平成16年版男女共同参画白書

コラム > 均等法第一世代の女性の未来観

内閣府男女共同参画局では一部上場企業に昭和61年~平成2年に総合職として採用され,今も就業し続けている均等法第一世代の男女と,国の審議会委員等を対象に男女共同参画社会の将来像についてのアンケートを行った(平成16年1月実施)。ここでいう均等法第一世代とは,男女雇用機会均等法が施行された直後に会社で基幹的業務(総合職)を行うべく就職した人たちで,現在40歳前後である。企業に均等法第一世代に当る社員を男女1名ずつ選んで回答してもらうという方式によったところ,回答者は男性127名,女性91名であった。女性の回答者が少なかったのは,今も働き続けている女性が少ないためであろう。

アンケートに回答した均等法第一世代の女性の属性をみると,91人中既婚者が46人(50.5%)である一方,未婚者が38人(41.8%)いた。また91人中,子どもがいない者は64人(70.3%)に上った。

この均等法第一世代の女性に「仕事を継続する上で最も大変だったこと」は何かと質問したところ,結婚している人は「子どもの保育」(21.7%)「ロールモデルの不在」(15.2%)いう回答が多く,未婚の人は「ロールモデルの不在」(23.7%)が最も多かった。また,「仕事を継続できた理由として最も重要だったこと」については,既婚者は「夫の理解・協力」(32.6%),「子どもがいなかった」(17.4%)と回答した人が多く,未婚者は「独身であったこと」(50.0%)が突出して多かった。

2020年ごろに想定される雇用・就労の状況について,彼女たちの予想を審議会等委員と比べてみると,「募集・採用において年齢を問われることが少なくなり,女性の再就職が容易になっている」かどうかについて,肯定的回答が審議会等委員では57.4%であるのに対し,均等法第一世代女性は33.0%と低く,「女性管理職が増えること等により男女間賃金格差は格段に小さくなっている」という予測に関する肯定的な回答が,審議会等委員は72.2%であるのに対し,均等法第一世代女性は50.5%である。また、「2割以上の男性が育児休業をとるようになる」と予想する者は審議会等委員では34.1%であるが均等法第一世代の女性は15.4%に過ぎず,総じて均等法第一世代の女性は審議会等委員に比べ,男女共同参画に関連する未来の雇用環境について厳しい見方をしている。

調査対象数が少ないため,統計的に断定することはできないが,男女雇用機会均等法施行後,総合職となり現在まで働き続けてきた女性の婚姻率の低さ,子どものいない人の割合の高さをみると,結婚し,子育てを行いながら,女性が企業で総合職として働くことの厳しさを感じずにはいられない。仕事を継続できた理由として,独身であったこと,子どもがいなかったことだと回答した女性の多さ,仕事を続ける上で子どもの保育が最も大変だったと答える女性の多さは,仕事に与える育児負担の影響がいかに大きいかを物語っている。また,仕事を続ける上でロールモデルがいなかったことを挙げる女性が多く,均等法第一世代の女性たちが,先輩女性管理職がいない中で,手探りで自分のキャリアを開拓してきた様子が見えてくる。そのような厳しい環境の中で働いてきた女性たちだから,就労に関する将来については,審議会等委員より悲観的な見方をしているとも言える。

後に続く女性の見本たり得る女性管理職を増やすためのポジティブ・アクション,仕事と子育てを両立する上での負担を軽減するための支援が,いかに必要であるかがこのアンケート結果から見えてくる。企業で基幹的業務を担う女性達が,将来をもっと楽観的にみることができるよう,官民ともに更なる取組が必要である。

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