本編 > 第1部 > 第3章 仕事と子育ての両立
(出産・子育ての仕事への影響は女性に偏っている)
厚生労働省「21世紀出生児縦断調査」によると,第1回調査時点(平成13年度)では,第1子の出産を機に約7割の母親が退職し,有職の者は25.0%であったが,第2回調査時点(平成14年度)では有職の母親は31.1%で就業している者の割合が上昇している。また,第1回調査で「仕事を探している」と回答した母親のうち約4割が第2回調査時点で就職している。これらの母親を含め,第2回調査時点で新たに職に就いた者のうち64.9%が「パート・アルバイト」として就職している(第1-3-1図)。
厚生労働省「女性雇用管理基本調査」(平成14年度)によると,育児休業取得者の割合は,女性が64.0%と前回調査(11年度56.4%)より7.6ポイント上昇する一方,男性は0.33%と前回調査(11年度0.42%)に引き続き低い状況となっている。また,育児休業取得者中に占める男性の割合は,わずか1.9%となっている。
夫婦に子どもが生まれた場合,就業の中断,育児休業の取得など,仕事への影響は女性に偏っている状況にある。
(母親に偏る育児負担)
前出「第2回21世紀出生児縦断調査」により,母親の就業状況別にふだんの保育者が誰であるかをみると,「母」は母親が無職の場合は99.6%,母親が就業している場合も86.2%と高くなっている。「父」については,母親が無職の場合は49.7%,有職の場合は48.9%であり,母親の就業状況による保育への関わり方の差は余りない。母親が無職の場合と有職の場合で差があるのは,祖母と保育所の保育士であり,それぞれ18.2%と43.2%,2.3%と53.6%となっている(第1-3-2図)。
また,母親の就業状況別に,父親の家事・育児の状況をみると,母親が有職の時の方が家事・育児を行う父親が若干多くなっている場合がほとんどであるが,無職の時と大きな差はみられない(第1-3-3図)。
(男性の育児期の就業時間は長く,育児参加時間は短い)
男女別,年齢階級別の平均週間就業時間と週60時間以上就業者の割合をみると,女性は30歳代後半から40歳代前半にかけての就業時間が最も少なくなっている一方,男性は30歳代が最も長く,週60時間以上働く者の割合も30歳代が最も高い。育児期の男性の就業時間は長く,女性が就業時間を調整することにより子育てを行っている状況がうかがえる(第1-3-4図)。
一方,男性の平均週間就業時間の推移をみると,昭和63年には51.4時間であったが,平成6年には47.0時間,15年には46.8時間と,男性の就業時間は短縮傾向にある(第1-3-5図)。
これに対し,男性の育児・家事にかける時間の推移をみると,家事については,昭和61年に共働き世帯で12分,片働き世帯で11分の後,やや増加傾向を示し,13年にはそれぞれ21分,22分となったが,依然として低い水準にとどまっている。育児については,昭和61年に共働き世帯で3分,片働き世帯で6分であったが,その後大きくは変わらず,13年で若干増加したものの,それぞれ5分,13分となっている。このように,男性が育児・家事にかける時間は少ない状態が続いており,妻が働いているかいないかによる差も余りない。全体的に就業時間が短くなってきているにもかかわらず,男性の育児・家事への参加が少ないのは,単に就業時間だけの問題ではなく,家庭における男女の役割分担の在り方にも要因があると考えられる(第1-3-6表)。
第1-3-6表 妻の就業状況別にみた夫の仕事時間,家事時間,育児時間
(仕事と家事・育児の双方を担う女性)
(財)21世紀職業財団「キャリア形成と仕事と家庭の両立に関する意識調査」(平成13年)によると,子どものいる女性が働いている理由としては「働かないと経済的に苦しいから」が63.9%と最も高くなっている(第1-3-7図)。
このように,家計を支えるために働く女性が増えていると考えられるが,男性の家事・育児への参加の程度は低いことから,女性が仕事をしつつ家事・育児も担っている状況にあることがうかがわれる。