める女性の割合よりも高い割合となっている(第5表)。

第5表 閣僚に占める女性の割合別ウインドウで開きます
第5表 閣僚に占める女性の割合

2 女性議員の選出に影響を与える要因

(選挙制度)

日本,韓国,フィリピン,ドイツでは,現在,小選挙区制と比例代表制を組み合わせた選挙制度がとられている(下院又は一院)。スウェーデンは,比例代表制となっており,アメリカ,イギリスでは,小選挙区制となっている(下院又は一院)。

比例代表制では,政党が作成する候補者名簿に女性がどの程度,どの順位に掲載されるかが,女性議員が選出される機会を得るということに直結している。このため,候補者名簿に女性を一定割合掲載するクォータ制が政党独自の取組又は法制度として多くの国で導入されている。

第6表 選出方法別女性議員割合別ウインドウで開きます
第6表 選出方法別女性議員割合

(女性議員選出のための様々な取組)

第7表 諸外国における女性議員増加のための主な取組別ウインドウで開きます
第7表 諸外国における女性議員増加のための主な取組

(クォータ制)

クォータ制には,党内の役員や党内選挙の候補者に女性を割り当てる方法と,対外選挙における候補者名簿に女性を割り当てる方法の2つがある。党内のクォータ制は,女性が党内の主要なポストを経験することで,対外的な選挙の候補者として擁立されやすくなる。一方,候補者名簿に女性を一定数割り当てることは,女性が議員に選出される直接的な機会を得ることになる(第7表)。

クォータ制については,スウェーデン,ドイツ,イギリスのように政党が自らの党綱領などにより規定する場合と,韓国,フィリピンのように法律により規定する場合があるが,アメリカを除く5か国すべてでクォータ制を導入した実績がある。クォータ制の導入状況は,各国の女性の議会への参画状況や社会的背景を反映して様々であり,その効果についても,女性の政治への参画に関する社会的基盤があるか否かで大きく異なる。

スウェーデンは,1991年の選挙で,女性議員の割合が減少したことから,政党が選挙名簿におけるクォータ制を導入し,その後の選挙において女性議員が大幅に増加することとなった。スウェーデンにおいては,女性自身の政治への参画意識が高く,女性の政治参画を促す社会的な環境が整備されていたことから,クォータ制が大きな効果を発揮したといえる。

ドイツでは,主要政党がクォータ制を導入し始めた1980年代後半以降,着実に女性議員が増加した。それまでも,各政党において党内の女性の地位向上に関して取組が進められていたが,はかばかしく進展しなかったことから,事前に詳細な検討が行われた後,クォータ制が最終的な手段として導入されており,女性の政治参画への気運は高まっていたといえる。

二大政党制のイギリスでは,女性政策が選挙の争点の一つとなっており,1990年代に入って,労働党が様々な方法でクォータ制を導入したことから,1992年から1997年にかけて,女性議員数が60人から120人へと倍増した。

韓国は,日本と同様に女性議員の割合が低い状況にある。2000年の第16代選挙の前に政党法を改正し,比例代表選挙名簿の30%を女性とする割当制を導入したことから,16代選挙では女性議員が9人(3.0%)から16人(5.9%)へ増加したが,依然として低い数値にとどまっている。また,1987年の民主化宣言以降,各政党は女性の地位向上のための施策を打ち出し,1992年の第14代大統領選挙以降,女性の政治参画の拡大の支援が公約とされるなど女性の政治参画への意識の高まりがみられる。また,1995年に制定された女性発展基本法においても,女性の政治への参画の拡大に対する政府の支援を明記しており,このような変革の波が政党法の改正につながっている。

一方,アメリカにおいては,1970年代後半以降,雇用や教育分野でのアファーマティブ・アクションに関する訴訟において,違憲・違法の判決が出されるなどの動きがあり,政治分野においても各政党はクォータ制に対して慎重な姿勢をとっている。


(クォータ制以外の特徴的な取組)

クォータ制以外の特徴的な取組としては,ドイツ,イギリスの政党において行われている現職の議員が候補者に対して教育的指導や経済的援助などを行うメンター制や,アメリカ,イギリスでみられる民間団体による女性議員候補者への資金の援助や選挙キャンペーンの協力等がある。

アメリカでは,1971年に,選挙に出る女性候補者のリクルート等,教育,選挙支援を行う民間団体が設立され,その後,二大政党において女性議員候補者への資金の援助や選挙キャンペーンの協力等を行う民間団体がそれぞれ設立されたことが,1990年以降の女性議員の増加に影響を与えている。

ドイツでは,政党のみならず州政府においても政治により多くの女性を参画させるためメンター制度を採用している。

また,スウェーデン議会では,議員の代理人制度が導入されていることから,議員が育児休業を取得する際にも代理人がその議員の代理として活動することができ,仕事と家庭を両立しやすい制度となっている。

3 女性の政治への参加意識

(投票率)

各国の国政選挙における投票率をみると,フィリピン,スウェーデン,ドイツでは80%前後の高い投票率となっている。日本,韓国,イギリスはほぼ60%前後となっており,アメリカは男女とも50%を下回り低くなっている。

時系列でみると,すべての国において投票率は下がってきており,全体的に,政治への関心は薄れてきている。

また,男女別の投票率では,日本,フィリピン,アメリカ,スウェーデンで女性の方が男性をやや上回っており,女性の政治への関心は決して低くない。

4 行政分野での女性の参画

(女性国家公務員の現状)

国家公務員に占める女性の割合についてみると,日本は20.2%と最も低く,上位の役職に占める女性の割合も1.4%と最も低い(第8表)。全職員でみると,アメリカ,イギリスは50%弱,フィリピンは60%弱を占めているが,上位の役職では職員に占める割合に比べて低い。一方,スウェーデンでは,全職員に占める女性の割合は40%程度だが,上位の役職に占める女性の割合は50%を超えている。

1995年と99年では,全職員に占める女性の割合は大きく変化していないものの,上位の役職に占める女性割合は,特にアメリカ,イギリスで著しく増加した。日本では,上位の役職に占める女性の割合にほとんど変化がなく,女性職員の登用のスピードは,韓国,ドイツと同様遅くなっている。

第8表 女性国家公務員の在職状況別ウインドウで開きます
第8表 女性国家公務員の在職状況

(各国での女性職員の採用・登用拡大の取組)

アメリカでは,1960年代から女性等の積極的雇用計画を5年毎に策定し,数値目標とタイムテーブルの設定が義務付けられていたが,現在はこれらの設定は義務付けられていない。

ドイツでは,2001年に制定された連邦平等法において,一定の条件下でのクォータ制を認めている。

韓国では,2002年までの時限的な措置として,女性国家公務員の採用に関して数値目標を設定している。女性採用目標制が導入された1996年は,女性の国家公務員試験合格率が26.5%であったが,2001年には33.4%に増加した。

フィリピンでは,女性の国家公務員の登用に関して,空席ポストへの男女共の推薦を義務付けている。

日本は,2001年に,各府省が各々採用・登用拡大計画を策定し取組を進めており,数値目標の設定は義務付けられていないものの,いくつかの府省においては数値目標を設定している。

一方,スウェーデンでは,1995年以降,女性職員に対する研修,教育に力をいれており,イギリスでも,メンター制を導入するなど教育・指導に重点をおいている。また,韓国においては,女性の昇任・任用に積極的に活用するため,管理職女性公務員に関するデータベースを構築し,女性管理職の人材情報を提供している(第9表)。日本における女性国家公務員の採用・登用拡大のための取組は,第一歩を踏み出したところである。今後,各府省において策定された採用・登用計画に盛り込まれた目標達成に向けて,各国において行われている様々な手法が参考になると思われる。

第9表 女性国家公務員の採用・登用拡大の主な取組別ウインドウで開きます
第9表 女性国家公務員の採用・登用拡大の主な取組

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