第2章 答申への各政党の反応
1.概要
基本法については、女性団体など関係者の高い関心を集めており、各政党においても積極的に取組が進められてい た。
平成10年7月に行われた参議院選挙においても男女共同参画に関する基本的な法律についての公約が示された。概 要は以下のとおりである。
- ○自由民主党
「男女共同参画社会の実現を促進するための基本法の制定を期するとともに、、、」 - ○民主党
「男女共同参画社会を実現するため、基本法制定を推進します」 - ○公明党
「男女共同参画社会を実現するために「男女平等基本法」の制定を目指します」 - ○社会民主党
「男女平等基本法、(略) をつくります」 - ○自由党、さきがけ、日本共産党は特になし。
なお、基本法の策定に向けて検討が進められていた時期は、内閣が連立、自民党単独、連立と替わっていた時期であった。
- 平成
- 8年11月~ 第二次橋本内閣(自民単独内閣、社民・さきがけ:閣外協力)
- 8年12月 2000年プランの決定
- 9年 6月 男女共同参画審議会へ基本法の諮問
- 平成
- 9年 9月~ 第二次橋本内閣改造内閣(同上。なお、平成10年6月に自・社・さきがけの三党体制解消)
- 10年6月 論点整理公表
- 平成
- 10年7月~ 小渕内閣(自民単独)
- 10年11月 男女共同参画審議会から基本法について答申
- 平成
- 11年1月~ 第一次小渕内閣改造内閣(自民・自由)
- 11年2月 法案閣議決定
- 11年4月~6月 法案審議、決定、施行
2.各政党の対応
(1)自由民主党
基本法の制定は参議院選挙での党の公約にも記載されており、女性に関する特別委員会や女性問題連絡協議会、内閣部会 において基本法についての議論が進められた。
(2)民主党
民主党は男女共同参画プロジェクトチーム(松本惟子議員(座長)、岡崎トミ子議員等)を設置し、平成10年8 月から検討を行い、11月には「男女共同参画社会の実現に向けての基本法の検討について中間報告」が出された。
また、法案提出後の平成11年4月1日には、「男女共同参画「基本法」の国会審議にむけて」を発表し、「提 出された政府案は、審議会答申より、その内容に前進がみられますが、基本法としての趣旨をより明確にする必要があり ます。そのために前文を置くことや、地方公共団体でのとりくみを支える意味から条例制定について明文化することなどが必要」 として、
- 法律の名称を「男女共同参画基本法」とする。
- 前文をつける。
- ジェンダーについては「社会的・文化的に形成された性差」とし、目的に「社会的・ 文化的に形成された性差にとらわれず、 個人としてその個性と能力を発揮する機会が 保障される社会の形成」と明記する。
- アファーマティブアクションについては、是正措置の意味をこめ「積極的是正措置」 とする。
- いわゆる間接差別については「性別による差別的取扱い(直接的には性別による差別 的取扱いをするものではな いが、その結果として、男女のいずれか一方に対し差別的 効果をもたらすこととなる取扱いを含む)」とし、明記する。
- 「女性に対する暴力の根絶が人権の確立に不可欠」とする。
- 必要な法令若しくは条例の制定若しくは改廃又は必要な財政上の措置を講ずるとし て、条例の制定について明記する。
- 基本計画に盛り込む事項(9項目)を明記する。
- 当該苦情の処理及び当該救済のための組織及び運営体制についての「法制の整備その 他の必要な措置」を講ずるとして、新たに立法措置を講ずることを頭だしする。
とした。
(3)公明党
平成11年1月22日の参議院本会議において、基本法制定に当たっての意義について総理の見 解を質問するなど、同法についての積極的な対応がなされていた。
平成11年2月12日には公明党女性局、内閣部会から実効性ある基本法の早期制定を求める申し入れが、内閣総理 大臣及び官房長官に対して行われた。 その内容は以下のとおりである。
- 実効性ある「男女共同参画社会基本法」を早期制定すること
- 国及び地方公共団体の責務を明記すること
- 積極的特別暫定措置として、クオーター制度を推進すること。また、ポジティブアク ションが差別に当たらないと明記すること
- 基本法の精神にのっとり、民法の改正を始め必要な法制上、財政上の措置を講ずること
- 苦情処理(オンブズパーソンの機能を含む)を可能とする明確な体制を作ること
- 基本法の精神や内容を学校教育や教科書にも盛り込むこと
- 男女が家庭生活と職業生活、またその他の社会生活を両立し、家族的責任を果たす事 ができるように、育児や介護等の社会的支援をより一層充実させること
(4)日本共産党
男女共同参画基本法対策委員会(吉川春子議員、瀬古由起子議員等)が設置され、議論が行われ、平成11年4月には修正案要綱を発表した。修正案要綱の内容は、以下のとおり。
- 法の名称を「男女共同参画促進法」に改める
- 憲法、「女性差別撤廃条約」などの男女平等の理念を明記する
- 男女差別の禁止を明記する
- 社会的機能であり、社会の存続にとって欠かすことの出来ない基本的条件、権利である母性保護の規定を追加する
- 雇用機会の確保、労働時間の短縮、家族的責任との両立などに企業の責任は重要であり、企業の責務を明確にする
- 行政を監視し、苦情の処理および救済を行うための独立した機関を設置する
(5)社民党
社会民主党は男女平等基本法プロジェクトチーム(清水澄子議員、福島瑞穂議員等)を設置して検討を進めていた が、平成10年12月17日に、「男女平等基本法」制定に向けた党の考え方が示された。
その概要は以下のとおりである。また、この内容は平成11年1月28日、内閣総理大臣に土井党首名で申し入れがなされた。
ア.答申の問題点
- 性差別撤廃の視点が明確にされていない。
- 国際条約の基本原則が十分盛り込まれていない。
- 間接差別、ポジティブアクションの導入が明示的に述べられていな
- 暴力、リプロダクティブ・ヘルス/ライツなど女性の人権の基本的課題について明示 していない。
- 市町村に対して基本計画の策定を義務付けていない。
イ.法律に盛り込むべき内容
- 法律の名称は男女平等基本法とする。
- 法律の目的として性差別撤廃と個人の人権尊重の視点を明確にする。
- 性差別の撤廃と女性の人権の尊重などを基本理念として明確にする。
- 国、地方公共団体が間接差別を含むあらゆる差別・人権侵害の解消に努める責務を 持つこと、 国民が差別・人権侵害の解消に努めることとの責務を明らかにする。
- 年次報告について、問題点、今後の課題を明示した内容とする。
- 基本計画に盛り込むべき重要課題を具体的に明記する。
- 教育及び啓発の推進に関して、新たな立法措置を講ずる旨明記する
- 専任大臣を置くなど推進体制を明確にする。
- 性差別による人権侵害を救済するために、行政から独立した協力な権限を持つ救済 機関を設置する旨明記する。
- 国際的合意事項の尊重と国際機関、他国政府、NGO等民間団体との連携について 明記する。
- 国際的合意事項の尊重と国際機関、他国政府、NGO等民間団体との連携について 明記する。