平成24年版男女共同参画白書

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第2節 障害者が安心して暮らせる環境の整備

(総合的な障害者施策の推進)

障害者施策については,内閣総理大臣を本部長とする「障がい者制度改革推進本部」の下,障害のある方々を中心とする「障がい者制度改革推進会議」を開催しており,その議論を踏まえて,政府は,障害者の定義や,障害者の地域社会における生活を支える観点等からの基本的理念の見直し,障害者政策委員会の設置等を盛り込んだ「障害者基本法の一部を改正する法律案」を第177回国会に提出した。同法律案は一部修正の上,同国会において,全会一致で成立した。また,それを踏まえ第180回国会に提出している「地域社会における共生の実現に向けて新たな障害保健福祉施策を講ずるための関係法律の整備に関する法律案」に含まれる,「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律(障害者総合支援法)」では,法の目的規定を改正し,基本理念を創設するとともに,障害者の定義に難病等を加えることとした。「障害を理由とする差別の禁止に関する法律案(仮称)」については,平成25年通常国会への提出を目指すこととしている。

障害の有無にかかわらず,国民誰もが相互に人格と個性を尊重し支え合う「共生社会」の実現に向けて,「障害者基本計画」(平成14年12月閣議決定)及び新たな「重点施策実施5か年計画」(平成19年12月障害者施策推進本部決定)に基づき,障害者施策の総合的かつ計画的な推進に努める。

(障害者の自立を容易にするための環境整備)

政府は,「バリアフリー・ユニバーサルデザイン推進要綱」に基づき,高齢者,障害者,妊婦や子ども連れの人を含む全ての男女が社会の活動に参加・参画し,社会の担い手として役割と責任を果たしつつ,自信と喜びを持って生活を送ることができるよう,ハード・ソフト両面にわたる社会のバリアフリー・ユニバーサルデザインを推進する。

また,高齢者や障害者等の自立を支援し,介護者の負担軽減を図るため,福祉機器開発のための実用化支援,情報バリアフリー環境の整備,道路交通環境等高齢者や障害者等が自立しやすい社会基盤の整備を推進する。

国土交通省では,「どこでも,だれでも,自由に,使いやすく」というユニバーサルデザインの考え方に基づき制定されたバリアフリー法においては,以下の内容を定めている。

ア.
身体障害者のみならず,知的・精神・発達障害者を含む全ての障害者,高齢者,妊婦等を対象
イ.
新設等の施設等(旅客施設,車両等,道路,路外駐車場,都市公園,建築物等)に対する移動等円滑化基準適合義務及び既設の施設等に対する移動等円滑化基準適合努力義務
ウ.
市町村が作成する基本構想による重点整備地区の重点的かつ一体的なバリアフリー
エ.
国,地方公共団体,国民の責務として心のバリアフリーを規定

また,バリアフリー法に基づく「移動等円滑化の促進に関する基本方針」(最終改正平成23年国家公安委員会,総務省,国土交通省告示第1号)において,各施設等の移動等円滑化の目標値(2020(平成32)年度末まで)を定めているほか,当事者ニーズに即した施設の整備や教育訓練を行うことの必要性,市町村の定める基本構想における協議会の活用等当事者の参画を図ることの必要性,心のバリアフリー及びスパイラルアップといった国,国民等の責務に関する事項等を定め,住まいづくり,まちづくり,都市公園,公共交通機関,道路交通環境の整備を推進する。

さらに,発達障害者(児)に対し,乳幼児期から成人期に至るまで切れ目のない一貫した支援体制の充実を図るため,文部科学省では,障害者基本法の一部を改正する法律(平成23年法律第90号)を踏まえ,早期からの教育相談・支援体制の構築,障害特性に応じた適切な教材の普及推進,高等学校等における発達障害のある生徒へのキャリア教育の充実に取り組むほか,関係機関等の連携により学校現場における特別支援教育の体制整備を推進する。

(雇用・就労の促進)

厚生労働省では,近年,障害者の就労意欲が着実な高まりを見せる中で,より多くの就職希望を実現するとともに,男女共にいきいきとした職業生活を送ることができるようにするため,障害者の雇用の促進等に関する法律(昭和35年法律第123号)や「障害者雇用対策基本方針」(平成21年厚生労働省告示第55号)等を踏まえた就労支援について,質・量共に一層の強化を図る。

文部科学省では,障害のある子どもが自立し社会参加するために必要な力を培うため,特別支援学校高等部等において職業教育を推進する。