第1部 基本的考え方

平成11年6月23日、男女共同参画社会基本法(平成11年法律第78号)が公布・施行された。男女共同参画社会の実現に向けては、これまで様々な取組がなされてきたが、その中でも、男女共同参画社会基本法の制定の意義は大きく、我が国の男女共同参画社会の形成の歴史に新たな一歩が刻まれたものと言える。男女共同参画社会基本法は、男女共同参画社会の形成の基本的枠組みを国民的合意の下に定め、社会のあらゆる分野における取組を総合的に推進していくことを目的としたものである。男女共同参画社会基本法の制定は、一つの到達点であるとともに、21世紀に向けた新しい社会の構築の出発点でもある。

今、我が国が創ろうとしている男女共同参画社会は、女性も男性も、互いにその人権を尊重し、喜びも責任も分かち合いつつ、性別にとらわれることなく、その個性と能力を十分に発揮できる豊かな社会である。そうした男女共同参画社会を形成するための具体的な道筋を示すものが、男女共同参画社会基本法に基づく、この男女共同参画基本計画である。

男女共同参画社会の実現は、21世紀の我が国社会にとっての最重要課題であり、平成13年からの中央省庁等改革においては、男女共同参画会議の設置等、その推進体制が大幅に強化される。21世紀の新たな中央省庁の体制下、政府はこの男女共同参画基本計画に基づき、社会のあらゆる分野に男女共同参画の視点を反映させ、男女共同参画社会の形成を総合的・計画的に図っていくこととする。

1 男女共同参画社会基本法の制定までの経緯
(1)男女共同参画社会の実現に向けたこれまでの取組

男女共同参画社会基本法が制定されるまでには、男女共同参画社会の実現に向け、国内外において、多くの人々の様々な取組の積み重ねがあった。

戦後の一連の改革の中で婦人参政権が実現するとともに、昭和21年に制定された日本国憲法に基づき、家族、教育等女性の地位の向上にとって最も基礎的な分野で法制上の男女平等が明記された。これにより女性の法制上の地位は抜本的に改善された。

その後、我が国の男女共同参画社会の実現に向けての取組は、国連が提唱した「国際婦人年」(昭和50年)によって新しい段階を迎える。この年、メキシコシティーで、第1回目の世界女性会議である「国際婦人年世界会議」が開催され、各国の取るべき措置のガイドラインとなる「世界行動計画」が採択された。これを受けて、我が国では、同年、女性の地位向上のための国内本部機構として婦人問題企画推進本部を設置し、同本部は昭和52年に「国内行動計画」を策定した。

これ以降、我が国の男女共同参画への取組は、国連を中心とした「平等・開発・平和」という目標達成のための世界規模の動きと軌を一にして進められ、世界女性会議等において採択された国際文書を踏まえて国内における行動計画を策定し、総合的、体系的な施策の推進を図ってきた。

昭和54年、国連総会において、女子に対する差別を撤廃し、男女平等原則を具体化するための基本的かつ包括的な条約である「女子に対するあらゆる形態の差別の撤廃に関する条約」(以下「女子差別撤廃条約」という。)が採択された。我が国は、男女平等に関する法律・制度面の整備を大きく進め、この条約を昭和60年に批准した。

昭和62年には、我が国は、「『国連婦人の十年』ナイロビ世界会議」において採択された、「婦人の地位向上のためのナイロビ将来戦略」(以下「ナイロビ将来戦略」という。)を受けて、「西暦2000年に向けての新国内行動計画」(以下「新国内行動計画」という。)を策定した。

平成3年には、国連経済社会理事会において採択された、「婦人の地位向上のためのナイロビ将来戦略の実施に関する第1回見直しと評価に伴う勧告及び結論」を受けて、新国内行動計画を「西暦2000年に向けての新国内行動計画(第一次改定)」へと改定した。

平成6年には、国内本部機構の充実強化を図るため、婦人問題企画推進本部を改組し、内閣総理大臣を本部長、内閣官房長官・女性問題担当大臣(男女共同参画担当大臣)を副本部長とし、全閣僚を構成員とする男女共同参画推進本部を設置するとともに、内閣総理大臣の諮問機関として男女共同参画審議会を設置した。

平成7年9月に北京で開催された「第4回世界女性会議」において採択された「北京宣言及び行動綱領」、平成8年7月に男女共同参画審議会が答申した「男女共同参画ビジョン」(以下「ビジョン」という。)を踏まえて、平成8年12月には、男女共同参画推進本部は、男女共同参画社会の形成の促進に関する新たな行動計画である「男女共同参画2000年プラン-男女共同参画社会の形成の促進に関する平成12年(西暦2000年)度までの国内行動計画-」(以下「男女共同参画2000年プラン」という。)を策定した。

(2)男女共同参画社会基本法の制定

平成8年7月に答申されたビジョンにおいて、男女共同参画社会の実現を促進するための基本的な法律についての検討が提言され、同年12月に策定された男女共同参画2000年プランにおいてもその検討がうたわれた。その後、男女共同参画審議会は、内閣総理大臣からの諮問を受け、平成10年11月に「男女共同参画社会基本法について」の答申を行った。政府は、この答申を踏まえて男女共同参画社会基本法案を作成し、平成11年6月、男女共同参画社会基本法が公布・施行されるに至った。

男女共同参画社会基本法では、男女共同参画社会の形成に関する基本理念として、(1)男女の人権の尊重、(2)社会における制度又は慣行についての配慮、(3)政策等の立案及び決定への共同参画、(4)家庭生活における活動と他の活動の両立、(5)国際的協調を掲げ、次いで、国、地方公共団体、国民の責務をそれぞれ定めている。さらに、男女共同参画社会の形成の促進に関する基本的な施策として、国の男女共同参画基本計画の策定、年次報告等の作成などについて規定している。

2 男女共同参画基本計画の基本的考え方と構成
(1)男女共同参画基本計画の考え方

本計画は、男女共同参画社会基本法に基づく、男女共同参画に係る、初めての法定計画である。

男女共同参画社会基本法は、第13条において、政府が、男女共同参画社会の形成の促進に関する施策の総合的かつ計画的な推進を図るため、男女共同参画社会の形成の促進に関する基本的な計画である、男女共同参画基本計画を策定しなければならないことを規定している。

内閣総理大臣は、平成11年8月、男女共同参画審議会に対し、ビジョン及び男女共同参画2000年プランの策定の後の国内外の様々な状況の変化を考慮の上、政府において男女共同参画基本計画を策定していく際の基本的な考え方について諮問した。これに対し、同審議会では、国内外の様々な状況の変化を念頭に置く一方で、人権の尊重を男女共同参画社会の根底を成す最も重要な基本的理念と位置付けて審議を行った。

この間、「第4回世界女性会議」において採択された「北京宣言及び行動綱領」の実施状況を評価・検討するため、平成12年6月に、国連特別総会「女性2000年会議:21世紀に向けての男女平等・開発・平和」(以下「女性2000年会議」という。)がニューヨークで開催され、「政治宣言」と「北京宣言及び行動綱領実施のための更なる行動とイニシアティブ」(以下「成果文書」という。)が採択された。成果文書は、行動綱領の実施状況及び「第4回世界女性会議」以降に出現した新しい課題を踏まえ、「北京宣言及び行動綱領」の更なる実施に向けて各国政府、国際機関、市民社会が行うべき行動とイニシアティブを提言している。

また、男女共同参画審議会では、女性に対する暴力に関する調査審議が並行して進められた。同審議会は、平成9年6月に、内閣総理大臣から「男女共同参画社会の実現を阻害する売買春その他の女性に対する暴力に関し、国民意識の変化や国際化の進展等に伴う状況の変化に的確に対応するための基本的方策」について諮問を受け、これに対して、平成11年5月に「女性に対する暴力のない社会を目指して」を、また、平成12年7月には「女性に対する暴力に関する基本的方策について」を答申している。

平成11年8月の諮問に対して、男女共同参画審議会は、広く国民各層の意見を求めつつ、女性2000年会議の成果を視野に入れて調査審議を進め、平成12年9月、「男女共同参画基本計画策定に当たっての基本的な考え方-21世紀の最重要課題-」を答申した。

同答申では、ビジョンを前提に人権尊重の理念を基礎とし、男女共同参画社会基本法の成立、少子・高齢化の一層の進展などビジョン策定後の状況の変化に対応する視点から今後の取組を取りまとめ、次いで、新たな認識の深まりを踏まえ、個人の尊厳を重んじる視点からの今後の取組について示し、最後に、これらの取組を推進していくための体制について提言している。

政府は、同答申を受けて、平成11年7月の男女共同参画審議会答申「女性に対する暴力に関する基本的方策について」及び女性2000年会議の成果文書なども踏まえつつ、男女共同参画基本計画を策定することとした。

策定に当たっては、さらに、男女共同参画2000年プランの進捗状況を勘案し、残された課題に対応するために必要な施策を盛り込むとともに、平成13年1月から移行が開始される中央省庁等改革を念頭に置いた。また、基本計画の策定過程で、国民各層から幅広く意見・要望を聴き、これを可能な限り反映するよう努めた。

男女共同参画社会基本法に基づく男女共同参画基本計画においては、「男女共同参画社会の形成」を、「男女が、社会の対等な構成員として、自らの意思によって社会のあらゆる分野における活動に参画する機会が確保され、もって男女が均等に政治的、経済的、社会的及び文化的利益を享受することができ、かつ、共に責任を担うべき社会を形成すること」としてとらえ、その実現に向け政府として取り組むべき施策を総合的、体系的に整備し、推進することとした。

また、男女共同参画基本計画においては、あらゆる社会システムへ男女共同参画の視点を反映させることを重視し、施策の各論に組み込むことはもとより、計画推進の体制の中に仕組みとして組み込むことに留意した。

なお、男女共同参画基本計画は、平成12年(西暦2000年)度末までを計画期間とする国内行動計画である男女共同参画2000年プランの内容を基礎としており、男女共同参画2000年プランに代わる、新たな国内行動計画としても位置付けることとする。

(2)男女共同参画基本計画の構成

男女共同参画基本計画は、総合的かつ長期的に講ずべき男女共同参画社会の形成の促進に関する施策の大綱として、第1部において、男女共同参画社会基本法の制定までの経緯とそれを踏まえた計画の基本的考え方と構成を示し、第2部において、中央省庁等改革後の新たな体制の下での施策の基本的方向性及び具体的な施策の内容を示した。なお、第2部では、各章の冒頭で、施策の基本的方向性について概観を付した。第3部においては、男女共同参画社会の形成の促進に関する施策を総合的かつ計画的に推進するために必要な方策を示した。

第2部では、11の重点目標を掲げ、それぞれについて、「施策の基本的方向」において平成22年(西暦2010年)までを見通した、長期的な政策の方向性を記述し、「具体的施策」において平成17年(西暦2005年)度末までに実施する具体的施策を記述した。

これらの取組を総合的かつ計画的に推進するための体制の整備・強化については第3部に記述した。

男女共同参画社会の形成に当たっては、国だけでなく、地方公共団体や国民各層の取組も重要である。このため、政府においては、地方公共団体、国民各層との連携をより一層深めつつ、本計画に掲げた施策を着実に推進し、男女共同参画社会の形成を期することとする。

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