2 男女共同参画の視点に立った社会制度・慣行の見直し、意識の改革

施策の基本的方向 具体的施策 担当府省

(1)男女共同参画の視点に立った社会制度・慣行の見直し

社会制度・慣行は、明示的には性別による区別を設けていない場合でも、現実に男女が置かれている状況の違いを反映し、あるいは世帯に着目して個人を把握する考え方をとるため、結果的に男女に中立的に機能しないことがある。

女性も男性も固定的な役割分担にとらわれず、様々な活動に参画していける条件を整備していくことが必要である。個人がどのような生き方を選択しても、それに対して中立的に働くよう、社会制度・慣行について個人単位の考え方に改めるなど必要に応じて見直しを行う。

これまで、我が国の社会制度等について、男女共同参画社会の形成という視点からの調査が十分行われてきたとは言えない。このため、政府の施策が、女性と男性に実質的にどのような影響を与えるかなど、男女共同参画社会の形成に与える影響について調査を進めていくこととする。

  • 政府の施策が男女共同参画社会の形成に及ぼす影響についての調査の実施

    政府の施策が男女共同参画社会の形成に及ぼす影響についての調査(以下「男女共同参画影響調査」という。)について効果的な手法を確立し、的確な調査を実施する。また、こうした取組について、地方公共団体においても取り組めるよう、情報提供する。

  • 家族に関する法制の整備

    男女平等等の見地から、選択的夫婦別氏制度の導入や、再婚禁止期間の短縮を含む婚姻及び離婚制度の改正について、国民の意識の動向を踏まえつつ、引き続き検討を進める。

  • 個人のライフスタイルの選択に中立的な社会制度の検討

    税制、社会保障制度、賃金制度等、女性の就業を始めとするライフスタイルの選択に大きなかかわりを持つ諸制度・慣行について、様々な世帯形態間の公平性や諸外国の動向等にも配慮しつつ、個人のライフスタイルの選択に対する中立性等の観点から総合的に検討する。

    また、これらの制度は相互に関連しており、総合的な視点からの検討も必要であることから、諸外国における社会制度について総合的な視点から調査研究を行う。

    女性と年金の在り方について指摘されている問題については、厚生大臣の下に設置した各分野の専門家からなる検討会において、民事法制、税制、他の社会保障制度等との関連や諸外国の動向、社会実態など幅広く研究しながら検討を行う。

  • 職場・家庭・地域等における慣行の見直し

    職場・家庭・地域等様々な場における慣行についても、性別による偏りにつながるおそれのあるものについて、広くその見直しを呼びかける。

内閣府、法務省、財務省、厚生労働省、関係府省

(2)国民的広がりを持った広報・啓発活動の展開

男女共同参画の実現の大きな障害の一つは、人々の意識の中に長い時間をかけて形作られてきた性別に基づく固定的な役割分担意識である。このような意識は時代と共に変わりつつあるものの、国民個々の生活には未だに根強く残っていることから、国民すべてに男女平等及び人権尊重の意識を深く根づかせるための広報・啓発活動を積極的に展開する。その際、男性や若年層への浸透に留意するとともに、地方公共団体、NGO、経済界、マスメディア、教育関係の団体等、男女共同参画に大きな影響を及ぼし得る団体との連携を図り、国民的広がりを持った運動として展開する。

  • 多様な媒体を通じた広報・啓発活動の推進

    男女共同参画に関する認識を深め、社会的・文化的に形成された性別(ジェンダー)に敏感な視点を定着させ、職場・家庭・地域における様々な慣習・慣行の見直しを進めること等を目的として、広報・啓発活動を展開する。その際、既に様々な分野に参画している女性の活動の成果が広く世の中に伝わるように可視性を高めるための配慮をする。これらの活動は、地方公共団体、NGO等の協力を得つつ行い、「男女共同参画週間(仮称)」、「人権教育のための国連10年」における取組や「人権週間」、「農山漁村女性の日」、「男女雇用機会均等月間」等多様な機会を通じ、活字、映像、インターネットといった多様な通信媒体を通じて進める。

  • 多様な団体との連携による広報・啓発活動の推進

    有識者、女性団体、経済団体、マスメディア、教育関係団体等広範な各種団体の代表からなる男女共同参画推進連携会議(えがりてネットワーク)の活動を通じて、広く各界各層との情報及び意見の交換や広報・啓発を行い、男女共同参画社会づくりに向けての国民的な取組を推進する。また、地方公共団体、NGO等との連携の下に、全国レベル、地方レベルで関係者が一堂に会する機会を提供することにより、男女共同参画の課題に関する意識の浸透を図る。

全府省

(3)法識字の強化及び相談の充実

女性が自らに保障された法律上の権利や、権利の侵害を受けた場合の対応等について正確な知識を得られる「法識字」の推進を図るとともに、相談体制の充実を図る。

  • 法令や条約の周知等

    女性の権利に関連の深い国内法令、条約等について、誰もが理解しやすい形で広報するなど、その内容の周知に努め、また、権利が侵害された場合の相談窓口、救済機関等の情報についての提供に努める。その際、児童、高齢者、障害者、外国人等情報を得にくい状況にある者に対して配慮する。

    また、学校教育や社会教育において、法令等により保障される人権に関し、正しい知識の普及を図る。

  • 相談体制の充実

    各種人権問題の相談に応ずるため、全国の常設人権相談所に加え、各法務局・地方法務局の専用相談電話「女性の人権ホットライン」や女性のための特設人権相談所を引き続き設置し、男女共同参画社会の実現のための啓発活動や人権相談、人権侵犯事件に積極的に取り組む。また、相談内容に応じた助言のほか、関係機関への通報、法律扶助協会への紹介、人権侵犯事件としての調査・処理を通じた救済の充実強化に努める。さらに、これらの制度の趣旨、活動内容の周知、定着を図るなど、広報活動の一層の充実を図る。

  • 国際化への対応

    英語や中国語等の通訳を配置した外国人のための人権相談所を引き続き設置し、さらにその内容を充実させるよう努める。

内閣府、法務省、外務省、文部科学省、関係府省

(4)男女共同参画にかかわる情報の収集・整備・提供

あらゆる政策に男女平等に関する視点を盛り込む際の基礎資料とするため、女性の置かれている状況を客観的に把握することのできる統計情報等の収集・整備・提供を行う。なお、統計情報等については、プライバシー保護に配慮した上で、統計データを可能な限り公開していく必要がある。

  • 統計調査等の充実

    女性の置かれた状況を客観的に把握できる統計情報の在り方について検討を行い、女性及び家族に関する学習・調査・研究に資するための情報を含め、男女共同参画社会の形成に資する統計情報の収集・整備・提供に努める。なお、統計情報の提供に当たっては、一般国民による分析、研究の利用を可能とすることに留意する。また、統計調査の設計、結果の表し方等について、男女共同参画の視点から点検し、必要に応じて見直す。

  • 女性の政策・方針決定過程への参画状況に関する定期的な調査の実施

    様々な分野における、女性の政策・方針決定過程への参画状況につき定期的に調査を行い、情報を提供する。

  • 無償労働の数量的把握の推進

    無償労働時間の実態把握に資するよう、社会生活基本調査において生活時間の配分に関する調査を行い、家事、育児、介護・看護等の無償労働の時間量を把握する。

内閣府、総務省、文部科学省、厚生労働省、関係府省
内閣府男女共同参画局 Gender Equality Bureau Cabinet Office〒100-8914 東京都千代田区永田町1-6-1
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