平成15年版男女共同参画白書

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第1節 夫・パートナーからの暴力の実態

(女性の約5人に1人は配偶者等からの暴力の被害経験)

内閣府が実施した「配偶者等からの暴力に関する調査」(平成14年)では,これまでに,配偶者や恋人から身体に対する暴行を受けたことがある女性は15.5%,恐怖を感じるような脅迫を受けたことがある女性は5.6%,いやがっているのに性的な行為を強要されたことがある女性は9.0%で,これらの行為のいずれかを1度でも受けたことがある女性は約5人に1人(19.1%)に上ることが明らかになっている(第1-5-1図)。

第1-5-1図 配偶者等からの被害経験 別ウインドウで開きます
第1-5-1図 配偶者等からの被害経験

(配偶者等からの暴力によって命の危険を感じた経験の有無)

同調査では,配偶者や恋人からの暴力によって,命の危険を「感じた」と回答した女性は4.4%で,約20人に1人の女性が配偶者等から深刻な暴力を受けている実態が明らかとなった(第1-5-2図)。

第1-5-2図 命の危険を感じた経験 別ウインドウで開きます
第1-5-2図 命の危険を感じた経験

(配偶者等からの暴力によるケガと治療の有無)

同調査では,配偶者や恋人からの暴力により「ケガをして医師の治療を受けた」経験があると回答した女性は2.0%に上り,その割合は男性の4倍となっている(第1-5-3図)。

第1-5-3図 暴力行為によるケガ 別ウインドウで開きます
第1-5-3図 暴力行為によるケガ

(配偶者間における暴力の被害者の多くは女性)

警察庁の統計によると,平成14年中に検挙した配偶者(内縁関係を含む。)間における殺人,傷害,暴行は1,666件,そのうち1,528件(91.7%)は女性が被害者となった事件である。

殺人は,女性が被害者となった割合は60.9%とやや低くなっているが,傷害は1,250件中1,197件(95.8%),暴行は219件中211件(96.3%),とそれぞれ高い割合になっており,配偶者間における暴力の被害者は多くの場合女性であることが明らかになっている(第1-5-4図)。

第1-5-4図 配偶者間(内縁を含む)における犯罪(殺人,傷害,暴行)の被害者 別ウインドウで開きます
第1-5-4図 配偶者間(内縁を含む)における犯罪(殺人,傷害,暴行)の被害者

(コラム:配偶者からの「女性に対する暴力」と「男性に対する暴力」)

(近年増加する夫から妻への暴力の検挙件数)

配偶者間における犯罪のうち女性が被害者である場合の検挙件数の推移を罪種別にみると,暴行,傷害がそれぞれ平成12年以降,大幅に増加している。14年においては,暴行が211件で前年よりも59件(38.8%)の増加,傷害が1,197件で132件(12.4%)の増加となっている(第1-5-6図)。

第1-5-6図 夫から妻への犯罪の検挙状況 別ウインドウで開きます
第1-5-6図 夫から妻への犯罪の検挙状況

(増加傾向にある夫からの暴力を理由とする婚姻関係事件申立件数)

家庭裁判所への婚姻関係事件申立てがあった件数は6万2,677件,うち妻からの申立総数は4万5,061件,夫からの申立総数は1万7,616件となっている。

「暴力を振るう」を理由とする妻からの申立ては増加傾向にあり,平成13年では妻からの申立てが1万3,611件,裁判所への申立総数の21.7%(妻からの申立件数の30.2%)となっており,「性格が合わない」に次いで2番目に多い理由となっている(第1-5-7図)。

第1-5-7図 婚姻関係事件申立件数における暴力を申立ての動機とする者の割合 別ウインドウで開きます
第1-5-7図 婚姻関係事件申立件数における暴力を申立ての動機とする者の割合

(配偶者暴力相談支援センター等への相談件数)

平成14年4月から,各都道府県は,婦人相談所等その他の適切な施設において配偶者暴力相談支援センターの業務を開始した。現在,全国103施設が支援センターとして,相談,カウンセリング,被害者やその同伴家族の一時保護,各種情報提供等を行っている。平成14年4月から15年3月末までの1年間に,全国の配偶者暴力相談支援センターに寄せられた相談は3万5,943件に上っている。また,法施行後平成14年12月までの間に,警察に対し寄せられた配偶者からの暴力に関する相談等への対応件数は,1万7,748件となっている。

(婦人相談所における一時保護並びに婦人保護施設及び母子生活支援施設の入所の理由)

平成13年度中の,婦人相談所一時保護所への入所理由のうち,夫等の暴力は55.5%と全体の半分を超えている。婦人保護施設及び母子生活支援施設の入所理由をみると,「夫等の暴力」を挙げた割合はそれぞれ32.6%,41.8%となっている。いずれの施設においても暴力を理由とする入所は高い割合となっている(第1-5-8図)。

第1-5-8図 婦人相談所一時保護所並びに婦人保護施設及び母子生活支援施設への入所理由 別ウインドウで開きます
第1-5-8図 婦人相談所一時保護所並びに婦人保護施設及び母子生活支援施設への入所理由

(シェルター数は増加)

シェルター(配偶者からの暴力などから逃れてきた女性のための一時避難所)として利用できる施設で,法律に設置根拠があるものとしては,婦人相談所,婦人保護施設,母子生活支援施設がある。婦人相談所は売春防止法(昭和31年法律第118号)に基づき,各都道府県に1か所,婦人保護施設は同じく売春防止法に基づき,全国に51か所(公立36か所,私立15か所(平成14年4月1日現在)),母子生活支援施設は,児童福祉法(昭和22年法律第164号)に基づき,全国に286か所(公立182か所,私立104か所(平成14年4月1日現在))がそれぞれ設置されている。

このほかに,民間の団体等が自主的に運営している「民間シェルター」がある。

平成14年11月に内閣府が実施した調査の結果,21都道府県に計55の民間シェルター(個人が,配偶者からの暴力の被害者を受け入れているようなケースについては計上していない。)が存在している。NPO法人や社会福祉法人など法人格を有しているものもあるが,約65%(36施設,平成13年調査では約7割)は法人格を有していない。

民間シェルターは,被害者の保護を積極的に行うなど,配偶者からの暴力の被害者支援に関し,先駆的な取組を実施している。今後,民間シェルターの活動に役立つよう,必要な援助が求められている。

(保護命令の申立て及び発令状況)

配偶者暴力防止法では,被害者の申立てにより,裁判所が加害者に対し接近禁止命令,退去命令を発する保護命令の制度を新設し,この命令違反に対して刑事罰を科すこととしている。

保護命令の申立書に,配偶者暴力相談支援センターの職員又は警察職員に相談等を求めた事実等の記載がある場合は,配偶者暴力防止法第14条第2項に基づき,裁判所は配偶者暴力相談支援センター又は警察に対し,被害者が相談等を求めた状況等を記載した書面の提出を求めることとなっている。申立書にこうした事実の記載がない場合は,公証人役場で認証を受けた宣誓供述書を申立書に添付しなければならない。平成14年9月末までに裁判が終了した1,102件のうち,支援センターへの相談等の事実の記載のみがあったのは214件,警察への相談等の事実の記載のみがあったのは509件,双方への相談等の事実の記載があったのが318件となっている。また,申立書に宣誓供述書が添付されたのは59件となっている。

法施行後平成15年3月までの間に,裁判所に申し立てられた保護命令事件の件数は2,005件で,そのうち裁判が終了したのは1,963件となっている。裁判が終了した事件のうち,保護命令が発令された件数は1,571件(80.0%),そのうち接近禁止命令のみが出されたのは1,119件(71.2%),退去命令のみが出されたのは6件(0.4%),退去命令と接近禁止命令が併せて出されたのは446件(28.4%)となっている。

また,法施行後平成15年3月までの間に保護命令が発令された事件の平均審理期間は11.1日となっており,速やかに裁判が行われ,被害者の保護が図られている。

なお,法施行後から平成14年12月までの間の保護命令違反の検挙件数は43件である。

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